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シンガポール海軍と「フォーミダブル」〜国際観艦式に伴う外国艦艇一般公開

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日本国海上自衛隊主催、国際観艦式三カ国海軍艦艇を
大体見た順番に紹介していっています。
というわけで、今日は、見学しようと思ってちょっと並んだだけの
パキスタン海軍の「ナスル」「シャムシール」と同じ埠頭に係留していた
シンガポール海軍の、

RSS「フォーミダブル」Formidable F68
から見ていくことにしましょう。

「フォーミダーブル」というその名に聞き覚えのある軍艦は、
艦艇公開だけで終わった前回の観艦式にも来日しており、
反対側の岸壁で係留していた自衛艦の甲板から外観だけ見学しました。

今回も同じ軍艦を寄越すのには何か理由があるのでしょうか。

それではまず、今回の恒例として、シンガポール海軍について
概要というかちょっとした歴史を調べてみました。

■ シンガポール海軍

シンガポールというのは、教育はじめテクノロジー対応についても
イノベーションの点でも何気にスペックの高いスマートな国ですが、
正式な国名が、

Republic of Singapore (シンガポール共和国)

であることについては知らない人も多そうです。(わたしもな)
その海軍、シンガポール共和国海軍は、

Republic of Singapore Navy 

であり、略称はRSNですが、すべての就役艦に付されるのは
Republic of Singapore Shipを意味するRSSとなります。

【植民地海軍の発祥と『若鷹』】

シンガポールが植民地だった1934年、イギリスの王立海軍の予備軍として
たった2隻の哨戒船を保有するシンガポール海軍は生まれました。
正式名称は、

The Straits Settlements Royal Naval Volunteer Reserve
海峡植民地 王立海軍 志願予備軍(SSRNVR)
の、シンガポール部門という扱いです。
第二次世界大戦中はシンガポールの戦いを経て日本に占領され、
昭南島とこの期間だけ名付けられていたシンガポールですが、
戦後はその勢いでイギリスから自治権を獲得し、自治州となります。

そして1963年、マレーシアが独立した際、シンガポールは
連邦制の下でマレーシアの州の一つとして同時に独立を果たします。

この時、海軍はまだマレーシアの一部であったため、

ロイヤル・マレーシア海軍
 Royal Malayan Navy

と改名しました。

このとき正式に英国海軍の指揮下からマレーシア海軍に移管され、
「シンガポール義勇軍」(SVF)として起つわけです。

そのうちマレーシアはインドネシアとの間に対立が起こります。
(そういえば、今回の観艦式にはどちらも参加していましたね)

その間、シンガポール義勇軍は侵入者や妨害者から南部国境を守る役割を担い、
またインドネシア海軍に対して局所的な小交戦を行うこともありました。

1965年、マレーシアから分離独立を果たしたシンガポールは、
独立共和国を建設し、それまでのシンガポール義勇軍(SVF)は、
マレーシア海軍の隷下にありながら、事実上新国家の海軍部隊となりました。

分離後、シンガポールに残った艦艇は3隻でした。


漁船ぢゃないよ RSS「パングリマ」1988

そのうちの1隻、RSN最初の軍艦だった

RSS「パングリマ」Panglima(P68)

は、そのままシンガポール海軍義勇軍艦として再就役しています。
後2隻は「ペドック」「シンガプーラ」と言いますが、
みなさま、この「シンガプーラ」たんの最初の姿をご覧ください。


「若鷹」だった頃の「シンガプーラ」
「若鷹」は1941年、播磨造船所で建造された「初鷹」型敷設艦の3番艦で、
1942年からバタビヤ方面、ラバウル(ニューブリテン島)、
ショートランド泊地、パラオなどで船団護衛に従事しました。

戦後はマニラ、サイゴン、高尾、シンガポール、沖縄、
パレンバン、バンコク、香港などとの復員輸送業務に従事し、
戦後補償の一環としてシンガポールでイギリスに引き渡されました。

シンガポール海軍の最初の軍艦になったのはこれが下げ渡されたからで、
まずマラヤ連邦所属となってからは、

ラブナン(HMMS Laburnum)

と命名され宿泊艦として使用されました。

1965年シンガポール所属となり同国義勇海軍の練習艦となった「ラブナン」は1967年5月5日シンガプーラ(RSS Singapura)と改名し、
同国義勇海軍の旗艦となった、という経緯です。
「ペドック」も、同じくフローティング司令部として就役しました。

ちなみにRSS「パングリマ」は、1988 年に練習船となり、
1991 年まで現役を続けました。

■ シンガポール海軍始動


新しいシンガポール海軍の海軍旗が初めて掲揚されたのは
1967年5月5日のことで、当初の名称は

The People's Defence Force – Sea
海上人民防衛軍

でした。

当初のシンガポール海軍は新兵教育のために
ニュージーランド海軍の教官を招聘し、
士官教育をオーストラリア、イギリス、カナダ、ニュージーランドの
既成の海軍に留学させるという方法を取りました。

海上戦闘力の対象は海賊や密輸の撲滅です。

1968年、イギリスから6隻の「インディペンデンス」級哨戒艦が購入され、
これが1海軍が保有する最初の専用軍艦となります。

ちなみに、シンガポール海軍の戦略的な必要性が証明されたのは、
1974年に発生した

日本赤軍のテロリストによるブコム島石油施設における
「ラジュー号」シージャック事件

でした。
『シンガポール事件』

この事件の際、RSS「シーホーク」、RSS「インディペンデンス」、
RSS「ソブリン」、RSS「デアリング」の4隻の艦艇が海洋警察とともに
逃走するフェリーを包囲し、逃亡を防ぐなど、活躍したのです。

1975年4月1日、海上司令部はシンガポール海軍と改名され、
それ以来その名称が維持されています。

■艦隊の近代化


1975年からシンガポール海軍に6隻の「シーウルフ」級ミサイル砲艦が就役し、
ベトナム戦争の難民流入のパトロールを行いました。
そして、米国から「カウンティ」級戦車揚陸艦6隻を、
1隻1ドルで購入しています。

また、機雷戦の脅威に対して「ブルーバード」級掃海艇2隻を購入し、
水中機雷処理作業を行うフロッグマン第一陣の訓練も始まります。

しかし、RNSはしばらくの間シンガポールに三軍における海軍の優先順位が
一番低かったということもあり、人員の不足から信頼を失い、
危機的状況に陥っていました。

その後、マラッカ海峡と南シナ海の海上交通路を確保するために、
海軍当局が政府を説得したこともあり、
1990年から海軍は復権を果たします。

その結果、「ビクトリー」級ミサイルコルベット6隻、
「フィアレス」級哨戒艦12隻、「エンデュランス」級揚陸艦4隻を取得し、
スウェーデンからは中古の「チャレンジャー」級潜水艦4隻を獲得しました。
■ 国際紛争など

マレーシアとシンガポールの間にも領有権紛争がありました。
ペドラブランカという島の領有権をめぐる両国の紛争は
国際司法裁判所によってシンガポールのものと決定される2008年まで
29年間続いていたわけですが、その間、シンガポール海軍は
パトロールを通じて島周辺の海域でプレゼンスを発揮していました。


RSNはまた、シルクエアー185便の捜索のために
「ベドック」級地雷対策艦を派遣していますし、
1999年の独立を問う住民投票後の人道的・治安的危機に対処するため
オーストラリア主導で東ティモール国際軍に参加しています。

また、ペルシャ湾のイラクの主要施設周辺の海上警備を担当する
多国籍軍イラク連合軍の一員としても活動しました。


■ 安全保障

RSNは「アーチャー」級潜水艦、「フォーミダブル」級フリゲート、
「インディペンデンス」級沿岸任務船を新たに導入し、
周辺海域の緊張が高まる中、抑止力を高めています。

シンガポールもまた少子化が進む国の一つですが、
海軍は海軍の人員不足に将来的に対応するため、
特殊海上艇(Specialized Marine Craft)哨戒機や、
護衛艦(Protector USV)など、武器の無人化を推し進めています。

海賊対策活動においても、RSNは近隣諸国とマラッカ海峡で
多国間における連携を行い、任務部隊の一員として活動を続けています。

シンガポールとマレーシアとの問題は他にもありました。

2018年、シンガポールが自国と主張する埋め立てた海域に
マレーシアが権益を拡張して沿岸警備隊と政府船を配備し、
RSNは対抗して警察沿岸警備隊とともに24時間365日現地に駐留。

結局両者は最終的に交渉に成功してこの地域から撤退することで治りました。

■今後の調達計画

海軍は2019年、最初の新造「インヴィンシブル」級潜水艦を進水させ、
さらに3隻を建造中です。

マルチロール戦闘艦(MRCV)(無人資産のための「母艦」)
と合同マルチミッション船(JMSS)、また、
新がクラスの哨戒艦を2026年に就役させる予定です。
■ RSS「フォーミダブル」

Kさん撮影:観艦式から帰投する「フォーミダブル」
「フォーミダブル」級マルチロール・ステルス・フリゲートのネームシップ、

RSS「フォーミダブル」Forumidable R68

「フォーミダブル」級はRSNの最新の水上プラットフォームであり、
フランス海軍の「ラ・ファイエット」級フリゲートの多用途艦です。
シンガポール海軍は老朽化した「シーウルフ」級の後継を募集し、
入札によってフランス海軍がこれを請け負いました。

設計と建造

前回の観艦式で「フォーミダーブル」を見た人が、
これを生まれて初めて生で見たステルス軍艦だと言っていました。

ステルス仕様のため、「フォーミダーブル」の艦体側面は傾斜させてあり、
レーダー反射断面積(RCS・Radar cross-section)低減を図っている他、
ブルワーク(舷檣、上甲板の外舷に沿って立ち上げた波の侵入を防ぐ囲い)や、
洋上補給装置を低RCSカーテンで隠すなどの設計がなされています。

なお、後部の上部構造は全鋼材で構成されています。

■センサーとシステム
MBDA(旧ユーロサム)のアスター防空システムを搭載しており、
艦対空ミサイルとしてSylver垂直発射システム(VLS)を装備しています。

「フォーミダーブル」級フリゲートは、約370kmまでの影響範囲を持ち、
海上で海軍の移動作戦司令部として機能し、
範囲内に配置された僚艦や航空機から情報を受信することができます。

これのシステムだと「センサー」から「シューター」までのループが短いため、
敵に反応する時間をほとんど与えることがありません。

■兵装

ボーイング・ハープーンミサイル
オトーメララ76mm砲
ハープーンミサイルは射程130km、アクティブレーダー誘導方式、弾頭227kg。
艦の中央部には24基ものハープーンミサイルを搭載するスペースがあり、
このクラスで最も武装が充実した艦となっています。

砲は6kgの砲弾を最大射程30km、毎分最大120発の発射速度で発射。

EDO社 アクティブ低周波曳航式ソナー
長距離潜水艦の探知と分類を可能にする。
ユーロトップA244/S Mod 3 軽量魚雷
ブルワークの後ろに隠された2基のB515三連装発射機から発射される。

艦載機:
Sikorsky S-70B海軍ヘリコプター

ヘリコプターはシンガポール共和国空軍の飛行隊が運用し、
空軍のパイロットが操縦することになっていますが、
システムオペレーターは海軍が行うことになっています。


続く。


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