お気づきのことと思いますが、今回の外国艦一般公開で
わたしが内部を見学できたのは、オーストラリアとニュージーランド、
合計3隻だけだったので、実は内部観覧報告は終わりです。
パキスタン海軍は列が進まないので脱落し、ここならいけるだろうと
並び出したカナダ海軍の列は、開場して1時間だというのに
もうすでに「待ち時間100分」の告知が出されていました。
とりあえず並び出し、列を一往復進んだところで
暑さとマスクの息苦しさに耐えられなくなって戦線離脱。
あとを頼む、と知人を置いてとっとと帰ってしまいました。
しかし、このイベントに全て参加し、あるときは木更津に、
あるときは田浦に、あるときは横浜に、あるときは観音崎に、そして
千代ヶ崎砲台跡まで見学されたスーパーお元気なKさんが、
その全行動を写真に収めて送ってきてくださっています。
(これがあったから当方の戦線離脱が早かったという噂もあり)
ここから先は、Kさんの写真にわたしの写真を申し訳程度に混ぜながら
ともかくも最後までご紹介していきたいと思います。
■ インド海軍
先日、パキスタン海軍の歴史を調べたところ、
その歴史はそのままインドとの戦争の歴史といってよく、わたしの思っていた以上にシリアスで洒落にならん関係でした。
海軍同士のつながりというのは国家間の関係とはちょっと別、
という言葉もありますが、実際最近までやり合っていた同士、(しかも2001〜2002年には不穏な睨み合いもあったらしい)
よく同じところに錨を降ろす決断をしたものだと・・。
ここは、海上自衛隊がいい意味で空気読まずに、
インドには「うちの観艦式、パキスタン来るけど来ない?」(・∀・)
パキスタンには「観艦式、インド来るけどお宅も来るよね?」(・∀・)と声をかけて、
「何っ、インドが行くなら出ないわけにはいかん!」
「パキスタンだけにいいカッコさせられるか!」
となるように競争心を煽ったのではないかとすら思えます。
ただ、観艦式の順番とかそれこそ係留する埠頭の位置とか、
自衛隊はかなり神経使ったんじゃないかと思うがどうか。
インド海軍
パキスタン海軍は分離独立を果たしてから、
インド海軍が分かれてできたような経歴ですが、こちらは
植民地化されてからずっとイギリス海軍としての歴史があります。
第二次世界大戦ではイギリス軍でしたから、
それこそ日本海軍からも猛烈な通商破壊戦で何隻も喪失しました。
この頃の保有軍艦は8隻でした。
オーストラリア、ニュージーランドと同じく、
ロイヤル・インディアン・ネイビーとして、1950年から2001年まで
このようなホワイト・エンサインを使用していました。
2001〜現在
現在のインド海軍は
「他の連合国軍と連携し、戦時・平時を問わず、インドの領土、国民、
海洋権益に対する脅威や侵略を抑止・撃退すること」
「インドの政治、経済、安全保障上の目的を推進するため、
インドの海洋権益地域に影響力を行使すること」
「インド沿岸警備隊と協力し、インドの海上責任水域における
良好な秩序と安定を確保すること」
「インドの近隣海域で海上支援(災害救援を含む)を行うこと」
を使命に掲げています。
■INS「シヴァリク」
INS 「シヴァーリク」 (F47)
は、「シヴァーリク」級ステルス マルチロール フリゲート艦で、
インドが建造した最初のステルス軍艦です。
国産で、2001年に建造が開始され、2009年に完成し、
2010年4月29日に就役しています。
前級である「タルワール」級よりもステルス性と陸上攻撃性を向上させ、
また、インド海軍の艦艇としては初めて、
CODOG(COmbined Diesel Or Gas)推進システム
を採用しました。
ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを組み合わせた推進方式です。
全長142.5m
ビーム16.9m
喫水4.5m
標準積載時 約5,300トン
満載時 約6,200トン
乗員 約257名
うち士官37名
兵装は、ロシア、インド、西側の兵器システムを混合装備。
3インチ (76 mm) オートメララ海軍砲
超音速対艦ミサイル Klub と BrahMos
対空ミサイル Shtil-1
RBU-6000 対潜ロケットランチャー
DTA-53-956 魚雷ランチャー
近接武器システム(CIWS)32セルVLS発射のバラックSAMとAK-630
艦載機 2機のHAL Dhruv Sea King Mk.42Bヘリコプター
■ インド海軍の国際的立ち位置
日本との関係で言いますと、2012年、INS「シヴァーリク」は
インド海軍の駆逐艦とフリートタンカー4隻編成で、
JIMEX 2012(日印海洋演習)
に派遣され、インドにとって初の日本との海上共同訓練を行なっています。
自衛隊からは、護衛艦2隻、哨戒機1機、ヘリコプター1機が参加しました。
このときインドから参加した4隻の艦船は、東京に日間滞在しましたが、
この訪問は、日印国交樹立 60 周年の記念行事となりました。
その後定期的に行われているらしいJIMEX(後欄参照)に関しては、
在インド日本大使館のページなどでも紹介されており、令和2年度は
「かが」「いかづち」などが参加したと報じられています。
日印共同訓練令和2年
安倍晋三元首相が提唱した日米豪印クァッドQUADの設立時、
インドだけはこれが中国包囲網とかではないということを言明しました。
確かにインドと中国の関係性は我々が思うより密接です。
たとえばINS「シヴァーリク」も、日本の訪問の後中国に立ち寄りましたし、
青島で人民解放軍海軍 (PLAN) の 65 周年記念式典が開催されたときは
インド海軍も出席して、中国、インドネシアと共に
ハイジャック対策を含むハイレベルな演習を実施しています。
また、2014年には、ロシアと、海・陸軍対テロ演習である
INDRAウォーゲームに積極的に参加しています。
元々インドは勢力図で言うとレッドチーム寄りで、
パキスタン海軍がブルーチームだと言われていましたね。
ただ、インド海軍が頻繁に他国との軍事演習を行うのは有名?な話です。
これまでインドが行ってきた多国間防衛訓練を表にしてみました。
お節介ながら冷戦時の西側諸国を青、東側諸国を赤で記しておきました。
カタールは冷戦時まだ独立していなかったので黒のままです。
Milan Multilateral 1995~2022 10回
VARUNA 🇫🇷仏海軍 1983〜2019 17回
KONKA 🇬🇧英海軍 2004〜2019 14回
INDRA 🇷🇺ロシア海軍 2003〜2021 12回
MALABAR 🇺🇸米海軍 🇯🇵海上自衛隊 1992〜2020 24回
SIMBEX 🇸🇬シンガポール海軍 1994~2020 27回
IBSAMAR 🇿🇦南ア海軍 2008~2018 6回
SITMEX 🇸🇬シンガポール海軍 🇹🇭タイ海軍 2019~2020 2回
SLINEX 🇱🇰スリランカ海軍 2012~2020 8回
NASEEM-AL-BAHR 🇴🇲オマーン海軍 1993~2020 12回
AUSINDEX 🐨オーストラリア海軍 2015~2019 3回JIMEX 🇯🇵海上自衛隊 2012~2020 4回
ZA'IR-AL-BAHR 🇶🇦カタール海軍 2019~2019 1回
SAMUDRA SHAKTI 🇮🇩インドネシア海軍 2018~2019 2回
BONGOSAGAR 🇧🇩バングラデシュ海軍 2019~2020 2回Zayed Talwar🇦🇪 UAEアラブ首長国連邦海軍 2021~2021 1回
Al-Mohed Al-Hindi 🇸🇦サウジアラビア海軍 2021~2021 1回
趣味:他国との軍事演習というくらいの実績でしかも相手を選ばず。
いろんな国を巻き込んで軋轢を作らない方向性というか、
インドにすればこれが宿敵パキスタン包囲網のつもりだったりするのかも。
で、一応念のために確認しておきますが、
インドは冷戦時はレッドチームだったんだなこれが。
■INS「カモルタ」
INS「カモルタ」Kamorta P 28
は、インド海軍のために建造された
対潜水艦「カモルタ」級ステルス コルベット
で4隻建造された同級のネームシップです。
先ほど、インドが世界中の海軍と演習をしまくっていることを書きましたが、
インド海軍は「真のブルーウォーター・ネイビー」を目指してきており、
現在は晴れてそのブルーウォーターネイビーの一員と目されています。
外洋海軍、ブルーウォーターネイビーは、反対の意味の地域海軍が、
その国の沿岸のみで活動する海軍力しか持たないのに対し、
広範囲での制海権を行使する海軍力を持つとされます。
艦船や潜水艦を国内で設計・建造することができる、というのも
ブルーウォーターネイビーの条件であり、このためにインド海軍は
自国艦建造の自立を目指し、「カモルタ」建造もその重要な一歩でした。
同級は、2003年に承認されたプロジェクト28の一環として、
GRSEによって設計・製造され、2010年進水、2014年に就役しました。
INS 「シヴァリク」と同様、インド産の高級鋼材を使用した、
インド初の国産対潜コルベット、初の国産ステルスコルベットです。
鋼材には、国営インド鉄鋼公社がビライ製鉄所で生産する
独自開発の特殊級高張力鋼 (DMR249A)が使われました。
「カモルタ」はインドのニコバル諸島にある島の名前です。
ちなみに同級の名前は
「カドマットkadmatt」「キタンKitan」「カヴァラッティKavaratti」
で、命名基準はインドの島の名前です。
■「カモルタ」の最新性能
当クラスの特徴は、そのステルス性ですが、もう一度写真を見てください。
2枚めの右側の艦体と、この上の写真からお分かりのように、
艦体と上部構造が、途中のくびれた「X」字型なのがお分かりでしょうか。この傾斜側面のため水中音声信号やレーダー断面が低くなります。
また、インド海軍艦として初めて炭素繊維強化プラスチックで建造され、
重量を軽減、ライフサイクル・メンテナンス・コストを削減しました。
センサーや兵器システムの大部分は艦体に包含されており、
これらもインド国内の各企業が手掛けました。
赤外線抑制、音響静粛システムなどのステルス機能も強化されています。
コンピュータで作成した、プロジェクト28カモルタ級コルベットの設計図
また、折りたたみ式のハンガードアも特徴です。
(あああ〜見学したかった)
推進力は5,096馬力 (3,800 kW) のディーゼルエンジン4基を
1,050 rpmで搭載しており、最高速度32kn (59 km/h; 37 mph) が可能。
乗員は約180名、将校は15名。
BELRavathi レーダー これもメイドイン・インディア
L&T RBU-6000 ASW ロケットランチャー(爆雷)
原型はソ連が開発、L&Tはインド企業
バラット・エレクトロニクス社(インド)開発の火器統制レーダー
流石にこれだけはイタリア製オトーメララ
ここまで調べて、わたしにはわかってしまいました。
つまり、今回のインド海軍、世界に、特に宿敵パキスタンに、
この自他ともに認めるブルーウォーターネイビーの証を見せびら・・
おっと、見せつけるために、自慢の国産艦を、
内部まで惜しみなく一般公開したのに違いありません。
って、観艦式=軍事パレードと考えるならどこもそれが目的なんですけどね。
続く!