よこすかYYのりものフェスタのとき、海上自衛隊横須賀基地で公開された
アメリカ海軍のミサイル駆逐艦USS「ハワード」についてお話ししています。
前回は、前甲板の主砲に其の名を顕彰されていた、
前艦長(就任して3ヶ月で癌のため急逝した)である
チャールズ・ハリス中佐についてわかったことを書いてみました。
さて、今日は甲板から艦橋までの見学通路を歩きながら
目についたものをご紹介していこうと思います。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/d2/b20435e6bbbe1748999198e595878bee.jpg)
前甲板を左舷側から後ろに回り込んでいくと、
そこから階段を上っていって艦橋に入るコースです。
「アーレイ・バーク」級はイージスシステムを搭載しており、
フェーズド・アレイ・レーダーPARが装備されています。
「ハワード」が搭載しているのは
AN/SPY-1
というタイプで、ご覧のような8角形のアンテナ
(パッシブ・フェーズドアレイ・アンテナ)を4面に固定設置して
目標の捜索や追尾、艦対空ミサイルの誘導を行います。
「アーレイ・バーク」級ミサイル駆逐艦は40番艦まではSPY-1Dですが、
「ハワード」など41番艦以降はSPY-1D(V)を搭載しています。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/b3/4c9642e41c7fbd154075af03330df578.jpg)
日本でこ全く同じ型を搭載しているのは「あたご」「まや」型となります。
また、今回の観艦式に王立オーストラリア海軍から参加した
駆逐艦HMAS「ホバート」も同タイプ搭載です。
単にレーダーといってしまえばそれまでですが、この凄いところは、
探知の際、
「全周の半球空間中の所定の空間を約1ミリ秒の間ペンシル・ビームで捜索する」
というこの一行に表されている気がします。(気がするだけですが)
走査パターンは常に最も効率的に捜索するように制御され、
ある1つのビームで1つの目標を初探知すると、コンピュータは目標に対して
複数のビームを集中的に指向して捕捉し、追尾に移行します。
「SPYレーダー表示画面に目標を視認すれば、そこには目標が存在する。
表示画面に目標を視認しなければ、そこには絶対に目標は存在しない」
とアメリカ軍が豪語するのも無理からぬことと言えましょう。
ちなみに構造物の4面に貼って使用することから、
アンテナ重量は比較的軽く設計されているそうです。
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舷側の通路に木箱が無造作に置いてあるのがアメリカ海軍。
自衛隊ではおそらく絶対にやらないと思われます。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/5e/9d69e8dc263560df34ce3838534fd87b.jpg)
ちょうどここで舷門の後側にやってきました。
DDG83とは他でもない「ハワード」のことですが、
それよりこれは「何かを隠すためのカバー」?
それとも日頃はカバーをかけておかなくてはならない装備?
これがなんなのかお分かりになる方おられますか。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/8d/74313e4b8dff1dba20913ecce281f3df.jpg)
Mark 36 Super Rapid Bloom Offboard Countermeasures
艦橋に行くには右側に見えている階段を上るのですが、
幅が狭くて一人しか通行できないので、降りてくる人が途切れるまで
けっこう長時間待っていなくてはなりません。
この日はのりものフェスタというイベントの性質上お子様も多く、
小さな子が親の助けも借りずえっちらおっちら降りてくるのを、
ひとの子なのにハラハラしながら眺める場面などもありました。
(こういうときすみません、というのが日本の親。
アメリカ人の親はThank you.という)
わたしは人の流れが切れるのを待ちつつ、チャフランチャーの撮影を。
このデコイシステムは自衛艦でもお馴染みのスタンダードタイプで、
「スーパーアーボック」などと呼ばれたりします。
ランチャーはあっちこっち好き勝手な方向に向いているようですが、
実は1列は45度、もう1列は60度に設定されていて、
発射されたデコイを効率よく拡散するようになっています。
発射速度は75m/sです。
各ランチャーには12~36発の弾丸が搭載されており、(艦によって違う)
搭載されるランチャーの数や配置は艦船の大きさによってこれも違い、
小型戦闘艦は2基、空母だと8基まで搭載します。
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Mark 38 25ミリマシンガンシステム
高速機動水上標的(HSMST)、浮遊機雷、
敵の遊泳者に対する短距離能力を艦船に提供する。
これはもしかしたら海中にいる人を狙うという意味?(;゚Д゚)
また、陸地に近い艦船では、敵の人員や軽装甲車両に対して使用する。
低コストな兵器であり、昼夜・天候に関係なく運用することができる。
軍艦の配備要件に合わせて恒久的または一時的に設置することが可能。
とにかく価格はお安いってことですね。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/74/f68e1f3210613cacaefb026d5c33df63.jpg)
ちなみに海上自衛隊での使用はなく、観艦式参加組でいうと、
オーストラリア海軍の「ホバート」級駆逐艦と、
シンガポール海軍の「フォーミダブル」級フリゲートが搭載しています。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/9b/b0b9e3c50963043cb91160809d83f3f3.jpg)
全く何にするのか想像もつかないものがありました。
赤い札や「警告」などというプレートがびっしりとお札のように貼られ、
大変危険なものであるのは確かです。
まず正面の赤いプレートには、
MK58 スモークフロートオペレーター手順
ステップ1:スモークの上からプラスチックカバーを取り外す
ステップ2:スモークフロートの上部にあるアルミニウムのタブを引いて
ポケットにいれる
ステップ3:水中の人に向けてスモークフロートを投げる
注記;浮遊する煙は海水で活性化されます
警告;タブがスモークフロートの上部から取り外されると、
交換することはできません。
詳細なガイダンスについてはOP4の最新バージョンを参照してください
これから類推するに、どうもスモークを使って
"Man overboad !"「人が落ちた、実際」
の際になんとかする装備のようです。
煙で水上の要救難者の位置をピン留めするのでしょうか。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/6e/1eda1422b4008f05060aed849a8ec05e.jpg)
こういうオレンジスモークで場所が特定できるようにするのです。
昔掃海艇から乗員が落ちた事故がありましたが、
この装置のように落水者の近くにすぐさま位置特定するための
フロート式マーキングは自衛艦に搭載されているのでしょうか。
今までの見学で気にしたこともありませんでしたが・・。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/94/d39795a99d8ec72e81e387716ea73a77.jpg)
右舷側の25ミリマシンガンシステム。
「アーレイ・バーク」級はこれを両舷に1基ずつ、合計2基備えています。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/96/4e09ad23ce0e5df3bfba30b95d29b299.jpg)
舷側から岸壁を見ると、乗員がお菓子を打っているテーブルが見えました。
拡大してみると、お菓子はほかにもお馴染みハーシーズなどがあり、
ほかにも「ホバート」のパッチ、シール、第7艦隊のパッチ、
そして「ハワード」のキャップ、マグカップなどもテーブルに乗っていて、
まわりに群がっている男性たちのお目当てはこちらのようです。
自衛隊の公開イベントにいくと、かなりの高確率で
米軍のロゴの入った帽子やワッペンをつけた男性とすれ違いますが、
そういう人たちはこういう機会にグッズをゲットしているんですね。
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海洋業務・対潜支援群
Oceanography ASW Support Command
この写真にもこのワッペンをバックパックに付けている人がいました。
鯨に蛇の絡まった銛、桜二つは、司令官が海将補であることを表します。
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さらに上甲板階より臨む「ハワード」後部。
艦に搭載するこのようなゴムボートのことを、
複合艇 Rigid-hulled inflatable boat:RHIB RIB
と呼びます。
「アーレイ・バーク」級は重量対策を兼ねて、従来の内火艇、
ダビッドを廃止してRHIBでその任務を行なっています。
軽量ではありますが、高性能・高容量のボートで、
船底が硬く、側面に形成されたエアチューブが接合されており、
高圧の空気で膨らませ船底に沿った側面に復元力を持たせた構造は、
安定性、軽量性、高速性、耐航性に優れています。
チューブ式のゴムボートは、パンクしないように中は何層にもなっており、
チューブの破裂を防ぐための圧力の調整も自動的に弁を使って行われます。
「ハワード」が現在搭載しているのは
ゾディアック社製のハリケーンH733
ウィラード社製シー・フォース
のどちらか(判明せず)であるようです。
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わたしが乗艦したときにはほんの少しだったのに、
あっという間に見学を待つ人の長い列ができていました。
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階段を上がると、そこはもうブリッジです。
それではいよいよ中に入っていくとしましょう。
続く。