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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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ドラゴンとVICTORYの旗 USS「ハワード」艦橋~よこすかYYのりものフェスタ

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さて、アメリカ海軍の駆逐艦「ハワード」の見学、
甲板から左舷側を周り、ブリッジにたどりつきました。



中から出てくる人と狭い通路ですれ違いつつ進みます。


上の番号はここが艦のどの位置なのかを示す住所で、
乗員ならこの数字を見ただけで自分がどこにいるかわかるそうです。

其の下のヘッドフォンの絵と一緒に書かれているのは、

「危険な騒音は聴覚障害を起こす可能性があります」

聴覚保護が必要

✅その他の操作中(ソナー)

✅プラグとなにか(写ってませんでした)

其のためにヘッドギアで耳を保護しましょうということのようです。
ソナー音が聴覚に障害を起こすほどのものとは知りませんでした。

関係ない話かもしれませんが、イルカや鯨などある種の海洋生物は
自然のソナー(音波探知機)を使用して移動や狩りを行います。

彼らにとって人間が起こす「騒音」が、影響を与えることが知られており、
海洋哺乳類だけでなくイカなどの頭足類も、
低周波のパルス音に弱いと言われています。

たとえば低周波音に集中して暴露されると、イカなどの生物は
外套膜が溶け、筋肉が損傷し、平衡胞に障害を受け死滅するのです。

この実験は海軍のソナー演習と同じような強さと周波数なので、
世界的にみて海軍のソナーが生態系に影響を及ぼしているといえます。

人間はソナー音の騒音を防げばそれでよしという考えもありますが、
低周波が人体に与える影響はまだわかっていないことも多いそうです。


その上で「ハワード」のブリッジにあったこの鯨早見表を見ると、
アメリカ海軍の海洋生物(特に鯨)に対する気遣いが垣間見えます。

海面に見える尾の形、ジャンプする様子、海面にどう見えるかで
クジラが何をしているのかわかる仕組みです。

「水面で動かず ただ浮いている」
「フラッキング 深く潜るまえに尾鰭を空中に持ち上げる」
「ロブテイル 吸虫を水に叩きつけて退治している」
「泳いでいる ひれやしっぽを使って推進している」

「スパイホッピング 頭を水面から高く垂直に上げる」

「ブリーチング 体を頭から空中に上げて水飛沫を上げて戻る」
「フリッパーズラッピング 転がり水飛沫で鰭を水面に叩きつける」

これを知っていたら艦隊勤務においてなにがどう役に立つのだろう、
と漠然と思うわけですが、おどろいてはいけない。

このチャートを制作し配布しているのは他でもない、アメリカ海軍です。

鯨に遭遇したら、「ハワード」艦橋では誰かがこのチャートを持ち出し、
みんなでわいわいと観察するんだろうなあ。



入ってすぐのところにある火災時用の散水ホース。

写真を失敗したので小さな写真ですみません。

ブリッジの後ろ側にあるので何か大事なものが中にあるのかと思われますが、
扉に貼られた紙には、(読みにくかった)

「受信、送信。録音、増幅、情報処理、および写真機器
(テープレコーダー、ステレオ、テレビ、カメラ、携帯電話など)
はセキュリティスペースに持ち込むことはできません」
とあります。


艦橋は今までアメリカで見たことのあるいくつかの軍艦のそれの
延長線上にあるような既視感を感じるものでした。

窓ガラスの外にワイパーがついているのに初めて気づいたのですが、
これって自衛艦にもありました・・・・よね確か。

窓際にある機器に書かれたSIMRADとは、ノルウェーのオスロに本社を持つ
船舶用電子機器メーカー、SIMRAD yachtingを意味します。

戦後の1947年に無線会社から始まって、今では
そのマリンエレクトロニクス部門がNavico に買収され、
GPSの分野で地位を確立しています。


ブリッジにお子様が登場すると、米軍さんも大歓迎モード。
親子の写メを中尉さんが撮ってあげたりして和気藹々です。

アメリカ海軍には自衛隊のように「椅子の色で階級を表す」
というカルチャーはありませんが、座る場所は厳密に決まっています。

「COMMANDING OFFICER」

と金のプレートに刻まれた椅子で艦長気分を味わう人。



「ヘルム・フォワード・ステーション・ユニット」

とありますので、キーボードで打ち込むタイプの操舵システムでしょう。
モニターは消されていますが、各画面の下には
赤いプレートに「シークレット」と素敵な文字が書かれています。


コンソールに貼られていた「ハワード」のパイロットカードです。

ここには「ハワード」のコールサイン(NHOW)をはじめ、
マストの高さと橋梁などを通過する際の安全な高さ、
ビームの最大値、重量、そしてナビゲーションレーダーの番号、
プロペラや錨の諸元、プロペラの回る方向など、
主に艦が操舵の状態にあるときに必要な情報が書き込まれています。



無線通信などの情報が記されています。
右側はなかなか面白くて、船舶の種類とその状況、
その際の信号(国際と国内とで少し違う)が一覧表にされています。

たとえば、

「動力船」が「水上を進んでいる」はツー・トンを2分間

「進行中の動力船」が「しかし停止:水路を通り抜けない」はツーツー、

みたいな感じです。
船同士で交信する暗号みたいなもんですね。

左にも
「あなたを左舷側(右舷側)に残すつもりです」

「右舷(左舷)側でおいこすつもりです」

「あなたがわたしの右舷側を通過することに同意します」

「同意できません/理解できません」

「危険です あなたの行動が理解できません/異議を唱えます」
などという会話?例が挙げられています。



USS「ハワード」のTSO、

コンバットシステム・テンポラリー・スタンディングオーダー

ということで、1のリファレンス部分はわたしには理解不可能な呪文です。
それもそのはずで、1の1)~3)は

「コンピュータの水力制御が失われる可能性を軽減するための手順の説明」

なのだそうです。
かろうじて理解ができるのは3の、

「関連する人員:甲板将校(OOD)司令官(CON )操舵手、
リー・ヘルムスマン(エンジンルームにエンジン命令を伝える船員のこと。
各命令をコニングオフィサーに繰り返し伝える。
各命令を実行した後、実行されたことを航海士に通知する)
当直戦闘システム士官(CSOOW)、
電子支援システム(ESS)スーパーバイザー、当直技術士官(EOOW)」

それはここにいるほとんどの人間ではないのかと。
しかし、こんなことをわざわざ書かなきゃいけないもんなのかしら。


ジャイロというのは、どんな船でも中央線に置かれているものです。
ということが、このジャイロに書かれている

「センターライン」
という言葉によってはっきりしました。
その上に
「ジャイロ・エラー 0.4E
REP. エラー 0.0日付 22年12月1日」
と手書きされています。


席の後ろのプレートはマスキングされていますが、
この席に座る人がシモンズさんであることはわかりました。
(座席に名前入りのバッグが掛けてある)



足元に描かれた「ハワード」のロゴマーク。
前回現役で亡くなったチャールズ・ハリス元艦長の着任の辞で
ロゴマークに刻まれたモットーの

「Ready for Victory」
が使われていたのを知ったばかりです。
そして、ロゴに描かれているドラゴンは、

「ハワード」艦長はそうしてドラゴンを率いた
という記事をの一文を思い出させました。
さらに調べてみたところ、このクレストは艦名の由来である
名誉勲章受賞者ジミー・E・ハワード海兵隊一等軍曹と、
第二次世界大戦中に活躍した同名の「ウィックス」級駆逐艦「ハワード」の
紋章の一部をモチーフにしているようです。
(そちらの『ハワード』さんは第一次世界大戦で殉職した艦艇指揮官)



ここで、2021年6月7日、
「ハワード」がサンディエゴを離れる時に揚げていた赤い旗をご覧ください。
ドラゴンと「VICTORY」の文字が描かれているのがわかります。

同艦が自らを表すためにドラゴンを選んだのには、理由があります。

アメリカには、米軍で使用されている紋章と部隊徽章のデザインを管理する
軍運営の紋章学研究所(TIOH)なる組織があるのですが、
そのウェブサイトにある記述によると、

「東洋のドラゴンは、太平洋における活躍と、
ハワード砲兵軍曹の指揮下で小隊が発揮した闘志を表している」
と説明されています。
ジミー・ハワードの功績についてはすでにこのシリーズでお話しましたが、
叙勲理由となった「ヒル488の戦い」についてはこんな映像もあります。

The Battle of Hill 488

恐るべきはこれを撮っているカメラマンもまたここにいるってことです。
叙勲されたハワード一等軍曹は、1993年に死去し、
それを受けてDDG-83が「ハワード」を冠されることが決まりました。

そして「ドラゴン」ですが、これは先代の「ウィックス」級「ハワード」が
1943年、太平洋戦域に移され、マリアナ諸島やフィリピンへの侵攻など
さまざまな島嶼攻略作戦を支援したことから付けられました。

「アジア地域で暴れた艦」=ドラゴン

というアメリカ人の抱きがちな?イメージによるものでしょう。
そして、USS「ハワード」は、20年あまりの間、主に太平洋で活動し、
空母打撃群11の一員としても活動してきました。

2年ごとに行われる環太平洋合同演習(リムパック)や、
東南アジアで毎年行われる洋上即応訓練(CARAT)など、
数多くの演習に参加し、また、
太平洋地域での人道的な救援活動も支援してきました。

USS「ハワード」は、その名にまつわる歴史と、
どんな任務においても常に「勝利」を追い求める、という
彼らのモットーを反映した伝統的なドラゴンの旗を掲げて、
こんにち横須賀の米軍基地の戦闘艦の重要な一角を占めています。



続く。






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