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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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海上自衛隊横須賀音楽隊第57回定期演奏会@横浜みなとみらいホール

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先日海上自衛隊第4航空群のニューイヤーコンサートで
大和市芸術文化ホールにおける横須賀音楽隊の演奏を聴いたばかりですが、あまり間をおかず、今度は定期演奏会にお誘いいただきました。

今回は「関東地方の音楽隊の追っかけ」をするほどの熱烈なファンから
チケットを分けてもらったという方からの、さらにお裾分けです。

会場は横浜のみなとみらいホール。

気がついたら、コロナ騒ぎになってからここにくるのは初めてです。
クィーンズスクエアの様子もすっかり様変わりし、
特に昔は長蛇の列ができていたタピオカドリンク店が潰れていたり、
みなとみらい駅のコンコースにランドセル屋さんができていたり、
何より驚いたのがみなとみらいホールそのものがリニューアルしていたこと。

どこがどう変わったかも記憶にないくらいですが、
とにかく変わったことだけは入った瞬間に気がつきました。

催し物がキャンセルになって会場がただの空間になっていた時期、
このめったにない機会を奇貨として、大々的に
リノベーションを決行した施設は多かったのかもしれません。
プログラムによると、この改修には1年半以上をかけたということでした。

お誘いくださった方と会場前で待ち合わせ、席に着きましたが、
今まで体験したことがない2階からの観覧です。


演奏会に先立ち、横須賀地方総監乾悦久海将の挨拶が行われました。

改めて気がついたのですが、先日のニューイヤーコンサートは主催者、
そして今回も、『主催者』として、直轄部隊の指揮官が挨拶するのが
地方隊の慣例となっています。

東京音楽隊の場合はそれはありませんが、その理由は、
同隊だけが防衛大臣直轄部隊であるからであり、
地方隊は地方総監の指揮監督下にあるという違いによるものです。

地方隊は東京音楽隊とは異なり、防衛事務官は置かれません。

この日の観客はみなとみらいホールの大ホールが大きいせいか、
特に2階席は空席が目立ったように感じました。

■ 第一部 吹奏楽オペラの世界
♪ 喜歌劇「軽騎兵」序曲 フランツ・フォン・スッペ

喜歌劇「軽騎兵」序曲

けいきへい、という言葉をわたしはこの序曲でしか知らないわけですが、
基本的に重装甲を帯びる重騎兵の反対で、(そらそうだ)
最小限の装備で後方撹乱や奇襲を主とした攻撃を行う兵のことです。

しかし、オペラ(オペレッタですが)と言いながら、
この「軽騎兵」という劇が上映されることはまずありません。

なぜかというと、台本が現存していないからです(笑)

というか、もしかしたら序曲の出来の割に、
あまり本編は評判がよくなかったのかもしれません。

さて、この、おそらくは誰もが一度は耳にしたことのある
軽快な序曲で軽やかに幕を開けた第一部。
指揮は前回のニューイヤーコンサートと同じく、
副隊長(自衛隊なのでもしかしたら副長?)の岩田知明一尉が行いました。

この日の司会は音楽隊員ではなく、フリーアナウンサーの石川亜美氏
(自衛隊での講習講師であるとか)が受け持ちました。

残念ながらわたしの座っているところからは
司会者はまったく死角になっていてお姿は見えませんでしたが、
元々軍楽隊に端を発した日本の吹奏楽シーンでは、当時から
オペラ音楽の再現がよく行われた、という前回と同じ解説がありました。

前半はそのオペラを中心としたプログラムです。
♪ 歌劇「椿姫」セレクション
ジュゼッペ・ヴェルディ 
歌劇「椿姫」セレクション  Giuseppe Verdi’s  “La traviata“Serlection
東京音楽隊では、アンコールに「乾杯の歌」を二人の歌手が歌いましたが、
それを含む「椿姫」の有名な曲をメドレーにした吹奏楽アレンジです。

アレンジは、オペラ開始の前奏曲で始まり、
第1幕の幕開けの豪華な夜会のシーンに続き、
続いて第2幕の「闘牛士の合唱」、ヴィオレッタのアリアと
第2幕2場のキャスト、合唱大勢で歌われる音楽を合体させており、
最後は第1幕1場の合唱音楽で盛大なフィナーレを迎えます。

♪ 歌劇「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」

やまと芸術文化ホールでのニューイヤーコンサートで、
歌手の中川麻梨子三等海曹が歌ったのと同じプログラムでした。

全く同じ演奏者によるパフォーマンスでしたが、
今回は正直なところ、聴いていた場所の関係で、とくにボーカルは、
上に音が飛んで来ず、ニューイヤーコンサートのときよりも
何か「他人事」感がある、聴いていてもどかしい響きに感じました。

これは横須賀音楽隊にも中川三曹にも全く責任はなく、ただ、
会場の音響の調整があまりうまくできていない結果という気がしました。

気軽に楽しむ自衛隊コンサートなので、小難しいことを言う気もないし、
最終的に受けた満足感からいうと何の文句もありませんが、
せっかく良い演奏なので、どうせならもうすこしいい音響で聞きたかったな。


♪ 歌劇「サムソンとデリラ」より「バッカナール」
カミーユ・サン=サーンス
吹奏楽 歌劇サムソンとデリラ より バッカナール
これを聴くと、MKが高校のオーケストラで演奏していたことを思い出し、
当時の学校のオーディトリウムの独特の匂いまでが蘇ってくるのですが、
そんな個人的すぎる話はともかく。

歌劇の音楽ですが、吹奏楽のレパートリーとしては
それこそ中学生から取り上げるくらいポピュラーな曲です。

アラブ風の旋律と打楽器の奏でるエキゾチシズムが癖になる名曲といえます。



■ 第二部 吹奏楽による「日本の調べ」
この日の構成は第一部オペラ、第二部日本人作曲家による吹奏楽作品、
とはっきりと二分されていました。

そして第二部の多くが、全日本吹奏楽コンクールの課題曲です。

ここで少し司会者がこのコンクールについて説明しましたが、
わたしも驚いたことは、この第一回コンクールは、
朝日新聞社と一般社団法人全日本吹奏楽連盟の主催で、

第1回全日本吹奏楽競演会
紀元二千六百年奉祝 集団音楽大行進並大競演会

というのが正式名称であった由。
しかもこれ、朝日新聞が大阪にあった関係で、奉納演奏は橿原神宮、
大行進は中之島公園から御堂筋を経て道頓堀、千日前、
最後に生國魂神社参拝という流れでした。

後援は陸軍・海軍省、文部省、厚生省。

課題曲は大行進曲「大日本」斎藤丑松。
審査員には海軍軍楽隊長内藤清五、堀内敬三がいたという・・。
大行進曲「大日本」/斉藤丑松(Grand March "Great Japan" : Ushimatsu Saito)
まあ、こんな感じで続いていたわけですが、
3回やったところで戦争のため中断。
戦後再開されたのは1956年、昭和31年のことでした。

そして2020年に新型コロナウィルス感染症の収束が予測できないため、
中止されるまで毎年何らかの規定変更を加えながら継続し、
その間課題曲として吹奏楽の重要なレパートリーが生まれてきました。
ただ、一般公募の課題曲については、専門家から

「間違った音が多すぎる」

「和声的な誤りが多い」
「オーケストレーションに明らかな問題がある」

「旋律から作曲して無理やりリズムと和音を当てはめるので
戦慄との兼ね合いで音が濁る」
「構成がない作品に(参加者が)触れていると、
形式美や様式美という観点の存在すら失せてしまう危険がある」

などの苦言が呈されている模様。
ノリとか雰囲気で選ばれがちな一般曲を、
正規の音楽理論から論じると、こういう意見も出てきがちです。

ただ、音楽の場合は、「理論に外れる」ことは、
一分の例外もなくむしろ「聞いて変」という結果にしかならないので、
わたしは検証するまでもなく赤字の意見を後押しするかな。

聴いていて自然と思われる音楽は必ず音楽理論に則っています。(断言)


♪ 吹奏楽のための「風之舞」福田洋介

第二部からは横須賀音楽隊隊長北村義弘一等海尉がタクトを取りました。

2004年度課題曲(Ⅰ) 吹奏楽のための「風之舞」
聴いたことがあるなあと思ったら、かつてどこかの
(東音か横須賀か呉音楽隊)が取り上げたはずです。

それくらい、レパートリーとして重用されている曲なのでしょう。

第14回朝日作曲賞受賞作品であり、
2003年度全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅰとなった
この作品の作者、福田洋介氏は、作編曲を独学という人で、
海上自衛隊東京音楽隊のためにその名も

海の歌 The song of the sea

を作曲しています。The song of the sea / Yosuke Fukuda 海の歌/福田洋介
♪ 土蜘蛛伝説〜能「土蜘蛛」の物語による狂詩曲
松下倫士

自衛隊音楽隊の演奏会で、木管八重奏を聴いたのは初めてです。
木管八重奏はピッコロ&フルート、クラリネット、それから
アルト、テナー、バリトンのサキソフォーンという構成でした。

[WW8] 土蜘蛛伝説 ~能「土蜘蛛」の物語による狂詩曲/松下倫士/ Tsuchigumo Legend by Tomohito Matsushita
作曲者自身の内容解説は以下の通り。

病気で臥せる源頼光のもとへ、召使いの胡蝶が、
処方してもらった薬を携えて参上します。
ところが頼光の病は益々重くなっている様子です。胡蝶が退出し夜も更けた頃、突然雲霧が沸き起こり、
頼光の病室に見知らぬ法師が現れ、病状はどうかと尋ねます。

不審に思った頼光が法師に名を聞くと
「わが背子(せこ)が来(く)べき宵なりささがにの」
と『古今集』の歌を口ずさみつつ近付いてくるのです。
よく見るとその姿は蜘蛛の化け物で、
あっという間もなく千筋の糸を繰り出し、
頼光をがんじがらめにしようとしますが、
頼光は枕元にあった源家相伝の名刀、膝丸を抜き払い、
斬りつけると、法師はたちまち姿を消してしまいました。
騒ぎを聞きつけた頼光の侍臣 独武者は 、大勢の部下を従えて駆けつけます。

頼光は日頃の病もすっかり忘れた様子で、
名刀膝丸を「蜘蛛切」に改めると告げ、斬りつけはしたものの、
一命をとるに至らなかった蜘蛛の化け物を成敗するよう、独武者に命じます。
独武者が土蜘蛛の血をたどっていくと、
化け物の巣とおぼしき古塚が現れます。
これを突き崩すとその中から土蜘蛛の精が現れ、
土蜘蛛は千筋の糸を投げかけて独武者たちをてこずらせますが、
大勢で取り囲み、ついに土蜘蛛を退治します。

これだけの話を5分間の音楽にまとめるのですから大変ですね。

土蜘蛛の不気味さはバリトンサックスのくぐもった低音や、
フルートのブルブル震えるフラッターなどで遺憾無く発揮されています。

♪ 火の伝説 櫛田胅之扶
火の伝説(2018年・平成決定版)/櫛田てつ之扶 Ritual Fire by Tetsunosuke Kushida COMS-85133
この曲はコンクール課題曲ではありませんが、櫛田氏本人は
1981年、1994年の課題曲を作曲しておられ、さらに
陸上自衛隊中部方面音楽隊のために、

「万葉讃歌 〜ソプラノと吹奏楽のための」

を委嘱作品として作曲しておられます。
また、京都の八坂神社、大文字などの四季を通じた
京都における火の神事、祭事を描いたこの曲は、
吹奏楽コンクールでも自由曲としてよく選ばれるようです。

♪ 日本の四季
21世紀に歌い継ぎたい日本の歌メドレー

ここでまた中川麻梨子三等海曹が歌を披露しました。

「朧月夜」〜菜の花畑に入り日薄れ

「夏は来ぬ」〜卯の花の匂う垣根に時鳥早も来鳴きて

「我は海の子」〜我は海の子白波の騒ぐ磯辺の松原に
「里の秋」〜静かな静かな里の秋 
「冬景色」〜さ霧消ゆる湊江の 船にしろし朝の霜
「故郷」〜うさぎ追いしあの山 小鮒釣りしかの川
これらの曲がメドレーで一気に聴けました。

最初の歌詞を書いておいたのは、わたし自身、
「朧月夜」「冬景色」の題名がすぐに出てこなかったからです。


♪ 三つの音詩〜暁の海〜白の海〜蒼の海 
樽屋雅徳

【参考演奏】 吹奏楽 自由曲
海上自衛隊横須賀音楽隊委嘱作品。

作曲者のライナーノーツより。

眺める場所、時、季節により全く違う表情を持つ、
時には恵みをもたらし、時には猛威をふるう海。
この曲では、そんな海の表情を大きく三つの場面に分けて表現しています。

夜明けの静かな海辺に、打ち寄せては引いて行く波を歌った冒頭、暁の海。
時には波がしぶきをあげて荒れる様子を描いた白の海。
そして日が沈み、海は何事もなかったかのように落ち着きを取り戻す。

ピアノから木管楽器そしてクライマックスへ受け継がれていくメロディーが、
すべてを包み込むほど深く壮大な、美しい蒼の海を表現しています。

私達のすむ日本は海に囲まれた国であり、たくさんの人々が、
毎日水平線から昇る朝日や大きな海に希望を感じてきたのではないでしょうか。
そんな想いから、海の表情を和の音色を用いながら詩っています。
(樽屋雅徳)
この平成23年委嘱作品をラストに持ってくるために、
後半は日本人作曲家の「日本の風景」を集めたのかもしれません。

♪ 花 滝廉太郎

この日のアンコールは、中川三曹による滝廉太郎の「花」独唱でした。

アンコールに歌手とピアノだけで楽団員が全員そちらを見ているの図。
これもわたしのこれまでの音楽隊鑑賞歴でも初めてです。
しかしまたしても残念なことに、独唱が響いてこないうえ、
わたしの席からはピアノを誰が弾いているのか全く見えませんでした。

このウィングからは、最前列の人も身を乗り出して
下を覗き込まないとピアノすら目に入らなかったのです。

この日は三月三日、雛の節句だったのですが、
少し早めに「花」が選ばれたのかなと思いました。


最後は海上自衛隊音楽隊恒例の「軍艦」でお開きになりましたが、
同行していた方が、退出しながら

「陸自は『抜刀隊』最後にやらないんですか」
と聴いてこられたので、
先日中央音楽隊行きましたがやらないみたいですねー、というと、

「空自も『空の精鋭』やらないんですか。あれいい曲なのに」

陸空がやらないというより、海自音楽隊は海軍軍楽隊直系で
ヒューマンリソースと伝統がそのままそっくり継承されてきたので、
軍楽隊の慣習も途切ず受け継がれたんじゃないかと思います。

「軍艦」然り、自衛隊旗もある意味然りですよね。

というわけで、春の予感を感じさせるこの宵、横須賀音楽隊の
日頃の研鑽の成果である良質な音を堪能させていただきました。

最後になりましたがチケットの手配をいただきました方々に
心よりお礼を申し上げる次第です。









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