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フリートサブマリンvs.原子力潜水艦〜シルバーサイズ潜水艦博物館

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タイトルとはあまり関係のない海軍軍人の肖像ですが、
もしこの人の官姓名を知っていると言う方がいたら、
あなたはかなりの潜水艦通だと言っていいかと思います。
今日はマスケゴンのシルバーサイズ潜水艦博物館展示から
興味深いいくつかの展示をご紹介します。
■ アメリカ海軍潜水艦隊の英雄 チャールズ・ロックウッド中将

チャールズ・ロックウッドは1943年から45年まで
アメリカ海軍太平洋潜水艦隊の司令官だった人物です。

第二次世界大戦中の太平洋戦域で
サイレント・サービスこと潜水艦任務を勝利に導いた

COMSUBPAC=太平洋艦隊潜水艦部隊司令官
として、その名は永遠にアメリカ海軍の潜水艦史に刻まれることでしょう。

バージニア州ミッドランドで生まれたロックウッドは、
1912年に海軍兵学校を卒業しました。
1914年に潜水艦USS「A-2」SS-3の乗組から軍歴を開始し、
1919年の3月から8月までは、元ドイツ潜水艦だった
SM UC-97

の指揮を執っています。

SM UC-97は、第一次世界大戦中、
ドイツ帝国海軍(Kaiserliche Marine)
に所属したドイツのUC III型機雷潜水艦=Uボートでしたが、
前年度ドイツが降伏したため、アメリカが戦利品として取得した一隻です。

アメリカ海軍はロックウッドを含む12名の将校を遠征させ、
この鹵獲潜水艦で大西洋を横断し、その後は
リバティボンド(国債)集めのための見せ物にしようとしました。


トロントに寄港中のUC-97

ロックウッドのUC-97は他3隻とともにニューヨークまで回航。
彼の指揮のもとニューヨークから水路を通り、五大湖を制覇する、
ということになりましたが、UC-97だけが色々と反応しなくなったので、
ロックウッドはこの艦長を別の人間に任せて他の新造艦に転勤しています。

アメリカがUボートを取得した目的は見せ物にするだけだったので、
こののちUC-97はミシガン湖で標的となって沈みました。

湖底の艦体が1992年に発見されています。

そして第二次世界大戦が始まりました。

ロックウッドは1941年から1年ほど駐英米海軍武官を務め、
その後南西太平洋の潜水艦司令官として活躍しました。

1943年2月にトーマス・イングランド少将が亡くなると、
ロックウッドは後任として旗を真珠湾に移し、
太平洋艦隊の潜水艦隊の指揮を執ることになります。
任務中、ロックウッドは潜水艦を最も効果的に運用するための戦術を
ほぼ即興で作成し、海軍の艦船兵器局に、可能な限り有用な
潜水艦とそして魚雷を現場に提供することを働きかけました。

彼は初期のアメリカ海軍の魚雷に技術上の問題があり、
運用における信頼性が低いと言う報告を受けると、
自らが現場で性能証明の試験を監督し、1944年と1945年に
魚雷の徹底的な改良を行わせました。

これは、当ブログでも何度も別角度から取り上げている
あの「魚雷不発問題」のことです。

ぷすぷすと日本軍の艦船に魚雷が命中して突き刺さっていくのに、
一向にそれが爆発せず、日本艦は魚雷を刺したまま帰国し、
かんざしを刺した花魁のようだと笑われたというあの話ですね。

アメリカ海軍の潜水艦は、第二次世界大戦期に
1,100隻以上の商船と200隻以上の軍艦を含む、
560万トン以上の敵船を沈めました。

敵船に対するアメリカ潜水艦の攻撃は、
戦争中に喪失した敵船の50パーセントを占めたといわれています。

しかしながら、戦争中、16,000人のアメリカの潜水艦隊人員のうち、
52隻の沈没により375名の将校と3,131名の下士官兵が失われました。

この数字は、各国の戦闘潜水艦による死傷率の中で
最も少ないことから、米国潜水艦隊の任務は成功だったとされます。
ロックウッド中将の強力なリーダーシップと、
彼の海軍に対する献身は、彼自身に勝利をもたらしました。

「アンクル・チャーリー」

とサブマリナーたちに敬愛を込めて呼ばれた彼は、
1943年に少将から中将、副提督に昇進し、1967年に亡くなりました。



このコーナーは「太平洋戦争のリーダーたち」。
左から、

フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領

ハリー・トルーマン大統領

チェスター・W・ニミッツ提督

ダグラス・マッカーサー将軍

ウィリアム・D・リーヒ提督

アーネスト・J・キング提督

ウィリアム・J・ハルゼー提督

とまあ、誰でも知っている面々となりますが、
このうち他の人ほど日本人には名前の知られていない
ウィリアム・リーヒという人について説明しておきます。



ウィリアム・ダニエル・リーヒーは、第二次世界大戦中、
現役のアメリカ軍最高幹部として活躍したアメリカ海軍将校です。

複数の称号を持ち、第二次世界大戦中のアメリカ軍において、
すべての主要な軍事的決断の中心にいた人物だったのですが、
皆さんはご存知だったでしょうか。

アメリカ海軍将校として初めて五つ星の階級を保持した人物で、
戦争中、米国の外交・軍事政策に影響を与えたことから、
ある歴史家は彼を「世界で2番目に力のある男」と評したくらいです。
(一番はアメリカ合衆国大統領ってことでよろしい?)

1897年アナポリスを卒業したリーヒーは、米西戦争、
フィリピン・アメリカ戦争、義和団の乱、バナナ戦争、
第一次世界大戦にと参加しました。

その後は海軍作戦部長=米国海軍の上官として戦争の準備に携わります。
彼はここで海軍を退役するのですが、ルーズベルト大統領が親友だったことで
プエルトリコ知事、駐仏大使と政治の道を歩み始めます。

駐仏大使時代はヴィシー政権をドイツの支配から解放しようとしますが、
それはあまり成功しませんでした。

1942年、大統領の個人的な参謀長として現役に呼び戻された彼は、
第二次世界大戦中、軍人としてルーズベルトの懐刀の役目を務めました。


彼の地位は事実上の初代統合参謀本部議長というべきものでした。
戦争中、リーヒは主要な意思決定者であり、
権限と影響力において大統領に次ぐ存在であったといわれます。

ルーズベルト死後はハリー・S・トルーマンに仕え、1949年に引退するまで、
戦後の米国の外交政策の形成に貢献し続けました。
1942年から引退するまで、リーヒーは現役の米軍兵士の中で最高位であり、
彼が報告をしなければならない存在は、唯一大統領だけというほどです。

■ フリートvs. 原子力潜水艦



フリート=ディーゼルボート対原潜、
ってことですね。
(フリートタイプは第二次世界大戦中のディーゼルボートと同義)
あの映画「ダウン・ペリスコープ」的な?と期待するタイトルですが、
なにが説明されているのでしょうか。

第一次大戦以前、アメリカの潜水艦は低速で、
潜航する深度も非常に浅かったため、その活動は沿岸防衛に限定されました。

第一次世界大戦が終わると、戦後処理を決めたベルサイユ条約の一環として
ドイツは所有していたUボートを連合国に引き渡すことを余儀なくされます。

この頃のドイツの技術優位は明らかで、アメリカは
大型で高速のUボートを手に入れることによって、
自国の潜水艦技術を格段に進歩させるきっかけを得ることになりました。

そうやって再設計された潜水艦は、従来のものよりも

10ノット速く進み

100フィート深く潜ることができ

このため、アメリカ海軍の水上艦隊を維持し、保護する、
という設計目的を十分に満たす仕様となったのです。

そしてこのときなされた設計は、1920年台から第二次世界大戦中、
全ての潜水艦のプロトタイプとなったのです。


クラスとしてほぼ同じ大きさの「ガトー」「バラオ」「テンチ」
この3タイプは、第二次世界大戦中、約600万トンの輸送船を撃沈しました。

フリートタイプの潜水艦が最後に退役したのは、1983年です。
この頃にはもう原子力潜水艦が主流でしたが、
「ダウン・ペリスコープ」でも、「ディーゼルボートフォーエバー」
という機関室の爺さんが言うように、「ディーゼル派」は根強くいて、
つまりそれはそれだけ機能に信頼性があったということです。

しかしながら、

フリートサブマリンには限界がありました。
ディーゼルエンジンを使ってバッテリーを充電するという機構の関係で、
どうしても空気を吸うために頻繁に浮上しなくてはならなかったのです。

これは水中で隠密行動をするのが身上の潜水艦にとっては
ある意味致命的かついつかは克服すべき欠点だったといえます。

ディーゼルボートが水中に滞在することができる時間は、
水中でどれだけエネルギーを使用したかによって決まってきます。

第二次世界大戦中、そして1950年代初頭の多くのミッションで、
ディーゼルボートの乗組員は、敵水上艦によって水中に閉じ込められ、
往々にして窒息寸前になっています。

その宿命的な欠陥を補うべく生まれたのが原子力推進でした。



1953年、世界初の原子力潜水艦、USS「ノーチラス」が進水しました。

原子炉はわずか28フィート幅のコンパートメントに詰め込まれていました。
(え、原子炉のせいで居住区が狭いんだと思ってたけど違うのか)

水を加熱して蒸気を生成し、タービンと全てのシステムを動かす仕組みです。
これだとエンジンを稼働させるために浮上する必要がなく、
なんなら潜水艦は独自に空気と水を作り出すこともできるので、
ほぼ無制限、半永久的に水中に留まることができるようになりました。

前にこのブログの「ノーチラス」シリーズで書いたことがありますが、
彼女は北極海の氷の下を横断した最初の潜水艦でした。

呼吸するために頻繁に浮上しなければならなかった時代から、
「ノーチラス」はのちの機密記録にその名があるはずの後継者たちに先んじて
水中を世界一周し、60日間を潜水したまま過ごした潜水艦になったのです。

原子力潜水艦は今でもアメリカ海軍の主力潜水艦です。



「ターミノロジー」は用語という意味です。
潜水艦用語をここで解説してくれているわけですね。
アメリカ人なら英語を見るだけでわかるかと思ったらそうじゃなかったのか。
なんかちょっと安心してしまった。

Bow 船首:潜水艦の前部または艦首

Stern 艦尾:潜水艦の端または尾部

Starboard 右舷:艦首から見て潜水艦の右側

Port 左舷:艦首から見て潜水艦の左側

Length 全長:潜水艦の艦首から艦尾の端までの距離

Beam ビーム:潜水艦の左舷から右舷までの距離で最大の長さ

Draft 吃水:水面と潜水艦の艦体の最下点との間の距離

Displacement 排水量:潜水艦が浮いている水の重量

Complement 補完:働いている人の数

Armament 武装:潜水艦の武器又は防御システム

Knot ノット:nautical mile の略で、およそ1.15マイル、又は1852m
これらの条件は、全ての海上船舶に適用されます。


■ パッシブソナーとアクティブソナー

潜水艦について多角的にお勉強できるこの展示ですが、
博物館にありがちなこととして、その時前を通過し、
文字列を認めるだけで数分後には忘れてしまうのがほとんどなのに対し、
極東の日本から来た一日本人女性であるわたしが、過去の見学者の中で、
おそらくほとんどのアメリカ人の誰よりも、
特にその内容を理解しようというその熱意において抜きん出ていたはずです。

と無意味に威張ってみたところで、続きです。

パッシブソナーとアクティブソナーについての解説がありました。



パッシブソナーは、特別な水中マイク「ハイドロフォン」を使用して、
水中生物、船、地熱事故によって水中で生成される音を聴きます。

これらの水中聴音器は非常に敏感であるため、
何百マイルも離れた場所で生成された音であっても、
たとえばエビや珊瑚が餌を食べているような微妙な音を聞くことができます。

ただし、パッシブソナーは、水中の山岳地形、難破船、
ぶら下がっている漁網などの音を聴くことはできないため、
潜水艦は利用できうる最高の性能を搭載した水中マップで
ソナーレポートを使用する必要があります。

これは依然として危険な水中移動方法です。
つい最近である2005年まで、潜水艦は
海底地図に記録されていない水中の地形に衝突・座礁したり、
あるいは放棄された漁網にスクリューを絡めたりして
深刻な損傷を受けるか、最悪喪失するということがありました。
水上艦もパッシブソナーで聴音を行い探索しますが、
潜水艦は静音性の設計をされているうえ、
艦体が黒でコーティングされていて、それが音を反射せず、
逆に吸収する仕組みを持つので、他の船からほぼ探知されません。
潜水艦はというと、このイラストにも見られるように、
全ての海洋生物の立てる音、人が水中を泳ぐ様子、
岸に打ち寄せる波や水上にある船の音を聴くことができます。会食崖や漂流する網で沈没した船は見えません。
そして大事なことは水上艦は潜水艦が見えないということです。



アクティブソナーは「ピンPing」と呼ばれる調整音を水中に送信し、
それが跳ね返ったときに生成されるエコーを聴くものです。

これらのエコーは、潜水艦の周るの全ての形状と位置を示し、
水中の山、沈没船、水上艦艇、そして
潜水艦を危険に晒す可能性のあるものを含む、
その周囲の全体像を取り込み、情報として取得することができます。

欠点はこの「ping」そのものです。

これを発信していると、水上艦やソナーを実行している
他の潜水艦に簡単に音が聴こえるため、
これによって潜水艦の位置は明らかになってしまいます。
このため、潜水艦がアクティブソナーを使用することはめったにありません。
使用する状況というのは極々かぎられてくるということです。
このイラストにも見られるように、潜水艦は
跳ね返る「ping」を送信します。

海食崖と海底の沈没船がはっきりと見えており、
これによって潜水艦が敵の探索から逃れる可能性がありますが、
海上の空母と巡洋艦は潜水艦が水中にいることを認識しており、
アクティブソナーによって「ハント」捜索することができます。

水上艦はそのものの位置を隠すことはできないので、
自衛として潜水艦よりも頻繁にアクティブソナーを使用します。

アクティブソナーは前述の理由から非常に危険と考えられているため、
一部の弾道ミサイル搭載潜水艦には装備されていません。

初心者にもよくわかるいい説明だと思います。
必要以上に子供目線でもなく、それでいて
平易な言葉で解説されているのが、さすがだと思いました。
もちろんわたし自身にとっても大変勉強になりました。


続く。





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