シカゴの科学産業博物館の展示から、
ここのサイエンス部門の目玉である
Wonder Is All Natural
のコーナーをご紹介します。
まずはMSIによる紹介の言葉をどうぞ。
わたしたちの世界に対する疑問は、そこに入るとほとんどすぐに始まります。
「火はなぜ燃えるのか?」
「雷って何だろう?」
わたしたちは、言葉もしゃべらないうちから、自然に魅了されています。
子供たちは、空の色や虹の終わりについて熱心に尋ねます。
そして大人はいつも天気の話をしています。
そう、わたしたちは、自分たちを取り巻く世界に見られる現象を
解釈したいという深い欲求を持っているのです。
そしてその答えは科学で出すことができますが、
同時に科学はまた疑問を呈するものでもあります。
疑問を持つ(ASK QUESTIONS)
内なる科学者を取り戻せ
「サイエンス・ストーム」で、不思議な感覚を取り戻しましょう。
この常設展「サイエンス・ストーム」コーナーでは、
自然の力をひとつ屋根の下に集め、稲妻、火災、竜巻、雪崩、津波、太陽光、
運動する原子という7つの自然現象を観察し、実験することができます。
もちろん、化学や物理のコアな概念も学べますが、
40フィートの竜巻を制御したり、150万ボルトの雷を見たり、
津波を起こしたりするのに夢中で、
もしあなたが「学んでいる」という実感がわかないとしても
それは無理からぬことでしょう。
竜巻の中に入ってみるなんて、そうそうできることではありません。
(ただしMSIではいつでもそれができるのです)
好奇心は、元来、再生可能なエネルギー源です。自然の驚異を大規模に探索することで、あなたの好奇心を刺激してください。
周期表からランダムに3つの元素を混ぜ合わせるとどうなるか?テニスボールを最も遠くへ飛ばすには、どのような角度が最適なのか?
などなど、さまざまな疑問が、あなたのために用意されています。ここでの科学者はあなたです。
■ 竜巻 Tornado
つむじ風が吹く
台風の中のヤシの木や、荒れた日の風車など、空気の動きを見ていると、
催眠術にかかったような気分になることがあります。
しかし、風は一瞬にして破壊的な力を発揮します。
サイエンス・ストームの目玉である竜巻は、
高さ3mの渦巻き状の空気と水蒸気を自分で操作することができます。
また、大きな風船の中の空気を加熱して対流を作り、
その効果をサーモグラフィで観察することもできます。
また、だれかと一緒にストームチェイサーに乗り込んで、
悪天候を阻止する仮想レースも楽しめます。
ディズニーシーの「ストームライダー」を思い出しました。
もうなくなったらしいですが、あれは体が休められてよかったなー。
キャプテン・スコットは観測機に乗って嵐の真ん中につっこみ、
それで台風を消滅させていましたが、
ここではどんな技術で阻止するんでしょうか。
床から絶え間なく立ち上る、光に照らされた水蒸気の渦、
この渦のダイナミクスを、展示室の両階から操作・測定することができます。
竜巻🌀渦
渦の形状は、異なる高さでの空気の流れに応じて変動します。
ツイスターを形作るための通気孔は、
水平に吹いて空気の渦を回転させる風の効果を模倣しています。
自然界における竜巻の回転は、さまざまな高さと速度で
衝突する風によって影響を受けます。
1、レバーを動かして、4 つの通気孔からの空気の流れを制御します。
2 気流のさまざまなパターンを作成するための実験。
渦の高さに沿って気流を変化させると、
渦の形状がどのように変化するかを観察してください。
わたしも少しこれを動かしてみました。
■ 津波 Tsunami
津波のことを英語でいつからTsunamiというようになったのか。
おそらく近年だと思うのですが、それ以前は、科学者は一般的に
seismic sea waveという用語を使用しようとしていたようです。
日本語の発音は/ts/「ツ」ですが、
英語では語頭に/ts/を付けることができないため、
語頭の/ts/を/s/に変更し、"t "を削除した結果、
「スナミ」のように発音する人がいて、わたしの感覚では
ニュースなどでもそう聞こえることの方が多い気がします。
まるでわざとやっているのか?と思うような
男の子のシャツと同系色の、TSUNAMIと書かれた物体。
大きなお釜のような、コマのような・・・・。
【ダート・ブイDART Buoy46410】
そもそもダートって何ですか、って話なんですが、商品名です。
DART®
Deep-ocean Assessment and Reporting of Tsunamis(深海における津波の評価と報告)
ということで、Tは津波のTだったのね。
要はリアルタイム津波モニタリングシステムで、
海中の戦略的な場所に配置され、津波予報に重要な役割を果たします。
DARTの仕組み
海底の圧力記録計から信号を受け取って、それをさらに
衛星を介してツナミセンターに送るというわけです。
日本でも地震が起こるとすぐに津波の予報がなされますが、
こういったモニタリング機器から情報を取っているのだと思われ。
そして、ここにあるDARTブイは、アラスカ湾に係留されていたのですが、
ある日外れてどんぶらこっこと400マイル流れていき、
コーディアック島というところに打ち上げられました。
赤の点が震源地・・・ってこれ日本の近くじゃないですか。
黄色がDARTが設置されていた地点です。
2006年11月15日、この深海津波評価報告 (DART) ブイは、
千島列島で発生したマグニチュード8.3の地震による津波を記録しました。
日本では「千島列島沖地震」と名称が付けられています。
現在は使用されていませんが、このブイはかつて、
国立データ ブイ センターの世界津波警報システムを構成する
DART ブイのグローバル ネットワークの一部でした。
しかし、流されて行方不明に・・。
見つかったのは1年後。
回収されました。でっていう。
■ リップルタンク
子供の前にある大きな丸いディスクのようなものは、波が物体や他の波とどのように相互作用するかを観察するシステム。
別のところにある3つの大きな波紋水槽のダイヤルを回すと、
水面で「タッパー」が作動して制御された美しい模様を作り出します。
天井から吊り下げられた水槽に、上から当てられた照明が、
下の床のディスクに大きな波紋の影を落としているのです。
それぞれの水槽は、回折、干渉、反射と拡散など、
異なる波動現象を表示するように設計されています。
■ ツナミ ウェーブ タンク
津波は遠距離に膨大なエネルギーを運びます。
科学者たちは、波の挙動を研究することで津波の説明と予測を試みていますが、
その道具のひとつがここにある「波動水槽」です。
展示されている30フィートの水槽では、あなたが作った波で
さまざまな沿岸環境への影響を調査することができます。
高速度カメラで波の動きを記録・再生し、
波のエネルギーや海岸線によって異なる波の動きを観察できます。
■ テスラ・コイル
テスラコイルのパートを通りかかったら、
エキジビジョン開始までのカウントダウンが表示され、
その時間を待っている人たちがいました。
開始まで後34秒というところで照明が暗くなってきました。
カウントダウンの間、皆は大きなスクリーンで
ニコラ・テスラとテスラコイルについての知識をちょっと仕入れます。
テスラコイルは、発明家ニコラ・テスラが1891年に考案した
「電気的共振変圧回路」で、高電圧、低電流、
そして高周波の交流電気を発生させるためのものです。
テスラはこれらの回路を使って、電気照明、燐光、
X線発生、高周波交流現象、電気療法、
電線を使わない電気エネルギーの伝送など、革新的な実験を行いました。
テスラコイル回路は、1920年代まで、
無線電信用のスパークギャップラジオ送信機
電気治療
バイオレットレイ装置などの医療機器
に実用化されていました。
ウーディンコイル(左)による癌(多分乳がん)の治療中
患者の頭の後ろにあるのがコイルの電源となる誘導コイル
真空電極による糖尿病の電気療法治療、1922年
前面に取り付けられた直列スパークギャップが見える
しかし、これらが癌や糖尿病を治療できたのかというと、
全く効果がなかったからこそいつの間にか使われなくなったわけで。
当時は難病を治療する希望の光に思われていたのでしょうけれど・・。
現在では、娯楽や教育用ディスプレイにしか使われていません。
小型のコイルは高真空システムのリークディテクターに実用化されています。
右側の図の下にはテスラのサインがあります。
テスラが提案した無線電力システム(1897年の特許より)
送信機(左)は、テスラコイル(A、C)で、
風船(D)で吊るした高架式容量性端子(B)を駆動するもの。
受信機(右)は、同様の端子と共振トランス。
テスラコイルが発する大量の火花は、電荷の劇的なデモンストレーションです。
正電荷と負電荷が分離し、再び結合して熱、光、音が激しく混ざり合い、
稲妻に似た壮観な電気の火花を発生させます。
派手な火花、その電流が感電を起こさずに人体を通過できることから、
テスラコイルはエンターテイメントビジネスで利用されるようになりました。
20世紀初頭には、巡回カーニバル、見世物小屋、サーカスやカーニバルで
出演者が高電圧を体に通す演技が盛んに行われました。
写真はそんな芸人の一人、「マドモアゼル・エレクトラ」で、
電気椅子に通電したのにあら不思議、彼女はしにましぇーん、
というような芸で売っていたようです。
自分の体を隠し持ったテスラコイルの高電圧端子に接続し、
指先などから火花を散らす「フランケンシュタイン」。
アーウィン・ムーン伝道師(エヴァンジェリスト)(1938年)
指でロウソクやタバコに火をつけることもできました。
通常は感電することはないのですが、素肌からのRFアーク放電は
火傷を引き起こすことがあったため、それを防ぐために
パフォーマーは指先に金属の指貫をつけていました。
実はこれらの演技は非常に危険であり、テスラコイルの調整を誤ると
パフォーマーが死亡する可能性もあったのです。
当時電気椅子による死刑方法が導入されたばかりだったアメリカでは、
このパフォーマンスは人々の興味を引きました。
今日でもテスラコイルを使って高電圧の演技が行われることがありますが、
テスラコイルの電流は全く生体に安全なものではなく、
体を通過させることは今日極めて危険と考えられています。
しかし、巨大なテスラコイルの電極から発せられるパチパチと蠢く火花は、
ハリウッドの「マッド サイエンティスト」の研究室の象徴となりました。
これはおそらく、謎の研究者、変わり者のニコラ・テスラ自身が、
「マッド サイエンティスト」の起源であり、原型の一つだったからです。
『メトロポリス』(1927)、『フランケンシュタイン』(1931)など、
多くの映画や映像媒体がテスラコイルを使用しました。
しかし、80年代には、それらはCGIに置き換えられてゆき、
セットでの危険な高電圧テスラコイルは必要とされなくなったのです。
続く。