MSIのU-505艦内ツァー、前部魚雷室と下士官寝室部分から入って、
とりあえずは小さなキッチンまでをご紹介しました。
今日はこの図の4番にあるオフィサーズクォーター、士官寝室からです。
士官寝室の枕カバーとシーツも、ブルーのギンガムチェックです。
エクステリアが木のせいだけでなく、
アメリカ海軍の潜水艦より気持ち広くて寝心地良さそう。
艦長、ハラルト・ランゲ中尉を中央に、U-505の士官たち。
U-505の最後の哨戒中に乗艦していた 4人の名前もわかっています。
Uボートの乗組の士官について解説しておきます。
【艦長】
Kapitanleutnant / Oberleutnant zur See
カピタンロイトナント/オーバーロイトナント・ツー・ジー
Oblt.z.S Harald Lange ハラルト・ランゲ中尉
艦長は、乗組員全員の命運を左右する生死の決断を下すことが
日常茶飯事であり、最も高い責任を負う。
乗組員は艦長と密接な関係を持ち、艦長が勲章を授与された場合は、
我が事として誇りに思うのは当然のことであった。
【ファースト・ワッチ・オフィサー(1WO)】 Oberleutnant zur See/ Leutnant zur Seeオーバーロイトナント・ツー・ジー副長(Uボートでは指揮官の副官とされる)
Oblt.z.S Paul Meyer パウル・マイヤー中尉
COが病気になったり、戦死した場合も、代行して
指揮を執ることができるように、COを密接に監視している。
その他、ボートの兵器システム、水上攻撃時の魚雷照準などを担当した。
【セカンド・ワッチ・オフィサー(2WO)】
Leutnant zur See
監視官
Lt.z.S. Kurt Brey クルト・ブレイ少尉
(多分写真左、袖章1本の人)
甲板上の見張り、対空砲、甲板砲の責任者であった。
また、無線室の乗組員も監督した。
【機関長(LI)】
Leitender Ingenieur ライテンダー・インジニアー
シニア・エンジニア
Oblt.z.S. Josef Hauser ヨーゼフ ハウザー中尉
(多分艦長の左側の人)
経験豊富な士官で、エンジン、モーター、バッテリーなど
Uボートメカニックの整備を担当した。
LIはまた、ボートを曳航しなければならない場合に、
解体用の爆薬をセットすることもあり、このため、
多くのLIがボートの沈没に巻き込まれて死亡した。
中にはあえてボートと運命を共にした者もいる。
また、U-505には5人目の士官として医師が搭乗していました。
Oblt.z.S. Friedrich Hosenmeyer
フリードリヒ・ホーゼンマイヤー中尉
(医師)
(たぶん写真一番右の人)
アメリカ海軍の小型の艦船(駆逐艦、潜水艦)には、
メディックが乗っていて応急手当てなどをしていたのですが、
Uボートには軍医が乗り組むことになっていたようです。
彼は乗組員のさまざまな病気の手当をし、毎日ビタミンを配っていました。
乗組員の健康は潜水艦の効率にとって最重要でした。
誰かが病気になると、その仕事は別の者が請け負わなくてはいけませんから。
Uボート乗組員の平均年齢は22歳でしたが、士官たちはもう少し上です。一番最後に書かれていますが、この中で艦長に次ぐ高位者はLIでした。
水面を航行している間、当直士官と 4 人の監視員が
7 x 10 の高出力のツァイス双眼鏡を使用してブリッジに配置され、
敵の輸送船を探して地平線を哨戒しました。
ほとんどのUボート乗組士官は、海員支部の士官候補生として
ドイツ海軍に入り、1930年代に戦争が迫ってくると、
水上艦勤務の士官だけでなく、商船勤務だった将校も
Uボート乗組を上から命じられて転勤してきていました。
下士官同様、士官たちもUボート勤務になると、その特殊なコンポーネント、
システム、機能の全てを一から学ばなければなりませんでした。
このツァーでは、かつてのU-505の士官と乗組員たちが学んだことを
垣間見ながら、彼らがどのように機器を操作し、また、
ボートの生活に順応していたかに思いを馳せるために
艦首から艦尾までを歩きながら内部を見ていきます。
士官用のコンパートメントには、艦体両側に二つずつ、
合計4つの寝台が設置されていたそうですが、
現在では片側だけしか残されていません。
上の二つのベッドを壁に向かって折りたたむと、
下の二つがソファーとして機能したということです。
アメリカの潜水艦と決定的に違うのは、
専用のダイニングルームがないことで、
食事はこのソファーにテーブルをセットして行ったと思われます。
これは捕獲してすぐアメリカ軍が撮影した写真です。
比べていただくとわかりますが、このときにはベッドのガードがありました。
シーツはきっちり整えられ、さすがドイツ人、しかも海軍の清潔さ。
コンパートメント内のいくつかのロッカーは、士官たちの所持品である食料品、および機密文書、
マニュアルの類を収納するために使用されました。
士官はまた、小さな洗面台を士官数人で共有していました。
士官室のベッド脇にはコーヒーカップの入った戸棚があり、
かつては棚にコーヒーポットが備えられていました。
戸棚の下部分は艦内に3つある文書金庫のうち一つがあります。
コーヒーカップなどはアメリカ兵の「記念品」にならなかったのか、
見たところ、当時と同じものが戸棚に収納されています。
このガラスのキャビネットには、陶器、ガラス、銀器が収納されていました。
これらは一部は海軍の備品でしたが、乗組員(主に水兵)が
上陸時に訪れたホテルやレストラン、バーから
「もらってきた」ものも一部含まれていたということです。
食べるための専用の部屋はありませんでしたが、士官は食事の際
銀器、ガラス、陶磁器の食器を使い、テーブルリネンを敷きました。
食事は乗組員の士気と健康に取って何より重要な要素であったため、
潜水艦の設備と運用条件の可能な限り、美味しく準備するために
あらゆる努力が惜しみなく払われたということです。
乗組員が適切な食事とカロリー摂取を維持できるように、
慎重に食事は計画されていました。
できるだけ暖かい食事が提供されましたが、
バッテリーの電力が低下するようなことがあると、
コーヒーとスープを作る時しか電気の使用は許されませんでした。
ところで食事の話が出たついでに、Uボート乗員の健康上深刻な問題、
毎日の排泄の「規則性の維持」について書いておきます。
潜水艦という特殊な生活の場にありがちな運動できるスペースの不足と、
寝台で座ったり休んだりじっとしていたり、という時間が
圧倒的に長いことが原因で、ほとんどの乗員はその問題に悩まされました。
しかも、神経質な人にとっては、環境も大きな問題でした。
U-505に搭載された2 つの水洗トイレのうち、使用できるのは一つだけ。
なぜなら、たびたび書いたように、もう一つのトイレは
特に哨戒初期はほとんど食料保管庫と化していて使えなかったからです。
このため、トイレは時間によっては長蛇の列ができ、
しかも、ボウルを洗い流すためのレバー装置の操作は難しく、
「落ち着いて用を足す」プロセス自体が大仕事と化していました。
医師の処方によりヒマシ油と丸薬が頻繁に使用されましたが、
効果はやはり人によるというか、まちまちだったそうです。
乗組員にとってのもう一つの問題は、乗員の制限上、Uボートには
医師を乗せるのがやっとで、歯の健康まではケアしにくかったことです。
ただでさえ日光を浴びないので壊血病になりやすく、そのため
艦内では予防のため特別な歯磨き粉が配られていました。
実は歯の健康というのは大きな問題を引き起こしやすいのです。
現代では、口内細菌の悪玉優位が、体全体の不調につながるので、
朝起きたらまずオーラルケアを、というのが常識となってきています。
精一杯努力してもそれにもかかわらず、乗組員たちはしばしば
歯茎の痛み、歯の痛みを起こし、それがQOLを爆下げしました。
アメリカ軍も同じ理由で空母には必ず専門の歯科医が乗艦しています。
◼️ キャプテンズ・クォーター
通路の右側には無線室と音響室があり、左側にあるコーナーは
これでも艦長の居室、キャプテンズ・クォーターがあります。
ここの写真をもっと細部に渡って撮りたかったのですが、
見学の列が先に先に行ってしまい(わたしは最後尾の最後の人)
これでも大急ぎで撮り残しのないように頑張りました。
キャプテンズ・クォーターには寝台とキャビネットロッカーに加えて、
小さな専用の洗面台が設られ、机になる折りたたみ式の天板があります。
この部分も、他の将校の寝室と同様に、冷たい金属ではなく
触り心地の良いオーク材の羽目板で覆われ、目に優しい?仕様です。
右側の中央通路は乗組員が行き来しますが、プライバシー確保のため、
このスペースの周りにカーテンを張ることができ、
艦長のベッドにはオーバーヘッドランプが取り付けられていました。
MSIに運ばれ、最初に一般展示されていた頃の写真と思われます。
艦長のベッドの上には金庫がありましたが、
最初に乗り込んだ搭乗隊によって壊され、開かれました。
■ 項末付録 アメリカ海軍潜水艦スラング
なし崩し的に連載しているスラング特集、今日はCです。
キャデラック
潜水艦で使うモップバケツのこと
通常は車輪としぼり装置が付いている
“Cake and cock and we’re outta cake.”
「ケーキとコックですがケーキはもうありません」
本日のプランに、明確にメニューが掲載されているのに、
食事は何かと聞かれたときに、給養員が返してくる言葉
メニューがブラットソーセージ、カルパス(ドライソーセージ)、
ホットドッグなどのときに特に言ってくる乗組員が多いらしい
「ケーキがない」=「コックだけ」ってことか?
カジノナイト
レクリエーション委員会が資金集めのために、
ポーカーやブラックジャックなどカジノゲームをする夜
チャネルフィーバー (海峡熱)
休暇のために港に近づくとき乗組員が不安になっている状態
チェックバルブ
「ワンウェイ・チェックバルブ」ともいう
自分のために何かしてもらっても、それにお返ししない潜水艦員のこと
チキンスイッチ
緊急ブロー作動弁
Chop チョップ
補給将校のこと
補給部隊のポークチョップ型の記章から
いうほどポークチョップか?
クリーン スイープ 「海から敵を一掃した」
潜水艦で完全に成功した作戦を指す
潜水艦の潜望鏡にほうきを括り付けて示すのが伝統的なやり方
クリアバッフル(Clear your baffles)
後ろを見ること
バッフルは水流・音響・気流などの整流装置(baffle plate)
“Close enough for horseshoes, hand grenades or Polaris Missiles.”
"蹄鉄、手榴弾、ポラリスミサイルまですぐ近く"
高度に技術的な俗語で、完成と呼べるほどの仕事ができたときに使われるまた、"Close enough for government work "とも呼ばれる。
Cluster Fuck クラスター・ファック
集団が仕事を無秩序に行い、悪い結果をもたらすこと
また、一般的に混乱した状態にある人や物
ex; ”あの子は歩くクラスターファックだ"
NATOフォネティックで「Charlie Foxtrot」ということも
C.O.B.
Chief of the Boat
=Crabby Old Bastard(不機嫌なおいぼれ野郎)
=Clueless Overweight Bastard(無知なデブ野郎)
潜水艦に乗船する上級下士官のこと
Comshaw, cumshaw コムショー カムショー
余分なもの、無料のもの、好意や贈り物として与えられるもの
中国語の「感謝」カムシアを使った表現に由来する
Comanche Bollocks
英国海軍の「ジャック語」で「ブリキのトマト」のこと
Coner コナー
エンジニア部門に携わらない潜水艦乗組員、魚雷員を指す
前方のコーン部分(前部魚雷室)に配置されるから
"Forward Pukes"(前の方で吐くやつ)とか
M.U.F.F.s (My Up Forward Friends俺の前の方のダチ)とも
原子炉に携わる乗組員は "Fuckin' Nukes"
Cow 牛
ギャレーにある、牛乳のようなものを出す冷蔵備品
C.O.W.
チーフ・オブ・ザ・ワッチ
航行中のバラスト、空気、水のシステムを担当する人
CPO Spread
世界で最も無駄で不快なベッド
CPOが「塗られた」ベッドの意味か
カウントダウン・カレンダー
帰港までの日数をカウントダウンするために使用する
実際のカレンダーでも、ペーパークリップで作ったチェーンでもよい
クラブ・ブリッジ(カニ橋)
だれか乗組員がカニを食べたことが発覚するたびに、
寝台の間にデンタルフロスが張られて、それをこう呼ぶ
デンタルフロスを寝台の間に渡すと、そこをカニが移動して
他の乗組員に感染するから、らしい
クランク
潜水艦に新しく転属してきた給養で、
通常の勤務の資格を取りながら食堂で働く人
クレイジー・イワン
映画『レッド・オクトーバーを追え』が元ネタ
航行中に素早く180度回転して、
アメリカの潜水艦が追いかけてくるかどうか確認するロシア潜水艦のこと
クロッチクリケット(股コオロギ)
疥癬、シラミ
C.R.I.S.
Cranial Rectal Insertion Syndrome(頭蓋直腸挿入症候群)
そう言う題名のクロッチノベル があることから= ポルノグラフィーの本
通常、よく摩耗している
C.U.N.T.
Civilian Under Naval Trainingの略
不満のある乗組員が、海軍を辞める日を待ち焦がれているときに使う言葉
実際の意味は海軍訓練を受けた民間人のこと
D.A.D. (Day After Duty勤務の後の日)
夜通し働いた水兵に与えられる、勤務終了後の休みのこと
続く。
とりあえずは小さなキッチンまでをご紹介しました。
今日はこの図の4番にあるオフィサーズクォーター、士官寝室からです。
士官寝室の枕カバーとシーツも、ブルーのギンガムチェックです。
エクステリアが木のせいだけでなく、
アメリカ海軍の潜水艦より気持ち広くて寝心地良さそう。
艦長、ハラルト・ランゲ中尉を中央に、U-505の士官たち。
U-505の最後の哨戒中に乗艦していた 4人の名前もわかっています。
Uボートの乗組の士官について解説しておきます。
【艦長】
Kapitanleutnant / Oberleutnant zur See
カピタンロイトナント/オーバーロイトナント・ツー・ジー
Oblt.z.S Harald Lange ハラルト・ランゲ中尉
艦長は、乗組員全員の命運を左右する生死の決断を下すことが
日常茶飯事であり、最も高い責任を負う。
乗組員は艦長と密接な関係を持ち、艦長が勲章を授与された場合は、
我が事として誇りに思うのは当然のことであった。
【ファースト・ワッチ・オフィサー(1WO)】 Oberleutnant zur See/ Leutnant zur Seeオーバーロイトナント・ツー・ジー副長(Uボートでは指揮官の副官とされる)
Oblt.z.S Paul Meyer パウル・マイヤー中尉
COが病気になったり、戦死した場合も、代行して
指揮を執ることができるように、COを密接に監視している。
その他、ボートの兵器システム、水上攻撃時の魚雷照準などを担当した。
【セカンド・ワッチ・オフィサー(2WO)】
Leutnant zur See
監視官
Lt.z.S. Kurt Brey クルト・ブレイ少尉
(多分写真左、袖章1本の人)
甲板上の見張り、対空砲、甲板砲の責任者であった。
また、無線室の乗組員も監督した。
【機関長(LI)】
Leitender Ingenieur ライテンダー・インジニアー
シニア・エンジニア
Oblt.z.S. Josef Hauser ヨーゼフ ハウザー中尉
(多分艦長の左側の人)
経験豊富な士官で、エンジン、モーター、バッテリーなど
Uボートメカニックの整備を担当した。
LIはまた、ボートを曳航しなければならない場合に、
解体用の爆薬をセットすることもあり、このため、
多くのLIがボートの沈没に巻き込まれて死亡した。
中にはあえてボートと運命を共にした者もいる。
また、U-505には5人目の士官として医師が搭乗していました。
Oblt.z.S. Friedrich Hosenmeyer
フリードリヒ・ホーゼンマイヤー中尉
(医師)
(たぶん写真一番右の人)
アメリカ海軍の小型の艦船(駆逐艦、潜水艦)には、
メディックが乗っていて応急手当てなどをしていたのですが、
Uボートには軍医が乗り組むことになっていたようです。
彼は乗組員のさまざまな病気の手当をし、毎日ビタミンを配っていました。
乗組員の健康は潜水艦の効率にとって最重要でした。
誰かが病気になると、その仕事は別の者が請け負わなくてはいけませんから。
Uボート乗組員の平均年齢は22歳でしたが、士官たちはもう少し上です。一番最後に書かれていますが、この中で艦長に次ぐ高位者はLIでした。
水面を航行している間、当直士官と 4 人の監視員が
7 x 10 の高出力のツァイス双眼鏡を使用してブリッジに配置され、
敵の輸送船を探して地平線を哨戒しました。
ほとんどのUボート乗組士官は、海員支部の士官候補生として
ドイツ海軍に入り、1930年代に戦争が迫ってくると、
水上艦勤務の士官だけでなく、商船勤務だった将校も
Uボート乗組を上から命じられて転勤してきていました。
下士官同様、士官たちもUボート勤務になると、その特殊なコンポーネント、
システム、機能の全てを一から学ばなければなりませんでした。
このツァーでは、かつてのU-505の士官と乗組員たちが学んだことを
垣間見ながら、彼らがどのように機器を操作し、また、
ボートの生活に順応していたかに思いを馳せるために
艦首から艦尾までを歩きながら内部を見ていきます。
士官用のコンパートメントには、艦体両側に二つずつ、
合計4つの寝台が設置されていたそうですが、
現在では片側だけしか残されていません。
上の二つのベッドを壁に向かって折りたたむと、
下の二つがソファーとして機能したということです。
アメリカの潜水艦と決定的に違うのは、
専用のダイニングルームがないことで、
食事はこのソファーにテーブルをセットして行ったと思われます。
これは捕獲してすぐアメリカ軍が撮影した写真です。
比べていただくとわかりますが、このときにはベッドのガードがありました。
シーツはきっちり整えられ、さすがドイツ人、しかも海軍の清潔さ。
コンパートメント内のいくつかのロッカーは、士官たちの所持品である食料品、および機密文書、
マニュアルの類を収納するために使用されました。
士官はまた、小さな洗面台を士官数人で共有していました。
士官室のベッド脇にはコーヒーカップの入った戸棚があり、
かつては棚にコーヒーポットが備えられていました。
戸棚の下部分は艦内に3つある文書金庫のうち一つがあります。
コーヒーカップなどはアメリカ兵の「記念品」にならなかったのか、
見たところ、当時と同じものが戸棚に収納されています。
このガラスのキャビネットには、陶器、ガラス、銀器が収納されていました。
これらは一部は海軍の備品でしたが、乗組員(主に水兵)が
上陸時に訪れたホテルやレストラン、バーから
「もらってきた」ものも一部含まれていたということです。
食べるための専用の部屋はありませんでしたが、士官は食事の際
銀器、ガラス、陶磁器の食器を使い、テーブルリネンを敷きました。
食事は乗組員の士気と健康に取って何より重要な要素であったため、
潜水艦の設備と運用条件の可能な限り、美味しく準備するために
あらゆる努力が惜しみなく払われたということです。
乗組員が適切な食事とカロリー摂取を維持できるように、
慎重に食事は計画されていました。
できるだけ暖かい食事が提供されましたが、
バッテリーの電力が低下するようなことがあると、
コーヒーとスープを作る時しか電気の使用は許されませんでした。
ところで食事の話が出たついでに、Uボート乗員の健康上深刻な問題、
毎日の排泄の「規則性の維持」について書いておきます。
潜水艦という特殊な生活の場にありがちな運動できるスペースの不足と、
寝台で座ったり休んだりじっとしていたり、という時間が
圧倒的に長いことが原因で、ほとんどの乗員はその問題に悩まされました。
しかも、神経質な人にとっては、環境も大きな問題でした。
U-505に搭載された2 つの水洗トイレのうち、使用できるのは一つだけ。
なぜなら、たびたび書いたように、もう一つのトイレは
特に哨戒初期はほとんど食料保管庫と化していて使えなかったからです。
このため、トイレは時間によっては長蛇の列ができ、
しかも、ボウルを洗い流すためのレバー装置の操作は難しく、
「落ち着いて用を足す」プロセス自体が大仕事と化していました。
医師の処方によりヒマシ油と丸薬が頻繁に使用されましたが、
効果はやはり人によるというか、まちまちだったそうです。
乗組員にとってのもう一つの問題は、乗員の制限上、Uボートには
医師を乗せるのがやっとで、歯の健康まではケアしにくかったことです。
ただでさえ日光を浴びないので壊血病になりやすく、そのため
艦内では予防のため特別な歯磨き粉が配られていました。
実は歯の健康というのは大きな問題を引き起こしやすいのです。
現代では、口内細菌の悪玉優位が、体全体の不調につながるので、
朝起きたらまずオーラルケアを、というのが常識となってきています。
精一杯努力してもそれにもかかわらず、乗組員たちはしばしば
歯茎の痛み、歯の痛みを起こし、それがQOLを爆下げしました。
アメリカ軍も同じ理由で空母には必ず専門の歯科医が乗艦しています。
◼️ キャプテンズ・クォーター
通路の右側には無線室と音響室があり、左側にあるコーナーは
これでも艦長の居室、キャプテンズ・クォーターがあります。
ここの写真をもっと細部に渡って撮りたかったのですが、
見学の列が先に先に行ってしまい(わたしは最後尾の最後の人)
これでも大急ぎで撮り残しのないように頑張りました。
キャプテンズ・クォーターには寝台とキャビネットロッカーに加えて、
小さな専用の洗面台が設られ、机になる折りたたみ式の天板があります。
この部分も、他の将校の寝室と同様に、冷たい金属ではなく
触り心地の良いオーク材の羽目板で覆われ、目に優しい?仕様です。
右側の中央通路は乗組員が行き来しますが、プライバシー確保のため、
このスペースの周りにカーテンを張ることができ、
艦長のベッドにはオーバーヘッドランプが取り付けられていました。
MSIに運ばれ、最初に一般展示されていた頃の写真と思われます。
艦長のベッドの上には金庫がありましたが、
最初に乗り込んだ搭乗隊によって壊され、開かれました。
■ 項末付録 アメリカ海軍潜水艦スラング
なし崩し的に連載しているスラング特集、今日はCです。
キャデラック
潜水艦で使うモップバケツのこと
通常は車輪としぼり装置が付いている
“Cake and cock and we’re outta cake.”
「ケーキとコックですがケーキはもうありません」
本日のプランに、明確にメニューが掲載されているのに、
食事は何かと聞かれたときに、給養員が返してくる言葉
メニューがブラットソーセージ、カルパス(ドライソーセージ)、
ホットドッグなどのときに特に言ってくる乗組員が多いらしい
「ケーキがない」=「コックだけ」ってことか?
カジノナイト
レクリエーション委員会が資金集めのために、
ポーカーやブラックジャックなどカジノゲームをする夜
チャネルフィーバー (海峡熱)
休暇のために港に近づくとき乗組員が不安になっている状態
チェックバルブ
「ワンウェイ・チェックバルブ」ともいう
自分のために何かしてもらっても、それにお返ししない潜水艦員のこと
チキンスイッチ
緊急ブロー作動弁
Chop チョップ
補給将校のこと
補給部隊のポークチョップ型の記章から
いうほどポークチョップか?
クリーン スイープ 「海から敵を一掃した」
潜水艦で完全に成功した作戦を指す
潜水艦の潜望鏡にほうきを括り付けて示すのが伝統的なやり方
クリアバッフル(Clear your baffles)
後ろを見ること
バッフルは水流・音響・気流などの整流装置(baffle plate)
“Close enough for horseshoes, hand grenades or Polaris Missiles.”
"蹄鉄、手榴弾、ポラリスミサイルまですぐ近く"
高度に技術的な俗語で、完成と呼べるほどの仕事ができたときに使われるまた、"Close enough for government work "とも呼ばれる。
Cluster Fuck クラスター・ファック
集団が仕事を無秩序に行い、悪い結果をもたらすこと
また、一般的に混乱した状態にある人や物
ex; ”あの子は歩くクラスターファックだ"
NATOフォネティックで「Charlie Foxtrot」ということも
C.O.B.
Chief of the Boat
=Crabby Old Bastard(不機嫌なおいぼれ野郎)
=Clueless Overweight Bastard(無知なデブ野郎)
潜水艦に乗船する上級下士官のこと
Comshaw, cumshaw コムショー カムショー
余分なもの、無料のもの、好意や贈り物として与えられるもの
中国語の「感謝」カムシアを使った表現に由来する
Comanche Bollocks
英国海軍の「ジャック語」で「ブリキのトマト」のこと
Coner コナー
エンジニア部門に携わらない潜水艦乗組員、魚雷員を指す
前方のコーン部分(前部魚雷室)に配置されるから
"Forward Pukes"(前の方で吐くやつ)とか
M.U.F.F.s (My Up Forward Friends俺の前の方のダチ)とも
原子炉に携わる乗組員は "Fuckin' Nukes"
Cow 牛
ギャレーにある、牛乳のようなものを出す冷蔵備品
C.O.W.
チーフ・オブ・ザ・ワッチ
航行中のバラスト、空気、水のシステムを担当する人
CPO Spread
世界で最も無駄で不快なベッド
CPOが「塗られた」ベッドの意味か
カウントダウン・カレンダー
帰港までの日数をカウントダウンするために使用する
実際のカレンダーでも、ペーパークリップで作ったチェーンでもよい
クラブ・ブリッジ(カニ橋)
だれか乗組員がカニを食べたことが発覚するたびに、
寝台の間にデンタルフロスが張られて、それをこう呼ぶ
デンタルフロスを寝台の間に渡すと、そこをカニが移動して
他の乗組員に感染するから、らしい
クランク
潜水艦に新しく転属してきた給養で、
通常の勤務の資格を取りながら食堂で働く人
クレイジー・イワン
映画『レッド・オクトーバーを追え』が元ネタ
航行中に素早く180度回転して、
アメリカの潜水艦が追いかけてくるかどうか確認するロシア潜水艦のこと
クロッチクリケット(股コオロギ)
疥癬、シラミ
C.R.I.S.
Cranial Rectal Insertion Syndrome(頭蓋直腸挿入症候群)
そう言う題名のクロッチノベル があることから= ポルノグラフィーの本
通常、よく摩耗している
C.U.N.T.
Civilian Under Naval Trainingの略
不満のある乗組員が、海軍を辞める日を待ち焦がれているときに使う言葉
実際の意味は海軍訓練を受けた民間人のこと
D.A.D. (Day After Duty勤務の後の日)
夜通し働いた水兵に与えられる、勤務終了後の休みのこと
続く。