エリー郡バッファローにある海事軍事公園の展示から、
タロスミサイル巡洋艦「リトルロック」のミサイルルームを紹介しています。
ここでタロスについて”ちょっと深掘り”(つまり浅堀り)しましょう。
タロスミサイルは正式にはRIM-8 TALOS といい、
世界で唯一アメリカ海軍で1958年から79年までの間運用されました。
ほぼ20年間だったわけで、その存在は、
バンブルビー作戦
という対空防衛を目標とした地対空ミサイル(SAMs)開発の、
ある意味最終成果物と言うべきものです。
前にも説明していますが、「タロス」(英語発音はテイロス)は、
「クレタ島を毎日三回走り回って警邏し、船が近づくと石を投げつけて破壊
不審者を見ると身体から高熱を発し、赤く熱した体で抱きついて焼く」
と言うギリシャ神話の意思を持たない(これが怖い)青銅の人形のことです。
他にも米海軍は「ターター」(タルタロス、奈落の神)、
「タイフォン」(テューポン、ギリシャ神話のラスボスでゼウスに勝った)
と、やばい奴の名前ばかりを、好んでミサイルにつけております。
バンブルビー作戦は、ドイツ軍のHs 293(ヘンシェル)ミサイル、
ルールシュタール/クラマーX-1、そしてなんといっても、
沖縄戦で米海軍を恐怖に陥れた神風特攻への対策として生まれ、
対空武器の開発にアメリカ海軍は16年を費やしました。
全長9.9メートル、3.5トンのミサイルは小型戦闘機の大きさに匹敵し、
「ガルベストン」「リトルロック」「オクラホマシティ」の
3隻からなる「ガルベストン級」に最初に搭載されました。
■ タロスミサイルと実戦
タロスミサイルの地対空バージョンはベトナム戦争で使われ、
USS「シカゴ」と「ロングビーチ」が計4機のMiGを撃墜しています。
1968年5月23日、「ロングビーチ」から発射されたタロスによって
約65マイルの距離からMiGを撃墜したとき、これは、
史上初の艦船から発射されたミサイルによる敵機撃墜となります。
この時の命中弾は、破片の中を飛んでいた別のミグも破壊しています。
1968年9月「ロングビーチ」は61マイル先のミグを撃墜。
1972年5月9日、「シカゴ」の前方タロスがMiGの長距離キルを達成。
ベトナムでの「シカゴ」「オクラホマシティ」「ロングビーチ」は、
北ベトナムのSAMレーダーを攻撃し、
「オクラホマ・シティ」は1972年、RIM-8Hの戦闘射撃を成功させて、
米海軍史上初の戦闘用地対地ミサイルの発射を記録しています。
さて、見学者は左下から入って反時計回りに内部を歩くのですが、
入室してすぐのところに名メイティング(嵌合)エリアがあります。
写真による弾頭組み立てエリアの説明
タロスミサイルは核弾頭と通常弾頭が使い分けられられますが、
その換装が行われるのも、ここ弾頭組み立てエリアです。
核弾頭から通常弾頭へ、またその逆に換装する場合、
使用するミサイル弾頭は天井クレーン(D)により、
下の弾頭取扱室からデッキハッチを通って吊り上げられます。
クレーンは頭上のトラック(E)に沿って弾頭を
ミサイル・アセンブリおよびブースターと結合させます。
その後、ストライクダウンカートがミサイルをレディエリアに戻します。
その後ミサイルは頭上のレールに乗って発射アームに移動します。
ここでは最終工程としてミサイルにフィンが取り付けられるので、
「フィン・ルーム」と呼ばれています。
今日はラックがレールに取り付けられて移動し、
フィンルームに行くという部分についてです。
レディサービスエリアに運ばれたブースターは、嵌合スタンドに位置され、
ミサイルと組み合わされてクレーンで持ち上げられ、上のレディサービストレイに収納されます。
赤い目盛りのついた計器には、
NAVY CALIBRATION PROGRAM(海軍点検プログラム)
CALIBRATED(計器の点検済み)
と書かれたシールが貼ってあり、左の機器には
⇩DOWN
右には
NEUTRALBRAKE OFF
とあるので、おそらくミサイルを持ち上げるクレーンの操縦器でしょう。
クレーンの操縦レバーそのものはその下方赤丸で囲んだ部分にあります。
Talos Missile Handling • Cruiser Installation
ビデオは7:49からとなります。前回同様、ビデオの説明を翻訳した文は青色で示します。
レディサービスエリアのミサイルがテストで必要となった時には、
レディサービスクレーンによって収納トレイから取り出され、
嵌合ステーションに配置される。
ここでブースターは切り離され、そしてレディサービストレイに戻される。
パワーカートでミサイルをチェックアウトエリアに移動させるが
そこでは「TATI」テスターのケーブルが接続される。
途中で見つけたパワーカートそのもののテスト指標
「TATI」とはTALOS Tactical Tester Equipmentを意味する。
テスターは各テストセットが自動的に実行され、
テストが正しく迅速に終了すると、
障害分離パネルの50個の赤いライトが消える。
全てのテストが完了したとき、緑のメインゴールライトが点灯する。
↓
この時ミサイルが準備OKとなるのである。
その後、ミサイルはもう一度レディサービスエリアに戻され、
そこでブースターと嵌合されてそしてもう一度トレイに収納される。
この状態
いつでも発射可能なミサイルが装填された準備サービストレイは、
リボルバーのシリンダーとほぼ同じ仕組みでローテーションされ、
銃のチェンバー(薬室)と同じような状態になる。
つまり、このラック群が前回も説明したように全体で回転し、
必要なミサイルのラックを上のレールの真下に来るよう持ち上げるのです。
トレイはリモートコントロールパネルで任意に選択することができ、
その時特別なオーダーは必要なく、任意のミサイルをランダムに選択できる。
ミサイルの発射を選択すると、トレイは位置を定め、
ローダーレールが準備される。
するとセンタートレイホイストがミサイルをローダーレールまで持ち上げ、
レイルはミサイルのブースターシューズ(フック鉤)に取り付けられる。
奥にある黒いドアは「ファイアドア」といいます。
ファイア(発射)ドアが開くとセンタートレイが下に落ち、
ミサイルは秒速12フィートで(結構速い)移動を始め、
ウィング&シン(Thin)エリアまで運ばれていく。
この図ではエリア1になります。
続く。