手首骨折後、そのためできなくなったことはたくさんありますが、
かえって時間にゆとりが出来たのに加え、万一のことを考えて家でじっとしているという、
活動的だったわたしにはありえないくらいの引きこもり生活。
事故後、タイプのスピードが落ち、集中力がなくなったため、ブログ更新は
二日に一本くらいががやはり無理が無くていいかもしれない、と実感していたのですが、
「自衛艦の引き渡し式」などというこのブログのテーマど真ん中のようなイベントに参加したことで、
思わず我を忘れてエントリ制作にのめり込んでいるエリス中尉です。
このイベントが終了したらまた二日に一度ペースにすると思いますが。
さて、艦内での式典が終わり関係者が退場する前に、
自衛艦旗を掲揚するため後甲板にいた儀仗隊が下艦してきました。
国賓を迎えるときのために日本には第302保安中隊という専門の儀仗隊がありますが、
こういう場合の儀仗隊は各艦の乗組員によってこのために編成された部隊です。
「頭脳明晰、思想堅個、体力優秀そして容姿端麗」
という厳しい条件で第302保安中隊は選び抜かれるそうですが、
式典のつど編成される臨時編成の儀仗隊は当該部隊の手の空いている隊員となります。
栄誉礼というのは、防大儀仗隊が音楽まつりで披露するようなドリルをするわけではなく、
「捧げ銃」をしているところを巡閲者が巡閲するという儀式なので、
日常自衛隊で訓練をしている隊員であれば即製できるのです。
儀仗隊の1個分隊の編成は、分隊海曹1名および分隊員8名となります。
この写真でも8人(先頭に分隊海曹)が1グループとして歩いていますね。
士を8人率いる分隊海曹が二人先頭に立っています。
右側が三曹、左側が二曹ですね。
左にもう一人海曹がいますから、これで三個分隊が揃ったことになります。
儀仗隊の整列場所には、儀仗隊長が待っています。
この儀仗隊指揮官は原則として2等海尉か3等海尉と決められています。
この隊長は2尉ですね。
自衛隊の礼式に関する訓令第83条第2項には、「甲武装着用品」として
こういうとき正式に着用する制服がちゃんと決められています。
それによると、指揮官は
白色の拳銃帯(専用ベルト)、白色の拳銃嚢(ホルスター)、
または儀礼刀および刀帯
を着用となります。
本日は儀礼刀ではなく拳銃の方を着用しています。
もしかしたら、ホルスターは何も入ってなくても(つまり空でも)いいので、
こういう天気の日には指揮刀は使わない、とかいう事情によるものでしょうか。
海自はたとえ雨でも大事な儀式に「拳銃持っているフリ」なんかしません!
ってことだったらごめんなさい。
この式典には一個小隊が儀仗のため参加していたということで、
一個小隊の編制は、4個分隊となります。
なお、指揮官以外の着用品は
◎ 常装冬服(第一種夏服)の着用品(冬略帽を除く)
◎ きゃはん
◎ 白色の手袋
とこれだけが決められています。
ただし、脚絆(ゲートルともいいますね。乗馬用語では”チャップス”といい、
わたしは黒と茶色違いで2本持っています。今度いつ使うかわかりませんがw)
は、部隊の長が着用を命じた場合に限るそうです。
なぜここで儀仗隊だけが移動したのかというと、今から護衛艦旗授与者が退艦し、
今一度栄誉礼の最後の「送迎」の儀式をして退席出するからです。
若宮政務次官が降りてきました。
前から三番目は、三井造船の取締役社長、田中孝雄氏。
前は社長秘書?・・・・よくわからないけど三井造船の出世頭に違いない。
一番後ろはプロレス上がりの政務次官SP。(違ったら本当にごめんなさい)
ここでする「送迎」とは
1、立会者は、受礼者を送迎者の隊列に誘導し、随(同)行する
2、送迎者のうち、幹部自衛官及び准海尉は各個に挙手の敬礼、海曹及び海士は
指揮官の号令により頭右(左)の敬礼を行い、目迎(送)する
3、受礼者が遠ざかった適宜の時機に、らつぱにより「別れ」を令する (wiki)
という儀式です。
これもわたしのいるところからはほとんど見えませんでしたが。
これから「送迎」が行われるところだったかと思います。
列の一番左端は「曹」で、4人いるのがお分かりでしょうか。
さて、この儀式の間、護衛艦には全く人影がありませんが、
見えないだけで実はこの間、乗組員は濡れた服を拭き(当然)昼ご飯をかき込み(多分)
午後の出航に向けての用意で艦内を走り回っていたはずです。
この間を利用して?少しまた装備の説明をしましょうかね。
「ふゆづき」艦首部分。
甲板の上に見えている糸巻きのようなのは、以前読者から教えていただいたので
忘れもしない
キャプスタンのドラム(巻銅)
といい、揚錨機を構成するものです。
錨は既に上がっている状態。
ここからはよく見えませんが、錨はアドミラルティー型といわれるもので、
これは「こんごう」などと同じです。
錨の形も何種類かあり、このタイプは非常にシャープで現代的なデザインです。
現在艦首には「艦首旗」として国旗が掲揚されていますが、これは日没時と航行中は降ろします。
艦首から下がったところには「搭載武器三兄弟」(エリス中尉勝手に命名)が。
前から
Mk.45 Mod4 62口径5インチ単装速射砲=(次男)
Mk.41VLS 垂直発射機=(長男)
高性能20mm多銃身機関砲(CIWS)=(末っ子)
でございます。
VLSは「ヴァーチカル・ランチャー・システム」ですよ。
何の頭文字か何気なく聴いたら答えられなかった「ひゅうが」の海士さん。
勿論これだけでなく、わが「あきづき」型には、
4連装SSM発射筒
だの
3連装短魚雷発射管
なんていう百発百中という噂の武器を搭載しております。
こういうタイプのマストを「ステルスマスト」といいます。
「たかなみ」型まではトラス構造のラティスマストといいますが、
このラティスマストに対してステルスマストとは、四角柱で構成され、
そのためにレーダー反射角度がやや小さくなりました。
これは、この左側の8角形のアンテナを持つ
FCS-3A 。
「ひゅうが」艦上のこの多機能レーダーについて説明したことがありますが、
「あきづき」型はこのレーダーを搭載することによって、大型で重量のある
対空レーダーをマストに装備しなくてもよくなったため、マストが細いのです。
マストの各張り出しはすべて直線で構成され、
角を外に向けるような作りになっており、さらに
マスト全体が後方に傾斜するような形になっています。
これもステルスマストの特徴なのだとか。
右側の上部構造物から突き出た二本の釣り竿のようなものは、
ホイップアンテナ
といい、先端に向かって細くなる形状をしています。
ホイップって・・・whip、鞭みたいだからでしょうか。
アメリカで博物館となっている空母「ホーネット」にも
この手のアンテナがたくさんありましたが、この新鋭艦もそれこそ
いたるところにこの「釣り竿」が立っています。
根元が赤いアンテナは高圧用。
艦尾のホイップアンテナはヘリが発着艦するときには邪魔にならないよう
ちゃんと倒しておくことができます。
この縦長の構造物は
洋上補給装置。
柱状のものを「スライディングパッドアイ」といい、
補給時に補給艦からのハイラインを連結するために使用します。
わずかに内側に向かって傾斜していますが、これはステルス性のため。
右のラッタルを上がっていった上部構造物上にあるのは、
魚雷防御策(TCM−Torpedo Counter Measures)
投射型静止式ジャマー(FAJ)のランチャー、
FMJ(Floating Acoustic Jammer) と呼ばれます。
このランチャーで打ち出され、1キロ先で落下傘によって着水し、
着水したら海面をぷかぷかと(かどうか知りませんが)漂い、
そこで艦が発するエンジン音やスクリュー音を発生させることによって
音響ホーミング式の魚雷を誘引するのです。
つまり、魚雷の「ジャマー」をするわけですね。(スルー推奨)
さて、エロい人じゃなくて(前回エントリ参照)偉い人が黒塗りの車で行ってしまい、
午前中の式典は終了したので、われわれは祝賀会の会場に移動します。
誰もいない・・・・と思ったら
ラッタルを自衛官が一人降りてきました。
すでにレインコート着用です。
ちゃんと制服は着替えたんでしょうか。
あれだけ濡れたら、かえってレインコートを上に着るのは気持ち悪いと思うけど。
右手のおじさんは同じテントだった人で、物珍しそうにガン見されました。
まあ、300mm望遠レンズのニコンなんか持っているのは招待客ではわたしくらいだったし、
きっと「なんなのこの人」とか思われてたんだろうなあ・・・。
バスの泊まっているところまで歩いて行きながら降リ向くと、
すでに旗旒信号のかかった「ふゆづき」のこんな角度が見えました。
式典の行われていたところを通り過ぎたら、足元にこんなカードが。
なるほど、合理的である。
調子に乗って海上幕僚長の場所でも記念写真(笑)
さて。
次はいよいよお待ちかねの祝賀パーティに潜入だ!
(続く)