Quantcast
Channel: ネイビーブルーに恋をして
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2815

元陸幕長の語る「我が国の防衛」

$
0
0

陸自と言えば、昨日習志野駐屯地の桜祭りに行かれた方おられますか?
わたしはM24さまに教えていただいていたので前日まで行くつもりをしていたのですが、
当日一人で行くことを心配した家族に不安定な天気を理由に止められ、

「転んでまた手の骨を折る夢を見た」

とまで云われました。
確かに手を庇いながら傘をさし、さらにカメラというのはいかに覚悟のできた
(底を見たってことです)わたしといえども辛いものがあります。

「来年には治ってるから。お天気もいいかもしれないし」

といわれて、一年後に延期を決めました。
まあ、最近の時間の経つのは異様に早いので、一年なんてあっという間さ。 


さて、冒頭写真はわたしが聴講した講演会で登壇する元陸幕長です。
前回この元陸幕長が中隊長であったときの逸話を漫画化しましたが、
この人物がまだ若くて バリバリだった頃ならあっても不思議ではないと
(というか本当にあったんですが)思われませんか?

 

因みにこの後ですが、全員伏せの状態になってしまい、本人も
二発撃った後、どうやって引っ込みを付けるかを考えだした頃、
部下(小隊長?)があたかも銃乱射犯人の説得をするかのように腰を低くし、
手で「押さえて押さえて」のポーズをしながら

「ちゅうたいちょおお〜〜〜」

とささやき声で呼びかけつつそろそろと近づいて来て、 銃を奪い受けとったそうです。

という前日の「予習」によって聴講がいっそう楽しみになったわけですが、
さてどんな話が聞けるのでしょうか。



当日会場となったのは前日から泊まっていたホテルの宴会場。
宿泊には全く力をいれていませんが、この日のような経済界の朝食会など、
宴会や会合には重きを置いている模様。



宴会場から見える庭にはなんと人口滝まであります。
東京オリンピックに合わせて開業したそうですが、現在は前にも書いたように苦戦中。



ガーデンウェディングを行うために作ったと見た。



この日は前日ご一緒した元副官のK1佐は来ておられませんでした。
その代わり、かつての元幕僚長とK副官を思わせる陸自の2人組が。

わたしたちと同じく、経済同友会の朝食会が終わってから、
元幕僚長の講演だけを聞きに来た陸将補以上陸将以下の陸自幹部。
この陸将(ってことにしておきます)も、かつてバリバリイケイケだったときには
元陸幕長並の豪快な逸話の一つや二つありそうな雰囲気をお持ちでした。

副官はタバコの灰と吸い殻を始末するために携帯灰皿を持ちつつ近くで待機(多分)
海自と空自はどうだか分かりませんが、陸自の場合、
酒もタバコもやらんで部下の気持ちがわかるか!みたいなところで
どちらもガンガン、という隊長が多いような気がします。



主催者のお計らいで前列に席を取っていただきました。
今司会者が経歴を紹介しているところです。
以降、元陸幕長が語っているという設定で話を進めます。


【東アジアの戦略環境】

中国と台湾の問題、南北挑戦の分断、日本とロシアの関係、そして我が国の領土に関する問題。
今東アジアが置かれている問題の全ては、冷戦、そして第二次世界大戦の残渣と言えます。

まず竹島。
日本が敗戦後武装解除されているときに占拠され、その後サンフランシスコ講和条約で
否定されたにもかかわらず韓国が実行支配し領有権を主張しています。

北方領土問題も、日本が8月14日にポツダム宣言の受諾をしたとたん、
ソ連軍は上陸し、その後実行支配している。

台湾の問題も、終戦後、大陸で共産党に追い出された国民党がなだれこんできて、
日本を追い出した後に武力制圧のような形で支配した。

これ全て、遡れば日本が戦争に負けたことから始まっているんです。

中国の台頭というのは、中華思想に基づく膨張政策なんですね。
中華民族というのは「世界は中国のものでしかない」と考えており、国境なんて
便宜上引かれた地図上の決まりでしかないのだから、いくらでも修正されるべきだ、
そして我が領土は我が力の及ぶ範囲である、という考えです。

中国人は日本人と見かけは似ていても、中身は似て非なるものです。
話して分かる相手ではない。
道徳観念も価値観も、こんなに近い国でありながら全く違う。
厄介な隣人なんですよ。

もっとも、その厄介な中国人も中華街が作れない国もあり、
こちらはもっと厄介な隣人といえるかもしれません。(会場笑い)

彼らにとって膨張していくのは民族の本能であり、沖縄も尖閣もその膨張の先に
たまたまあるからやっているにすぎないんです。
その膨張の触手は、だから日本だけでなく中国本土の四方八方に及んでいます。


対して、最近は大国アメリカの力に陰りがみえてきました。
シリアやクリミアの件もそうですね。
あれは単にオバマ大統領の個人的資質の問題かもしれませんが、いずれにせよ
国防費の大幅な削減によって、軍事力は確実に低下しています。

そして日本はどうでしょうか。

経済力では世界のトップ3です。
しかし、にもかかわらず政治的影響力はほとんどないに等しい。
発言力がないんです。
実にいびつな国家といえるかもしれません。


東アジアはいまや世界の近代軍が集中する地域となっています。
米軍を除く通常戦力は

陸軍:350万人、海軍:250万トン、空軍:5000機。

核戦力のことをいいますと、米、露、中、北朝鮮に囲まれています。
中国の核がどこを向いて設置されているか、知っていますか?


【尖閣諸島問題】

冷戦時代、自衛隊は「仮想敵国」をロシアとして、特に北の護りを重点にしていました。
そのころはたとえ日本に政治的な影響力が全くなく、発言権がなくても
それは対して問題にならなかったのです。
しかし、今はそれではだめです。

冷戦時代の北日本に対する脅威と、今の尖閣地域での緊張は比べ物になりません。
わたしは戦後最大の危機であるという風にも思っています。


わたしは軍同士の交流で人民解放軍のトップと話したことが何度となくありますが、
向こうの軍人は尖閣のことを

「明の時代に中国人が見たから我が国のものだ」

なんてことを平気でいうんですよ。
日本人から見ると道理が全く通らない、話が通じない、これが中国人です。
法的な権利とかファクトではなく、とにかく「中国が一番」の中華思想なんです。
だから、

「今中国は強いから尖閣の所有を主張しても良い」

従って尖閣は中国のものである、こんな認識なんですね。
それではその危機とはどのようなことが予想されるか。
こののシナリオについてお話ししてみます。

例えば尖閣で日本と中国が衝突したとします。
そうなった場合、戦域を尖閣だけに封じ込めることは不可能でしょう。
戦火は瞬く間に中国全土に飛び火します。

(エリス中尉註:さらに中国は2007年、在日中国人に対して有事の際に軍務を優先し、
国と軍が民間のヒトとモノを統制する「国防動員法」 を制定している。
たとえば尖閣でことが起こった場合、現在日本に大量にいる中国人は、
日本にいながらにして破壊活動や軍事活動を開始する要員となる可能性がある。
この法適用は国内企業のみならず外国企業も含むので、現在中国に進出している日系企業は、
そのときには中国軍の意志一つで全ての財産や技術を没収されることになる。
工場施設はもちろん、日本の最先端技術も。
親族の法曹関係者からの最新情報によると、今中国、韓国から撤退するための法律相談が
大手弁護士事務所に引きも切らず持ち込まれているそうだ)

さて、もし尖閣にことあらば、沖縄には在日米軍の主力が集結することになります。
想定される最悪の状況は尖閣諸島が中国に奪取される、ということですが、
もしそうなれば日米同盟は危機的状況に陥ります。

 逆に言うと、

日米同盟が有効に機能することは、つまり
日米と中国の全面戦争が生起するということ

なのです。

しかし、実際はどうでしょうか。
戦後最大の危機であることには違いないですが、かといってこのようなシナリオは
現実問題として可能性はほとんどないといってもいいのではないでしょうか。

先ほども言ったように、尖閣問題は中国の覇権主義の延長にある。
膨張しながら手を伸ばしている、その先が尖閣であるからこのようになっているのであって、
果たして中国は日米を敵に回して全面戦争するほどの価値が尖閣にあると思っているか?

わたしはだから逆に計画された戦争は起こりにくいと考えます。
もし何かあるとすれば、それは尖閣諸島周辺に置ける不測の軍事衝突に
端を発するという形でしょう。

もし現地でそのようなぶつかり合いがあったとき、懸念されるのはまず中国側では
人民解放軍の、つまり軍の暴走です。
はたして中国共産党は、習金平は人民解放軍をコントロールできているか?
中国は文民統制など機能していません。
軍を政治がコントロールできるという政治体制ではないんですよ。

そして我が国の問題はそのときも世論が冷静であるか、ということです。
民主主義というのにも欠点はありまして、その一つが

「有事に際して世論が沸騰した場合、簡単に一つの方向になだれ込んでしまう」

ということなんです。
かつて日本が戦争に突入していったのだって「軍部の独走」 だけが原因じゃないんです。
そこには戦争を後押しし、政府を弱腰だと非難する、つまり沸騰する世論があった。

そして懸念の第三点目は、米軍の抑止力がそのとき機能するかということです。
もし中国側と日本側で戦闘行為が突発的に起こったとき、米軍は自動的に軍事介入するか?

わたしは絶対にそれはない、今の米軍は介入してこないと思います。

局地的に起こった戦闘が最悪の広がりを見せた場合、それは沖縄に飛び火し、
(なぜならそこに在日米軍がいるから)さらに日本全土に波及することになり、
アメリカにまで及ぶかもしれません。

機能的戦域は核戦争、サイバー戦争にまで至ることになります。



【尖閣諸島問題の本質】


尖閣問題は、日中両国の全体の関係から見ればそれほど大きな問題ではありません。
しかしながら領土問題には妥協はないのです。
島が小さいから、というだけの問題ではありません。

問題の本質は、領土問題ではなく、中国の中華思想に基づく膨張政策の始まり、
その象徴が尖閣であるということなのです。
つまり、中国という国が今まで通りである限り、この問題は終わることはない。
彼らにすれば膨張し自分の領土を広げていくという欲望に終点はないのですから、

いずれ日中の衝突は避けられないかもしれません。


日本と中国の関係は、いまだに「決着がついていない 」んです。
中華思想は「決着」「上下」を付け、その序列の上に自分があるとするものですが、
日本との間は今のところ一勝一敗です。

663年の白村江の戦い。(中国の勝ち)

このとき日本は唐・新羅連合軍に大敗しました。

(エリス中尉註:この敗北は、日本史上でも大東亜戦争後のアメリカによる占領を除けば
日本が外国の占領下に入る危険性が最も高くなった敗戦であったとされる)

1274〜81年の元寇。(日本の勝ち)

鎌倉武士も頑張ったし神風も吹きましたが、結局フビライが死亡したので
決戦が回避され、日本に勝ち星が上がりました。

1941年、日本敗戦。

しかし、これは中国と決着がついたわけではありません。
無条件降伏はしましたが、中国に負けたわけではない。
つまり、未だ雌雄を決した関係ではないのです。
中国が力をつけてきて、より先鋭化した膨張政策を進める中、

「日本との決着をつける時代だ」

と考えているとしても全く不思議ではないのです。


【当面の対応】


中国の狙いは日米の離反です。
しかし、実際に日米が同盟を解除することがあったとしても、
それは必ずしも日本の滅亡や中国の属国化を意味しません。
より自主的で米国にも中国にも依存しない大国日本の誕生になる可能性があります。

日米の絆は核です。
日本も核を持ち、中国、アメリカ、日本と鼎立するという構図も可能性としてはあります。
しかし、それは皆に取って幸せなことなのか?

軍事的大国になることは日本に取って幸せなことなのか?

そんなことは日本人は望んでいないでしょう。
沖縄の小学校では、自衛隊員の子供を入学させない、という話もあります。
理由は「人殺しの子供はうちの学校に入れない」です。
戦後一人の人間も殺していない軍隊なのにです。

こういう人たちは自衛隊は戦争をしたがっていると言いますが、
実際自衛隊ほど戦争が嫌いな集団はありませんよ。
だって、戦争になったら自分たちがまず死ぬんですから。
何があっても戦争は回避してほしい、そう心から願っているのが自衛隊員です。



それでは当面、どのように対応していけばいいのか。
まず日米同盟の強化でしょう。
沖縄の在日米軍の再編はいわば過去の遺物です。
そして、集団自衛権の行使です。
武力の行使と武器使用を法改正によってできるようにすることです。

武器といっても武器だけではないんですよ。
例えば自衛隊の持っている野外手術システム。
これは集団的自衛権の足かせで現行は使えないことになっています。

そして、大事なのは多国間協力です。
特に連携をはかっているのはインド、ベトナム、そしてオーストラリア、台湾。(韓国)。

(エリス中尉註:つい最近もオーストラリアのパースで豪海軍主催のシンポジウムがあり、
我が海自からも出席があったと幹部の方からお聞きしたばかりです)

安倍首相は就任以来精力的に世界を回り緊密な関係を構築しようとしています。
各自衛隊の質的な強化も進めていくべきです。

そして、戦いを自衛隊だけに丸投げしないことですね。

防衛産業の強化は勿論ですが、国民にも戦う覚悟を持ってもらいたい。
自衛隊は国防の尖兵ですが、いざとなると主力は国民なんです。
これは徴兵するとかそういうことではなく、今の軍事情勢に対して無関心でいないこと。
いざという時も大局に立った冷静な世論を構築するためにも。

敵対するだけでなく関係の宥和も必要です。

今もし何かが尖閣で起こったときに心配なのは、日中間にホットラインがないこと。
ホットラインの創設は提案されたこともありますが、今はストップしたままです。
当面、この創設に向けて努力することと、将来は人民解放軍と自衛隊で共同訓練まで行えればいいんですがね。

(エリス中尉註:中国主催の観艦式に海自を参加させなかったため、
米海軍がそれを不服として出席を取りやめたというニュースがあったばかりです。
リアルUSA! USA!状態で、佐藤正久議員も評価していましたが、それにしても中国、
なんというか、大国としてはかなり余裕がないというか、小っせーな、というか)


【靖国神社とケネディ大使】

ケネディ大使の「disappointment 」ね、
あれはもしかしたら日米同盟の崩壊の序曲になったかなと思います。
だって、あれは明確に

他国のナショナリズムの否定

をしたわけですからね。
靖国神社は墓じゃないんです。
魂を祀っている、つまり心の有り処と感謝の場を否定してしまったんですから。 
日本が独立した後、アメリカは靖国神社については表明したことがなかった。

(註:ブッシュ大統領は来日時に靖国神社参拝を主張したが叶わなかった)

こんなことを言えば日本国民が皆不快感を抱くくらいのこと、今まで
アメリカはわかっていたんですよ。
それが、中国韓国の大騒ぎに黙っていられなくなって口を出してしまった。

アメリカもなんというか、余裕がなくなっているなと思いますね。


【終わりに】 


国民が自国を守る意思を明確に世界に向けて示さなければなりません。
誇り高き国に生まれ変わるには自主憲法の制定が不可欠です。


わたしが自衛隊だから言っているんだろうと思われるかもしれませんが、
陸幕長として世界中の軍隊を見て来て確信しているのは、
日本国自衛隊の能力は世界でも最も優秀だということです。
アメリカ軍よりもわたしは上だと思っています。

しかも、強い軍隊であるのにもかかわらず常にその視線は「下から」で
国民の従僕であることを以て任じています。
こんな素晴らしい軍隊が世界のどこにありますか。

我が国は世界でも最も自由で、豊かな自然を持ち、安全でしかも美しい国家です。
こんな日本を、素晴らしい日本を少しでも良くして子孫に残すことが
今のわたしたちの責務であり義務であると思います。




(当日の講演に参考資料の文章を加筆し、筆者の補足を加えて構成しました) 

 





 

 



 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2815

Trending Articles