海自と言えばカレー、カレーと言えば海自。
伝統墨守、動脈硬化がキャッチフレーズ(ちょっと違う?)の日本国海上自衛隊が
帝国海軍の伝統を最も濃く受け継いだ 事柄の一つと思われるのが「カレー」へのこだわり。
「金曜日はカレー曜日」
というとあるカレーの宣伝は、もはやこの海自の習慣が一般にも膾炙し、
それを当たり前のこととして国民が受け入れているという現象の証左と言えます。
「海軍カレー発祥の地」から、いつの間にか「海軍」という名を取り去り、
「カレーの町」と名乗って海自からお株を奪った町、横須賀の「町おこし」と、
自衛隊への国民の関心と親しみを持ってもらうイベントを兼ねたこのカレーグランプリ。
実はこの「護衛艦カレーグランプリ」、今年で二回目です。
第一回目は佐世保だったそうです。
町おこしがどうのというのなら、佐世保はカレーじゃなくてバーガーだろ!
とつい突っ込んでしまうのですが、このイベントは海自主催で、たまたま今回
それがカレーの町横須賀で行われただけのことのようです。
ということは、来年は呉で再来年は舞鶴で行う、という具合なんでしょうか。
わたしがこのイベントをどうやって知ったのかというと、ネット上で
「自衛隊でカレーグランプリイベントがあるぞ!」
という投稿型スレッドが立てられたのを見つけたからです。
ふと思ったんですが、こういう宣伝スレってもしかしたら「中の人」が立てるのかもしれません。
前日にもだめ押しのようにお知らせのスレッド(自衛隊の広報ページが貼ってある)を見ました。
本当にインターネットというのは今や広告媒体として広告業を介するより
よっぽど確実で効果も絶大、しかもタダという、発信側には無くてはならない方法ですね。
地本のHPなんかを見ると、制作者があきらかに「ネット用語」を駆使しているし、
組織でか個人でかはわかりませんが、自衛隊も実はネットに
「斥候を送り込んでいる」
というのは間違いないことのように思われます。
さて、わたしは8時頃車で現地近くに到着しました。
以前横須賀基地の見学をしたときに駐車したところが
8時30分にオープンすることを調べておいたので、駐車場の前で
車を停めて開くのを待ち、それから列に加わりました。
そのときにはここ、ヴェルニー公園の端っこくらいのところまで
入場を待つ人の列が伸びていました。
右側が並んでいる列、左側はJR横須賀駅から列に加わるために歩く人たち。
自衛隊の入り口はどちらかというと横須賀駅に近いのに、
列がどんどん伸びていくので最後尾まで戻ろうとする人は大変です。
わたしの前にいた女性の2人組は、インターネットでプリントアウトした
参加護衛艦のカレーの中から自分たちの食べたいものを付箋に書いて、
ファイルに貼って持って来ているという準備の良さ。
うーん、みんなカレーが好きなんだなあ。
わたしの後ろの、カーキのジャンパーに自衛隊イベントで買ったバッジや
ワッペン?をたくさん貼っていた年配の男性は、道往く人に
「これ、何のために皆並んでるんですか?」
と聞かれて、
「自衛隊で海軍カレーを食べさせてくれるんですよ」
とさらっと答えていました。
やっぱり年配の方には「海軍カレー」のイメージなんですね。
聞いた方も同じような年代の男性で、
「ほーそうなんですか」
と普通に納得していましたが。
8時半から開門の9時までは同じ場所で30分立ち続け、
9時過ぎたら列が動き出しました。
やっと米軍駆逐艦の見える場所まで来ました。
そういえばこんなものを見学したこともあったわね。
戦艦「長門」の碑。
横須賀駅前で集合して来たとおぼしき「地本集団」がきました。
地本を通じてイベント参加を決めた「入隊予定者」かもしれません。
カレーを食べるのには普通に並ぶ列以外に「特別」の入り口がありましたから、
彼らはきっと優待待遇で待たずに食べられたのではないでしょうか。
噴水の広場まで来ました。
前にここには「カーティス・ウィルバー」と「ラッセン」が泊まっていたのですが、
今日は「フィッツジェラルド」(62)と「ステサム」(63)です。
ステサムは以前別のところに係留されていましたから、
特に係留する岸壁は決まっていないんですね。
ただ、ここには駆逐艦を泊める、ということだけ決められているようです。
ところで、この駆逐艦の横にはいつもなら海自の潜水艦が泊まっているのですが、
今日は二隻とも姿が見えませんでした。
会場内で近くにいたカップルが
「今日は潜水艦が見られたから良かった」
と会話していたので、おそらくこのとき訓練で港湾内を潜行していたようです。
わたしは潜水艦は見られませんでしたが、その代わり、
作業艇が航行するのを見かけました。
そして、画像を大きくしてどこの作業艇かチェックしてみたら・・・・
「ふ ゆ づ き」 でした!
舳先に立っている隊員が遠目にもかっこいいではありませぬか。
それにしても、何たるご縁か。
わたしは、あなた方が自衛艦引渡式とそれに続く自衛艦旗授与式の後、
三井造船の岸壁を出航していく瞬間に立ち会っているのよ。
その節は雨に降られて大変でしたねえ。
てな感じで、自衛艦として巣立っていく様子を見たせいで、
すっかり親近感を持ってしまっているわたし。
作業艇がいるってことは、「ふゆづき」はいま横須賀に寄港しているってことよね?
ここで列を振り返ってみました。
最後尾はもう全く見えず、周りの人たちの話によると、
もうすでに列は横断歩道の向こう側まで伸びているとのこと。
8時半から並びだしてこれだもの。
「あまり早くに並んで、朝からカレーを食べるはめになるのはちょっと」
などとちょっとでも考えたわたしが間違っていました。
ようやく入り口の看板が見えて来たときには、並びだして
すでに40分くらいが経過していました。
でも、これはまだ早く入れた方であったことが後で分かります。
敷地内に入ると、金属チェックと手荷物検査があります。
ゲートをくぐったとたんにまた列に並ぶわけですが、
列は折り畳まれたように荷物検査場の前でダンゴのようにになっています。
「うぜー」
並んで列を作り何かを待つということが何よりも嫌いなエリス中尉、
カレーのテントが見えもしないのにびっしりと人が並んでいるのを見て
早くも意気沮喪してしまいました。
「運営の手際が悪い」
などと、近くの人が愚痴っていましたが、そう言うことじゃないでしょ。
おそらく、海自の方もこんなに人が詰めかけるとは想定外だったと思います。
日頃缶詰くらいしか食べる機会のない護衛艦レシピのカレーを、
あれこれ食べ比べてお一人さまわずか500円。
これはおそらく材料費ぐらいの意味しかなかったと思うのですが、
わたしが思うにこれが安すぎたんじゃないかな。
1000円くらいにすれば、もう少し人が減らせたんじゃないかと思うんですが。
え?その値段だとまるで自衛隊が商売してるみたいじゃないか、って?
あなたは、この日ここに詰めかけて結局何も食べられなかった人の
めまいするくらい長い人の列を見ていないからそんなことが言えるんです。
昼前にすでに場内では「カレーはなくなりました」と言われていたのに、
まだカレーを食べるつもりの人が入って来ていたんですよ?
さて、わたしが敷地内で荷物検査を終えたのは10時前というところです。
停泊している護衛艦の甲板を望遠レンズで撮ったところ、
結構見学している人がいるではないの。
今だからこれだけ空いているけど、時間が経てば経つほど
カレーを食べ終わった人々が護衛艦見学になだれ込み(だってほかに見るものないし)
大変な混雑になるか、あるいは乗艦制限されてしまうかもしれません。
「決めた」
もうカレーはいいや(笑)
カレーはいくら写真に撮っても味が皆さんにお伝えできるわけじゃないし、
最悪食べられなくてもいいから、先に護衛艦見学をしよう。
「すみません、カレーじゃなくて護衛艦見学したいんですが」
列の近くにいた自衛官にこう声をかけてみると、ご丁寧にも
「こちらへどうぞ」
と列から外に誘導してくれ、
「ここをまっすぐ行くと(って、まっすぐ行くしかないんですが)、
『あしがら』と、左の奥に『こんごう』が泊まっていて見学ができます」
とさらにご丁寧に教えてくれました。
あごをしゃくって無愛想に
「あっち行って」
などという態度の悪い隊員はここには一人もいません。
当たり前か。
今や銀行やデパートの新人研修で自衛隊に体験入隊、というくらいですからね。
接客にかけては民間とはもはや基礎が違うのだよ、基礎が。
その理由は、元陸幕長もおっしゃっていたけど、基本的な「下から目線」の姿勢
・・・・・かな?
というわけで、まだがらがらの「あしがら」(シャレのつもりではありませんでした)に、
己の脳内でのみ鳴り響くサイドパイプに迎えられ、足取りも軽くエリス中尉は乗艦したのであった。
続く。
ところでエリス中尉はカレーを食べることができるのか。