よこすかわいわいのりものフェスタの日、公開されていた
横須賀地方隊の艦艇見学についてお話ししています。
まずは後甲板を外から。
甲板が「ふゆづき」と同じ「オランダ坂」で、人々が立っている部分が
ヘリの離発着が行われるので水平であるため、およそ1.5mくらい高くなっています。
ほぼ全員が写真を撮っていますね。
同じく外から、ヘリ格納庫とCIWS。
後部のCIWSは20mmの2番砲を意味するので22番砲と呼ばれます。
「たかなみ」「むらさめ」型は左舷寄りにありますが、
「あきづき」型は中心線上に配置されることになっています。
「弾の装填のときに大変怖い思いをする」ということですが、
あきづき型は格納庫の天蓋上にCIWSがあって、そんなに高くないように見えます。
せいぜい2m(それでも怖い人は一般人ならいるだろうけど)。
「むらさめ」「たかなみ」型と違い、格納庫に直接ではなく、
台座の上に乗っているとはいえ、自衛官に取っては楽勝ではないでしょうか。
新型艦は少しでも隊員のストレスを減らそうとしてこのような仕様に
・・・・・したわけじゃないんだろうな。別に。
CIWSの下部に十字架状のランプが見えますが、これは誘導灯。
ライトが点滅し、着艦するヘリに正しい姿勢を示し、誘導します。
というわけで甲板にはあまり用がないのでさっさと進んでいくと、
なんと通路が格納庫の中。
「あきづき」型の特色として、格納庫はそのまま後部構造物と一体で、
外ではなく、格納庫の中が通路になっているのです。
たしか「むらさめ」型は、甲板に通路を示すラインが艦の全周にわたって
書かれていて、乗員はそこを走るのだと聞きましたが、
どうもこの「あきづき」型の仕様では走り難そう。
だって、この小さなところを通らないと向こうには行けないのよ?
下手にランニングでもしようものなら向こうから来た乗員とぶつかって、
という事故が起こること必至。危険すぎる。
というわけで、「あきづき」型の乗員は甲板ランニングはしない、
と仮定を立ててみましたが、もしかしたらこれ以外にも
通路があるのかもしれません。
Z
格納庫の通路には分かりやすい現代戦の説明が
パネルで展示されていました。
「現代の潜水艦は静粛性が高まっており」
ただでさえ静かな潜水艦、海自の場合は全く無音で、
つまりエンジンを停止したまま海流を利用して敵(米軍)の
駆逐艦の真下に到達してしまったという伝説がございまして。
相手に取ってはこういうニンジャの末裔みたいなのは
全くやりにくい嫌な相手なんでしょうね。
ところで今思ったのですが、この演習のとき、なぜ米海軍は
ソナーの捜索で海自潜を見つけることが出来なかったのでしょうか。
この二枚の戦闘の図を見て気づいたことはありませんか?
対水上戦は、自衛隊側の攻撃になっていますが、なぜか対空戦は
自衛隊が攻撃を受ける側として説明されています。
佐世保に来ていたサヨ軍団のHPに、
「海賊なら殺しても文句は言われないから、血に飢えた自衛隊は
海賊を相手に実戦を積み、海外派兵の足がかりにするつもりだ!」
と書いてあるのを見て文字通り大笑いさせていただいたのですが、
こんな、ほとんどの国民なら
「大丈夫か」
と一笑に附してしまうような類いの基地の外の人たちに対しても、
当事者の自衛隊としては配慮、というより揚げ足を取られないように
展示や配布などの内容に気を遣わねばならないわけです。
これも
「自衛隊が他国を攻撃ばっかりしているじゃないか!
やっぱり血に飢えた軍隊の侵略の意図がフンダララ」
と言われないように(まさかと思う方、本当にこう言ってるのよ)
こういうところにも細心の注意を払っているのかもしれません。
格納庫の隅には救助用の担架が二種類。
それにしてもどこを見ても新造のように全く汚れがありません。
「てるづき」はご存知のように「すずつき」「ふゆづき」の就役に
先立つこと1年前の2013年の竣工ですから、まだ1年目、
ただでさえ「掃除ばかりしている」自衛隊の運用している艦ですから、
きっと中国海軍の艦艇の就航1週間後より綺麗に違いありません。
丸い窓から推察して、これは魚雷を運搬し、
ハンドルを回して操作し持ち上げるものではないでしょうか。
ところで、このヘリ格納庫には2機のSH−60を収納できます。
ここは空ける必要があったため、SHは外に展示されていました。
格納庫の床にはレールのようなものが何本も見えますが、これは
ASIST Mk.6という着艦拘束装置の移動するレールです。
レールが二基分あるのは「あきづき」型が初めてです。
「ふゆづき」の出港式のときにも、格納庫の中央に何のために
跳ね上げ式の柱があるのかと書いたのですが、この日
ここにいた乗員に聞いてみました。
彼によると、2機格納しているときに片方のシャッターを閉めて
稼働していない方を隠しておくことも出来るから、
というのも理由の一つだそうです。
一人しか通れないせまいハッチを抜けていくと、右舷則にでます。
そこには海自艦艇についての基本情報を記したパネルがありました。
意図したものではないと思いますが、このパネルを見て
ふと海に目を転じれば、そこにはこのような
横須賀リピーターにはもうすでにおなじみの潜水艦が。
これはなんて効果的な掲示方法だろうか、と思いながら写真を撮っていると、
そこに立っていた年の頃40くらいの幹部が声をかけてきてくれました。
「あれは『そうりゅう』型です」
「艦名まではわからないんですね」
「型が何かまではわたしたちはみればわかりますが、
艦名までは(どうでもいいというか)・・・」
わたしには三つの写真とまじまじ見比べても全くどれかわかりません。
というか、どれも同じに見えるんですけど。
せっかくの機会なので、かねてからの疑問をこの幹部に聞いてみよう。
「どうして潜水艦だけ米軍側にあるんですか」
「米軍側といっても、あの後ろ側の建物はみな自衛隊のものなんですよ」
「あの一帯は海自の敷地なんですか」
「というより同じところを使っているという感じですね」
「潜水艦を繋留するための施設があそこにしかないということですか」
「そういうことですね」
なんだ、ニンジャ潜水艦の動向を米軍がチェックするためじゃないのか。
「じゃ潜水艦隊員は三笠公園の、あそこから出入りするんですか」
「そうです。わたしたちは自由に出入りできます」
あそこから潜水艦のところまで結構な距離だったと思うけど、
潜水艦隊の隊員は出勤も大変そうだなあ。
と、このように空いたところを利用して(笑)
パネル展示がされていて大変親切です。
上に見えているのは90式艦対艦ミサイル。
「むらさめ」型以降の日本の艦には全て搭載されています。
設計は技研(自衛隊の)と三菱による純国産。
この90式は空自の航空機搭載ミサイル80式空対艦誘導弾を基に、
ファミリー化して開発されてきたミサイルに属します。
陸自の88式地対艦誘導弾もこのファミリーですね。
「X」はわかった。
それではDの中に「Z」が書かれたこのドアは?
これは戦闘中または保安上必要とする場合に、閉鎖されるという意味ですが、
さらにそれがDで囲まれた場合、 灯火管制時に閉鎖する、という意味です。
このドア、「閉」が飛行科、となっているのでヘリ運用に関係しているのですが、
搭乗員の控え室から繋がっているドアなのかな。
艦内閉鎖標識を調べていて、この表示の謎も解明しました。
これは「T」が戦闘通路、「D」は洗浄所通路、だそうです。
・・・・・・といわれてもどちらも意味がわかりませんが。
DはドレーンのDだと思いますがTは?
まさか「たたかう」だったりして・・。
スライディングパッドアイも試験をするようです。
「上部アイ」は222.6kN、「下部アイ」は78.4kNというのが
2011年つまり竣工2年前の試験で出された結果となっています。
単位が分からないので断言できませんが、これは
「 222.6kgで壊れた、あるいは切れた」
と解釈してよろしいんでしょうか。
ここに案内図があったのか。
「てるづき」のシンボルは詩的ですね。
この艦の士官室には、満月が海を照らす中、
背景に富士山をいただいて航行する「てるづき」の絵がかけられています。
(見てないけどなぜか知っている)
主砲を「51番砲」としていますが、CIWSの法則に照らすと、
これは50m砲の一番基という意味であるはず。
と思ったらこちらは「5インチ砲」だそうで。
うーん、イマイチ統一性のない名称ですね。
ちなみに1基しか搭載していないので「52番砲」はありません。
RSDというのが後甲板にありますが、これはヘリのベアトラップ、
つまり着艦拘束装置のことです。
しまった、この写真を撮るのを忘れた。
艦橋構造物脇の通路には、吊るされたモップや帚、
防舷物(艦と艦を並べるときに間に噛ますクッション)
が整然と並べられています。
もう少し通路を進んでいくと・・・
舷梯を昇降するときに見張るためのもの?
横長の楕円に切られた覗き窓が開けられていました。
ちょうど外を見ていると通りがかりの軍港巡りの船が。
見たところ満員御礼状態で航行しているようです。
またまた見つけた、安全守則。
今回はチャフ弾のものです。
さすがにチャフは発射時には周りにいても大丈夫だと思いますが、
それでも安全帽は装着しなくてはならないようです。
ところでわたしは先日朝霞で「りっくんランド」に展示してある
自走砲にもチャフランチャーが装着してあるのに気づきました。
これは「ちびしま」のですが(笑)まさにこの形をしていたので、
「チャフランチャーみたいですね」といったところ返事は
「チャフランチャーです」でした。
護衛艦のほど大きくはなく、もちろん「ちびしま」のよりは大きいですが、
全く同じ製品であると思われました。
チャフ(chaff)とは「電子欺瞞紙」という名の通り、アルミ泊一枚でも
十分役目を果たすものです。
わたしなど、「紫電改のタカ」で、滝城太郎が紫電改から
アルミ箔をばらまいて米軍艦船を欺瞞したシーンを刷り込まれたので、
物心ついたころにはすでにチャフのなんたるかを知っていたわけですが(笑)
昭和20年当時の日本に、あんなに簡単に
「アルミ箔」というものが手に入れられる状態で存在したのか?
はたして滝城太郎は、どこでどうやってアルミホイルを
あの非常時に用意することが出来たのか?
今にして思えばツッコミどころの多い漫画だったなあ。
え?漫画だからそんなもんだろ、って?
こちらは短魚雷の安全守則。
雷体に傷をつけるな(小さな傷も性能を悪化させる)
他の注意は注意だけに留まりますが、この部分は
なぜか理由まで説明しています。
よほどシリアスな問題なのだと思われます。
そして
燃料漏れを発見したならば→有害であるので→気化ガスを吸うな
アメリカの最新型魚雷であるMk60バラクーダは、六フッ化硫黄
が使われていますが、これは化学的に安定度が高く、無毒、無臭、
無色、不燃性の気体で、運用は非常に安全です。
もしこういうものなら、わざわざ安全守則に「ガスを吸うな」などと
書かなくてもいいわけです。
が、しかしこのガスは温室効果ガス指定されていて、京都議定書では
削減対象となっているのですね。
アメリカは京都議定書にサインしてないから関係ないんですけどね(棒)
というわけで、環境に配慮する日本の自衛隊としては、
安全でも環境を悪化させるガスを使うよりは、多少危険でも
運用に注意しつつ環境に影響のない武器を使うのでした。
舷梯を収納する部分のハッチが全開されていました。
この部分ですね。
これは「ふゆづき」です。
今から舷梯を引き揚げる作業。
引き出すときは皆で「せーの!」と引っ張るのが
ここはステルス性のため出港時ぴったりと閉ざすと、ほとんど見えなくなります。
その舷梯を初めて内側から見られました。
一般開放日だから開けているのかと思ったのですが、
普段も解放していることがよくあるようです。
前甲板に出てきました。
艦首旗の周りにやたら人が群がっているようですが、
錨鎖と抑鎖機(鎖を留めるもの)、キャプスタンの部分より
艦首旗側に行けるようになっているので、皆がそこで
写真を撮るために立ち止まっているのでこうなっているのです。
艦橋からマストを見上げてみました。
見えません(笑)
なぜかというと、「あきづき」型はステルスマストで、
後方斜めに傾斜しているので、この角度から見るとちょうどマストが
見えなくなるのです。
だからステルスマスト?というのは冗談です。
それから、艦橋の壁面を見て下さい。
やたらぼこぼこして波打って見えませんか?
これを俗に「痩せ馬」といい内側に凹んでいる仕様です。
なぜ痩せ馬かというと、やせ衰えてあばら骨があらわになった
馬の体を想像させるからだそうですが、新鋭艦なのに
どうしてこんな仕様になってしまうのでしょうか。
それは、軍艦というのは出来るだけ船体を軽く作るために、
構造を工夫して外板を必要最小限にまで薄くするためです。
一般に商船に比べても板厚が薄く、こうなってしまうのです。
艦底にこれがあると抵抗も増えるし決していいことではないはずですが、なぜなのか。
「あきづき」型が計画されたとき「痩せ馬」対策がなされました。
それを防ぐ複合素材被覆船体等によるステルス性能等の向上策が
盛り込まれる予定だったのです。
しかし、予算の縮減を受けて最終的にその計画は見送られたのでした。
見送られたのはこれだけではありません。
●甲板上の艤装物、艦載艇、対艦誘導弾を覆うスクリーン等
●統合推進動力、先進推進システムの採用
●艦載ミサイルの国産化
●SeaRAMなどの近接防衛能力の向上
こういった事案がことごとく破棄されてしまったのです。
「あきづき」型1番艦の予算は要求された予算額は848億、
それに対し認められた予算額は750億円です。
先日同時に就役した「ふゆづき」「すずつき」のための予算は
2隻で1,451億円ですから、1隻が725億あまり、
25年度予算で決まった汎用型護衛艦はさらに減って701億となっています。
20億ずつ減っていっているというのも凄い話ですね。
つまり「痩せ馬」とは自衛艦にとって予算削減の象徴のような現象なのです。
またこの名前が「負け犬」っぽくて何とも情けないではありませんか。
平成25年に予算の付いた汎用護衛艦の就役は平成28年になる予定ですが、
この護衛艦はもう今から痩せ馬決定なんですよ。
もうこうなったら開き直って艦名を護衛艦「やせうま」にし、
体を張ってこの流れに抗議するっていうのはどうでしょうか。(顰蹙)
続く。