平成26年度総火演のリハーサルが終わろうとしています。
リハの最後は武装ヘリの攻撃。
CHや海自、陸自の航空機はリハーサルしません。
AH−64Dアパッチが銃撃しているとき、銃弾らしきものは見えず
この写真のように機体の下部に向かって白い煙が
連続的に噴き出していました。
アパッチといえば、先日、ライブリークの映像でこの武装ヘリが
人間を(建物じゃありません)次々と狙い撃ちしている
モニターの白黒映像を見てしまい、心が冷たくなりました。
明らかに一人の人間を追いかけ回し狙いを定めて、
人一人殺すにはオーバーキルとしか言いようのない爆撃を
執拗に加えるそのやり方は、終戦間際の日本本土で
たとえば御堂筋沿いに逃げ惑う人々を掃射しながら何航過もしたという
グラマンのパイロットの仕業を思わせました。
ところで実はエリス中尉、この日の前日、丸の内にある某軍需産業(笑)に、
元陸幕長への表敬訪問をしお話を伺ったのですが、その話の中で
最も印象的だったのは、まず
「自衛隊はおそらく練度において世界一の軍隊だと思う」
ということばでした。
元陸幕長の元には各国武官や軍事関係者などもよく
色々な折衝や相談を持ってやって来るわけですが、先日、某隣国の関係者に
「我が国の戦力に着いてどう思うか」
と聴かれた元陸幕長はたった一言
「論評するに値しない」
と言い切ったのだそうです。
もし海自とこの国の海軍が戦力を交えたら、30分で勝負がつくんだって?
とある政治家が訪ねたところ海自関係者は
「さすがにそれは無理です。3時間はかかるかと」
といったという逸話もあるようですが、まあそういうことです。
「そ、それで相手はなんと・・・?」
「がっくりしてましたね」
はあ、がっくりするでしょうなそれは。
しかし、しかしです。
それに続けて元陸幕長はこのようにもおっしゃったわけです。
「某国はさておいて(笑)じゃあ中国と万が一戦争になったら勝てるか、
というとそれはわからない。
わからないけど、勝てないのではないかと思う」
わたしも、たとえばこんなアパッチの殺戮ビデオを見て考えます。
「果たして同じ性能の、同じ武装のヘリに乗っていたとして、
こんな攻撃が今の日本人にできるのだろうか」
無防備で逃げ回っている人間を執念深く追い回し、
一人に何発もの爆弾を狙い定めるなどという真似はできそうにない。
それをするのが戦争だということであっても、たとえそれをしなければ
自分がやられるかもしれないと言う状況でも。
いかに陸海空自衛隊が精強の軍隊であったところで、
どんな非道な手を使ってでも先手を打ち相手を殺戮する、
ということだけは、戦後の平和しか知らない日本人には無理でしょう。
しかし戦争はスポーツではないのです。
「守りたい人がいる」などと当たり前のことをわざわざキャッチフレーズにしてまで
武装のアリバイをしなくてはいけなくなったわれわれ戦後日本人。
そんな平和の純粋培養で生きてきた日本人に、どんな汚い手を使っても
相手を殺し自分が生きるという戦争が果たしてできるのか?
答えはNOです。
元陸幕長の「勝てない」というのも、結局こういう意味でしょう。
だからこそ、戦争回避というのは何をおいてもなされなければなりません。
ちなみに元陸幕長は、そのために一番大切なことは
「国と国との対話を途切れさせないこと」
で、経済的にすでに相互依存が深まっている現在、
日中間に戦争が起こる可能性は低いけれど、この厄介な隣人と
付き合って行くには軍同士の人事交流は特に有効であり、理想的には
合同で軍事演習をすることができれば、とのことです。
そしてこうもおっしゃっていました。
「自ら姿勢を正し隙を見せないこと」
そしてそれこそが、自衛隊を通じて我が国の護りの力を堅持することで、
総火演とはそれを内外に知らしめるものとなります。
わたしはこの日一日、陸自の実弾演習を見ながら、
前日の元陸幕長のこの言葉をあらためて噛み締めた次第です。
という話はさておき(笑)、リハーサルは終了。
国の護りを担う陸自隊員たちも和やかに鑑賞しております。
今気づいたのですが、このスタンドからもしかしたら
赤や赤白のヘルメットを被った隊員によって砲員たちに
合図が送られていたのでしょうか。
わたしの前の列、すなわち最前列には、ものすごく気合いの入った
カメラを持参で来ている人が目立ちました。
レンズはシグマです。
でもこの隣に座っていた人はフツーのデジカメでした。
その隣の、背中が見えている人は、あるとき振り向いて
「どっかで聴いたシャッター音だと思ったらNIKON1だった(笑)」
と話しかけて来られました。
「音で分かるんですか!」
「独特の音がするし、かみさんの分も合わせて2台持ってるので」
室内でもちゃんと撮れるし何と言っても軽いから自分も町歩きには
ほとんどNIKON1ばかりになってしまった、とのこと。
今なんとなく調べたらNIKON1は6月に300mm望遠(勿論小さい)が
新発売されていたんですね。 (欲しい)
通路の突き当たりには常時隊員が一人か二人、見張りをしていました。
演習の行われているときには小さな椅子に座ってこちらを見ています。
皆の視線の妨げにならないようにだと思われます。
本番までの間に音楽隊の演奏が行われました。
最初の演奏は中央音楽隊のみの演奏です。
この日の演奏は三回、本番前と前段・後段演習の間、そして
装備品展示の準備をしている間に行われました。
「世界のマーチ」ということで、まずは我が日本国の「君が代行進曲」
に始まり、インバーカーギル(ニュージーランド)ブロックM(アメリカ)
など6曲ほどが演奏されました。
本番に備えて演習場では地面の整備が始まりました。
まずたくさんの散水車が水を巻いてまわります。
戦車や榴弾砲と同じくらいの熱心さで写真を撮るエリス中尉(笑)
ここで何枚も撮ってしまって後段演習のヒトマルが出てきたときには
持ってきた電池が二つとも切れていたと言われている(T_T)
でもわたしにとっては演習も整備も全く同等の、
「ジエイのお仕事」なんだもーん(ぶりつこ)
わたしはほら、武器オタクじゃなくて、自衛隊オタクファンですから。
それにだいたいこんな整地の仕方を見るのも初めてだし。
立って操縦している人はともかく、もう一人は
何のためにここに座っているのか?とか。
あれ?これとさっきの車は同じもの?とか。
これはグレーダといいます。
民生品(これだけ三菱重工製)がそのまま使われています。
一般的にはこの車両をモーターグレーダーと呼びますが、
自衛隊仕様は色をオリーブドラブ色にしているだけの違いです。
これら整地のための装備を操縦している人にも注目してみる。
グラウンドに立って旗を振る係。
彼が腰から下げているのはなんと専門の旗用バッグ!
袋ではなく、旗を差す丸い穴が空いているんですよー。
ちゃんと迷彩柄でこだわっています。
こういう装備こそコマツの独断場・・・?と思ったら、
案外違っていたりするわけで、これも興味深いですね。
酒井重工業はローラーを専門に製作しているメーカーです。
HPを見たついでにこの型番を探してみたのですが(笑)
どこにも見当たらなかったので自衛隊の特注かと思ったら、
どうも民生品に所定の改装を施したものであるようです。
これをロードローラーと称します。
なんと、土が減っているわけでもなさそうなのにダンプで土撒きしてます。
陸自は日頃ここで同じ状況を行うのだと思うのですが、その度に
このような整地を行っているのでしょうか。
まるで野球部が練習前と練習後、グラウンドを清め整地するように。
「スポーツではない」ではないですが、自衛隊はやはり
運動部みたいなところがあるかもしれません。
このような会場の整備を行っているのは、
教育支援施設隊
といって、陸上自衛隊富士教導団の隷下にある部隊です。
ここ、富士学校における学生教育・調査研究支援、またはここ
東富士演習場等の各種整備、工事などを行います。
施設科は道や陣地を作って部隊の前進を支える役目を担いますが、
実は災害派遣には真っ先に出動し、活躍している部隊でもあるのです。
ところで総火演には外国メディアの記者も取材に来ており、
(来てもらわないと困るわよね、そのためにやっているんだから)
元陸幕長のいうところの「論評に値しない」軍隊を持つ国の記者は
日本人が一番好きな富士山を背景に、
自衛隊の攻撃シーンを存分に楽しむようにした訓練で、
戦争できる国・日本に対する心配は見られませんでした。
などという記事を書いています。
「戦争できる国」というのはまるで日本国内の左翼みたいな言い草ですが、
(あっ、ある意味同じ人たちなのか)集団的自衛権も個別自衛権も
もともと全ての国に与えられている権利なんだし、
それが行使できるようになったからといって心配するような人は
そもそもここには来ていないと思うぞ。
最後までうろうろしていたニンジャ。
緑の丘陵に(レンズをつけかえたときに入ったらしい
ゴミが写り込んだ)夏の青空を飛ぶOH−1は実に絵になります。
スタンド席の後ろをこっそり飛ぶニンジャ。
入間の航空祭でお辞儀しているアパッチしか見たことがないと、
ライブリークの鬼畜な(といってもあれが本来の姿)姿などを見て
お花畑日本人としては結構どん引きしてしまったりするわけですが、
ニンジャの場合、国産で戦争を知らず、しかも偵察機。
安心して「萌え」ることができます。
いずれにせよ装備に萌えることができるのは平和の証拠かもしれません。
さて、前段演習が始まりました。
まずはオーロラビジョンで演習場地域の説明です。
中・遠距離火力が狙うのは後ろに位置する番号の付けられた「台」。
機関銃や無反動砲などの近距離火力が狙うのは、
手前にある色の割り振られた部分です。
場所の説明をするのにわざわざスモークを炊いてくれます。
とても親切で分かりやすい説明です。
わたしは写真を撮るのに一生懸命であまり聴いていませんでした。
演習に先立ち、富士学校校長の武内誠一陸将がご臨席。
説明しているのが本日演習の統括者で後ろは副官かな?
黒塗りの車にはえび茶色の桜4つ、防衛副大臣旗が。
なんと予行演習だというのに木原政務官がご臨席です。
防衛大学の観閲式で観閲官だったときお見かけしました。
本番にはもしかしたら防衛大臣が出席したんでしょうか。
演習は富士学校長が陸幕長に準備が整った旨報告し、
陸幕長がさらにそれを政務官に報告することで始まります。
さて、いよいよ前段演習の始まりです。
前段演習は陸上自衛隊の主要装備品の紹介となります。
87式偵察警戒車の後ろから兵員が飛び出してきました。
もう演習は始まっています。
はて、なんだかみたことのない装甲車が。
これは87式砲側弾薬車といいまして、野戦特科が装備します。
自走砲に随伴して弾薬の補給を行うと共に
兵員の輸送を
兵員の輸送を
兵員の輸送を
行うのです。
・・・ということは!
リハのとき、203mm自走式榴弾砲の上に積載超過になっていたあの人たちが
本番ではここに乗っているのでは・・・・
と思ったのですが・・、
やっぱりこっちに8人乗ってました(笑)
ちなみにこれがリハのとき。
配置は全く同じですが、本番はお化粧して臨んでいます。
どうもこの部隊では、冒頭の隊員にも見られるような
「右目部分だけを残して左半分だけ斜めにメイクする」
というメイク法が流行っているようです。
「単に右手で斜めに塗ってるだけじゃないのか」
という説もありますね。
203mm榴弾砲部隊の演習はリハで詳しくお話ししたので省略。
99式自走155mm榴弾砲も独自のスタイルで走りつつ
砲撃を始めました。
向こうでFH70が火を噴いております。
この画面にある155mmと203mm榴弾砲とこのFH70の三つを
特科火力
と分類します。
FH−70の引き上げ。
自分で走れるんですね、この榴弾砲。
チャイコフスキーの序曲「1812年」で「楽器」として
使われている映像ばかりを見ていると、この「大砲」が
自走榴弾砲であることをつい忘れてしまいがちですが。
これにはさすがに二人しか乗れないみたいです。
続いて120mm迫撃砲隊。
対人狙撃銃もここで登場します。
迫撃砲もリハーサルで説明したので省略。
機動車から降りてきた兵員がいきなり地面に!
同じ車の反対側にも同じ姿勢で伏せています。
なにやら準備していると思ったら、
二人で無反動砲を扱っています。
一人は狙撃銃を背負っているので、こちらはサブかもしれません。
ちなみにこの少し前、観客の目の前を無反動砲が通りました。
こちらは携帯対戦車弾。
歩兵が携帯する大きさでありながら戦車を破ることができるとは・・・。
観客に見せるためでしょうか、ギリースーツの兵員が
前に立ってみせてくれました。
1月の降下始めのときなら暖かくていいですが、
この8月の演習にこのギリースーツを着て、
しかも銃を持って走り回るのは大変そうです。
きっと夏用とかないだろうし・・・って何心配してるんだ。
かれもメイクは右目残し派ですね。
旧カネボウのクラシエ製品であるこのメイクパレットですが、
やはり汗で流れ落ちないウォータープルーフ仕様だと思われます。
一般的にウォータープルーフは肌に負担をかけるものですが、
本製品は比較的お肌に優しい成分で作られているんですって。
陣地変換となった87式が帰ってきました。
先ほどこのような隊長だか車長だかの写真を挙げて、
ワイルド系でもガテン系でも体育会系でもない、などと書いたのでした。
それは遠回しにらしくないというか秋葉原にいそうというか、
なにしろ自衛隊の隊長っぽくないのではないか、とか、
そんな失礼なことを考えないでもなかったのですが、本番ではこれこの通り。
何が違うってたぶんメイクしか違っていないと思うのですが、
いきなり壮烈鬼隊長みたいな雰囲気になってしまってませんか?
女はメイクで変わるというけど、男も随分変わるものです。
総火演シリーズ、続きます。