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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「アメリア 永遠の翼」

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「女流パイロット列伝」シリーズでも、アメリア・イヤハートについて
一度書きましたが、そのときに観たアメリアの伝記映画

「アメリア 永遠の翼」(原題Amelia)

についてです。
航空機の歴史や歴史そのものに興味があれば、アメリア・イヤハートの
名を知らないはずはない、とわたしなどは思い込んでいましたが、
世の中そういう人ばかりではないので、特に日本ではこの映画は
ほとんど話題にもならなかったですね。

日本での認知度が低いからという説もありますが、未だに彼女を
航空黎明期のヒーローと評価しているアメリカで、
この映画がどれくらい 興行的に成功したのか知りたいところです。 



場面は、アメリアが命を失うことになる最後のフライトに
今から飛び立とうとするところから始まります。

1937年5月21日、カリフォルニア、オークランド。

わたしが去年見学した「オークランド航空博物館」のあった、
あの飛行場です。

これからアメリカとナビゲーターのフレッド・ヌーナンが、
赤道上世界一周旅行を達成するためテイクオフをするのです。

映画は、この出発の瞬間に始まり、彼女が遭難することを
示唆して終わるのですが、その飛行に、アメリアが
操縦しながら回想したこととして過去が描かれると言う手法です。



場面は変わって、ありがちな回想シーン。
少女のアメリアがカンサスの草原に飛来する飛行機を観て
空を飛びたくなった瞬間です。

次の瞬間には大人になったアメリアがその飛行機を駆って
同じ場所を飛んでいます。

彼女が初めて自分の飛行機を持ったのは24歳のときでした。



1928年、アメリア31歳のとき、彼女は運命の出会いをします。
夫となり生涯を通じてのスポンサーであった、ジョージ・パットナム
(リチャード・ギア)から

「大西洋を飛びたいと思いますか」

という電話を受けたのでした。



この映画では、大西洋を飛びたい、と言い出したのが
アメリアである、ということになっています。

パットナムは、

「3人もの女性が挑戦し、全員が事故死しているので、
もし成功したら女性初の快挙だ」

と言います。
そして、スポンサーの篤志家であるエイミー・ゲスト夫人は

「容姿端麗で話し上手な女性を捜してほしい」

と厳命した、と。
この時代、女性が空を飛ぶのにはよほどの実力か、
優れた容姿がなければスポンサーがつかなかったのです。

しかも、以前にアメリアについて書いたときにも述べましたが、
この飛行の操縦もナビゲーターも男性飛行士で、
女性は「パッセンジャー」。

それでもとにかく飛行機に乗って大西洋を越えれば

「初めての栄冠」

が手に入るというわけです。
しかし、ただの乗客では世間にアピールしないので、
女性が「指揮官」ということにする、と彼は嘯きます。

 

パットナムは飛行士をネタに金儲けを考えているだけで
彼らに対する敬意は全く持ち合わせていません。

「リンドバーグ?あいつには耐えられん。
上品ぶった頑固な男だ」

 

彼に反発するアメリア。

「わたしの言う通りにしていれば君はスターだ」 
 「つまりやらせね。わたしの夢見たことと違うわ」



現実での飛行は、ガンビアを横断しています。
ガンビアは西アフリカ西岸の国。
大西洋の横断は一瞬で終わったようです(笑)

アフリカの草原を群れをなして走るキリンやオリックスを
上空から眺めるアメリアとフレッド。



回想はパットナムが、大西洋横断のために操縦する
男性飛行士たちとアメリアを会わせるところにと飛びます。

1928年、マサチューセッツ州、ボストン。

大西洋横断の初飛行は水上機で行われ、
ボストン特有の湿地のような沿岸から出発したようです。

ナビゲーターの”スリム”・ルイス・ゴードン。



操縦士のビル・スターツ(シュトルツ)。
あからさまにうさん臭げな視線を彼女に向ける男たち。
腕利きと言われる彼らは「やらせ司令官」に反発しているのです。



初飛行の前に、万が一のことを考えて、と家族への手紙を
アメリアはジョージ・パットナムに託します。

「わたしを信用してくれるのか」

反発されていると思っていた彼は少し驚き、

「成功を祈って幸運を呼ぶおまじないをして」

というアメリアを可愛い女性だと意識するのでした。(たぶん) 

 

時々この映画は、白黒フィルム(実際のアメリアの映像)が挿入されます。
役者の容姿があまりにも本物とかけはなれていたらできない手法ですが、
この主役のヒラリー・スワンクはまるで生まれ変わりのように、
アメリアと似ているので何の無理もありません。

ちなみに、ヒラリー・スワンクは、この映画の製作総指揮者の一人です。

 

安全を期してフロートを履かせた機体は
重量オーバーで飛び上がることすら困難なのです。

 

案の定重すぎて機体が水上から飛び立つことが出来ません。

「指揮官、どうしたらいいか指示をくれよ」

シュトルツの皮肉っぽい言葉がアメリアに投げつけられます。

 

要するに、要らない重量=乗客であるアメリアのせいで飛ばない、
と彼らは彼女の存在を否定しているのでした。
関係者相手に

「鳩も飛ばせない女イヤハートに乾杯!」

などと酒の席で馬鹿にされているのを聞き、
アメリアは何事かを決心します。

そして天気図と現地の風向をチェックし、

 

二日酔いで寝ている男共を叩き起こします。

「飛ぶわよ!
追い風が吹いているから燃料を減らして離陸すれば大丈夫」



燃料を減らして飛ぶなんて、と渋るストルツに

「わたしが操縦するわ」

彼を置いてアメリアが正操縦士を務めるというのです。


自分も行く、というタイミングを失い、
岸に立つストルツに向かってアメリアが一言。

「 離陸するのはこのレバーを引いたらいいの?」

 

つまり、彼に参加するきっかけをあたえてあげたのです。
呆れた、と言った顔でにこりと笑い、飛行機に乗り込むストルツ。



今回は飛び立つことが出来ました。
しかし機体を軽くするため燃料を半分にしたのが災いし、
後1時間で燃料が切れるというときにタービュランスが。

 

木のドアが開いて落下しかけるというおまけ付き。
アメリアは着水すれば船舶の救助が受けられる、というのを

「だめよ!それだと失敗になるわ」

と受け入れません。



しかしそのとき陸地が見えてきます。

「ナイスワーク!」
「ホーリーハレルヤ!」

口々に健闘を称え合い、頭をなでなでしあう三人。
あんなに険悪だったのが嘘のようです。



陸地からボートが彼らを迎えにきます。
男性陣はちゃんとネクタイをして乗り込みます。
今のアメリカ人からは考えられませんが、当時の男性は
ネクタイをしていなければ失礼という時代だったのでしょう。

 

歌で三人を迎えるこの土地の人々。

「歌で迎えるのはアイルランドの習慣なの?」

訪ねるアメリアに、迎えにきた警官は

「それは知りませんな。ここはウェールズだから」

彼らの目的地はアイルランドのニューファンドランド島でしたが、
実際にたどり着いたのはウェールズ(対岸)だったのです。



ともあれ「女性最初の大西洋横断」は成功しました。
ニューヨークにパレード凱旋、そして一躍アメリアは
「時の人」として注目を浴びます。

何度も言いますが、このときアメリアが直後のインタビューで

「操縦はストルツがしたの。
わたしは乗ってただけの芋の袋みたいなものよ」

と自嘲したように、彼女を有名とした快挙は単に

「大西洋横断する飛行機の後部座席に乗っていた」

ことにすぎません。
映画ではあたかもアメリアが男2人を叱咤し、
持ち上がらない飛行機を飛ばしたように描かれていますが、
これも本人が直後にそう言ったり書いたりしたならともかく、
実際彼女は芋の袋以上でも以下でもなかったのですから、
これは映画用の演出だと考えた方がいいかもしれません。

これも何度も言いますが、アメリアはその地位に
決して満足しませんでした。


とはいえ、この快挙でインタビュー、執筆依頼、講演、CM出演、
写真の撮影などの依頼が彼女に殺到することになります。

仕掛人パットナムの戦略が功を奏して。



モデルのように飛行服でポーズを取るアメリアに
プロデューサーとして以上の好意で世話を焼くパットナム。



アメリアを有名にし、稼ぎどきとばかりパットナムは
あらゆる広告媒体への出演を彼女に要請します。

「操縦席の下に隠しておいたラッキーストライクだ。
この宣伝をする」
「わたしは吸わないけどあなたは吸って、って?」
「ストルツたちに金が入らん」

否応もなくサインをせまるパットナム。



大西洋横断の後、アメリアは次々と記録に挑戦します。

オートジャイロ(ヘリコプターの前身のようなもの)で
高高度達成をした、とここにはありますが、これに留まらず、
その障害で達成した記録はつぎのようなものです。

 

女性による達成高度の世界記録:14000フィート(1922)
  女性として世界初の大西洋横断(1928年)
  オートジャイロで飛行した最初の女性(1931)
  世界で最初にオートジャイロで米国を横断(1932)
  女性初の空軍殊勲十字章授与者(1932)
  女性としては最初に東海岸から西海岸までを飛行(1933年)
  女性による大陸横断最速記録(1933年)


かつての自分のエントリから引っ張ってきました(笑)



ジョージ・パットナムとアメリアは、成功の美酒に酔い、
陶酔の中で互いに相手を異性として意識するようになります。



最初にきっかけをつくったのはアメリアでした。
宿泊したホテルで、パジャマの上にコートを引っ掛け、
パットナムの部屋を訪ねるアメリア。



「踊ってちょうだい」

というわけで、そういうことになります。
このきっかけもおそらくジョージパットナムの書いた

「ラスト・フライト」

という本の記述ですから、鵜呑みにはできません。
何しろ彼は

「本を売るためなら多少の嘘は構わない」

ということを常日頃からモットーにしていたわけですから。



以前当ブログで「エリノア・スミス」という女流飛行家について
二日に分けてエントリを書いたことがあります。

この映画には、ニューヨークにかかる4つの橋の下を飛行機でくぐり、
「フライング・フラッパー」とあだ名されたエリノアが、
「第二のアメリア」を目指す野心家として登場します。

「パットナムさん、わたしを売り込んで下さい。
ナンバーワンの女流飛行家になりたいのです」

実際にエリノアはアメリアに会っており、 

「人に惑わされず、不可能と言われてもあきらめないこと」

というアドバイスを受けています。



1931年、ジョージ・パットナムはアメリアに求婚し、
2人は結婚します。

映画では、後にアメリアの不倫相手になるジーン・ビダルと
アメリアがパーティで話しているのを見たジョージが
その晩プロポーズをするということになっています。


アメリアはここでも「わたしは一人でやっていける」と
それを断るのですが、ジョージは

「君の夢をわたしに叶えさせてくれ」

と説得しています。
実際にもアメリアはその結婚について

「二重のコントロール」との「協力」

と称していたと言います。
結婚によって縛られたくない、束縛されたくない彼女は

「誠実な夫であれとわたしは強要しない。
わたしには古くさい貞操観念も持っていません。
1年経っても幸せを見出せなければ離婚して下さい」

こういう約束をして、ジョージと結婚したのでした。

彼女の言ったという「二重のコントロール」というのは、
プロデューサーとしてのコントロール、そして
法律上の夫としてのコントロールという意味でしょうか。

だとしたら、その「協力」というのは全て、飛行家として彼女が
自由に空を飛ぶための「妥協」であったと考えるべきかもしれません。

彼女はジョージに恋をしたから結婚したのではなく、
飛行機に乗るためのスポンサーと夫婦契約をしたのであって、
本当に彼女が恋いこがれていたのは、「空を飛ぶこと」だったようです。

この本音は彼女の汚点でも何でもなく、飛行家イヤハートの
むしろ勲章ではなかったかとわたしなどは考えてしまうのですが・・。

 

そんな彼女の追想を乗せながら、彼らのロッキード・エレクトラは、
アフリカのマリに到着します。




続く。 

 

 


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