さて、収容所チーム「トパーズ」対地元「ビーズ」の試合の日です。
ビリーにとっても妻のシャーリーにとっても、ヤンキースのスカウトが来る
今日の試合は、負けられないものとなりました。
試合前、モリタは収容所全員、1万人から集めたクォーター、
2500ドルを相手に見せ、これを賭けようと持ちかけます。
当時の2500ドルは新しいキャデラックが買える金額。
「金を見せびらかしてる」
と的外れの反発をする床屋のおっさんとビリー。
アメリカ人たちにモリタは言います。
「金がないならそれだけの価値のあるものを出してもらおう」
というわけでそれが何かは映画のラストのお楽しみ。
試合開始となりましたが、球場のアナウンサーが酷いんですよ。
「皆小さい!いや本当に小さい。
ほとんど一抱えの小人(midget)がそこにいるようです」
に始まって、
「自分的には小人はおもわず蹴っ飛ばしてしまいそうです」
「小人を見ると笑ってしまうから」
へらへら笑うアメリカ人の観客と、それに対して眉をひそめる収容所席。
試合開始。いきなり因縁の対決です。
自分を殴った床屋のエドと対峙するライル。
初級で頭を狙って相手をカッカさせ、
ここぞと三振に打ち取ります。
こいつを叩きのめす為にライルは今日ここに出てきたのです。
2番バッターはビリー。
ビリーを紹介するとき、このクソアナウンサーは(失礼)、
「こんなに試合に対し誠実な選手を見たことがありません。
ビリーには脱帽です。心から尊敬します」
などと彼の野球に対する真摯さを誉め称えます。(伏線)
ストライクを取られ、思わず「今のが?」とアンパイアにいうと
すかさずモリタが
「公平にやると少し(little bit)違うだろサージャント-サン?
じゃすたりーるびっと、じゃすたりいいいいーるびっと!」
と野次を飛ばします。
点の入らないまま試合は進み、
「次のバッターは・・・・えーと、Take-a-sita?」
まったくこのクソ・・・おっと(笑)
試合は点が入らないまま進みますが、妻のシャーリーは
ヤンキースのスカウトが来ていないらしいのが気がかりでなりません。
気のいい食料品店のジョーに頼んで探してもらいにいき、
どうやらいるらしいという報告を受け、夫婦で抱き合ったりするのですが・・。
均衡を破る1点は、ハワイの独立リーグの猛者だった
バンビーノ・ヒロセのバットが叩き出したホームランでした。
7回が終わったときにイベントをするのは昔からの慣習です。
アメリカではこのとき、
"Take me out to the ball game"
を全員で合唱します。
アナウンサーは日系人たちが試合を見るのは初めてかもしれない、
などと侮ったことを言っていましたが、ここでは
彼らもちゃんとこの歌を歌っているのでした。
彼らは生まれたときからアメリカ人で、アメリカの娯楽(パスタイム)
と共にこの国で育ったのですから、当たり前です。
久しぶりに会えた二人。
ケイティが街を出ることをライルに告げます。
するとちょうどそこにやって来るご両親。
というか、こうなることくらいわかりそうなもんだが。
いざとなると女の子の方が度胸がありますな。
落ち着き払って普通にボーイフレンドを紹介する口調で
「ママ、ライルよ」
「初めまして、バレルさん。お会いできて嬉しいです」
ここでびっくりなのがビリーの態度。
怒るでもなく手に持ったプレッツェルの袋にわけもなく指を入れ、
「初めまして、ライル」
という妻の横顔を黙って見ているだけです。
そこにまたまたびっくり、ボーイフレンドの両親も登場。
こんどはライルが普通にガールフレンドを紹介する口調で
「お父さん、お母さん、ケイティだよ」
「こんにちは」
日本人の両親は黙って頭を下げます。
ここでビリーが何の反応もしなかったのは、あの日
娘に対する執着はもうやめると思ったせいか、
あるいは自分の人生のかかったこのあとのイニングに
はっきりいって娘どころではなかったのか・・。
試合再開後、床屋のおっさんのエドがヒットエンドランの際
わざとライルを突き飛ばしていくなどという小物臭あふれる
お約束をやってくれたあと、ついに。
1球目を強振したビリーのバットは、ボールを球場の外へ・・・。
完璧なホームランでした。
娘のことなど気にせず打撃に集中した甲斐がありました。
しかし、帰ってきたジョーが悲しいお知らせを。
「スカウトは今日来ていなかったんだ」
3対1で迎えた9回の裏。
2アウトからバントでトパーズは走者を出し、
続いてデッドボールで二人目の出塁。
ここで我らがノリス伍長の登場。
なんと、ビーズが賭けに供出した「もの」を知って、
トパーズチームに25¢をわざわざ賭けにきたのでした。
「賭けに参加していいかな」
「カモン、トパーズ、わたしたち賭けているのよ」
そんな声がかかる中、レーンが立ち上がり
「ライル、ゴー・フォー・ブローク!」
観客の「ゴー・フォー・ブローク」の合唱が始まりますが、
アナウンサーには彼らが
「何を言っているのかわかりません」。
ベンチも一緒に「Go for broke!」
ライルのライナーによって走者二人生還し、同点に。
いやー、野球は9回の裏からとはよくいったものです。
何が何でも勝たなければならない床屋のおっさん(伏線)。
ビリーが次のバッター、バンビーノを敬遠しろと投手に忠告するも、
「いーや、絶対にやっつけろ」
などとけしかけます。
敵にすればこんないやなタイプはなさそう。
ピッチャーが振りかぶったとたん、三塁にいたライルがホーム強襲。
キャッチャーのビリーはタッチアウトの直後ボールを落としますが、
審判には気づかれず、アウトがコールされます。
「タッチしてなかったじゃないか!
ドコミテルンダヨバカヤロー(日本語で)!」
狂乱の中、ビリーの冷静な声が。
「ホームにタッチしたか?」
「・・・したよ」
「そうだろうな。ゲームオーバーだ」
なんと彼は審判も見落としていた自分の落球を
自分から申告して試合を終わらせてしまったのでした。
審判も戸惑いつつトパーズの勝ちをコールします。
勝利に沸くナイン、そしてスタンドの兄と母。
騒ぎの中、ライルはビリーを見つめます。
収容所での対決では顧みられなかったビリーの「野球人としての誠実」が、
今、このとき彼に立ち返ってきたのは何故かを思いながら。
それは、自分が彼の娘の恋人だと知ったことと関係あるでしょうか。
ライルにはヤンキースのスカウトのことなど知るべくもありません。
ですからもし、スカウトが本当に会場に来ていたら
ビリーは今のような場合どうしたか・・、
やはり正直に落球を告白したのか、それともスカウトの目を気にして
黙っていたのか、という疑問は持つこともなく、ただ
彼の行動に対し感じ入っていた、ということになるのですが・・。
皆さんは、これ、どちらだったと思いますか?
わたしがノリス伍長の存在と共になごんだのは、最後まで
職務に当たって公正で、かつ収容者に同情的であったこの収容所長です。
モデルがいるのかどうかはわかりませんが、実際にも
このようなアメリカ人は決して少なくなかったのです。
所長夫妻は収容者の側の席にあって終止トパーズの活躍に声援を送り、
今や「Go for broke!」を立ち上がって唱和しています。
自分の愛する男たちの勝敗を眺める母娘。
彼女らはどちらも父を、夫を誇りに思ったに違いありません。
「Go for broke!」の合唱を聴くライルの目に初めて涙が・・。
そして、賭けに負けたビーズの供出したものとは?
関係者全員が見守る中、行われているレーンのヘアカット。
つまりこの勝負、ノムラ兄弟を辱めた床屋のおっさんに
収容者全体で仕返しをするというのが、賭けの賞品だったのです。
まあ、ビリー・バレルにとって、床屋のおっさんのプライドなんぞ、
自分の野球人としてのプライドとでは
天秤にかけるまでもなかったってことなんだと思います。
普通にこいついやな奴だし・・・って、結論がそれかいっ(笑)
終わり。