2013年、2014年度の映画エントリの為に描いた挿絵ギャラリー、
二日目です。
まずは戦争映画の傑作と言われる「ハワイ・マレー沖海戦」。
いやー、このシリーズは楽しみましたね。
もともと一部に熱烈なファンがいるという程度の認識だったこの映画ですが、
細部にこだわってお話ししていくと、実に奥が深く、語れども尽きず、
映像からもストーリーからもネタが溢れ出してくるようでした。
なんと、このシリーズで一つの映画につきエントリを12本制作するという
破格の入れ込みようを見せております。
この辺りから「こだわりすぎて話がなかなか進まない」
という当ブログの特徴が顕著になってきた気がします。
1 予科練生活
2 理想世界と白いリボン
この映画の中で唯一思わせぶりな主人公義一の夢について解説。
予科練のシーンで棒読みのセリフを言っていた若い俳優、
あまりに下手なので「本物の予科練生か」と書いたところ、コメントで
なんとあの木村功の若き日であったことを教えていただきました。
3、九段の母
この映画の批評にあまりにも「国策映画なのに」「国策映画だから」
という冠をつけているものが多いのこの傾向に疑問を持ち、
「国策映画とはなんぞや」ということをわたしなりに考察してみました。
「国策映画にしか出てこないような母親」という批評に対しては、
生身の人間らしい演技で子を戦争にやる母親の内心の悲痛を表現した
この女優、英百合子の演技に言及し、さらにそのことから、
「国策映画においても戦争が悲劇であることは否定されていない」
と定義してみました。
4、日中開戦
5、立花中尉と友田二飛曹の会話
「燃ゆる大空」で無名度を反映して真っ先に戦死してしまい、
なおかつ個人のどころかwikiのクレジットにすらその名がなかった、
本作の主人公義一役、伊藤薫。
容姿は実に平凡で、演技もうまいとはいえませんが、
生きていればそれなりに着実にキャリアを積んで、
戦後、安部徹のようなバイプレーヤーとなっていたかもしれません。
しかし、彼はこの2作だけを残して応召され戦死してしまったため、
俳優としての彼の名前はこの映画に残るだけとなりました。
わたしは劇中、若々しい肉体で演技をしている伊藤薫を見ると、
その後、命を失うことになった戦場で、彼はこの映画に出たことを
どのように思い返したのだろう、などと考えずにはいられません。
その伊藤薫の、この映画中最も美しかった表情を絵に描いてみました。
6、開戦前夜
この映画の魅力の一つに、主人公の姉を演じているのが
原節子であるということがあります。
美しい女優さんというのはいくらでもいますが、
こんな、まるで周りの空気さえ変えてしまうような佳人というのは
原節子をおいて他にないのではないかと思われました。
絵を描いてみて少しでも線が狂うと全く別人のようになっていまい、
どれだけ完成度の高い顔なのか、と妙なところで思わされました。
まだご存命なのですよね。
7、皇国の荒廃繋りてこの征戦にあり
この激励伝聞を作成したのは宇垣纏中将でした。
「どうひねってもこんなのになってしまう」
と本人が嘆いたところの「日本海海戦」の二番煎じ風味の電文。
しかし当映画ではなんと大胆にも、「皇国の荒廃この一戦にあり」と、
おそらく一般大衆向けに、秋山真之考案の文章を採用しています。
しかし、宇垣中将本人が「大和」艦上でこれを見るということがわかったため、
(予想ですけど)慌ててスタッフは長官(大河内傳次郎)の後ろに
宇垣電文をチョークで書いてお茶を濁す、という作戦に出ました。
映画の画面からふとしたことでわかった、制作の裏事情を推理していくのは
とっても楽しく、ブロガー冥利に尽きるエントリでした。
8、「接吻映画」と映画界の左翼化
劇中行われていた「艦名当てクイズ」で、分隊士が
「なんじゃ自分の嫁さんの名前忘れてどうするんじゃ!
これはお前の目標じゃろうが!」
と言っていたのに触発されて描いた漫画です。
それはともかくこの項では、真珠湾攻撃前にラジオで得た現地の情報から、
この分隊士が
「今アメさんは女子と抱きおうて踊っとるのじゃ!」
といって皆がどっと大笑い、という反応をしていることから踏み込んで、
当時の日本人の倫理観、さらにはその倫理観を瓦解させるために、
GHQがわずか戦後1年で日本映画にキスシーンを無理やり入れさせ、
日本人を3S政策でコントロールしようとしたこと、ついでに、
戦後映画人の多くが「左派」になった理由を激しく考察しています。
ここまで話を無茶苦茶に展開させるとは、我ながら恐るべし。
これを書くために久しぶりに読んで、自分に感心してしまいました(笑)
しかもこれで終わらず、古いフィルム原盤に挟まれていたらしい
「あれ」の脚にまで言及した
9、真珠湾攻撃と・・・
ようやく10項目にしてマレー沖海戦にたどり着き、
このときにはすでに戦死していたZ艦隊発見の功労者、
帆足正音少尉のことを知って感激した、
10、敵艦隊見ゆ
やっとクライマックス、
11、Z艦隊轟沈
補足として読者の解説者による写真(実写)に出てきた
軍艦の解析をした
12、付録~軍艦写真解説
まで、なんと12エントリを費やしております。
でも、いろんな意味で大変勉強になった映画でした。
語ることであらたな疑問点が出てきて、それに触発され
周辺のことにも興味を向けることになったのですから。
あゝ特別攻撃隊
ネタ映画なのでとっとと説明してさっさと終わろうとしたら、
いざ始まってみるともうノリノリで突っ込んでしまったのだった。
でも、下手によくできている映画よりこういう抱腹絶倒系(失礼?)
の方が、よっぽど楽しめると思ってしまいました。
自分に迫ってくれないからって空襲の最中外に飛び出して死ぬ女といい、
上空に敵機が来ているのに搭乗する部下と殴りあう上官といい、
もう、これは戦後のお花畑な頭の中にしか存在しないファンタジー戦争物。
兵学校卒士官<予備学生士官という決めつけからして
当時から結構反発されたんではないかなあと思う映画でした。
「あゝ海軍」
本映画の主演は最初市川雷蔵に決まっていましたが、
がんを発症していたため、代役に立てられたのが
二代目中村吉右衛門でした。
本稿は、映画会社の裏事情などにも触れつつ、しかし
どちらかというと大変好意的に解説を進めています。
前半後半に分けるつもりが長くなってしまったので三編になり、
そのために最初の絵を加工してタイトル画を水増ししました。
主人公の平田がラバウルで山本長官機の護衛につき、
むざむざそれを目の前で落とさせたという創作といい、
全体的に映画的なずさんさは見られるものの、特に後半の
兵学校教官となってから、江田島を去るラストシーンは、
この手の映画に辛辣なわたしを妙に感動させました。
個人的には好きな映画です。
「不沈艦撃沈」
戦意高揚ものを撮るしかない当時のご時世で、
このテーマの映画を引き受け、その制限の中で
見事なエンターテインメント作品を作り上げた監督マキノ雅弘。
面白いか面白くないか、というと、わたしのような映画の見方を
するわけではない一般の方々にとっては全く面白くありません。
しかし、制作の裏側事情やら、それまで左翼系劇団にいたという
俳優の小沢栄太郎の堂々たる海軍大佐ぶりやら、
当時の日本人の戦時における覚悟のあり方など、
考察するには全くもってこいの題材だったと言えましょう。
「戦争物」ではありませんから、女優さんもふんだんに出てきます。
井上正夫という俳優の、三歩歩いてセリフ一言だけという
大物演技から、この人が重鎮だったらしいこともわかりました。
現在全く名前が残っっていないというのはご本人にとっても無念でしょう。
1、工場班長の語る「抑止力」
2、沈黙の海軍
3、開戦
アメリア 永遠の翼
「女流パイロット列伝」シリーズで扱ったこともあるアメリア・イアハートですが、
その資料調べ段階で映画があったことを知り、購入しました。
ドラマとしてよくできているし、映像が美しいのでとても見やすかったです。
2、アメリアとジーン
夫であったジョージ・パットナムとの関係について、
映画でも語られた愛人、ジーン・ビダルを交えて語ってみました。
ついでに、教えていただいてアメリア役をしたヒラリー・スワンクが
性同一視障害の女性の愛と死を描いた映画、
「ボーイズ・ドント・クライ」を知ることになりました。
これは・・・確かにショッキングな映画でしたが。
3、KHAQQ, Can You Hear Me?
4、ラスト・フライト
そしてその最後の飛行と、アメリアの死後のパットナムの行動から、
「アメリアが死んだことで彼らの物語は最も美しい形で終わった」
と結論付けてみました。
映画について語るのは、自分でも見えていなかった部分に気づかされることもあり、
大変知的興奮を伴う作業です。
絵を描く楽しみもあるので、これからも新しく発見した映画を
みなさんと語りながら考察していくのを楽しみにしています。