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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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2015年度 東京音楽隊定期演奏会 前半

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先週末の関東地方は異常とも言える寒さと風に見舞われました。
東北地方では雪と強風で飛行機が欠航し、なんでも仙台空港では
某韓流コンサートに行けなくなったファンがANAのデスクで
「号泣・罵倒・絶叫」
しながら臨時便を掛け合ったというほのぼのニュースがありましたが、
(ANAの皆さん、心の底から対応お疲れさまでした&同情します)
わたしもこの日車で移動していて、風に飛ばされた布団が4号新宿線の下道路沿いの
ガードレールに引っかかっているというシュールな光景を目撃しました。

しかし前日のバレンタインデーで恋の始まりの予感を感じたり、
さらなる愛を深め合ったカップルにとって「少~しも寒くないわ」な日であったように、
この日東京オペラシティで行われた東京音楽隊の第54回定期演奏会を聴いた人々は、
寒風も少しも寒くないくらい、温まった心で帰路についたはずです・・・

・・・・と、自分でも嫌になるくらいありがちな書き出しとなりましたが、
少なくともわたしはそうでした。もちろんバレンタインデーのせいではありませんが。
というわけで、コンサートの模様を今年もご報告いたします。




東京音楽隊の定演を聴くのは二回目となります。
前回はすみだトリフォニーホールで行われた1年半くらい前のものですが、
それから今までの間に何回も定演は行われているのを知りました。
2014年の12月12日、つまり1ヶ月前の定演が「第51回」だったのに今回は「第54回」。

このペースでいうと10日に一回は定期演奏会をやっていると言うことになります。

定期的にやるから定期演奏会なんだろ?と思われるかもしれませんが、
このペースはまるでN響並み(N響定演は月三回2プロずつ)。
もしかしたらこれほど頻度が上がったのは自衛隊の「最終兵器」である三宅由佳莉三曹
(冒頭写真右)の知名度と人気を反映してのことではないかと思われました。

写真はコンサート終了後、客より先にロビーに出て、左側の音楽隊長手塚2佐とともに
この日の聴衆に挨拶をする三宅三曹。
自衛隊のコンサートとはとても思えません・・・・と一瞬考えましたが、
考えたら終了後に出演者がこんな風にロビーで愛想を振りまくコンサートは、
今まで1~2度しか見たことがありませんし、
自衛隊の定演でも三宅三曹出現前は、まずなかったことなのでは・・・。


さて、この日のチケットは東京音楽隊より直接送っていただいたのですが、
開演の3時間前に座席券と引き換えするというものでした。
東京オペラシティなら、しかも独奏ではなくブラスオーケストラの演奏なら、
後ろの方で聴いた方が音響的にいいのはわかっていましたが、わたしには当日
どうしても早く行って前の方の席、少なくとも一階の席を取る必要があったのです。

というのは、これは偶然なのですが、昨日のログでお話しした兵学校76期の、
「長門」艦長だった海軍中将の息子という方をお誘いしていたためです。
88歳とご高齢の方にホールの階段を登らせるわけにはいきませんからね。



といっても、会場は日本の生んだ偉大な作曲家、武満徹を記念した
「タケミツ・メモリアル」というくらいで、音響はもちろんのこと、
建築家である76期氏が目を輝かせて「この建築は素晴らしいねえ」と
絶賛したくらいの超近代的なホールですので、当然エレベーターくらいはあるのですが、
まあ自衛隊イベントは並ぶのが基本、という考えが染み付いているわたしは
この日も交換時間の1時間前にナチュラルに並んでチケットをゲットしました。



早くから並んでいる人のために、ガラス張りの外側に向けてこのモニターが置かれ、
自衛隊の広報ビデオ(三宅さん出演のもの)が流されていました。
さすがは気配りの自衛隊。
大抵の人たちはおしゃべりをしたり、デバイスや文庫本を見ながら時間をつぶしていましたが、
たとえ音は聴こえないとしても、こういう目に見える変化があるとないでは大違い。
演奏会が始まってからはモニターは奥に移動していました。

並んで立っていると、自衛官たちが時々整理のためそこここを歩くのですが、
わたしはその中に呉音楽隊長のお姿を見つけたので、声をかけました。

「呉ではどうもありがとうございました」
「今日はわざわざ・・・?」

隊長が「わざわざ」と言ったわけは、わたしが「某地球防衛協会顧問」という肩書きで
呉音楽隊を訪問したので、某地方に在住の人間だと思っているためかもしれません。

「呉で兵学校の皆さんと呉音の演奏を聴かせていただきましたが、
今日はあの日いらしていた76期の方をお連れしたのです」

「それはそれは・・・楽しんでくださいね」

「音楽隊長が代わってからお聞きするのは初めてなので、楽しみです」

「新隊長、スキンヘッドなんですよ~」


なんというかこの方らしい(お会いするのは3度目ですが)コメントでした(笑)
呉からわざわざいらしていたのは会場整理のための応援(『裏方です』)だそうです。
自衛隊のコンサートはこのように音楽隊の相互の協力で行われるものなのですね。

さて、座席券交換時間が来たらあとはあっという間に順番は来て、
しかも早くから並んだ甲斐あって前過ぎず後ろ過ぎずの完璧な席、
しかも通路側2席というありがたい場所です。

心安らかにあとは有り余る時間でゆっくりとランチをいただき、気力は十分。
開場時間ちょうどに76期のS氏と待ち合わせて入場の時、
自衛隊音楽隊の演奏会は初めてというS氏に

「ビッグバンド風のジャズも聴けるはずですよ」

と勝手に予告したのですが、これはあとで全く外れであることが判明しました。
このあたりが自衛隊音楽隊そのもののレパートリーの広さの証明でもあるのですが、
どうやらプログラムは定期演奏会ごとにテーマをガラリと変え、
同じようなものにならないようにバラエティをもたせている模様。

わたしが前回聞いたのは、前半は自衛隊ピアニストの太田沙和子2曹による
ピアノコンチェルト、後半はジャズトランペッターをゲストに迎えての
ジャズ風のプログラムでしたが、この日はガラリと雰囲気を変え、

「行進曲と民族音楽」

というのがテーマになっていたのでした。
行進曲は東京音楽隊に限らず自衛隊音楽隊が最も得意とする分野で、
正面切ってそれを主題に据えてきたというのは、後から中の人に聞いたところによると、

「新隊長の手塚裕之2佐のカラー」

であるということでした。
しかし全編行進曲ではプログラム的にも如何なものか、ということで(多分)
民族主義を打ち出したロシアの5人組から2曲、あるいみ「日本の民族音楽」
の範疇である自衛隊委託作品、という構成になっていました。

まず、コンサートのオープニングは

1、双頭の鷲の旗のもとに(J.F.ワーグナー)

双頭の鷲とはオーストリア・ハンガリー帝国のシンボルで、
軍楽隊長が作曲しました。
日本ではすっかり運動会の曲と認識されております(´・ω・`)

続いても勇壮な行進曲で、わたしも聴くのは初めてだった

2、戦闘用意! Klar zum Gefecht!(H.L.ブランケンブルグ)

この曲はほとんど無名で、日本国内で演奏しているのは自衛隊だけという希少さ。
もしかしたら自衛隊が発掘してきた曲なんじゃないかと思ったり・・。
ちなみに題名も「戦闘用意」だったり「戦闘準備完了」だったり、
準備できたんかできてないのかどっちやねん!と突っ込みたくなるような二つが
いろんな国で翻訳されているうちに生まれてきてしまったようです。

原題だと「戦闘用意」でいいと思うんですがねえ。

さて、わたしは実はしょっぱなでこのような「軍靴の足音」っぽい曲が続き、
音楽関係者として面白いと思いつつも隣が気になって仕方ありませんでした。
というのは、S氏というのは、音楽には造詣が深く、個人的には

「ピアニストが好きで一時結婚していたこともある」(^^;;

という方でありながら、いやだからなのか、徹底したリベラリストの観点から

「音楽は怖いんです。それで鼓舞されて国民は戦争にも突き進んでしまう」

という、それどこのナチス党とワーグナー(”双頭の鷲に”の方じゃありません)、
みたいな考えを、戦後69年間頑として持ち続けてきた人。
こういう人が一番苦手なのが「戦闘用意!」(だか準備)みたいな曲である、
というのをわたしは隣にいてビンビンと感じ取ってしまったからでした。

なぜか始まりの時には拍手しても、これらの曲が終わってから、Sさんの手は上に上がりません。
あー、もしかしたらSさんドン引きしておられる?
お年を召されて極力体を動かすことを節約していたのかとも思いましたが、
どうやらそうではなく、拍手するしないはSさんの興不興を表していたとわかったのは
その次のプログラムが終わった後でした。

3、「ソルヴェイグの歌」歌劇「ペール・ギュント」より



この曲は東京音楽隊の誇る最終兵器、歌手の三宅三曹によって歌われました。
三宅さんはこの日最初から司会進行を務めながらアンコールを含めて三曲、
喉を披露してくれましたが、この曲は原語、すなわちノルウェー語での歌唱です。

東京音楽隊がノルウェーで行われた軍楽隊の祭典であるミリタリー・タトゥー
に出場した時、彼女が着物を着て「ふるさと」を歌った映像は
ここでも紹介させていただきましたが、そのノルウェー語での歌、
なんでも発音をノルウェー大使館のノルウェー人にチェックしてもらい、

「ノルウェー人が歌っているとしか思えない」

と褒めてもらった、と本人は嬉しそうにコメントして、さらなる拍手を受けていました。

わたしもこの歌は彼女にとても合っていると思いましたし、
どちらかというとミュージカル風の歌唱タイプだと思っていた三宅三曹が、
このようなクラシックの小品を格調高く、かつ完璧な音程で歌い上げているのを聞いて
人気の陰で彼女が慢心せず、研鑽を積んで着実に実力をつけていると感じました。

そして問題の隣のS氏ですが、「ソルヴェイグの歌」の後、惜しみない拍手を(笑)
・・・わかりやすい。わかりやすすぎるよSさん。


この時も思ったのですが、三宅さんという人は万人に好かれるオーラを持っています。
歌手というのは得てして傲慢で自己主張の強すぎる人が多く、(一般論ですよ)
むしろそんな強い性格でないとやっていけない世界なだけに、どんな歌手にも
「この人だけは敵にしたくない」と思わずにいられないようなアクの強さを感じるものなのですが、
そういった歌手とは全く立場も立ち位置も違う歌手とはいえ、三宅三曹には
逆に聞いていてニコニコと自然に微笑みが浮かんでくるような・・・・。
いわば「本人の人柄の良さ」が際立つのです。

自衛隊の歌手を採用するという話になったとき、さぞ多くの歌手がオーディションを
受けたのだと思われますが、自衛隊の「顔」として彼女を選んだ当時の選考委員は
歌の実力より、もしかしたらこの万人に好かれる清潔さと可愛らしさ、
そして人間の伸びしろみたいなものを見抜いたのかもしれない、とわたしは思いました。

歌が終わった時、隣の女性がため息をついて

「はあー・・・きれい!」

と感極まったようにつぶやきましたが、そういうことです(笑)

一時テレビなどの媒体への露出が増えてわたしが懸念を感じていた頃、当ブログでも
何人かの読者が

「自衛隊には彼女を守ってあげてほしい」

と苦言を呈していたことがありますが、少なくともこの日、彼女自身に
注目に慣れた嫌味さはもちろん、潰されたり圧迫されているような様子は微塵もなく、
実に上手く「育ててもらっている」なあと感じてわたしは嬉しく思いました。

冒頭の写真はもうすでに出来かけていた人垣の合間から撮った(のでブレた)のですが、
このあと人垣はものすごいことになり、わたしが会場を後にする頃には
本人が見えなくなるくらい周りに人を集めていました。

おそらく手塚隊長が一人で立っていてもこうはならなかったでしょう。当たり前か。



というわけで、全くプログラムを紹介できなかったので明日に続く(笑)














 


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