先日ブログ内でちらっと触れた「防衛部長就任」の件ですが、
これが脳内組織の脳内役職ではなかったという証拠をお見せしましょう。
どや。
国防問題担当部長。地球防衛協会日本支部顧問。
これは、すでに顧問となっている組織とは別の団体であるため、
わたしは二つの団体で「顧問」と呼ばれるところの人間になったわけです。
そうなって改めて「顧問」という役職の胡散臭さ汎用性を実感するわけですが、
それはともかく。
先日、国某協会の主催による田母神俊雄氏の講演会を聴いてきました。
当協会による田母神氏の講演会昨年秋にも一度予定されたのですが、
同氏が都知事選に出馬することが決まって中止になったため、その代わりに
この日行われたという事情のようです。
ところで今度田母神さんの講演聞きに行くんですよ、と防衛関係団体の出席者に言うと、
皆どういうわけか
「ああ〜、田母神さんね〜」
みたいな反応をするんですね。
どうも政治資金の問題について言っているみたいなんですが、
「ワキが甘いよね」
とか、ひどい人になると
「有名になってお金に目が眩んだんじゃないですか」
なんて(繰り返しますが国防団体ですよ)言ったりするわけです。
政治資金の問題って、田母神さんが着服でもしたんだっけ?と違和感を覚えて
調べてみると、なんのことはない、支持者からの寄付などで集めた政治資金を、
会計責任者の50代男性が私的に流用していたので、田母神サイドは横領罪で
この人物を訴えているだけではないですか。
ただ、さらに調べるとお金を巡ってチャンネル桜の水島氏と対立しているという
ドロドロした話もあるそうです。
それでなくても、
「自衛隊に田母神を支持する人間はいない」
なんて説が実しやかに流布されたりして、なんとなく、
「わたしは田母神俊雄を全面支持しているわけではない」
みたいな風潮が保守と言われたい人の中にもあったりするのかなという気がしました。
出る杭は打たれるという諺どおり、氏のアグレッシブな言論(わたしはそうとも思いませんが)
が、中庸をともすれば良しとする多くの日本人にこういう見方をさせるのかもしれません。
わたし自身は、氏が航空幕僚長を罷免されるきっかけになった論文と、willなどの寄稿、
インタビューを読んだくらいで、実際に講演を聞いたことはありませんでしたから、
虚心坦懐に「田母神イズム」に触れることのできるこの機会に大変期待をしていました。
当日の講演会の内容については、別にエントリを製作してお伝えするつもりですので、
田母神氏についてよくご存じない方は、とりあえず政治資金や水島氏との諍いについては脇に置いて、
それを読んでから評価していただきたいのですが、とりあえず感想を言うと、
メモを取り講演を聞きながらも、そして書き起こすために1時間半のちょうどのスピーチを再生したときも、
その意見においては、わたしが常日頃ここで言っていることと方向性は同じであって、
あたかもわたしの中の小さいおじさんが田母神氏の姿を借りて、
わたしの思っていることを語ってくれているかのように、全く違和感を感じませんでした。
さらに氏のスピーチは、その片言隻句に至るまで、人脈と経歴を生かしたあらゆる方面からの
「裏付け」が取られていて、それが「仕事」とはいえ、数字も人名も年号もメモ無しで、
「田母神節」といわれる、時々ベタなおじさんギャグを交えながら人を引き込んでいく講話は、
もう既に「話芸」の域に入っていると感じました。
普通のスピーカーなら決してしないだろうなと思われる、考えようによっては
人を怒らせそうな(男に愛されたことのない女が男と全く同じ待遇を要求するものだとか)
本音をガンガン言ってしまうあたりも、思想に関係なく「敵を作る」要素でもあるんでしょうけど。
さて、講演会の後、会場となったホテルのティールームで講師を囲む会が開かれ、
なんとなく申し込んでいたわたしもそこに行きますと、すでに田母神氏は席についており、
その向かいに旧知の元海幕長と元陸幕長が座っています。
お二人にご挨拶をしてからテーブルの一番端っこに座ろうとしたら、元海幕長が
「こっちこっち」
と手招きして、田母神氏の隣に座るように促されました。
つまり、こういう構図です。
元空幕長 ◯| |◯ 元陸幕長
| |
わたし ◯| |◯ 元海幕長
うーん、なんたるパワーピラミッド。
一隅だけにブラックホールが生じておる。
とはいえ、その後元空幕長と並んで写真を撮り名刺を交換したがる方が相次ぎ、
わたしはもっぱら向かいの元海幕長に
「こんなにいろんな所に出没してて、お家の方は大丈夫ですか」
なんてからかわれつつ(もしかして本気で?) 、田母神さんと写真を撮ろうとするおばちゃんに
あんた邪魔、とばかりに黙って体を押しのけられたりしてたのですが、(−_−#)
それもひとしきりすんで、ようやく田母神さんがこちらを向いてくださったので名刺交換をしました。
「僕の名刺です」と渡されたのが一部で有名な田母神さんの「僕乃名刺」。
裏には、丸文字フォントで
お互いもっと仲良くなったら詳細お知らせするね ウッフ(♥)
↑
注目
いやそこは「ウフッ(はーと)」だろう。
わざわざ初対面の人間のウケをねらうためにこのおっさんは・・・orz
田母神氏は席についたらついたで、わたしに向かって、
「あなたもバストいくつですか?なんて失礼なことを聞かれたら”二つです”と答えなさい」
などと、ハイテンションな(ただし聞かされたほうはテンションだだ下がり)
おやぢギャグを繰り広げるおじさんでした。
しかしそこで気をとり直してまともな方の名刺を見ると、その肩書きは、
「元航空幕僚長」 (Former Chief of Air Staff, JAPAN)
となっているんですね。
氏が講演の中で、「防衛省から正式な儀式に呼ばれることがないのは寂しい」
と言っておられたのを思い出しました。
そういえば田母神氏に現在役職はなく、あくまでも「元航空幕僚長」という肩書きで、
空自時代の経歴をバイオグラフィにも事細かに載せておられます。
隣に座っていたからといって人気者のカリスマを独り占めにできるわけもなく、
次から次へと人がやってきて質問したり写真を撮ったり話しかけたり、
というわけで、わたしはもっぱら元陸幕長と例の防衛省設置法改正のことを話したり、
元陸幕長の刮目すべき防衛論(いつも目からうろこです。ここでは書けませんが)を
拝聴していたのですが、海幕長には気になっていたことを質問させていただきました。
「この間のお話によると、海自始め自衛隊は、日米同盟の深化を第一義にしているし、
日本の平和が9条ではなく日米安保によって保たれてきたというのが現実ですが、
その一方で田母神さんのような考え(アメリカの手を借りず日本を自分の手で守る)も
保守的には決して否定されていませんね」
これに対して、
現状として日米同盟が正式に機能しているうちは自衛隊はそれを第一義にするしかない
というのが元海幕長のお答えだったようにわたしは解釈しました。
自衛隊は「シビリアンスプレマシー」によって命に従う機関であるというのが全てです。
わたしは昔、憲法改正について何日間かに亘って意見を述べたときに
「いずれは米国と幸福な離婚をして日本を自分たちで守らなくてはいけない日が来る」
と書いたことがあります。
田母神さんによると、アメリカの国力、並びに影響力がだんだん落ちているというのも
いつまでもアメリカに守られる日本でいいのか?という懸念の一つですが、
わたしはもう一つの理由として、アメリカのダイバーシティに起因する懸念もあると思います。
つまり、今アメリカでは白人が減り、中国系とヒスパニック系が増加しているのですが、
ヒスパニック系ならともかく、もし中華系がアメリカ大統領になる日が来たら・・・?
そしてこれは実現性が薄いとはいえ、万が一朝鮮系が大統領になったら・・?
そのときに日本が、国防を今のような形でアメリカに押さえつけられ、依存したままだったら、
いったいどんなことが起こるか、考えただけでもゾッとしませんか?
しかし、日米の軍連携には、アメリカの軍需産業のあまりにも深い介入があるようですので、
有利な条件で武器を買ってくれる(しかも交渉抜きで)ありがたいお客様を逃すことになる事態だけは、
アメリカの産業界がどんな手を使っても阻止してくるだろうという気もします。
前回の反省から一応配慮して、目元を隠した元陸幕長と元海幕長のツーショット 。
ちなみに冒頭の写真は畏れ多くも元海幕長に撮ってもらいました。
ところで、田母神さんほどの有名人となると毀誉褒貶相半ばは避けられないことですし、
「金に目が眩んで」などの無責任な(多分詳細を知らずに言っている)批判も
反対勢力が便乗することで、より一層悪意をもって広められるでしょう。
人格批判もそうですし、わたしはさる筋から「女癖が悪い」と聞いたことすらあります。
そういう問題ほど検証することなく世間は簡単に受け入れてしまいがちですが、
わたしは改めてご本人のブログを訪問し、こんな記述を見つけました。
抜粋するとこんな感じです。
妻との関係が上手く行かず自衛隊在職時代から退官したら離婚するという意志を固めていた
自衛隊を退官してから後、妻とは別居していた
その後現在交際している女性と知合い、結婚を申し込んだ
妻が離婚調停には応じてくれないので、裁判で現在係争中
妻の生活の面倒は見ているし、離婚後も相応の負担には応じるつもりだ
そして、最後に、こう書いているのですが、
週刊誌などでも何度か面白おかしく報道されましたが、現在交際中の女性が私にとっては一番大事です。
彼女を守らなければいけないと思い、今回私の思いを表明しておきます。
彼女に篭絡されたなどという事は全くありません。結婚は私のほうからお願いをしたのです。
そして彼女は私のために待ってくれています。彼女には大変迷惑をかけて本当に申し訳ないと思っています。
なんというか、驚くほど不器用で無防備な人だなあという印象を持ちました。
こういう人を一言で「女癖が悪い」と決めつける世間の評価というのは一体なんなんだろうと。
こんな愚直なくらいの正直な人は政治家には向いていないのではと、心配になったくらいです。
田母神氏は、わたしが
「新党を結成するおつもりはないのですか」
と(実はこのときあまり田母神氏の政治活動への動きを知らずにいた)いうと、
「やろうにも金がないんですよ」
とおっしゃっていましたが、参院選に出馬する意思は固められているようです。
ワキが甘いといえば、例えば自衛官時代、
「どこまで制服組の発言が許容されるかのパイオニアになろうと瀬踏みしている印象があった」
というくらい積極的に個人的な持論や主張を発言するような人物であったことも、
老獪さを備えていなければたちまち潰される政治の世界では、「ある程度までは」懸念材料となります。
ある程度、というのは実績をあげ、動かぬ地位を手にいれることですが、
そうはさせまじとマスコミや野党が鵜の目鷹の目で足下を掬ってくるでしょうし、日本が
「日本は侵略国ではない」
という論文を書いた幕僚長をクビにするような国であった(ある?)ことも事実です。
安倍政権になって変わってきていると信じたいですが、政治は理想だけでは動くものではありません。
正しいことだから言った、では通らないことがあまりにも多い世界に、
田母神氏はあえて自分の理想と信念と直情を武器に斬り込んで行こうとしているのです。
わたしは田母神氏個人の”信奉者”というわけではありませんでしたが、
今回講演を聞き、日頃わたしが考えていることと方向性は同じであることを確認しました。
そして思ったのは、田母神氏自身がいつもいうように、田母神氏”程度”の保守が
「危険人物」となってしまう日本という国の現状は、明らかにおかしいということです。
ここで三島由紀夫の名前を出すのも、ご本人には縁起が悪いと怒られてしまいそうですが、
三島があの事件を起こしたのは、日本という国への強い警告と、その現状に楔を打ちこむためでした。
そして、そのために行動を起こす舞台に選んだのは「自衛隊」でした。
三島は、国防と国体は一元的なものであるとし、国体を変えるために国防にも変われと訴えたのです。
自衛隊の長としての側から国防に携わり、国防を知り抜いた田母神氏の政界への進出は、
はたして日本への「楔」となりうるでしょうか。
わたしは少なくとも、田母神氏のような人物を、政治家の一人として
迎え入れることができる日本であってほしいと思います。