例年ボストンにはわたしと息子だけでくるのですが、今年は初めて
TOが夏休みを前倒しして一緒に飛行機に乗ってきました。
これは息子が参加するサマースクールが初めての場所となるからなのですが、
着いて3日間はフリーだったので、ボストン美術館に家族で行きました。
入場料は大人25ドルですが、17歳以下は無料です。
25ドルというのは物価の安いアメリカでは高めの値段設定ですが、
一度来館すれば何日か以内であれば同じチケットで二度入場できるシステム。
定期的に4時半の閉館時間が週末の夜9時までに延長され、しかもその日は
あらゆる入館者が無料だったり、一般市民の呼び込みにいろんな努力をしています。
さて、今回の訪問は、到着してから息子の学校が始まるまでの3日間、
家族で予定がフリーとなっていたところ、TOの
「去年夕食を食べた美術館のレストランでまたご飯を食べたい」
という強い希望により実現しました。
家族三人で行動できるのはこのときだけなので、ボストン美術館には乳児の時以来行ったことのない息子に
ここの膨大なコレクションを観せてやりたかったというのもあります。
世界地理や歴史が得意科目で、学校で習った歴史的薀蓄を教えたがる息子には
ちょうどいい時期であったとも言えましょう。
余談ですが、最近聞いた息子の薀蓄で「知らなかった!」と感心したのが
「グレートブリテンって、大英帝国とか訳されてるけど、偉大とかいう意味じゃなくて、
ブリテン島の大きい方(スモールブリテンもあるらしい)だから、フランス人がそう呼んだだけ」
ということでした。
自分の国をグレイトなんて公称してしまう国っていったい、
と大英帝国のことを思っておりましたが、ちょっとした誤解だったということになります。
(ところで戦後になって自分の国に「大」とかつけてしまうお隣の国っていったい・・)
余談はさておき、昔ルーブル美術館とオルセー美術館で
「もう”絵が”(子供は一文字の言葉を覚える時”火”=”ひが”、”血”=”ちが”ということがある)
のあるところいや~~」
とごねた1歳半の息子も、今や世界地理に関しては「負うた親」に蘊蓄を講義する立場。
素直に美術館行きを承諾し、
「オレ、アフリカ美術とか観たいな」
というくらいの成長ぶりです(T_T)
というわけで、いつ行ってもどこに何があるか把握できないボストン美術館。
こういうのはローマ文化でしたっけ?
今回は階段を上って二階から見学を始めたので、さらにわけがわかりません。
これはヘレニズム文化、ギリシャ彫刻というものですよね。
しかし、この時代、絵画のリアリズム手法が発明されていなかったため、
人々が彫刻にそれを求めたということが、この作品などを見てもよくわかります。
この時代の芸術が後世に遺されたのも素材のおかげです。
人物像が多いこの時代のもので珍しく鶏の彫刻。
髭を生やしていたことまでリアルに表現されている「似顔像」。
歩いて行ったら、絵画修復室が公開されているコーナーがありました。
さすがはアメリカ。
この日は日曜だったので、作業をしている人はおりませんが、巨大な宗教画が
修復作業中のものとして展示してありました。
磔刑にされたキリストを降架しているの図。
それにしても大きい。
上部に四角い穴が2箇所空いていますが、この部分を今制作しているということでしょうか。
天井から降りてきている掃除機のホースのようなものは部屋の2箇所にあり、
作業中の作品を乾かすか、あるいは埃がつかないようにするものかと思われます。
階段の踊り場ホールにはフルコンサートピアノがありました。
当美術館は篤志家が何億も出仕するような欧米の文化に支えられているので、
このピアノ(おそらくスタインウェイ)もそういった寄付で賄われたものかもしれません。
中世の宗教美術コーナーにあった普通のおばちゃんらしき人の胸像。
目鼻のバランスが悪いので、もしかしたらこのおばちゃんの知り合いが作ったとか、
何しろプロの手によるものではないことは確か(だと思う)
こちらの中国美術のコーナーにあった立像も、正面からはともかく
横から見るとバランス悪くてこの通り。
まあこれも表現の範囲かもしれませんが。
展示作品が多いボストン美術館には、突っ込みどころ満載の
「世が世なら駄作?」と疑ってしまうものも時たまあります。
去年も写真をアップした現代アートのセクションにある「雲と飛ぶ人」。
この吹き抜けには全部で5人くらい飛んでいます。
そこに本日ブランチの予約を取ったレストランがあります。
裏口から、ピアノとベースのデュオが準備しているのが見えました。
生演奏付きとはついています。
パフォーマーはジャズピアニストで、「マイ・シェリー・アムール」などの
S・ワンダーのナンバーもやっていましたが、本業はバッパーらしく、
「ハニーサックルローズ」「ワン・フォー・マイ・ベイビー」などを演奏していました。
アメリカに来て「ジャズの発祥の地だなあ」といつも思うのは、こういうレストランでも、
たとえショッピングモールやノードストロームのフロアでも、
下手な人は見たことがない
という事実です。
日本では場の華やぎに女の子を投入するようなところでも、アメリカではまずそれはありません。
下手な人はプロになれないというだけなのですが、日本ではそうでもないので(笑)
レストランの窓からは向かいの現代アートの壁画が鑑賞できます。
この日は日曜のブランチでしたが、店内は閑散としていました。
付け合わせのブレッドにコーンブレッド(甘みのないパウンドケーキのようなパン)
がついているのがいかにもアメリカ。
メニューは「2course」「3course」とあり、前菜、メイン、デザートから2つか3つ選びます。
わたしは前菜とメインの2courseで、グリーンカレー風スープを前菜に頼みました。
TOが頼んだサラダ。
わたしのメインはサーモンです。
全員でお皿を回しましたが食べきれませんでしたorz
息子のエッグベネディクト。
一人分なのに二つついてくるあたりがアメリカです。
「これ一人で全部食べちゃうアメリカ人って・・・」
「だから太るんだよ」
TOの頼んだステーキ。
アメリカで肉を選ぶことなど滅多にありませんが、頼んでみたそうです。
彼らが日本の肉を食べて
「今まで我々の食べていたのはゴム草履であった」
と驚くのがよく分かる味気なさでした(笑)
調理そのものは悪くなかったんですがね。
デザートはラズベリーアイス。
一人分に3スクープって・・・。
TOの頼んだチョコレートケーキ。
何も申しますまい。
というわけで、アメリカにしては美味しいけど、日本からきたばかりの日本人には
色々とこれも突っ込みどころの多いブランチでした。
すっかり満足して、鑑賞の続きを向かいの現代アートから始めました。
小さな洗面所で身なりを整える人。
配管までむやみにちゃんと再現されているリアリズム。
裸婦のブロンズ像が壁に張り付いておりました。
下で写真を撮る人も含めて「アート」ってことで。
それにしても、これは何を表現したかったのか。
お盆の上に生首が三つ載っているの図。
と思ったら左の生首には足がついています。
無印良品に「人間をダメにする椅子」という製品がありますが、それと同じです。
あちらは椅子ですが、こちらは芸術作品で、かつ「座ってもい椅子」。
どうも作者は、座っている人も込みで作品だといいはっているようです。
作品紹介に「座ってください」と書いてありましたが、それを作品といってしまいますか。
これ、単なるクッションというものなんじゃ・・・。
こういった抽象アートの「イタさ」について去年友人の絵本作家が一言で
「 自己満足だよね」
とバッサリ斬ってくれたので安心したという話をしましたが、去年、
「自分とそっくりの人形を吊るし、棒でたたいて破壊し、中から
血(のつもりの赤い粉)や内臓(のつもりの造りもの)などが出てくる」
パフォーマンス系アートなど、その典型といったところ。
今回はその同じスペースで、画像のようなビデオが放映されていました。
女の人の顔に糸をきつくぐるぐる巻きにしていき、それを外して彼女の顔に
ほら、糸の跡がついてますよ、という芸術です。
・・・自己満足だよね。
続く。