お断りです。
アメリカに来て以来、インターネット環境のせいでブログ編集面に
不具合が多発しており、制作に大変支障をきたしております。
日本に来る前に制作していたストックの記事を挟みながらお届けしますが、
そういうことですので、更新は当分1日半ごとにさせていただくことにしました。
悪しからずご了承ください。
コネチカット州は、マサチューセッツ州からニューヨーク州に行く途中にあります。
わたしたちは今回コネチカットのノーウォークから3回ニューヨークに通いましたが、
ホテルを選んだときには、こんなに何度も行くとは思っていませんでした。
案外簡単に往復できると知って、ミュージカルを観るために2往復したわけですが、
ミュージカルの昼公演はいずれも前日に予約が取れました。
ブロードウェイのマチネーは、すべての小屋で毎日やっているわけではないので、
たまたまその時取れたチケットの演目を聴くしかなかったわけですが、
演目はともかく、時間は大体2時開始ということになっています。
昼11時頃ホテルを出発し、ニューヨークでランチを食べることになったとき、
真っ先に思いついたのがニューヨーク近代美術館でした。
ルーブルやボストンのように、一国を代表する美術館には必ず素晴らしいレストランがあるはずだからです。
というわけで、MOMAに到着。
以前ここでいただいたランチの画像を上げたことがあるので、それは省略して。
食後、ミュージカル開始までの間、急ぎ気味に展示を見て歩きました。
一応日本語の音声ガイドも借りて、「1時間コース」を回ろうと思ったのですが、
最初の絵画の前に立った時、流れ出てくる説明があまりにも観念的だったので、
ちょっとこれに付き合っている時間はねえ!と音声ガイドはそれっきり首にかけているだけの代物に。
ちなみに機器を借りるのにはIDを身代わりに預ける必要がありますが、
パスポートもクレジットカードも責任が持てないからダメということで、
結局わたしの国際免許を預けました。
アメリカ人はほとんど免許証を預けていたようです。
ところで、うちにあった名画の画集で見覚えのあるものは、圧倒的に
MOMA所蔵のものが多かったというか、それだけここに名作が多いのだと思いますが、
幼い頃に見た数々の名画にここで一挙に再会することができました。
しかも、展示の仕方が結構おおらかです。
冒頭のゴッホ「糸杉」はここの「目玉作品」ですが、前で立ち止まるのはもちろん、
写真を撮りまくることも、さらには目と鼻の前まで近づくこともできるのです。
こういった名画は世界中から貸し出されて日本でも見ることができますが、
(わたしは昔モネの「ラ・ジャポネーズ」を大阪で見たことがあります。
先般話題になった「着物の着付け展示」に使われた打掛は、2014年に「彼女」が来日したとき、
企画として製作されたものであったらしいですね)
日本では写真の撮影禁止はもちろん、立ち止まることも許されないような混雑の中、
人垣の間から観ることになるような絵ばかりです。
この、アンドリュー・ワイエスの絵はいつの頃から知っていたか覚えはありませんが、
とにかくこれもわたしにとっては懐かしさを感じさせる絵のひとつです。
そういえば、「ブルーマン」の舞台にもこの絵が掛けてあったっけ・・。
確かめていませんが、おそらくエドワード・ホッパーのもの。
バルチュスの作品だろうと思います。
名札を確かめなくとも、明らかに特色でそれとわかるような絵ばかり。
これはそれだけでもすごいことだと思います。
もちろんスーラですね。
セザンヌの若い男の像。
「1時間で回るニューヨーク近代美術館」のための作品の一つですが、
実はこの解説を3分聞いて、このプランを諦めたのでした。
このスーラの風景画は、なんと額にまで画家の点描が入れられています。
ジョルジュ・スーラという人は31歳の若さで病死しているのですが、一つの絵を仕上げるのに
点々だけを無数に打ち続けるその創作方法と、夭折には何か関連があるような気がしてなりません。
アンリ・ルソー。
密林のなかで長椅子に横たわる裸の女を描くことの不条理を評論家に指摘されて、
「長椅子に横たわって眠っている女性は、この森に運ばれ、
魔法使いの音楽を聴いている夢を見ているのです。
そのことが絵に長椅子が描かれている理由なのです」
と言い訳説明したそうです。
日曜画家で、本職は税官吏だったそうです。
元祖へたうま素人画家、ジミー大西の先輩といったところでしょうか。
そういえば、少しだけジミー画伯の色使いと似ている絵もあるような(笑)
ベルギーの画家、ジェームス・アンソールの「たくらみ」(陰謀とも)。
アンソールは無名時代にこういった死の匂いのする退廃的な絵を描いていた頃は
むしろ嘲笑されていたということですが、作品の評価が高まるにつれ
名声を得て男爵位を授与されたりレジオン・ドヌール勲章を貰うなどといった栄光の晩年を送りました。
ただし、そうなってから描いた作品はほぼ評価されていないそうです。
若いうちの「中二病的」作品がなまじ賞賛されてしまったので、一生それでいくしかなかったってことでしょうか。
なんとも皮肉といえば皮肉です。
この絵自体は初めて見るものでしたが、画風でそうとわかるグスタフ・クリムト。
もともと装飾画家であったというクリムト、「接吻」もそうであるように、
死とエロスをテーマにした作品をたくさん残しています。
彼を主人公とした映画にも描かれていたようですが(観ていません)、
モデルに次々と手をつけ、愛人にしたり妊娠させたりという豪快さんだった模様。
The Park
これもクリムトの作品です。
もちろんピカソの「アヴィニヨンの娘たち」。
右側の娘さん二人の顔が特にこわい。
この絵が、実際のモデルを見て描かれたものでないことを祈るばかりです(笑)
ピカソもうひとつ。
「鏡の前の少女」。
この画風でいまさらこういう疑問を持つことそのものがおかしいかもしれませんが、
少女がこちらを見ているのに、鏡の中の人物もこちらを見ているという・・。
なんとも言えない不安というか、軽い恐怖を感じさせるモチーフです。
アルベルト・ジャコメッティの彫塑。
シュールレアリスムとも実存主義とも言われています。
針金のような人物の彫塑や絵画が特徴です。
モンドリアン、という名前だけは小さい頃から知っていたわたしですが、
たったいまファーストネームが「ピエト」であることを知りました。
水平と垂直の直線のみによって分割された画面に、
赤・青・黄の三原色のみを用いるというストイックな原則を貫いた一連の作品群が有名。
というか、晩年は何も考えず(笑)これ一本やりで乗りきった模様。
ジョルジオ・デ・キリコはシュールレアリスム(超現実主義)の代表的画家です。
芸術運動の一種で、まるで夢の中を覘いているような独特の非現実感を表現するものです。
不思議な遠近感の構造物、手前の巨大な青いバナナ、赤い大きな柱時計。
夢の中で見たような、こんな絵を盛んに描いていた、そんな過去がわたしにもありました。
あれは確か中学・・・・・うーん、中二病とはよく言ったものだ(; ̄ー ̄A
魚雷の刺さったボウリングのピン・・・ではないと思う。
もしかしたら魚?
この絵もここにあったんだ~!とびっくりしたマチスの「ダンス」。
これを見るといつもつないだ輪の「切れ目」、手の離れたところが気になります。
手前の人、これこけてますよね?
マチスはいつも
「私は人々を癒す肘掛け椅子のような絵を描きたい」
と言っていたそうです。
これもデ・キリコ。
石膏の像の横になぜ赤い炊事ゴム手袋(笑)
なぜか「愛の歌」というタイトルだそうですが、この作品に衝撃を受け、
マグリットはその絵に「輝かしい詩情」をみいだし、
シュールレアリストとして出発することを決めたということです。
おなじみ「The False Mirror」(偽りの鏡)。
題名は「溶けた時計」の方がどの絵かわかってもらえると思う。
MOMAは美術館の建物全体もまた近代的でモダンです。
階段も手すり部分は皆アクリルで視界を全く遮らず、圧迫感はありません。
ボストン美術館は広大な敷地面積に一部4階建てのビルを併設していましたが、
ここはニューヨークという都会のせいか、ワンフロアはそれほどおおきくありません。
しかし、吹き抜けの空間といたるところにこのような渡り廊下で繋がれた複雑な構造で、
大変な広がりを感じさせます。
クレーの絵は目頭が繋がっているのが特徴ですが、この猫も目頭が繋がっています。
猫の額の部分に鳥のような造形がありますが、これはもしかしたら、
鳥を狙っている猫さんの頭の中を表現している?(適当)
後から知ったのですが、この題名、やはり「猫と鳥」だそうで。
リヒテンシュタイン の 「Drowing Girl 」(溺れる女) 。
アメコミと何が違うんだ?といつも思いますが、こう見えてもポップアーティストです。
ジャスパー・ジョーンズの「FRAG」。
どうしてこれが芸術、と思ってしまうわけですが、噂によると、
ジョーンズ氏はこのとき無性に国旗が描きたくなった、ってことです。
いいのかそんなので。
前に人が立っていても全然邪魔な気がしないポロックの巨大な作品、
こういう画法は「アクション・ペインティング」というのだそうです。
ジャクソン・ポロック(1912~1956)は、晩年アルコール中毒で、
最後は若い愛人とその友人を巻き添えに自動車事故で死亡。
わずか48年のロックンロールな()人生を駆け抜けました。
この絵の題名は、うちにあった画集を見てあまりに印象的だったので
本日に至るまで忘れたことはありません。
「ブロードウェイ・ブギウギ」(モンドリアン)
ブロードウェイを含むニューヨークの街?
スカイスクレーパーの窓?地下鉄の路線図?
小さい頃、これがどうしてブロードウェイ・ブギウギなのかとか、
このビニール製のテーブル掛けの模様のような柄のどこが芸術作品なのかとか、
その不思議さだけを名前とともに強烈に印象に刻みつけたわたしです。
なぜかバブル・キャノピーのヘリコプターが吹き抜けの空間に吊って飾ってありました。
確かめていませんが、鹿屋にもあったベル47だと思います。
そういえば「進撃の巨人」はアメリカでも大人気。
実写版の映画も公開されるそうですね。って何言ってんだ(笑)
時間がなくて外の彫刻まで見る時間はありませんでしたが、
屋外には巨大な彫塑が所狭しと展示されています。
これ、よく見たら「サイアム・ツインズ」(シャム双生児)ですね。
しかし、今日ご紹介した造形は後半の近代作品群の不可解さに比べれば、
「古典」といってもいいような「具象」だったのです。
続く。