さて、ニューヨークのマンハッタンにあるイントレピッド博物館の見学記、
しょっぱなから空母の艦首と艦尾を見間違えて、心ある人々を不安のずんどこに陥れた
当ブログですが、そういう瑣末なことはこの際忘れていただいて、
どんどん前に進みたいと思います。
今日は艦載機、というかつまり甲板に展示されている航空機の紹介です。
言っておきますが、甲板にあるのは艦載機ではないものもあります。
冒頭写真は
Grumman F-14 Tomcat
可動翼を持ち、翼が角度を変えることができるのが大きな特徴ですが、
翼の付け根の部分にグローブペーンと呼ばれる手動式の小さな翼がついていて、
それが予定に反して性能には一切影響を与えないものだったという話を始め、
トムキャットに付いてはこのブログではいやっというほど語ってきました。
最近の話題では、今年の初めに映画」「ファイナルカウントダウン」を取り上げたとき、
時空を超えて真珠湾攻撃前夜の真珠湾に現れた「ニミッツ」の艦載機であるこのF-14に
艦長のカーク・ダグラスが零戦の撃墜を命じるという話がありましたね。
「ニミッツ」に乗っていたくらいですから、1980年に除籍になった「イントレピッド」
にもこのF-14が載せられていたのではないかと思われます。
ところで、「トムキャット」という名称ですが、「トム猫」、つまり雄猫から
この名前が付けられていたのだと思っていたら、もともとの由来は、
可変翼で猫の耳のように翼が動くことに、この機体の導入を強く押していたのが
トム・コノリー大将で、「Tom's cat」→「Tom cat」となったという話。
Fー15イーグルは、世界でも日本、サウジ、イスラエルとはっきり言って
ネカチモの国しか買わなかった(買えなかった)ということは有名ですが、
F-14のころには第一次オイルショックによる原価高騰とベトナム戦争からの撤退がたたって、
在庫がだぶつき、一度はこれがグラマン社の存亡の危機ともなっています。
しかし、いかなる営業活動によるものか、イラン軍が本機を採用したことによって
グラマン社は経営危機をなんとか回避したということがあったそうです。
トムキャットはAIM-54フェニックスミサイルを搭載しており、これはトムキャット専用仕様です。
海軍と空軍が長距離対空ミサイルの統合をするために共同開発をしていたようですが、
結局空軍機のフェニックスミサイル搭載は実現しないまま終わりました。
このトムキャットはフロリダのペンサコーラ海軍基地から長期貸借しているもので、
グラマンが最初に制作して偵察機能などを試験していた「史上7番目」の機体です。
この変わった飛行機、わたしは生まれて初めて見ましたが皆さんはいかがですか。
そもそもこのペイントの色からして初めてです。
IAI Kfir Israel Aircraft Industries
この「IAI」をつい顔文字で読んでしまったわたしはインターネットに毒されてますか?
泣いている顔ではなく、アイ・エー・アイ、つまりイスラエル空軍工廠のことでした。
さらにこの「Kfir」も何て発音するのだとGoogle先生にお聞きしたところ、これは
ヘブライ語で「クフィル」、「仔ライオン」のことだそうです。
まあ確かにライオンちっくな塗装ではあるわけですが、時代の古さを感じさせ、
おそらく40年は経っているに違いないと思ったらやはり1973年製でした。
イスラエル空軍が飛行機を自分で作ることを余儀なくされたのは、それまでミラージュを
輸入していたフランスが、中東への武器輸出をドゴール政権の時に禁止したからです。
フランスがイスラエルに武器を輸出しなくなったわけは、ちょうどそのころ中東戦争で
イスラエルとエジプト・シリアなどの中東アラブ諸国との間に戦闘が起きており、
フランスとしてはおそらく石油などの輸入の絡みでイスラエルを切るしかなかったのでしょう。
何かに似てるなあ・・・と思ったら、やっぱりミラージュ?ファントムにもどことなく・・。
ゼロから機体をデザインしている場合ではないので、イスラエル空軍はミラージュ5を下敷きに、
エンジンはアメリカから購入したF-4のエンジンを積むことにしたようです。
平面から見るとわかりにくいですが、デルタ型の翼でそれこそミラージュそっくし。
ただしミラージュはクフィルのように「前翼」はありません。
クフィルは「カナード」(カナルというフランス語の鴨を英語読みしたもの)と言われる
この前翼が付いているのが大きな特色となっており、カナード付きの飛行機のことは
エンテ型
と総称します。
エンテというのも実はドイツ語で「鴨」を意味するのですが、どういうわけか
フランス語の「カナル」→「カナード」は前翼の部分だけを指します。
クフィルは先ほども行ったように子供のライオンを意味する言葉ですが、
アメリカ軍は海軍と海兵隊がF-16が導入されるまでの間、クフィールを
仮想敵、アグレッサー部隊のためにリースしていたことがあり、そのときには
「F-21 ライオン」
とそのものズバリの名称で呼んでいたそうです。
MiG-21を「演じて」、大変好評であった・・・・という時代の飛行機ですが、
実はIAI、いまだにこの機体をアップデートして、輸出もしようとしているようです。
ちなみに新谷かおるの「エリア88」には架空の国家軍機として登場した模様。
F-16A FIGHTIG FALCON
おそらくこういうエントリになるととんでもない間違いをするのではないかと
息を殺して注視している部下に世話を焼かせないためにも、見覚えがある機体でも
ちゃんと展示版があるものは写真と照合してアップしているのですが、
展示版がないこの機体も、インテイクの形で間違いようがありません。
というか、そのインテイクにカバーに”F-16”って書いてあるんですけどね。
Fー16はバリバリ現役なのですが、どうしてそれがここに展示されているのか。
ここには先ほどのクファール、ブラックバード、そしてこのF-16Aが並べて展示されており、
「WINGS OVER THE MIDDLE EAST」
という説明看板がそれらのために立てられていました。
「とてもスリーク(スマート)だけど他の航空機と少し違うルッキング。
なんのためだと思いますか?
答えの一つは「中東」に横たわっています」
そのような出だしのあと、クファールがイスラエルの軍用機であること、
1990年から1年間行われた湾岸戦争にF16Aもアメリカ空軍機として投入されたこと、
そしてイスラエル軍が(defense force、自衛軍となっている)
そのどちらもを使用していたことが書かれています。
しかしそれではA-12ブラックバードはなんの関係が?
ブラックバードが引退する前、最後の形であるSR-71は偵察機として中東を飛んだ、
という関連付けをしているのですが、ここに展示されているのは実はA12タイプです。
A-12は1962年、ロッキードの「スカンク・ワークス」に寄ってデザインされ
極秘でCIAのために開発された偵察機で、一人しか乗れません。
wiki
前から見るとSRー71との違いがよくわかりますかね。
平面斜めから見ると、明らかに違うはずのシェイプが確認しにくいのですが、
この部分で見分けがつくかもしれません。
ちなみにA-12は沖縄の嘉手納基地で「ブラックシールド作戦」のために投入され、
北ベトナムにおける偵察任務に22回出動しています。
沖縄ではのちにSR-71の姿も見られることになるのですが、現地の人々が誰言うともなく
「ハブ」と呼んだのを当のアメリカ軍が気に入って、自らハブを名乗るようになります。
開発当初、この作戦に入れ込んだリンドン・ジョンソンは「アークエンジェル」と名付け、
設計案もそのようになっていたのですが、結局「ハブ」です(笑)
ちなみにA-12は引退直前、沖縄での運用中に一度太平洋に墜落しています。
沖縄の人々は「ハブ」とあだ名をつけこそすれ、この不気味な偵察機が欠陥で
墜落するから日本から出て行けなどということは全く言わなかったわけですが、
今だったらおそらく沖縄に集結する左翼は嬉々としてこれを政治活動に利用したでしょう。
先日の調布市に小型機が墜落した件ですら、オスプレイと結びつけて
墜落の危険を心配して見せたくらいですからね(嘲笑)
このA-12、コードネーム「article122」は、ネバダ州にある通称「エリア51」、
グルームレイクでレーダーテストのために配置されました。
ブラックバードの下にはこのような黄色いカートが停められていましたが、
これはコンプレッサーで、圧縮した空気を供給しエンジンを回転させるものです。
このカートと機体はどちらも国立空軍博物館から貸与されています。
しかしこうしてみると、クフィールとファイティングファルコン、そして
ブラックバードが中東での戦争に投入されたという共通点はともかく、掲示板の
「ディファレントルッキング」
が中東とどんな関係があるのか。
博物館の説明にはいまいち疑問が残ったまま終わりました。
続く。