ところで、今年の総火演では大変なトラブルが起こっていたんですね。
まず、 砲弾の破片が客席まで飛んで観客2人が軽いけがをした件。
現地にいると、しょっちゅう砲撃の際何かが飛んでくるから気をつけてください、
というアナウンスがあるのですが、そういう注意勧告も2日違いで参加した
花火大会と全く同じであることに気がつきました。
いくら気をつけていても、飛んできたらどうしようもないってところも同じ(笑)
幸い、「軽いけが」といっても、何か飛んできて「いてっ」という程度だったようで、
それが証拠に、こういうことなら針小棒大に騒ぎ立てるメディアが、
「このため23日の(事故は22日だった)10式戦車実弾発砲を急遽取りやめた」
と報じるに止まりました。
毎日新聞など、よほど悔しかったのか(?)
「(演習に)使われた弾薬は約36トン(約3億9000万円相当)。
さらに演習後、観客が残っている前で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)
に所属する米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ1機が上空を飛行した。
陸自は2018年度までにオスプレイを配備する予定で、
安全性をアピールするため陸自が米軍に飛行を要請していた」
などと付け足していました。
「さらに」ってなんだよ「さらに」って(笑)
前もってアナウンスしなかったから反対派が会場周りで騒げなかったってか?
それより、この件よりネットで騒がれていたのは、
10式戦車のキャタピラが外れてしまったことでした。
まあ、どんな装備にも事故はあるのですから、その現場と修復を目の当たりにできた
22日の出席者は、ある意味めったに見ることのできないシーンが見られたわけで、
当初22日のチケットを手配してもらっていたわたしなど、正直残念でたまりません。
ところで、富士学校音楽隊が作業が始まってすぐ演奏を始めるのですが、
9人がかりで必死にキャタピラに貼り付いている中、「涙そうそう」が鳴り響くのが
なんだかシュールだったのと、作業が終わってキャタピラを引きずった10式が
ドナドナされていく姿に思わずこちらも涙そうそうとなりました。
しかし、履帯外れは10式だけではなかったのです。
74式戦車の履帯脱落と回収作業 富士総合火力演習 第1学校予行
17日早朝の予行で74式の履帯も外れてたんですね・・。(T_T)
こちらのシーンの見所は、同僚の74式が至近を通りかかっても、
まったく声をかけてはいけない雰囲気でスルーしたことですが、
まあこれは実際には肉声で会話できるような状況ではなかったのかも。
それと、こちらは10式と違って完全に離脱した状態だったので作業は少し楽だったようです。
履帯が外れた時には自分で引っ張らせるための用具があるらしいことも発見でした。
今回の演習で二回もそのようなことが一般人の目の前で起こってしまったのは
偶然なのかはたまた天候のせいなのか(といっても戦争に天候は関係ないしな)。
というか、戦車の履帯ってこんなにしょっちゅう外れるものなんですか?
74式は、もう40歳超えている超高齢の老兵だからこんなこともあると思うけど、
それでは10式のは一体何だったのかと・・。
ただ、90式戦車回収車愛称「リカバリー」というマイナー装備が日の目を見たのは
国民に装備紹介をするというこの総火演の意義を思えば良かったんじゃないかと。
さらにリカバリーが映像の1:20には早々に到着している手際の良さにワロタ。
国民の声のなかには、
「ディズニーランドでなにかアクシデントがあっても、とっさの機転で
ナレーションが見事にごまかしたりするのに」
という声もあるそうですが、商業娯楽施設と自衛隊をいっしょにするなとあれほど(略)
陸自だって、どこかの駐屯地祭の模擬訓練で転んだ歩兵を、負傷したことにして
とっとと後送あつかいにしたっていう「とっさの機転」があったんだぞ!
今回、別の日には偵察のバイク、「オート」の隊員が一人転倒したものの、
即座に起き上がって見事に復帰したというシーンが見られたという話もありますが、
わたしが見た日には、そんなアクシデントは何も起こりませんでした。
それ以前に座った場所の関係で、オート隊員のジャンプなんか全然見えなかったし(−_−#)
というわけで、装備紹介の戦車の部ですが、74式軍団が進入する様子。
この、砲塔のなめらかなラインがお弁当屋の「戦子さん」のモデルになった所以です(多分)
ところで彼女はお付き合いしていた「90式先輩」の16歳も年上ってことになるわけです。
目標は左の赤い「+」が描かれた部分ですが、当たれば木っ端微塵になる
板などではなく、弾薬がすり抜ける素材のように見えます。
右側に向かって弾薬が上昇して行っていますがこれは何?
続いて90式登場。
こちらは徹甲弾と榴弾、異なる2種類の砲撃を行います。
走りながら徹甲弾を撃って相手戦車の装甲を破り、続いて対戦車榴弾で撃破。
右手に向かって走りながら正面に向かって徹甲弾を撃ち、
左に進路変更して前に進み、前方で戦車榴弾砲を一発。
ちなみに「止まれ」の合図で停止するとき、車体は激しく前のめりになります。
こんな写真が撮りたかった。
これはモニター映像をキャプチャしたもの。
前列で頑張っていた白レンズの君はこんな写真が撮れたかな?
90式の砲塔にいる人は、離脱のときちょうど蓋が邪魔して見えないのですが、
何かのはずみに一人だけ写真を撮ることができました。
続いて観客お待ちかねの10式戦車ですが、10式の「戦い方」の強みというのは、
逃げ足が速くてスラローム射撃ができるということ以上に、
ネットワークシステムを搭載しているというハイテクにあります。
というところを見せるため、まず、目標を発見した10式戦車が、
後続の10式2台に情報を転送し、その後続車が、前進しながらスラローム射撃、
続いて後退しながらの射撃を行います。
こちらが先に敵を発見したヒトマル。
ネットワークシステムを使って、情報を送ります。
「どこそこに敵発見。ネットワークシステムにより敵位置を確認せよ」
このスラロームがさすがはヒトマルというくらいで思ったより速くてですね(笑)
頑張ったんだけどフレームに全然収まらないのよ。
レンズを付け替えていればもう少しなんとかなったと思うんですが。
スラローム射撃、防衛省のHPより、(戦)車載カメラ映像。
同じく(戦)車載カメラ。
下手したら相方のヒトマルに当たってしまっても不思議ではない角度ですが・・。
わたしの位置からはスラローム射撃の瞬間はもれなく観客が写り込んでしまいました。
後進していてブレーキをかけたとき、戦車の車体は激しく傾きます。
あれ、これ外に人が出てますよね?
戦車というものは例外なく激しい黒煙を噴き上げるのですが、
ふと動力ってなんなんだろうと思って調べてみたら、ディーゼルエンジンなんですね。
ガソリンよりも燃焼効率がいいそうですから、それも納得ですが、
昨年買い換えたわたしの愛車は、メーカーも謳っているように「クリーンディーゼル」となっており、
C02排出量も少なく、さらにディーゼルの欠点である「PM」や「NOx」などの
有害物質の排出も技術によってクリーンになっているわけですが、まさか、
戦車にそんな機能が搭載されているとも思えないし・・・。
戦車の台数なんて10台単位の話だし、そのためにこんな人里離れたところで訓練してるんだし、
環境に対しては配慮なしってことでよろしいでしょうか。
いや、別にわたしはなんの文句もありませんが。
あ、手を挙げている。
アナウンスによると、このスラローム射撃の技術は名実ともに
「世界最高レベル」ということでした。
世界最高技術を持った戦車長の面構えは遠目にも眼光鋭いですね。
ところで、世界最高レベルの駆動性とネットワークに胸を張る防衛省ですが、
10式についてはとにかく「防御が甘い」という指摘は前からあったようです。
例えば車体側面のサイドスカートと言われる部分の鋼鉄製装甲板の厚さは
わずか数ミリで、分厚いものになると10㎝の戦車も海外の軍隊にはある中、
ほとんどペラペラというのが、この写真でもわかりますね。
戦争が絶対起こらないという想定のもとで、抑止力だけを目的に訓練を行っていると、
実戦を真に想定していないと言えなくもない装備が生まれてきてしまうのだろうか。
とわたしは素人なりに大変僭越ですが、つい考えてしまいました。
(どなたか10式の能力について安心材料をお持ちでしたら教えてください)
ある軍事評論家の意見によると、徹甲弾の搭載も「市街戦を想定していない」、
つまり富士山麓で撃ちっぱなしをやることしか考えていないからということですし、
アメリカなどと違って、真剣に戦闘効果(実戦での殺傷能力)を考えた装備導入をしなかったり、
現場で負傷者が出たらどうするのか、みたいな想定すらまともにしないため、
もし本当に戦闘になったら、訓練だけやっていた隊員には予想もできないことが
次々と起こるであろう、 という意見すらあるようです。
優れた技量で富士山は描けても、殺し殺される場面でそれが役に立つのかって話でしょうか。
まあわたしなど、それもこれも自衛隊には何の責任もないと思うのですが、これつまり
日本国が「武力」を忌避するあまり、防衛に必要な真に迫った戦闘の想定すらまともにできず、
一部勢力によって装備の拡充を阻止されているせいなのだとしたら、深刻な問題だと思います。
今回の履帯外れは、おそらく隊員の練度とは何の関係もないところで起こったことですが、
これが、いかに訓練を積み重ねても、日本全体を(防衛関係者も漏れなく)うっすらと覆う
平和ボケの基準で全てが賄われている軍=自衛隊ならではの脆弱の表れ、
というものではなければいいが、と思ってしまったことも事実です。
それはそうと、破片が飛んできて怪我したとかいう男性二人は、おそらく
陸自からその後、下にも置かぬ対応で終始扱ってもらったんだと思うのですが、これを
いいなあ、羨ましいなあ・・・・なんて一瞬でも考えたわたしは馬鹿たれ者ですか。
続く。