観艦式本番も終わり、世間では当日安倍首相が「くらま」から「いずも」、
そして「ロナルドレーガン」にヘリで坐乗したことが話題になっています。
相変わらずの毎日新聞は、首相がRR上で米海軍戦闘機に乗って写真におさまったことを、
「中国への牽制の意味があるとみられる」としょっぱなで書いておきながら、
「中国・韓国など近隣諸国を刺激するのではないかという声もある」
(声もある、というのは自分たちがそう思っているという意味) などと、
前言との間に記憶喪失にでもかかったのかと言いたくなるくらい矛盾する文章で、
中韓さまを焚きつける気満々の御注進ぶりを露呈しておりますが、
こういう記事を書くのが仕事なら、はっきりいって記者が現場で取材する必要なくね?
8時間の観艦式に同行して写真を撮っているカメラマンはともかく、
何を書くかは最初から既定路線で決まっていて、あとは粗探ししにくるだけの記者や、
民主党の代議士なども形式的に特別扱いしなくてはいけない、中の人の気持ちが慮られます。
それ以外で一般に観艦式の船に乗り込んでくるのは、隊員の家族や父兄、
日頃から防衛産業に従事する人々、政府や出入りの企業関係者。
こういう人たちは日頃から「自衛隊に理解を持っている人」と考えていいでしょう。
それ以外の参加者には三通りいて、一つは「自衛隊と国防に興味がある人」。
そして「写真を撮る人」、残りは「話の種にor 物見遊山or付き合いで来た人」です。
わたしがその中の「無自覚にマスコミに洗脳されている人々」の存在を感じたのは、
最前列にがっつり位置を占めて、訓練展示を見ていた団塊老人たちの中のひとりが、
「こんなすごい武器持っていたら、安倍さんもそりゃ使いたくなるわなあ」
といい、周りがそれにウケて、(おかしくねーよ)どっと笑ったのを見たときでした。
この人たちが、国会中継の国防に関する審議を一度も通して見たこともなく、
さらには安保法案に目を通したことも一度もないのはほぼ確実としても、
まさか本気で、安倍首相が戦争をしたいから安保法案改正した、とでも思ってるんでしょうか。
さて、今回の訓練展示では潜水艦艦橋の乗員を望遠で撮ってみました。
出入りするハッチがとても小さいのに驚き。
茶室のにじり口みたいな感じですね。
フィンから落ちないように命綱を繋留するバーがよくわかる写真です。
当たり前ですが、万が一ここに人が出ているのに気づかずに潜行した場合に備えて(笑)、
命綱はすぐにバーから取り外せるようになっていると思われます。
先ほど「あたご」を追い越して行ったLCACが訓練展示で高速走行
(とはいえさっきと同じ速さ)を行なっております。
それ自体が巻き上げる細かいしぶきがまるで霧のように船体を包んでおり、大変ファンタスティックです。
ちなみにLCAC走行中、乗員はシートベルト着用せねばなりません。
そんなに長いこと乗る船ではないので、きっと台所もトイレもないはずです。
ですよね?
疲れを知らない(歌自重)
LCACは観閲や展示を行った後、必ずこうやって艦隊を追い抜いていくわけですが、
これについては、わたしの横で見ていた人が、
「これってただ速いってことを自慢してるだけでしょー?」
とナメたことを言っていました。
速いということは、このホバークラフトの特徴の一つに過ぎないのであって、
これが輸送艦や補給艦に積んでどこでも展開できるということに価値があるわけなんだが。
旗艦「くらま」の前で祝砲を撃って、すっきりした顔で追い抜いていく「しまかぜ」さん。
「あたご」は訓練展示の時に旗艦とはとんでもなく離れた所にいるので、
行われる訓練のほとんどをまともに見ることができません。
その中でも比較的見やすかったのはPー3Cオライオンの対潜爆弾投下でした。
が、わたしは勝手に「どうせ見られないし」と決めてかかっていたため、
カメラの用意が全くできておらず、投下の瞬間を逃しました(T_T)
P-1のフレア発射もかなり遠くでかすかに見える程度。
全く、初回で「むらさめ」に乗って全ての展示を目の前で見られたのは幸運だったと思います。
ブルー・インパルスの演技も、かなり向こうの方で行われている感じ。
陣形を変えて突入していく時だけは近くを通ってくれるという感じでした。
前回「くらまでは隊員による説明が行われた」と「くらま」乗艦者から聞いたのですが、
それはどうやらプリレコーディングのものを放送していたようです。
この日の「あたご」でも、最終日の「ちょうかい」でも同じ内容の説明が流れました。
初日の「むらさめ」が放送をし忘れたか、あるいは用意がなかったのかもしれません。
この日は前回ほど空の青が深くなかったので、効果としては少し残念でした。
11月3日の入間での航空祭はどうかな?
なんでもこの日に航空祭を行うと決めているのは、11月3日というのが統計的に
「一年でも最も雨が降らない祭日」だからということを聞きました。
わたしは二年前に行きましたが、雨は降らないまでも、かなり曇っていた覚えがあります。
機体と機体の間がわずか1メートルのままで飛ぶという陣形だったと思います。
互いの信頼と高い技能無くしてはできない技だとレコーディングでも言っていましたが、
こうしてあらためて写真を見るとその凄さがわかります。
ところで、左回頭して向きを変えるときに、ふと「いずも」艦上の様子が変なので望遠で撮ってみました。
こ、これは・・・・・!
「いずも」には防大生しか乗せない、というのは本当だったのか。
それにしても、ものすごいことに気がつきませんか?
「いずも」の甲板には柵が立てられていません。
一般客の乗るほとんどの自衛艦は、その時用の柵が立てられており、間違っても観客が
海に落っこちないようになっています。
これは備え付けのものではないため、観艦式と予行では何回も何回も
「柵は丈夫なものではないので寄りかかったり持たれたり絶対にしないように」
というアナウンスで注意が喚起されていました。
我々は柵のある自衛艦というのが、当たり前のような気がしていますが、
普段の任務において運用される自衛艦のほとんどは、このように柵なしなのです。
防大生は修行中とはいえ、国から給料をもらっている国家公務員ですし、
その心構えというか、危険管理は十分に行われているという前提のため、
乗艦にあたっても、そのような一般人向けの配慮は行われていないのでしょう。
もっと言うと、「海に落ちるような奴は防大生ではない」?
とはいえ、「いせ」で、航行中隊員が海に落ちたことがあったと聞いたことがあるな。
海自ではなく甲板をランニングしていた陸自隊員だったかも(記憶不明瞭)
いずれにしても艦はその報を受けて騒然となったそうな。
猿も木から落ちる、ならぬ、自衛官も艦から落ちる。況や陸自隊員をおいてをや。
うーん・・・・ここにもないなあ、柵・・・。
しかし、スペースに余裕があって楽そうねえ。
豆粒に見えるほどほど遠くの「くらま」艦上では、誰も見ていない中、
本番の観艦式で、首相を積み下ろしする予行演習が行われているのだった。
これも「くらま」に乗っていた人によると、ちゃんと「首相代理のそれらしい人」が首相役を務めていたとか。
さて、「あたご」艦上で行われたラッパ吹奏の展示。
たとえば、こういう展示が行われる時には必ず艦内放送で
「ラッパ吹奏展示を行う。始め」
みたいな掛け声がかかるんですが、最後の日、「ちょうかい」の操舵室で
後半の長時間見学していたところによると、時間ぴったりに操舵室の放送係がアナウンスし、
それによって発動、という決まりになっているようです。
初日の「むらさめ」でも行われていましたが、一人で吹かされた海士くんは
「練習中で緊張している」ため、音がよく出てこない状態でした。
そんな段階でも皆の前でさらし者にされ、じゃなくて責任持って吹奏を任されるのが軍隊式。
一番左の敬礼している海曹が説明をしていたのですが、右端の隊員のことを
「かなりのおじさんに見えますがまだヤングマンです。24歳です」
といったとき、まわりからえーーという声が起こりました。
・・・・失礼でしょ?
「くらま」にヘリが着艦しているとき、前を航行していた派手な船。
遊覧船レインボー丸とでもいう名前に違いない。
と思って画像をぐぐってみたら、これは東海汽船の高速ジェット船で、
「セブンアイランド虹」といい、竹芝から出向して伊豆半島の熱海、大島や新島などの
「セブンアイランド」を結ぶ路線を航行している船でした。
こんな不安定な形をしていますが、従来の水中翼船は水中翼の一部が海面上に出る
「半没翼船」なのに対し、水中翼が全て沈む「全没翼型水中翼船」であるため
ハイスピードと高い安定性、なめらかな航行を実現しているということです。
全ての訓練展示が終わり、あとは朝出た港に帰るだけ、という時間、一時の興奮も冷めて
憔悴すら漂わせる人々の醸し出す、気だるい空気が艦上を支配します。
一方海上では、一列になって勇壮に進んでいた艦がいつのまにか周りから姿を消してゆき、
落ちかけた陽を照り返す海面に、ただ並行して航行する僚艦のシルエットだけが浮かび上がるのでした。
「あたご」の甲板右舷後部には、なんと喫煙所がありました。
タバコを吸う乗組員のために、自衛艦にはところどころに喫煙所が設けてありますが、
このひの「あたご」がここに喫煙所をわざわざ設けたのは喫煙者への配慮でしょうか。
確かにここなら煙は海のうえに流れ、嫌煙者の迷惑になることもありません。
カップルで応募して当選したのでしょうか。
この日わたしの隣に座っていたおじさん(の後頭部)と「いずも」。
たまたまフレームに入り込んでしまったのでお話ししますが、このおじさんがねえ・・。
船の上の隣の席で逃げようもない相手に向かって、しゃべるしゃべる。
しゃべるといってもほとんどこちらのことは聞きもせず、自分の過去、
(自衛官だったけど戦争もないのに自衛隊にいても意味がないと思ってすぐにやめた)
とか、自分の会社の世界的な評価とか、つまり「俺語りおじさん」の典型だったわけですが、
まだそれはいいのよ。
そんな話なら、功徳を積むと思って、いくらでも喜んでお聞きしましょう。
が、しかし、聴き手を得て調子付いたおじさんは時事放談ならぬ爺放談に突入。
「ベトナム戦争のとき、日本で作った武器が人を殺してるんですよ。
日本は加害者なんですよ。日本が加害者だったことを忘れてはいけません」
「日本はアメリカの奴隷ですよ。奴隷」
「スノーデンっていう本を読んでるんですが(本を見せながら)、
戦争を起こしたいのがいるんですねえ、それが皆仕組んで世界で戦争を起こしてるんです」
「あんな法案通しちゃダメですよ。戦争法案ですよ!」
わたしは今まで、安保法案のことを「戦争法案」と言い換える人間の国防論には
一度も論理的に納得させられたことがないので、この言葉が出た途端、
「あ、これあかんやつや」
と速やかかつ迅速に判断し、頃合いを見て会話を打ち切ってiPadで読書を始めました。
この自虐おじさんと安保法について議論しても、面白くない結果になるのは見えていたからです。
「そう思いませんか」
といわれたのでわたしは、iPadに入れた城山三郎の「零からの栄光」を読みながら
「思いません。わたしは抑止力として法案は必要だと思います」
とだけ、サブゼロの態度で答えると、おじさんは鼻しらんだように
「そうですか」
といって黙りました。
わたしは心の中で、舞鶴で会った海将補の、
「我々が日々対峙している事例を全部明らかにすることができるとして、
それを知ったら、おそらく反対している人も安保法案に対する考えを変えるでしょう」
という言葉をこのおじさんに言ってやれたら、と思っていました。
この写真で、ほとんどがおじさんであることがお分かりいただけるでしょう。
世の中にはおじさんといってもいろんなおじさんがいるのですが、
喋りたがりのおじさんが多いのも事実です。
近席のおじさんは、自分が防衛団体の代表で来ていること、
今回の乗艦券の配布に際しては、
「日頃の貢献がないのに券だけ欲しがる奴には絶対にやらなかった」
ということを言っていました。
生殺与奪の権利を持つと偉くなったような気になるタイプでしょうか。
わたしが何かの話題の時に
「12日に乗った時には・・・」
というと、
「あなた2回目なの!」
「ええ」
「ずるいなあ」
・・・・は?
わたしがどんな経緯で乗っているかもわからないのに、それはないでしょう。
方や隣のおじさんは、わたしがiPadを見ていると、そのうちiPadの値段などを尋ね出しました。
「もらったものなのでいくらか知りません」(これは本当)
「文句あるの?」のおじさんほど凶暴でもないし、いわゆるカメ爺でもないし、
きっといい人なんだとは思うけど、他人との距離をもう少し保って欲しかったです。
というわけで、15日の「あたご」での観艦式予行は終わりました。
そうそう、この日とっても嬉しいことがあったのでお伝えします。
舞鶴で「あたご」の見学をしたときに説明してくださった幹部の方に
甲板上でお会いしたのでご挨拶をしたのですが、 最初の一声が
「ですよねー?」
でした。
どうも向こうも見た顔が客にいるなと思っておられた模様。
そして、次にお会いした時に、ポケットから
「乗艦された記念に」
といってこのメダルを出してわたしにくださったのでした。
あとで艦橋にもう一人の若い幹部さんを訪ねて行き、こちらにもご挨拶完了。
「ご縁があったら観艦式でお会いしましょう」
という言葉を交わして別れたあとの再会だっただけに、一生心に残る乗艦となりました。
こんなキャラもいることだし、すっかり、あたごさんのファンになっちゃったぞ。
続く。