さて、今回の観艦式には訓練を終えた米海軍のロナルド・レーガンが
「たまたま相模湾の観艦式実地海面を通りかかるらしい」
という噂をわたしも耳にしていたわけですが、それが本当だったと知ったのは、
豆粒のように小さな空母の影が西からこちらに向かってくるのを、
艦内アナウンスによって知った人たちが指差して騒ぎ出したときでした。
この日「ちょうかい」の艦橋左舷側ウィングにいたわたしは、
何度となく甲板とウィングの間を往復していましたが、何度目かに甲板に行ったとき、
ちょうど旗艦の「くらま」にヘリコプターで安倍総理が坐乗し、おそらくは
「くらま」の特別室で「総理大臣喫食カレー」を食べ終わって、いざ観閲のタイミングでした。
まるで艦隊に合流しようと近づいてくる「くらま」を、漁船が皆立ち止まって眺めているようですが、
彼らはこのとき、そこに総理大臣が乗っていることも知っていたに違いありません。
我が「ちょうかい」は観閲舞台の一番最後です。
先導艦の「むらさめ」のあと、「うらが」「てんりゅう」「しらゆき」「ちはや」の後につき、
このように全員の後ろ姿を眺めながら航行していく形です。
「ちはや」の甲板上は「ちょうかい」に劣らず人口密度高そうです。
本番では一般客を一切載せない受閲艦もあったようなので、「ちはや」や「あすか」、
「うらが」など搭載能力の大きな船にはその分も詰め込んだという感じです。
前甲板の舳先では、ハンドマイクを持った副長が解説をしてくれていました。
「もうすぐ総理大臣の乗った『くらま』が列に合流します。
Uターンしてすれ違ったときには安倍総理が見えるかもしれません」
その「くらま」が、観閲部隊に接近してきました。
「ちはや」などと比べると、もうスカスカといっていいほど、人が少ないのがわかります。
「白い布のかけられたところが総理大臣のおられるところです」
もしかしたら白い帽子がたくさん立っているデッキがそうでしょうか。
下の階のデッキには、要所を固めるように自衛官とSPが立っているのが見えます。
「くらま」には前甲板に2門の73式5インチ単装速射砲を搭載しています。
おそらく速射砲の台に上がっているのは報道陣でしょう。
どちらにしても一般人はほとんど乗っていないように見えます。
後甲板なども白い帽子や空自陸自の制服が目立ちます。
この日「くらま」には中谷防衛相、麻生財務相も坐乗したので、おそらく同乗できたのは、
身分のはっきりしている防衛省、政府関係者と自衛官だけだったのではないでしょうか。
右側から今まさに隊列に合流しようとしている「くらま」。
「くらま」はこの間退役した「しらね」と同じ最後の「しらね型」で、
2017年の退役が決まっており、これが最後の観艦式参加となります。
「くらま」の周りを海保の巡視船が二隻警戒のため守っていました。
海の上で見る海保の船は美しいです。
さて、この後、わたしはもう一度艦橋に駆け上がりました。
(この日1日で艦橋の階段を5~6回は駆け上っています)
今まで平面からしか見たことがない観閲を、高い艦橋から見るためです。
「ロナルド・レーガンが見えてきた」
というアナウンスがあって周りがどよめいたのはそのときでした。
かなり遠くにいると思ったのですが、逆行していたので以外とすれ違うのはすぐでした。
4202の「くろべ」は観閲付属部隊の4番艦で、我々とは並行して走っています。
つまり、受閲部隊通過はこちら側となるのですが、この瞬間、ほとんどの観客は
RRの通過を見るために向こうに行ってしまっています。
RRの甲板上をアップしてみました。
一体何機あるのかという艦載機のこちら側に、見事な登舷礼の列ができています。
ただ通過するだけでなく、さすがはアメリカ海軍、登舷礼式送ってきていたのでした。
艦体のくり抜かれたように見える部分はハンガーデッキで、そこにも艦載機が見えます。
安倍首相はこの後RRの艦上で戦闘機の操縦席に乗っていますが、
その飛行機もすでにスタンバイしているはずです。
まるで櫛の目のように隙間なく舷側に立つ登舷礼の列は、
先日「作業着で登舷礼するんじゃない」と苦言を呈したのとは同じ米軍とは思えぬくらい、
全員が間違いなくビシッと正装で臨んでいるのがこの位置からでもわかります。
アメリカ人のいいところは、いざとなればやるときはやる、というメリハリのつけ方ですね。
観閲付属部隊最後尾の「きりしま」とすれ違うRR。
空母というのは遠くから見るとまるでお皿が浮かんでいるように見えます。
「ロナルド・レーガン」の名前は、本人が生きているときに命名された
数少ない艦名の一つで、他には日本の自衛隊とも関係が深かった「アーレイ・バーク」、
「ジミー・カーター」、「ジョージ・H・ブッシュ」、なぜか芸人なのに
熱心に軍人慰問活動に取り組んだためその名を付けられた輸送艦「ボブ・ホープ」があります。
ここからは、「富士と護衛艦」ならぬ「ロナルド・レーガンと護衛艦」シリーズを。
全てのカットにRRが写り込むように撮ってみました。
まずは受閲部隊旗艦「あたご」。15日に乗ったばかりです。
「あたご」は左舷側で登舷礼を行い、旗艦とすれ違った後ですが、
すでに登舷礼要員がRRを見るため向こうを見ているのが写っています。
これこれ、「ちょうかい」が通り過ぎるまでが登舷礼だぞ!
ついでに「あたご」後甲板。
誰も登舷礼の行われている左舷なんて見ちゃいねえ(笑)
「RRと護衛艦シリーズ」、お次は「しまかぜ」。
前甲板に祝砲を搭載しているのがわかりますね。
「しまかぜ」も祝砲を撃つ係のせいか、あまり一般人は乗ってなさそうです。
どうも報道陣が多いのではないかと思われました。
このとき初めて知ったのですが、受閲部隊は我々観閲部隊の前を通り過ぎると、
順次最後尾に回って観閲部隊の後ろについていくことになっていたようです。
「あたご」が今左回頭して、我々の後ろに付こうとしています。
続いて「たかなみ」型護衛艦の「おおなみ」。
「おおなみ」甲板もアップ。
やっぱり皆RRの写真を撮っています。
もう遠くに行ってしまったというのに・・・・。
護衛艦「きりさめ」。
106は「さみだれ」です。
そういえばわたしが生まれて初めて乗った自衛艦はこの「さみだれ」でした。
そして、「いずも」である。
甲板のすっきり具合を見ると、どうやら今日は防大生も乗せていないのでは?
と思われます。
念のためアップすると、本当に乗員だけですね・・。
ちょうど「登舷礼終わり」の号令がかかって、向きを変えて移動する寸前のようです。
おっと、「いずも」も「護衛艦とロナルド・レーガン」しなきゃ。
安倍首相は全ての観閲が終わった後、まず「いずも」に移乗して観閲し、
そこからまるで義経の八艘飛びよろしく、RRに移乗しました。
義経が船から船へ飛び移ったのは追っ手から逃げるためですが、この日安倍首相は
新しく就役したばかりの最新鋭DDHと、あの大震災で「トモダチ作戦」を展開し、
日米連携の象徴というべき「ロナルド・レーガン」を股にかけることによって、
内外に日本の取る護りの意思を表明して見せたのだと思います。
この日国会前では、訴える相手の誰もいない国会議事堂に向かって、
安保反対派の老人たちが、少人数でシュプレヒコールを上げていたそうですが、
彼らには悪いけど、その姿は、まるで自らを伝説の騎士(国民の多数派)と思い込み、
風車(日本の軍国主義)に向かっていく、ドン・キホーテのようにわたしには思えました。
続く。