係維掃海具が投入され、それが引き揚げられました。
報道関係者に配られた資料によると、この部分に
掃海:ショートスティ
と記されています。
オロペサ型掃海具を投入し、どのように曳航するかを展示して
その後短時間で引き揚げたから「ショートスティ」なのかなと思ったのですが、
どうやらそうではなく、このような掃海の方法をそのように称するようです。
ちなみに個人ブログではときおり「ショートステイ」と書かれているようですが、
自衛隊的に正確な用語は「ショートスティ」であるようです。
われわれの乗った「いずしま」から見ていると、「えのしま」がこちらに向かって
近づいてきて、少し後ろを追走する形で航行を始めました。
「えのしま」というと、前回の日向灘での掃海隊訓練でメディアツァーが行われ、
わたしが乗せていただいた掃海艇です。
「今曳航した掃海具で切り離した機雷を『えのしま』が処理したんです」
えっ?
そもそも機雷らしきものが見えなかったんですがそれは。
もしかしたら、「切り離したという設定」「処理したという設定」
だったのでしょうか。
掃海具を回収し終わった後、関わった全員がまた甲板に整列です。
作業の区切りごとにこうやって整列及び確認を行うんですね。
解散になるや否や、カポックを脱いでたたみ始める人あり。
今曳航していた掃海具で使われていた切断機でしょうか。
ちなみにこの切断機ですが、防衛省の資料から図を見つけてきました。
緑にペイントされている部分は『安定版』。
肝心の切断器は鉤型になった部分の奥にある「ピン」なんですね。
さて、ショートスティという掃海が終了した後は、
「掃討」の展示となります。
「いずしま」の「掃討具」はこの黄色いPAP-104 Mk.5機雷処分具。
この写真は「ショートスティ」が始まる前に撮ったもので、この機雷処分具
「パップ」本体のあちこちにブルーのテープを貼り付けているところ。
海中に投じた時の保護のためのテープでしょう。
左舷船尾近くの画像です。
PAPというのは水中カメラと機雷探知機(ソーナー)を搭載した掃討具ですが、
今点検しているのはそれに接続する電源であろうかと思われます。
続いてPAPの各部分の作動確認が始まりました。
ちょうど艦橋後ろ甲板の左舷側に立っていたわたしの後ろで、
点検をしている隊員との通信が始まりました。
どうも通信内容を聞く限り、わたしの後ろでこの作動が行われており、
後ろの隊員が例えば推進プロペラを回した、といえば、
PAPの横に立つ隊員がそれが作動していることを報告するという感じです。
PAPの両舷に付けられたプロペラはこんなに可愛らしいのに、
この航走体を海中で自在に動かす力を持っているようでした。
プロペラのケースには海中の浮遊物を巻き込まないようにネットが張られています。
こちら、PAPのノーズ付近の目盛りを確認中。磁石でしょうか。
さて、甲板上ではまたしてもお色直しをして隊員集合。
このようにしょっちゅう服を変えるのもわたしたちには謎でした。
そこに潜水服のEODが登場。
PAPによる掃討のときにはEODの出動もあるってことなんでしょうか。
キリッ!といった風情で手袋をはめてスタンバイです。
ふと海面に目をやると、手前の「えのしま」、向こう側に「のとじま」がいました。
むむ、妙に接近しているが、これには何か意味が・・・?
この間を利用して、宇都宮司令は報道陣に掃海訓練中は、隊員たちが
このフル装備で何時間でも待機し、食事・休憩はもちろん仮眠もこのヘルメットをかぶって
甲板で行う(触雷の危険に備えて)というのがいかに大変なことか
わかってもらうために、報道の人にヘルメットをかぶってもらっています。
「重たいですね・・・」
というより、かなりサイズ的にきつそうに見えるがどうか。
1隻の掃海艇にはEOD(水中処分員)は3人乗っていると聞いたことがあります。
キツイので昨今なり手が少なく「絶滅危惧種」(ミカさん談)となりつつあるEODですが、
女性で配置を熱望して夢を叶える人がいたり、逆に新聞でインタビューされていた
「1000時間を目前に体を壊して残念だけど引退した」
という人がいるという具合に、この仕事に情熱を持って取り組む人もいるのです。
彼らの給与体系について聞いたことはありませんが、危険手当は出るのでしょうか。
さて、いよいよPAP104Mk. 5の海中投入がはじまります。
まず、先ほどの浮標投入の時に使ったのより大きな左舷側のクレーンから
出てくるワイヤを確保。
もうこのころには亀爺効果で、報道陣が皆下に降りています。
上からの方が作業がよくわかると思うんだけどな^^
クレーンのアームがうぃーんと動いていって、パップ本体の上に。
ロープがピンと張られました。
ロープ先のフック部分を本体に当てないように慎重にクレーンを動かします。
ものすごく分厚そうなゴム手袋をつけた隊員が、フックの先を本体に引っ掛けます。
パップの本体に「GROSS 890kg NET 570kg」と書いてありますが、
このあいだのS-10掃海具より軽く、クロマグロよりふた回り大きな感じですか。
パップを吊り下げるワイヤは鋼鉄製です。
ところで、このパップにペイントされた白い矢印。
わたしはてっきり前回の「えのしまくん」のようなオリジナルペイントだと思ったのですが、
「とよしま」「つのしま」など、他の「すがしま」型掃海艇のどのPAPを見ても
同じ矢印があるので、これは単に「こちらが前」という印ではないかと思われます。
ちなみに、阪神基地隊所属の掃海艇「つのしま」のPAPには、さりげなく
阪神タイガースのトラがでかでかとペイントされているのですが、
万が一他球団ファンの乗員がいたらこれは辛かろう(笑)
PAP投入にはEODが関わるようです。
万が一何かあったら飛び込んで追いかけるとかか?
尾翼にはロープを通す穴が空いていて、こちらには繊維のロープが通されます。
海中に投じる時に安定させるためのロープでしょうか。
「掃海艇の仕事は索を捌くこと」
と奇しくも伺ったことがありますが、何をするにしてもこうやって
ロープやワイヤを扱うそのやり方は、昔からあまり変わっていません。
掃海艇乗りを「最後の船乗り」と呼ぶのもここから来ています。
先ほどお立ち台で掃海具曳航を指揮していた隊員さんが今回も指示して、
クレーンがPAPを持ち上げました。
持ち上げながらも3箇所に取り付けられたロープを3人が保持しています。
クレーンが海の上にPAPを運んでいきます。
相変わらず3箇所のロープは保持されたまま。
注意していただきたいのは船尾に立っている隊員のところから出ている
釣竿のような赤いコードの通る長い棒で、これはPAPにとっての命綱、電源です。
上の方の写真で確認していただければわかりますが、最初の頃、この角に
テレビカメラが立って、ここから投下を撮ろうとしていたのです。
おそらく作業に際して「(邪魔なので)どいてください」とか言われたんだろうなあ。
もちろん自衛官は何も言わないけど、きっとメディアのカメラが入るとき、
彼らはかなりうざいというか、イラッとしているものではないかと思います。
とか言ってたら後ろからまた近づいて撮ってるよ(笑)
でさー、それだけやって撮った映像、番組でちゃんと使ってもらえたの?
いつも思うけど、目の色変えて人を押しのけて自衛官にウザがられながら
真ん前に陣取ったにしては、どの媒体も扱いは小さいし、写真もせいぜい小さいのが1枚。
それが仕事だからと言ってしまえばおしまいですが・・。
さて、この写真では、PAPの後部につながっているコードを
ガイドに沿って伸張して行っているのだと思われます。
こうしてみると今にも落ちそうなくらい体を乗り出して行う作業ですね。
電源コードがピンと張ってしまわないように撓ませたようです。
いよいよ海中に投入の瞬間。
もしかしたら、EODはこの作業中何かあったらすぐ飛び込もうと思ってる?
PAPを海中に投下したワイヤが外されました。
どこでどうやっているのかは現場ではわかりませんでしたが、
どうやら遠隔操作でフックを外すことができる仕様のようです。
海中に放たれたパップくん、お尻から出たコードだけで元気に泳ぎだしました。
「この後は、食堂でパップが写しだす映像を見ます」
宇都宮司令が皆に声をかけ、一同はぞろぞろと階下に降りて行きました。
続く。