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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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PAP-104Mk.5引き揚げ〜MINEX・掃海隊機雷戦訓練@伊勢湾

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掃討具PAP-104が無事海中に投下されました。
わたしたちは第1掃海隊司令に促されて食堂に戻ります。



食堂の入り口には暖かい缶コーヒーが用意されていました。

自衛隊という組織で飲み物を何度か出されて気づいたことですが、
出される飲み物は常に選択の余地なくコーヒーです。
アメリカ海軍はあの通りですし、唯一の例外であるイギリス海軍を除いては、
世界的に海軍というのは圧倒的にコーヒー派なのではないかと思われます。

このときに用意されていたのも甘い缶コーヒーとそうでもない缶コーヒーの二択です。
コーヒーには絶対に甘みをつけない主義のわたしもこうなっては
比較的甘くないという方を選ぶしかありません。
缶コーヒーなど何年ぶりかというくらい久しぶりでしたが、冷え切った体に
暖かく甘い缶コーヒーは殊の外美味しく感じました。




小さな食堂には、コンパクトにいろんなものが備えられており、
テレビのモニター、神棚、プリンターなどがまとめて置いてあります。

テレビ台に「常勝軍団」とありますが、他の掃海艇の例に漏れず、
「いずしま」もまた、「一家」として訓練やソフトボール大会など、
各艇対抗の勝負に勝つべく常日頃から研摩しているのでありましょう。

しかも「常勝軍団」の下にある金色のプレートには、なんと

「平成27年度機雷戦部隊戦技 優秀艦艇」

とあるではないですか。
そういえばミカさんが「いずしま」に乗ることが決まったことを教えてくれたとき、

「いずしまは今優秀艦艇に選ばれてイケイケなんですよ」

というようなことを言っておられたような覚えが・・。
27年度の戦技といいますと、もしやそれは先日の日向灘の結果?
日向灘のときに座乗した「えのしま」も優秀な艇だったということですが、
もしかしたらメディアに公開されるのは、優秀だからということでもあるのかな。

 

ちなみにこれも掃海艇らしく極限に小さな神棚にはちゃんと
賽銭箱も備えられています。(写真を見て気づいた)
小さな鏡の御神体、立てかけられたお守り札には
○山神社、と書かれています。

もしかしたら名前の元になった「出島」(いずしま)にはこのような
名前の神社があるのかなと思ったのですが、そうでもなさそうです。

「出島」と書くと長崎県出島ということになってしまうのですが、
「いずしま」の命名由来となった出島は、宮城県の女川に近い
小さな島で、面積 2.68km、周囲 14km、
人口 はわずか 450人という小さな島だそうです。

東日本大震災では20mの津波により島民25名が犠牲になりました。
震災後島民が全て島外に避難し、復興は進まないままですが、
漁業関連施設からもとどおりになりつつあるということです。

掃海艇「いずしま」と実際の「出島」とが、名前以外で何か
関係を持っているのかどうかについては今回わかりませんでした。

「出島」の話ではありませんが、食堂に東日本大震災のときに、掃海隊が
どのような活躍をしたのかを伝える写真がパネルにされていました。

あの震災で、多くの自衛隊員が現場で捜索に当たりました。
ある程度の時間が過ぎたときから、それは「救助」から「遺体捜索」へと
なっていったわけですが、特に掃海隊の救助活動、それに続く遺体捜索活動は
その壮絶な体験から多くの掃海隊部隊隊員がメンタルダウンしたと聞いています。

中でも二十歳にも満たない若い男の子がこのような現場をみたという話を聞いたときに、
わたしは思わず彼らに向かって、手を合わせて拝みたいような気持ちにさせられました。

「行方不明者捜索」「行方不明者水中捜索」・・・・・
この写真はおそらくその苛酷さの片鱗も伝えていないのだろうと思います。




食堂の壁に掛けられていた「いずしま」のスペック。
TYPE-2093とは掃海艇本体に搭載されている機雷探知機で、
可変深度式のソナーとなります。
これは矢印で指された上部構造物前端の甲板室内に設置されており、
ウィンチによって300メートルの深度まで吊下げることができます。

防衛省の資料によりますと、巻上機製作は日立製作所。
予算は「204百万円」と謎の記載がされていました。



「いずしま」の構造についてブリーフィングで第1掃海隊司令が説明したとき、
この食堂の壁を指差して、

「縦に沢山の梁があるでしょう」

と指摘していました。
言われてみると、縦の梁はほぼ30センチおきにびっしりと張り巡らされています。
木だけでできている掃海艇の強度を高めるための仕様なのだそうです。

そしてこの梁のくぼみを利用して、棚を作ってしまうという工夫が(笑)
棚に置かれたウォータークーラーは、落下防止のひもがかけられています。


さて、「常勝軍団」の上に映し出されたソナーの画像を指差し、
第1掃海隊司令が説明をしてくれました。



映像をカメラに切り替えると、おお、何か見えてきた。
PAP-104はソナーでまず探知しますが、それは類別用ソナー
(クルップ・アトラス社製AIS 11高周波ソナー )です。

そして、機雷識別用ビデオカメラの映像がこれです。

前回、赤いコードを電源だと言ってしまったのですが、
あれは電源コードではなく、光ファイバーケーブルでした。
ファイバースコープってことでよろしいでしょうか。

なお、PAP-104の電源は内蔵電池となっています。

そしてカメラがとらえた機雷(のつもりの物体)は。



なんか図工の時間にデッサンする石膏模型みたいな形ですが、
認識しやすいように色は白、縁には何か貼ってあります。
これは模擬機雷なのですが、画像検索してもこの形のものは
「いずしま」の甲板に置いてあったという写真が一つ見つかっただけでした。

これも「いずしま」が設置したものかもしれません。
設置して自分で回収する予定ってことなんでしょうか。

PAPは沈底機雷、係維機雷のどちらにも対応でき、画像で識別したら
あとはその形状によって掃討のやり方を選んでGO!です。
沈底型には100キロの爆雷で爆破、係維機雷は搭載したカッターでワイヤを
切り離し、その後掃討しますが、その際、先ほど控えていた水中処分員が、
爆薬を取り付けたりするということなのかもしれません。


さて、PAPが送ってくる画像を確認したら、次は揚収です。
模擬機雷は比較的近くに沈んでいたらしく、わたしたちが食堂から
甲板にもう一度上がると、程なくPAPが泳いで帰って来ました。 



いつも不思議なのですが、いつの間にクレーンのフックをかけるのでしょう。
気がついたらすでにつり下げるためのフックが本体に結合しています。

舷側に立っている二人の隊員は何をしているかというと・・・・・、
なんと一人が使用しているのは前回話題になった「さすまた」ではないですか。

海から引き上げるとき、急な波に煽られてPAPが揺れ、船体に当たることのないように
さすまたで抑えているんですね。

右側の隊員の持っている棒は、先にやはりフックが付いており、
PAPのノーズ付近に引っ掛けて引き寄せる道具のようです。





この高さになったらもうさすまたの出番はありません。
ロープをかけて動揺に備えつつ、クレーンが設置台の上に運んでいきます。



無事に台の上に乗っけることができました。
海から引き上げたあとは潮水を拭ったりするのかと思ったのですが、
意外にも自然乾燥派でした。

まあ、いつも甲板の上で潮に吹かれているから、いまさら一緒か。


このPAP-104という掃討具、なんと1968年にはその原型の開発が始まっており、
今のMk.5ができたのはもう30年も前のことだそうです。
「いずしま」の就役は2003年のことですから、ずいぶん「とうのたった」掃討具を
搭載したものだなという気もしますが、そもそもこの「すがしま」型そのものが
前にも書いたようにイギリスの「サンダウン型」をベースにしているため、
その「サンダウン」級が搭載していた情報処理装置・機雷探知機・機雷処分具の3点セットが
どれにももれなくついてくるという大人の事情があったようです。



さて、PAP-104投入、模擬機雷掃討(のつもり)、そして揚収が無事終了しました。
本訓練に携わった隊員が、また再び艦尾に整列して訓練終了の合図。

EODの三人は本来ならば海に飛び込まなくてはならなかったのでしょうか。
いずれににせよそんな事態にならなくて何よりです。


さて、この一連の訓練には約1時間45分を要しました。
この後、11時からは、ヘリからEODが海中にリペリング(海自もこういうの?)
あるいはファストロープで侵入する(って陸自みたい)、
ヘローキャスティングが行われます。 


続く。


 


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