ニューヨークの「イントレピッド航空中博物館」にあった
潜水艦「グラウラー」(wiki表示ではグロウラー)の館内ツァー、続きです。
さて、レギュラス・ミサイルのミサイル倉の中を利用したエントランスから
入ってきた我々は、改装時に取り付けられたと思われる階段を降りて、
下の階の魚雷管制室までを見学しました。
魚雷関係のコンソール。
椅子が備え付けてありますが、随分座りごごちが悪そうです。
いきなり余談ですが、わたしはこのシリーズを始めるにあたって、
ドイツ映画の「Uボート」を鑑賞しました。
そういえばいままで、日本の潜水艦ものはいくつか見てきましたが、
海外の潜水艦ものは「K-19」しか観たことがありません。
特にドイツ制作のUボートものは初めてだったので、
大変興味深く最後まで観させていただきました。
いやー、もう当時の潜水艦、大変すぎ。
まず、哨戒活動に出るのはいいけど、全然敵がいないわけ。
何日間もただ海の底をウロウロ、海面を航走すれば波に顔を叩かれ、
ストレスマックスで何かに遭遇したと思ったら味方のUボート。
一旦は喜んでしまったものの、次の瞬間、
「なんでこんな広い海でUボートが2隻同じところをウロウロしてんねん!」
ということに気づき、怒り倍増。
無能な上層部の配置命令、どんだけ適当なことをしてるのか、ってところですか。
やっと船団を発見し、みんなひゃっはー!状態で盛り上がったと思ったら、
今度は船団を護衛していた駆逐艦に無茶苦茶やられて這々の態。
心理戦になったとき、皆が黙り込んで天井を見上げる(なぜ潜水艦乗りは
敵が来たときに上を見るのか)中、敵のソナーが不気味にピーピー鳴り、
潜行状態に入れば、兵員は前に走ったり後ろに走ったり(錘の役目)のてんやわんや、
索敵を恐れて深海に沈めば、ボルトが水圧で飛んでそれで怪我をする。
昔の潜水艦乗りであれば、どれもあるあるというネタだったに違いありません。
それにしても、「Uボート」や日本の潜水艦ものを見ると、暗い狭い臭いの3拍子に加えて、
一度何かあれば一蓮托生の戦死、というのが暗い画面によく現れていましたが、
実際に見るアメリカの潜水艦に、ああいった小汚さがあまり感じられないのはなぜでしょうか。
「グラウラー」はユーボートなどからは時代的にもずいぶん後なので、
設備もずいぶん近代的です。
ぼけてしまいましたが、これが士官用のトイレ。
護衛艦のトイレと同じく、バルブを開放して水を流すようになっています。
Officer's Quaters、士官居室の部分にあった officer's stateroomの文字。
ステートルームとは、列車や客船の中の「特等室」という意味があります。
士官のコーナーの中でも「特等室」がここだったのだろうでしょうか。
これが・・・・・「特等室」。
まあ、潜水艦の中では、そう言っても不当表示ではないレベルの豪華さではあります。
なんといっても上の段だけとはいえ、起きても頭を天井で打たないのは素晴らしい。
「グラウラー」の士官は二人または三人ワンセットで寝ていました。
天井にも送風感やボイラーのダクトがあるなどというのとは大違い。
これはかなり快適に寝られるかもわからんね。
下の士官とはおそらく日替わりで場所を交代しあったりして。
Wardroomというのは軍艦における上級士官室のことです。
家具類は極限の狭さにフィットするように細心の注意でデザインされています。
たとえばデスクトップとかシンクは折りたたみ式、椅子は物入れにもなります。
士官たちは食事、ミーティング、社交を全てこのワードルームで行いました。
士官の食事はギャレーで作られ、まずワードルームのパントリーまで運ばれ、
そののちちゃんと各々にサーブされました。
テーブルの天板など、木製の家具が多いのは「アトホーム」な雰囲気を演出するためで、
しかし全ての家具や壁はプラスティックでラミネートされていました。
ラミネート素材やビニールのシートなどは全て第二次大戦以降の発明です。
なんと、髭の剃り残しなどがないように、鏡の両側にライトがついてます。
鏡は画像の歪み具合からみてガラス製ではない模様。
なんてこった。
潜水艦と言いながらこの間見た掃海艇の艇長室並みに広いではないの。
コマンディング・オフィサーつまり司令官(CO)用寝室。
「グラウラー」艦内でプライベートな空間をキープできる個室はここだけです。
このベッドは持ち上げると壁にぴったりと収納することができ、その下にある
向かい合わせのソファを使用することができます。
ベッドの上にある電話からは、艦内の各部署全てと通話することができます。
ベッド用の扇風機までついているぞ。
電話の上の穴の空いたドラム型の器具は、どうも電話交換のように
コードをつなぐことができる仕組みの模様。
あくまでも階級式なので、CPOつまり下士官のベッドは3段になります。
この写真によると、6人の下士官たちが寝られるコーナーです。
「Uボート 」では映画のセリフによるとベッドは総員の数より少なかったようです。
全員が同じ時間に寝ることなどあり得ない、つまり誰かが寝ている時には
誰かが必ず起きているので、合理的といえば合理的な考え方だったのかもしれませんが。
yeomanというのは米海軍の用語で「下士官の書記」のこと。
ここはヨーマンのオフィスとなります。
ヨーマンはクルーの管理や事務的な業務を行う係で、
報告書などの作成を含む文書作成に責任を持ちます。
作成された文書の管理なども全てこの係がここで行います。
コンパートメントからコンパートメントに移る際には、
どの潜水艦でもそうですが、このような小さなハッチをくぐり抜けていきます。
観たばかりなのでまたも「ユーボート」の話ですが、航行中爆雷を避けるために
急速潜行を行うときには、若い水兵さんたちが
「後方へ行け!」
と命令されると全員がだーっと生けるバラストになるために走っていくのです。
その際、のんびりとこんな調子でハッチをくぐるものは一人もなく、
全員がハッチ上部を掴んで両足ごと次の区画に飛び込んだり、
ジャンプして次の区画でくるりと一回転していたりしました。
本当にこんなだったんだろうか・・・?
ところで、説明が遅れましたが、「グラウラー」-GROWLER-という艦名は、
1、うなるひと、ガミガミ言うひと、不平屋
2、小さい氷山のこと
という意味があります。
実は「ガトー」級の潜水艦に限り、このどちらの意味でもないのですが、(正解は後日)
この響きはどうやら大変好まれるものらしく、船以外にも電位戦機の名前にもなっています。
そこでふと思い出すのが「うろうろするひと」の意味であるPROWLER(ノースロップ・グラマン)
で、このEA-18G「グラウラー」の飛行機の方は、どうも「プラウラー」と
対でネーミングされたのでは、とたった今思いつきました。こちらはグラマン製ですが。
もともと4輪馬車のことを指す名称と成っていたので、船、飛行機、列車(いずれも軍用)
ぬいぐるみに仕込む、傾けると音がなる仕掛けや、ロシア軍では
地対空ミサイルにもこの名前が使われています。
GLOW (輝く)という響きに近いのが好まれるのかなと思ったのですが、
英語ではRとLを日本のように混同しないので、たぶんこれは違うだろうな。
続く。