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島根の旅〜原子力発電所を見学

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わけあってかなり前のことになりますが、週末、またしても旅をしてきました。
朝から晩まで一泊二日次々とスケジュールをこなす旅行で、
こういうのは「温泉にのんびりしに行く」 のとはまた違う楽しみがありますが、
とにかくこの時は疲れました・・・。

淡々と写真を貼りつつお話しさせていただきます。



行き先は島根。
空から見た島根県は本当に山の多い地方で、しかもその山の中に集落がポツポツとあります。
この理由も今回の見学で明らかになりました。
「縁結び空港」とあだ名された島根空港に降り立ち、迎えのマイクロバスに乗り込みます。



今回の見学先は、島根原発。

原子力発電所はどこも広報館を持っており、一般の人々に
原発とはなにかを周知させるための広報活動をしていますが、
今回の見学は関係各位のご尽力により、一般見学の見られない
ディープなところまで見せていただけることになっていました。

現在島根原発には3つの炉があり、1号機は運転終了、2号機は停止中。
我々が見学できるのは稼働予定を控えて炉心を入れる前の3号機です。

しかし当然ながら内部は一切写真撮影禁止。
見学に際して、前もって名前を通知し、現地ではパスポートナンバーと顔写真まで
きっちりと確認するという、アメリカ入国並みの厳しいチェックを受けました。



まず最初に広報館の応接室に通され、レクチャーを受けます。
ここで、原子力発電の仕組みを全く知らずにきた人も、たちまち

「僕は原子力に詳しいんだ」

と豪語できるレベルにはなれます。(たぶん)
わたしも、原子力で発電するということは、さっくりというと

「ウランが核分裂する熱エネルギーで水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回す」

そして発電する、というシンプルなものであることを再確認しました。
タービンの冷却水と蒸気のために海水を取り込むので、原発施設が海辺にあるということも。

こうして限定的とはいえ一般人に内部を見学させるというのは
とりもなおさず、原発施設が現在進行形で安全、ことに災害のときの安全を
いかに担保するかについての取り組みを行っているかということを
世間に知らしめるためであろうと思われます。

われわれが強調されたのもそのことでした。

たとえば万が一地震が起きた時に原子炉を緊急停止させるための制御棒、
放射性物質を何重にも閉じ込めた容器をさらに頑強な建物で覆い、
海岸線には東北震災以降、15mを想定した防波堤が作られているなどです。

加えて発電所の放射線を測定監視し、データをモニタリングし、
情報を市民にあまねく公開周知させることを徹底しています。

原発が稼働していない現在、当発電所では安全対策のための工事
(竜巻が来た時に車を収納するための立体駐車場とか)や、
徹底的な模擬訓練(シチュエーションは前もって公開されない)
が実施されているということです。



福島第一原子力発電所事故では、地震が起こった段階で
制御棒は抑制し、原子炉を停止させることには成功しています。
しかし、想定外の津波に襲われ、冷やす機能そのものが喪失してしまったわけです。
そして、段階的に放射性物質を閉じ込める機能も失ってしまったので、
それらが爆発によって放出されてしまったという経緯があります。

ちなみに、東北から関東の太平洋側には5箇所、計15基の原発があります。
地震発生と同時にその全部の原子炉は自動停止し、冷却水、電源の確保、
放射性物質を閉じ込める機能も健全でした。

今回の熊本の地震でもぐらっとくるなり原発を止めろと野党議員の一部が
川内原発に電話をしてきたそうですが、川内原発は地震による影響は全くないとして
これらの勧告には対応しない構えです。

無事だったと発表されており、モニタリングポストも確認できるのにもかかわらず

「政府と電力会社の発表は信用できないからガイガーカウンターを持っている人は測れ!」

といたずらに不安を煽るツィートをした議員もいましたね。

「99%無事でも最後の1%で事故ったらおしまいだからゼロにすべき」

というのが反原発の理屈で、東北の件で「目に見えない恐怖」に脅かされた
経験者としてはそれもまあわからないでもありません。

ただ、”福島”以降、それを教訓として積み重ねられてきた各原子力発電所の取り組みを
全く無視してただただゼロにしろ、というのは、「子供の理屈」という気がします。
一旦稼働を始めた原子炉というのは、これも廃止派が常にいうことですが
廃炉、解体はできないものなのだそうですね。
全国にすでにある原発を廃炉解体できないまま、しかも停止状態であっても
ランニングコストをかけ続けるというのは、素人考えにも超無駄としか思えません。

だったらこのまま安全対策を多重に積み重ねていって災害やテロに備えつつ、
原発と付き合い続けていくしか方法はないんじゃないでしょうか。

わたしはこの見学でまるで子供レベルの感想ですが、安心しました。
日本人、日本の技術者は当たり前ですが決して馬鹿ではありません。
震災後、その安全対策は福島を教訓として、それどころかあれ以上の規模の災害を想定し、
安全を確保する手段が講じられ、実現化されているのが確認できたからです。

例えば津波対策一つとっても、

まず東北以降設置された海抜15mの防波壁で止める。

もし防波壁を越えても、水密扉を閉めて建物に水を入れない。

建物内に侵入しても水密扉を閉めて遮断する。

という三段階の防護策が取れます。
しかしそれにもかかわらず冷却設備が壊れてしまったらどうするか?
福島では設備も電源も失われたので冷却ができなくなりましたが、
それを教訓に、今ではその時には代替冷却手段が使えるようにしています。

ガスタービン発電機、高圧、直流給電ができる車の常駐、
貯蔵タンクの設置、海水をくみ上げる各種ポンプなどの設置です。

「僕は原子力に詳しいんだ」の人がベントを遅らせて爆発した、
というのは今では語り草になっていますが、あのときはベントを行うことによって
爆発は防げても放射性物質の拡散は抑えることはできませんでした。
(結果として爆発したのでさらに悪い結果になったわけですが)
いまではフィルターがベントに付けられているため、将来ベントを行うことになっても
少なくとも放射性物質の拡散は最低限に抑えることができます。


福島では冷却水が途絶えたため、今にして考えれば
いたずらに自衛隊員の命を危険にさらすだけで”やってますパフォーマンス”以外の
何ものでもないヘリによる放水をしたり、放水車の提供を申し出た企業が
民主党の岡田の選挙区での自民支持知事候補の後援企業だったことから
政府が返答を3日間引き伸ばし、その間に横浜港に停泊していたドイツ企業の
放水車を「徴用」して行ったりと、政府民主党のこの期に及んで政局しかない
無能さがこの放水という一事を通してだけでも露わになりましたね。

これを受けてこの島根原発では原子炉や燃料プールを確実に冷却できるよう、
手段を多重化し、なおかつ電源が失われた場合にも水素爆発防止対策として
電源のいらない静的触媒式の水素処理装置を建屋内に設置すること、
そして外部には放水砲を固定設置し、放水車を多数常駐させています。

建屋周辺には、これでもかと赤い車が周りを取り囲むように駐車していました。
まるでこの世には赤い車しかないような眺めでした(笑)


「一般の人が見られないコアなところ」の見学については
安全対策にも関わる部分があるかもしれないのであまり細かく話せませんが、
印象に残ったことが2つあるので書きます。

まず、炉心棒というのは炉横の燃料プールに貯蔵してあって、
それを炉に移すときには上にわたしたレールを移動させる方式の機械で
真上に移動し、さらにガチャっとつかんで移動させること。

「それは・・・まるでUFOキャッチャーじゃないですか!」

と皆が驚きました。
もちろん運転は目視とか職人技に頼るということではなく(当然だ)
全自動コンピュータ制御で行うので「あ、落としちゃった」はありえません。

もうひとつは、炉をガラス越しに見学できるところに入るには、
まるで金庫の様な二重ドアを越えていかなくてはいけなかったのですが、
これはまずゆっくりと一つが開き、進むとそれが閉じ、
一旦完璧に狭い空間(広いエレベータくらい)に閉じ込められてから
炉につながるドアがゆっくりと開くわけです。

で、このときに鳴る音楽が「明日があるさ」なんですわ。
皆ドアが開閉している間神妙にその音楽を聴いていましたが、全員の表情に

「なぜこの曲・・・」

という疑問マークが浮かんでいました(笑)
この日の見学でいろいろな質問をぶつけていく中でわかってきたのですが、
原発関係者としては

「数年以内にはなんとか稼働できれば」

が悲願であるようです。
そこでふと、だからこそ「明日があるさ」の選曲なのか、などと考えた次第です。




さて、いろんなことを考えさせられた原発のコア見学でしたが、見学が終わり
レクチャーを受けた部屋に戻って、その部屋の前になぜか移されてきた
1号機運転開始20周年記念と25周年記念兼2号機運転10周年記念の植樹を
感慨深く眺めているとき、ふとここには売店とレストランもあると
説明の方がおっしゃっていたのを思い出し聞いてみました。

4時半まで、というので時計を見たらあと10分。
急いでみんなで駆けつけてみれば、なかなかいろんなお土産ものが充実しており、
わたしはりんごバターと豆腐にかけるだし入り醤油、ミルクジャムなどをお買い上げ。

ちなみに、説明の袋にはお土産として藻塩のパックが添えられており、
うちは家族三人分藻塩をゲットしてしまいました。
もう一生藻塩は買わなくて済みそうです。



案内の方(偉い人らしい)が

「わたしが作ってるわけではありませんが、大変好評なので是非」

とお勧め下さったみそソフトクリーム。略してみそクリ。(略すなw)
こういうことは率先するTOが早速一つ買い求めると、同行者は我も我もと。
わたしは息子と一つシェアしました。

みその存在感はあまりなく、どちらかというとキャラメルみたいな味がしました。
どこに味噌が練りこまれていたかは謎です。



さて、これでいつ見学をしたかばれてしまったわけですが(笑)

売店にはレストランも併設されており、美味しそうなメニューがありましたし、
とても香ばしいお茶なども無料でサービスされております。

大変景色のいいところですし、家族サービスついでにでいいから、
原子力の現場がいまの日本でどのような取り組みをしているか、
原発行政の実際を見てこられることをおすすめします。




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