うちのTOのところには、仕事柄講演会のお知らせがよく来ます。
わたしの興味のありそうな演題があると教えてくれるので、
TO名義で申し込み(大抵聴講が限定されているので)し、当日に
「夫が所要で来られなくなったので、代理で出席します〜」
と言いながら会場に潜入する、と言う方法で結構多岐にわたる講演を聞いています。
先日は、中国共産党が研究テーマであられるところの、某大校長が、
中国との関係、ことに尖閣をテーマにして話すと言うので、
潜入すべく虎視眈々としていたのですが、
「豪華コースランチ付き講演」であったせいか、はたまたキャッチーな演題のせいか、
「会員本人以外は、希望者すでに多数のためご遠慮ください」
と断られてしまい、聴くことができませんでした。
李登輝氏が来日したときに、おそらく中国共産党への遠慮から急先鋒に立って
反対の工作をしたと言われているこの人物が、自衛隊幹部を育成する
某大の校長となった今、どのような立場から?尖閣問題を語るのか、
非常に興味深いものがあったのですが。
また、尖閣を巡る中国の戦略や我が国の対応について、わたしは一度、
元海幕長の赤星氏の講演を聴いています。
その時に現在分かっている中国の野望と、その達成のため着々と進めている
現在進行形の「侵攻」について、簡単にここでもお伝えしました。
今回は、自衛隊の現役幹部であるところの海将による講演です。
TOの教えてくれる「会員限定」の講演会ではなく、ある「国民団体」主催のものです。
「国民団体」と言う言葉はどこを探しても定義が無いのですが、
まあ、「市民団体」のカウンターパートではないかと思います。私見ですが。
福本出(いずる)海将はご覧のとおり自衛隊幹部学校の校長職に在られ、
東日本大震災のときは掃海隊群司令として災害救援を指揮された人物です。
赤星元海幕長も懇談の際言っておられましたが、あの震災での海自の初動は非常に早く、
発生11分後には大湊基地(青森)からヘリが飛び立ってまず情報収集、
その一分後にはP-3C哨戒機の行先を被災地に向け、一時間以内に
救援物資を積んだ護衛艦を出港させるなど迅速さが際立ちました。
福本司令の指揮する掃海隊群は海上に浮遊する遺体の収容に始まり、
スクリューに浮遊物が絡まってしまうような海域にゴムボートを運行させ
生糧品などを供出、燃料、生活用品の補給などに従事しました。
福本海将は第4海災部隊指揮官として、潜水艦救難母艦「ちよだ」の他掃海艦艇14隻を指揮。
4月15日までに24港湾107地区で延べ150回の支援を行っています。
その講演の、「中国の海洋進出」については、赤星氏の講演について書いた
エントリとほとんど内容を同じくするのでここでは割愛しますが、
今日はこの日の講演から非常に面白い、というか(実際は全く面白くないのですが)
ついつい呆れてしまった中国のなりふり構わないやり口について書いておきます。
良くこんな場所見つけましたよね(笑)
福本海将が「劇的ビフォーアフター」の「施工前」としたこの写真。
ここは、「赤瓜礁」と中国が名づけたひとつの「岩」です。
歩哨は座って休憩はおろか、うっかり居眠りしようものなら海の藻屑です。
どこにあるかと言うと、この地図の「スプラトリー諸島」です。
言っておきますが、この点々とした島の中にこの「岩」は含まれていません。
1988年にここで「スプラトリー海戦」という、中国・ベトナム両海軍の戦闘がありました。
このとき中国海軍は勝利し、この人が立って足首まで水に浸かる岩礁の
「赤瓜礁」始め、永暑礁、華陽礁、東門礁、南薫礁、渚碧礁と後に名付けられた
岩礁または珊瑚礁を手に入れます。
ただし、空軍の支援が無かったため、海軍は一旦中国本土に撤退しています。
しかし、軒を貸せば母屋を取るのが中国人(笑)
一旦手に入れたこの岩を、このように・・・・
「劇的ビフォーアフター改築」してしまいました。
ところで。
日本のFEZ(排他的経済水域)を決定する「沖ノ鳥島」という島がありますね。
ここです。
中国はこれを日本のFEZであるとは認められないと異議を申し立てているのですが、
その理由が笑ってしまうことに「岩だから」なんですね。
「岩だから拠点にならない」というなら「足首まで平常時にも浸かる海面下にあり、
満潮時には完璧に沈んでしまう岩」である赤瓜礁は、それじゃなんなのかと。
しかも、この地理関係で、どんな屁理屈を通せばここが中国の海域になるのかと、
横浜中華街の中国人全員にぜひインタビューしてみたいです。
ここは満潮時にも水没しないため、国際的にFEZとして認められていますが、
実は中国以外にもそれに異議を申し立てている国が約一ヶ国ございましてね。
・・・・・・・ええ、韓国という国なんですが(笑)
中国の主張は、まあ無茶苦茶ではあるけれどその目的は納得できますが、
韓国は、いろんな意味で、この部分に何か言っても無駄じゃないかと思います。
まあ、この国はひたすら日本に嫌がらせをするために存在しているようなものなので、
これもまた中国の尻馬に乗って言うだけ言っているに過ぎないのかもしれませんが。
とにかく、沖ノ鳥島を「岩だからFEZ認められない(アル)!」と言うためにも、
ただの岩礁に中国はこうやって無理無理、しかもその周辺に人工建造物を造成し、
さらにそのうちの一つを人工島に改造してEEZの存在を主張しているわけです。
ベトナム側の報道によると本来、赤瓜礁は満潮時には海中に沈んでしまうそうですが、
もしこれが事実なら赤瓜礁は領土として認められないことになります。
まあ、中国にとっての「事実」というのは愛国無罪でいくらでも修正可ですから、
たとえば
海軍の演習に千隻の艦船が参加し・・・・、
とされた報道ですが、これも同日の映像のはずなのに
明らかに天候と気象条件がまちまちの映像を平気で出してくるわけです。
つまり1000隻というのはまったくの嘘で、威嚇のために「盛って」報道しているのですね。
台湾でお会いした蔡焜燦氏によると、大陸の中国人は
「白髪三千丈」
という言葉が表すように、たとえばこの場合なら「長い」と言うことを言うのに
三千丈、つまり9000メートルの白髪が心配事が多くてできてしまった、
というたぐいの表現によってむしろ心情状況を主張する性癖があり、
南京の犠牲者が10万単位で増えて行って、いまや
「そんなに日本軍が強かったのならなんで負けたんだ」
と笑われるくらい非現実的な数字に到達してしまっているのも、
彼らにしてみればこれは「正確な数字というより、むしろ心情的なもの」
つまり白髪三千丈と同じような「強調表現」だということらしいのです。
そんな文学的な数字をもってして日本軍の犯罪の根拠にされては
全くたまったものではありませんが、中国人の重視するのは「正確な数ではない」
のですから、この数字も今後増える可能性があるということですね。
と言うわけで、心情的にはここは中国の排他的経済水域ですから(笑)
この岩礁はいまや「島」であり、満潮時も沈まないのです。
また、この時に占有した永暑礁というこれも「岩」ですが、
88年にはこの趣味の悪いビーチパラソルとほとんど同じ大きさの岩だったのが、
このような掘っ立て小屋を経て・・・・・
軍隊が駐留(一個師団?)できるくらいのスペースに劇的改装してしまいました。
なんだか、こんなことを一国、しかも大国が大真面目にやっている、ということが
なんともやりきれない気持ちにさせられますが、
以前エリス中尉があるエントリで中国を評して言った
「巨大な図体で赤ん坊の脳を持った国家である」
というこの言葉がまた彷彿としてきます。
赤ん坊は自分の要求を満たすためにだけ生きています。
成長するにしたがって社会の中での一員であるという自覚ができ、
我慢したり譲ったりして我欲をコントロールすることを学んでいくのですが、
赤ん坊のころはとにかく欲求のままに行動(泣く、物を投げる)することしか
できない、「エゴの塊」です。
国家として他国と協調したり国際道徳に照らして規範から外れぬように行動したり、
まあつまりそういうことよりなにより「核心的利益」を得ることが優先、
というこの姿からは、赤ん坊のエゴと同質の未成熟を感じずにはいられません。
この日の福本海将のお話で印象的な言葉がありました。
「中国の政治は国民のためではなく、共産党の維持を目的として行われる」
国民の生命、財産を護り、人権を保障されるべきとされる民主国家とは根本が違うのだと、
わかってはいましたが、この言葉で改めて彼我の国家観の違いを実感しました。
そしてジェーン年鑑から予測した2020年のミリタリーバランスですが、
今現在でさえ海上自衛隊と米海軍の総計を大きく上回っている中国海軍力は、
そのころにはより大型化した艦船を配備させ、大きく均衡が崩れていく、とされています。
つまり、赤ん坊の頭脳のままさらに図体は肥え太っていこうとしているわけで、
文字通り中国は「総身に知恵の回りかねる」状態。
その昔、小村寿太郎が中国の李鴻章に向かって
「日本では閣下のような大男は時として総身に知恵が回りかねると申します」
と言い放ったという話をふと思い出してしまうわけですが、
この不均衡は中国の強さと言うよりむしろ「内部崩壊」
につながるのではないかと思うのはわたしだけでしょうか。
先日来、アメリカ側の告発で、
「尖閣諸島問題で劇的な決着をつけようとする習金平は
『尖閣に人民解放軍を一時的に上陸させてくれ』
と泣きついて来ている。
『一日上陸を認めてくれ。ダメなら3時間でいい。
アメリカに迷惑がかからない方法を考えたい』
『どんな条件でも飲む』
と買収の上日本を裏切らせようとしている」
という事案が明らかになりました。
これは習金平の権力基盤が非常に脆弱な状態であることの表れとも言われ、
この話がペンタゴン筋から漏れてきたこと自体思惑は失敗ともいえるのですが、
つまり中国は、というより習金平はなりふり構わなくなってきているのです。
対談では日本を指して
「挑発をやめるべきだ」
などと、自分だけがいい子になってアメリカに言いつけたつもりでしたが、
オバマからは
「知るかよそんなこと。
日本と話し合いで解決しろよ。
あ、でももし何かあったらあそこは日米安保の適用だからよろしく」
と言われてしまった模様。
うーん。習さんチクリ作戦失敗だ。
習金平はアメリカに
「太平洋には両国(アメリカと中国)を受け入れる十分な空間がある」
とし、太平洋の分割統治を持ちかけたとされますが、これも焦りから出た言葉でしょう。
つまり、オバマが反応しなかったため、「決裂」の烙印を国内外で押されまいと、
せめて強気の姿勢をアピールしたというところです。
しかもオバマには
「尖閣を測量もしたことないのに領土主張するのは未成熟国家だ」
と言われてしまったらしいですね。
未成熟国家、すなわち赤ん坊並みってことですね。
エリス中尉と気が合いますね、ミスタープレジデント。
この日の演者であった福本海将は、さきほども書いたように、
東日本大震災の救難活動に、掃海隊群司令としてその指揮を取られた方ですが、
この時に心掛けたのが、
「顔の見える支援をする」
ということであったそうです。
例えば、出来るだけ同じ人が同じ所に何度も行く。
被災者の要望を聞くのにも、年配で相手の気持ちもくみ取れる世間慣れした者を派出する。
また、届ける物資にメッセージを書くなどの心配りをすることで
被災者の心の支えになるよう心がける、などといったことです。
また、赤星元海幕長も
「海軍同士の交流によって顔を見せ合い、不測の衝突の可能性を軽減する」
とおっしゃっていましたし、また、以前防大の留学生について、
「草の根の交流によってお互い『顔合わせ』し、ひいては国家間の理解に繋げる」
ことによってある抑止効果が期待できる、と書いたこともあります。
「顔が見える」
というのは災害時に限らず、大きな組織を動かすときのキーワードではないでしょうか。
それはとりもなおさず人間同士の信頼を増幅し、
逆に無理解による軋轢を軽減するために必須の配慮ともいえます。
そういったごく当たり前の「破滅を回避するための人間としての知恵」
とでもいうべき部分が、少なくとも今の中国から欠落しているように見えるのが
わたしには非常に懸念されます。
そういえば、習金平の人格を絶賛しておられた読者の方もおられましたが、
少なくともそういう個人の資質といった要素が、この中国と言う巨大な未成熟国家において
国の方向を大きく変えるということは当分ないのではないでしょうか。
いかなる善意の指導者もそこではただ赤ん坊の脳に掌られた「巨大な歩」(ジャイアント・ステップス)
によって何処かへ運ばれていく運命共同体の一人にすぎないのですから。
さて、この日の講演でもう一点、新たに知ったことがありました。
国際的な主張を含む両国の「情報戦」についてです。
そのことについて稿を改めてお伝えしたいと思います。