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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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瀬戸内に浮かぶアートの島、直島

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さて、年明け早々の話題に、年末の旅行記をお届けします。

今回の旅行はわたしは全く計画に参与することなく、
TOとMKがごにょごにょと相談し、いつの間にか決まっていました。
MKは基本旅行が嫌いなのですが、今回は乗り気。
それというのも旅行のテーマが

「瀬戸内に浮かぶ島の現代建築作品でもあるホテルに泊まる」

というもので、建築に興味のある彼のツボだったからです。

まず、羽田から飛行機で向かったのは岡山空港。
はて、つい最近もこの空港に降り立ったような気が・・・。

空港で車を借りて、家内で唯一の免許保持者であるわたしが
ドライブして島まで行くことになっておりました。

空港から、これも先日進水式で行ったばかりの玉野の宇野港に向かう途中、
両備交通の路線バスが走っているのに気づきました。

 

これもネタで取り上げたばかりですが、貴志駅の初代猫駅長、
故たまを大々的にキャラクターにしているのが両備グループ。

なぜ和歌山の駅の駅長猫を岡山の会社が?というと、
もともと経営難だった貴志線を、南海電鉄から経営を引き継いだのが
両備グループであり、岡山電気軌道の子会社である「和歌山電鐵」だったからです。

この路線バスは「スーパー駅長たま」「たまバス」
とペイントされております。

わたしは運転していたので、家族に頼んで写真を撮ってもらいました。

あのー、バスに耳とヒゲがついてるんですけど・・・。

両備グループではこのほかにも関連車両として「たま電車」、
車体を三毛にペイントした「TAMA-VAN」なども走らせています。

自分が計画したわけではないので、時間のことなど何も気にせず、
ちんたら運転していたらフェリー乗り場に到着しました。
船着き場にちょうどフェリーがいて、係の人が

「乗りますか?」

と声をかけてきました。
予定より一本早い便の出航にギリギリ間に合ったようです。

 

宇野港から直島までフェリーでわずか15分。
通勤や仕事らしい車の人は乗ったままでした。

直島に行く観光客は意外なくらい多く、中国人観光客もたくさんいました。


 
あとで地図を確認したら名前のついていない無人島でした。
地元の人は「亀島」などと呼んでいるに違いありません。 

 

熊本船籍の貨物船、新益栄という船です。

こちらはパナマ船籍の TTM HARMONY。 
バルクキャリアー、ばら積み船だそうです。

ここはもう直島の先端の「獅子渡ノ鼻」。
航空写真を見ると、手前が土壌の整備中のようなので、
ここに必要な土か何かを運んできたのかもしれません。 

このあと船はすぐ直島に到着しました。

お昼を食べるところも、TOが前もって決めていました。

島にはコインパーキングなどというものはなさそうですが、
邪魔にならなければどこに停めてもおk、という感じ。
駐車場所を探して少し走ると、巨大なオブジェが出現しました。

頭から煙が出ていてドアがあるので中は飲食店のようです。 

「何このぶどう」

「島全体がアートなんですよ」

あまりに何の予備知識もなくやってきたわたし、ここで初めて

「島全体をアートにしてそれで町おこしをしている」

らしいことに気づいたのです。

道の脇にはかつての防空壕らしき痕跡が。

その「アート」とはこの島のありのままの姿でもあり、
従って古くからの建物も取り壊したりせず残しています。

巨大なオブジェがあるかと思ったら、焼杉の壁に
塩小売所の鉄看板が昔のままに残されていたり。

TOが選んだお昼ご飯のお店も、古い民家そのものです。
手前にあるのは使われていない(多分)井戸。

圧力鍋で炊いたらしい弾力のある噛み応えの玄米と甘い味噌汁、
豆腐に付け合わせと、実に滋味深いお昼ご飯です。

食後にミルクティーを頼んだら、牛乳はないと言われました。
ヴィーガン(アニマルフード禁止)のお店だったのです。

わたしは昔マクロビオティックもやってみたことがありますが、
色々実践している人を見てきた結果必ずしも完璧がいいわけではない
という考えに至ったので、今は菜食寄りの普通食をしています。

紅茶にはミルクを入れるし卵も魚も、外では牛豚も食べます。 

昼ごはんがすんで、いよいよホテルにチェックイン。
ゲートではバックミラーにI.D.タグをつけてもらいます。

本日の宿泊所である「ベネッセハウス」は、
無人だった島の海岸線の広範囲そのものがゲートで囲まれたホテル敷地で、
また全体が美術館でもあるのです。

内部の地図をもらって車を走らせて行くと、
ものすごく見覚えのあるデザインのカボチャが突堤に見えてきました。

当ブログで MOMA、ニューヨーク近代美術館を扱ったとき、
その数奇な半生についてお話ししたこともある草間彌生の作品で、
ベネッセハウスのシンボル的存在でもあります。

皆がこの前に立って写真を撮るので、繁忙期には

「カボチャの前に長蛇の列ができることもある」

ということでした。

ベネッセハウスはいくつかのゾーンに分かれていますが、
ここが初日の宿泊施設のある「パーク」棟です。

わたしは全くその存在をこの日まで知らなかったベネッセハウスですが、
もうオープンして26年になるのだそうです。

ロビー前のエントランスもまるで美術館のよう。

宿泊客に欧米系の外国人客が多いのには驚きました。
彼らが喋っている言葉も英語、ロシア語、ドイツ語・・・・。
実に世界中から観光客が訪れているようです。

著名な世界の旅行雑誌の「次に見るべき世界の七か所」特集で取り上げられ、
それ以降世界各地の新聞や雑誌で紹介されており、
海外での注目度も高い施設であることがよくわかりました。

この打ち込みコンクリートの丸い「打ち跡」ですら、
ここではアートの一環なんだそうです。
熟練の職人が手がけた打ち跡なのでここまで整然と同じ大きさなのだとか。 

初日の部屋は、「パーク」棟のコーナースイートです。

ベランダで朝食をいただきたいところですが、このホテル、
ルームサービスがありません。 

パーク棟には、10部屋がこのように並んでいます。
TOがいうには、本当は三泊のうち一日は「ビーチ棟」という
海沿いの部屋を取りたかったのだけど、空いていなかったそうです。 

ベッドボードの後ろはウォークインクローゼットでした。
うちのクローゼットより大きいかも。

不自然なくらい?大きなお風呂は明かり取りの窓が切ってあります。
ガラス戸のこちら側は洗面所です。

 

この宿泊棟にはいたるところに現代アートが展示されていて
「美術館に宿泊」できるというのが謳い文句です。

部屋に向かう廊下はまるで美術館の回廊。

廊下の窓ガラスの外にも作品。

これらは宿泊客しか鑑賞できません。

部屋からは別の角度からこの作品が見えます。

客室の前には海が広がっています。
自転車が走り回っていますが、中で借りることができるようです。

敷地のそこここにも作品。

夕食の時間まで、部屋から海を眺めたりしてのんびり過ごしました。
八幡丸という漁船らしき船が往き過ぎます。

クレーンを積んだ船と貨物船。
瀬戸内は波がなく、海面は穏やかです。
船の往来は多く、ここが「幹線航路」なのでしょう。 

レストランは「テラス」という別棟にありますが、そこには
このようなそれ自身が芸術作品である渡り廊下を通って行きます。

 

この日のディナーの内容までTOが選んでくれていました。

アミューズとして出てきたのは小さな小さなチーズクロワッサンとパン。
小さきことは可愛いこと哉。

コースの魚はタイ。盛り付けがすでにアートです。
ソースは確かケールだったかな。 

メインディッシュは煮込んだビーフの頬肉。
手前の黄色いのはポレンタです。
日本でポレンタはあまり見ませんが、すりつぶしたコーンで、
これをこのようにまとめて揚げたりして食します。

青梗菜は、わざわざ細いものを選んでいたのですが、
なぜか葉っぱの部分を固結びしてあって、しかもこれが
ナイフで切れず、食べるのに大変苦労しました。

アートを優先して食べやすさが犠牲になった例。

翌日の朝ごはんも同じレストランでいただきました。

レストランの前には砂浜が広がっているのですが、海岸線まで
一色に見えるように、デッキが全て灰色に塗装されていました。

「瀬戸内のエーゲ海」と称してギリシャ風の柱を立て白いヨットを浮かべた
バブル時代のホテルが岡山のどこやらにあったと記憶しますが、
どう頑張ってみてもエーゲ海とは全く違う瀬戸内海のくすんだ海の色が
その光景を一層寒々しいものにしていたことを思い出すと、
この海の色を熟知した色選びのセンスは大したものだと感心しました。

「どこそこのエーゲ海」「どこそこの銀座」「どこそこのハワイ」

こういう二番煎じ根性ではなく、そこが「どこそこ」であることを認め、
それから出発しないことには、そこは永遠に「本物」にはなりえません。 

世界中から観光客がこの小さな島を目指してやってくるのは、
ここが「瀬戸内のMOMA」(仮称)だからではなく「NAOSHIMA」だからなのです。

朝の光が作る窓枠の影も作品です。

パーク棟には無料のラウンジがあり、グランドピアノが置いてありました。
アメリカのホテルではよく廊下の隅にピアノが置いてあって、
練習したりしたものですが、日本で鍵をかけずに置いてあるのはまれです。 

わたしはここを通るたびに中を覗き込んで、人がいない時だけ
思う存分ピアノの練習をさせてもらいました。

左手を動かすための練習曲としてショパンのエチュード「革命」、
右を動かすために同じく「幻想即興曲」を弾きながら、
この海の色には合わないなあと感じたので、最後はジャズで締めて。 

わたしにとっては何よりの娯楽となりました。

 

さあ、明日はいよいよ本命の部屋に移動です。

 

 

 

 


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