今回の旅行のハイライトは二日目に安藤忠雄氏設計の
「ベネッセハウス」内でも最も有名な「オーバル」に泊まることでした。
わたしは全く計画に関わっていないので後から聞いたのですが、
どうして3泊4日の旅行の中日に一番いい部屋にしたかというと、
最終日の朝、仕事の関係で午前中には東京に帰らないといけなかったからです。
まずは昨日泊まった「パーク」から引っ越しです。
とはいえ、荷物は部屋に置いておけば次の部屋に入れて置いてもらえます。
この棟は「ミュージアム」と言い、本当にここには美術館があります。
最終日にはここに泊まることになっています。
フロントからはこんな吹き抜けの回廊付き広場が見渡せます。
中央にあるものもアートで、電光掲示板にいろんな言葉が現れるというもの。
下のスペースに降りて作品を間近で見ることも可能です。
オーバルと言われるゾーンに行くには、特設モノレールに乗ります。
ミュージアム棟からルームキーを入れると、モノレール乗り場に入ることができ、
そこで可愛らしいモノレールを呼んでやってくるのを待ちます。
モノレールのドアは自分で開け閉めします。
トーンを落としたセージ色にペイントされています。
モノレールが斜面をちんたらと(本当に遅い)登って行くと、
眼下には島の端の小さな半島が見えてきます。
上の駅に到着。
走行時間は約5分といったところでしょうか。
モノレール脇には山道があって、ホテルの人はそこを上り下りしていました。
「ふおおおお」
「はええええ」
エレベーターから降りるなり声にならない声を上げるわたくしども。
文字通りオーバルに切り込まれた空間の中央には水が湛えられ、
その周りのスカイブルーの壁とひっそり同化して、各部屋のドアがありました。
ベネッセハウスのシンボルのようになっているオーバルですが、
ここにはたった6部屋しかありません。
今回泊まる部屋は、大きなテラスのついた2部屋のうちの一つ。
壁にある三重丸もアート作品ですが、これを見ることができるのは
この部屋に泊まった人だけです。
部屋には支配人からプレゼントされたシャンパンのボトル有り。
絶景をテラスから見ながらシャンパンを開けてください、
というホテル側からのお心遣いなのですが、
残念なことに誰もお酒が飲めないわたしたちには猫に小判。
ちなみにこれは持って帰ってきて未だにうちにあります。
設計者の意図を反映してドアはなく、テラスに出るためには、
壁のボタンを押すとウィーンとガラスそのものが下がっていき、
そのままその部分が全開きになる仕組み。
全部ガラスを開けないと外に出られないというのもびっくりです。
「すご〜い」「おもしろ〜い」
モノレールからはしゃぎまくっていたわたしたち、ボタンを押しつつ
「サンダーバードのテーマ」を歌ったりしてもう絶好調です。
ベッドに寝ていても海が見えるように、周りの木は低く刈り込まれています。
テラスに出てみる。
テラスの外には柵はなく、断崖のように見えますが、
万が一テラスから落ちても下に転がることはないようになっています。
隣の小さな島は「柏島」と言って、ここも直島町です。
直島町の面積は14.22㎢、人口はわずか3126名(2016年10月現在)。
こんな小さな島が、世界中のツーリストの知るところとなっています。
ここには人が立ち入ることはできません(物理的に)。
「オカメノハナ」という岬です。
部屋から海岸線を見ていて、こんなテント村を発見しました。
モンゴルのテント「パオ」とか「ゲル」みたいですが、ここも
素泊まり3000円台で泊まることができる施設なんだとか。
もちろんお風呂なんてないしテントだから冬はやってないと思います。
ここから眺めると至る所にアート作品。
これもおそらく井戸と洗面器ではなく、アート。
「オーバル」の、テラス付きスイート宿泊者だけの特権。
テラスから前庭に降りて前を歩き回ることができます。
宿泊者の特権?「オーバル」を上から見てみることにしました。
一旦外に出て、オーバル沿いの階段を上っていきます。
オカメヅタが茂って階段を半分隠してしまっています。
ここ屋上庭園もオーバルの宿泊者だけが立ち入りを許された場所。
縦に入ったスリット状のものが、各部屋のドアです。
わたしたちの部屋のドアは右から三番目。
6部屋の宿泊客のために朝食用のラウンジがあります。
ルームサービスがないので、さすがに朝ごはんは
簡単にここで食べられるようにしてあるのです。
そのほかにも、部屋には夜食のおにぎりが差し入れられました。
オーバルの周りにはこのように滝が注ぎ込み・・・、
建物の下を流れていくという設計になっています。
下界に降りるときには」、上からボタンを押して呼ぶと、
5分かけてゆっくりとモノレールが上ってきます。
6部屋の宿泊客のためだけにモノレールまで作ってしまうという・・・。
下のミュージアム塔に、「オーバル」建築中の写真がありました。
右から2枚目の写真は、わたしたちが泊まっている部屋のテラスです。
これが安藤忠雄による「オーバル」建築模型。
オーバルの中央の水溜りは、その日の天気によって様々な形を映し出します。
写真を撮ったり探検したりして部屋を楽しんでいたら、日が暮れてきました。
息子は「定点定時撮影」ができるカメラで日没の動画を撮っています。
空の色の移り変わりを見ているだけでこんなに楽しい場所があるとは。
二日目に初めて気がついたのですが、ここの部屋にはテレビはありません。
テレビや映画など見ず窓の外を見てください、というところでしょう。
夕日に光る海に見える瀬戸大橋のシルエット、その手前の大槌島は
地図で見てもまん丸い島で、まるで甘食みたい。
直島での二日目の太陽が、今山の端に沈んでいきます。