当ブログでこの話題について取り上げたばかりですが、
いま一度その後の経過と、この人物への非難というものを整理したいと思います。
当ブログで述べたことは
●確かに準備不足とコンセプトの甘さは責められるべきであるが、
事故はいわば不可抗力であり、これは仕方がない
●多額の税金が投入されたが、自衛隊はいかなる人物でも救出するのが是であり
辛坊氏にその金銭的負担を問うのは妥当ではない
しかし、辛坊氏本人が上記二点に対し弁明ないしこれを自己正当化として口にしても、
今までの氏の言動から、世間の賛同を得ることはできないのではないか、というものです。
命からがら生還し本来なら助かってよかったね、と言われるべきところを、
マスコミも、インターネットの一般言論も、珍しくも足並みそろえて個人非難の大合唱。
ただでさえ挫折感と恥ずかしさで消え入りそうにになっているところにもってきて
さぞこの展開は辛坊氏にとって不本意であり、二重に傷痕の思いでしょう。
前回わたしは、一般人の持つ視点でリスク回避できなかった辛坊氏には
むしろ同情的だったが、自己弁明と正当化の必要にかられて
「金払って自衛隊が喜びますか」
などと切り返してしまったことはいかがなものかと思う、と述べました。
なまじ言論で禄を食み、言論で世間を渡ってきた氏は、おそらく、
自分が今まで絶対的な安全圏に立って糾弾してきた「非難される側」になることを
条件反射のように逃れようとしたのでしょう。
これだけの非難を浴びても言い訳ひとつせずじっと嵐が過ぎるのを待つ、
というのはある意味誰にも、ましてや辛坊氏のような人種には不可能だと思われます。
同業者であるマスコミが、今は「非難するべき取材対象」として自分を扱っている。
辛坊氏が殊勝に世間への謝罪と助けてくれた人々への感謝を口にしつつも
非難に対しついつい自己弁護めいたことを言い募るのはしかたないことかもしれません。
しかしながら辛坊氏は、厳しく言うならば、こういった一連の言動によって
事態をより悪くしていっているとしかわたしには見えないのです。
まず、自衛隊に事情聴取されることになって、氏はまずブログ記事から、
このような部分を削除しました。
完璧に整備したと皆が思い込んでいたエオラス号に、
いくつかの問題点が見つかったんです。
まず一つは、船の舳先に突き出ている大きな棒、
これをバウスプリットって言うんですが、
この根元から少量の漏水が発見されました。
エオラス号には既に太平洋横断用の資材をすべて積み込んでいたために
相当喫水が下がっていて、台風の余波のうねりに舳先から突っ込んで
派手に海水をすくい上げる局面が何回かあったんですが、
この時バウスプリットの止水に不具合があって、水が漏れることが分かったんです。
当初、この2日間で舳先をすべて解体して、充填剤を入れなおすことも計画されたんですが、
様々なリスクを計算した結果、内側からの充填で対処することになりました。
余程荒れた海でない限り漏水しませんし、
エオラスの設備で簡単に排水できる程度のものですから、これで、まず大丈夫でしょう」
現実は全く、「まず大丈夫」ではなかった、ということになります。
ところが、辛坊氏、さらに広がる非難にいてもたってもいられなくなったのか、
今度は「FLASH」にこのような文章を公開しました。
はっきり言います。
出港時点でのエオラス号の整備は、
少なくとも「これ以上は無理」というくらいに完璧でした。
先の文でも思いましたが、失礼ながら辛坊氏、文章があまりお上手でない。
この文章も「少なくともこれ以上は無理」、と「完璧」が全く矛盾しているのですが、
まあ、言いたいことはよくわかります。
しかし、少なくとも自分が削除したブログからは「完璧」ではなく「間に合わせ」
という事実しか浮かび上がってこないのが現実です。
そして、辛坊氏は、
「24時間テレビとは関係ない」
ということをここで強調しています。
以下、その部分です。
まず、多くの週刊誌の記者さんが共通して私にぶつけた質問は
「『24時間テレビ』の放送に間に合わせるためにこのタイミングでの出港になったんでしょ?
で、急いだから準備が十分じゃなかったんじゃないですか?」というものでした。
複数の記者さんに同じことを聞かれました。
はっきり言います。
今回のプロジェクトと24時間テレビはまったく、完全に、なんの関係もありません。
じつは、このプロジェクトがスタートした去年の夏の時点で、
スタッフの共通見解として
「『24時間テレビ』とは別のコンセプトでプロジェクトを遂行する」
というのが合言葉だったんです。
私が感じる24時間テレビの「健常者が障害者の役に立ちたい」というコンセプトと、
HIROさんのチャレンジとは相容れないものがあると考えたんです。
HIROさんがイメージしていたのは、「障害者が健常者の役に立ちたい」ということでした。
私は玄関先に押し寄せてくる記者の皆さんに、
「24時間テレビ説」は完全なデマである旨を丁寧にお話しさせていただきました。
ところが、一部週刊誌の記者さんは、真実を知っていながら嘘を書いたんです。
もともとこのデマは、私たちの「準備不足」を言いたいがために生まれたようです。
「はっきり言う」のが好きな方ですね(笑)
この部分もとても「書いた文章」とは思えませんが、それはまあよろしい。
言わせていただけば、辛坊さんは大きな勘違いをしています。
「24時間テレビに関係がある」から、自分は非難されていると思っておられる。
そしてこの弁明によると、「24時間テレビとは別のコンセプト」でのプロジェクトだという。
プロジェクト。
プロジェクトということは、映像記録を取り、それで
「感動!盲目のセイラーが、ガン患者とはいえ健常者をアシストして太平洋横断成功!」
というテレビ特番を作るつもりだったということではないのですか?
台風が来るというのに、ヨットに不具合があったというのに、何が何でも出航した。
その理由が「テレビ番組の製作のスケジュールに合わせるため」であったらしい、
というのが、今回の非難の理由の一つです。
その目的が「24時間テレビ」でなかったとしても、別の「プロジェクト」を予定していて、
そのスケジュールのために無理な企画を強行したというのなら、全く同じことなのですが。
辛坊氏はこの文章でマスコミの「嘘」を非難しています。
人の話を自分たちの望む結論に誘導し、思う結果が得られなければ
ウソでもなんでもついて報道するのが自分の属するマスコミというものであることを、
辛坊氏は今まで全くしらなかったのでしょうか。
だとしたら、自分がこうなって今回初めて、自分の今まで見ていた景色を
「被害者側から」観ることになったわけですね。
辛坊氏がここまで同情されない理由は、今まで氏が
「マスメディアという常に正しい側」
から強権的に自分の意見(のつもりで実はマスコミの意見)を吐いてきたからで、
下世話な言い方をすると
「お前が言うな」「ブーメラン」「ざまあみろ」
と溜飲を下げた人間が多かったということなのでしょう。
辛坊氏の手記をもう少し続けます。
出港時点でのエオラス号の整備は、
少なくとも「これ以上は無理」というくらいに完璧でした。
こう書くと必ずこういう質問を受けます。
「じゃあなぜ事故を起こしたんだ?」。
この答えはただひとつです。
すべての責任は船長にあります。エオラス号の船長は私です。
6月16日午後1時に福島県のいわき市を出港したエオラス号は、
まる5日弱でおよそ1,500キロを東南東に走って、
金華山沖1,200キロの時点を時速7ノット(秒速約3.6メートル)で快走中でした。
もともとの予定では、一日180キロほどが目標でしたから、
エオラス同型艇の記録的水準だと思います。
ところがこの速力が災いしました。
6月21日午前、レーダーに周辺監視をまかせて私が寝入った直後、
水面下に潜む「何か」に激突し、
直後に浸水が始まったエオラス号を放棄して救命イカダに避難、
それからおよそ10時間後に海上自衛隊のレスキュー隊に救われたのです。
この間の海上保安庁、自衛隊の皆さんの献身と活躍については、
現在私のブログで無料公開中ですので、ぜひ一度目を通してみてください。
最後の「無料公開中ですので」に脱力感を感じてしまったのは
わたしだけでしょうか。
このひとは、なんというか・・・・とことん骨の髄まで「マスコミ人種」だなあ、と・・・・・・。
この答えはただひとつです。
すべての責任は船長にあります。エオラス号の船長は私です。
いや、辛坊さん。
陶酔しておられるところ大変失礼とは存じますが、それ、答えになってませんよ。
そもそも責任を取るのは船長であるあなたであることは当然じゃないですか。
準備不足だ!→違う!エオラス号は完璧だった!
24時間テレビのために無理をしたんだろう!→違う!別のプロジェクトだ!
こう言い訳をなさるということは、原因は他にあるということでしょうか。
実は我々はそれこそが事故の原因の一部だと思っているわけですが、
全責任を負うべき船長であるあなたが、なぜその原因を直視できないのか。
たとえば普通の会社で
「なぜ事故を起こしたんだ?」
「その理由は一つです。すべての責任は責任者にあります。責任者はわたしです」
で終わらせようとしてもおそらく通用しません。
通用しないどころか、これは『自分を無条件でクビにしてください』と同義の覚悟発言です。
根本の原因とされている事象ににあれこれ言い訳をしておいて
責任はわたしにあると居直られても、これでは誰も納得しますまい。
辛坊氏は、自分の感覚がかなりおかしいことを自覚するべきだと思います。
手記、最後の部分です。
盲目のセーラーの「太平洋横断をしたい」という夢の実現に私は失敗しました。
その責任は、すべて船長たる私にあります。
記者会見で「もう一度やるつもりは?」と聞かれて、
「これだけ迷惑かけて、やるとは言えない」と私は答えました。
HIROさんも間髪入れず、「私もそう思います」と言いました。
「FLASH」の賢明な読者を信頼して、あえて真意を言います。
これはつまり、「絶対に迷惑をかけない体勢、手段を考えて、
またいつの日かチャレンジする」という宣言です。
しかし、同時にこうも思います。
「何か」に当たったのは、海の神様が
「今のお前には、あの場所より東に進む資格はない」
と教えてくれたのだと思います。
他人様の命を危険にさらし、他人様の献身で私は今ここに生きています。
この命をどう使うか? 私に課せられた重い十字架です。
うーん。
失礼ついでに、あいかわらず文章が不自由で意味が分かりません。
「これだけ迷惑かけてまたやるとは言えない」と言ったその真意が、なぜ
「これはつまりいつの日かチャレンジする宣言」になるのですか?
これはつまり「迷惑さえかけなければいいんだろ」と言っているわけですか?
今度は何があっても自衛隊の出動要請をしない、という誓約書でも書くつもりですか?
最後の部分はおそらく氏の真摯な思いでしょう。
そこまで揶揄したり真意を疑うつもりはわたしには毛頭ありません。
しかし、全体としてこの手記を見たとき、やはり
「こんな言い訳ならしない方がマシではないのか」
という、他人事ながらおせっかいな心配をせずにはいられないのも事実です。
ところで、いま一度辛坊氏のこの事故について書く気になったきっかけは、
非公開希望で寄せられたある読者からのコメントでした。
長くなってしまったので、二部にわけてこの本題について次項で述べます。