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辛坊氏救出事件〜「自衛隊不要論」の真偽

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ところで、事故後、辛坊氏は「週刊新潮」のインタビューに答えて
税金を使って自分が助けられたことに対し申し訳ないと謝罪したうえで

「9年前、イラクで人質にされた高遠菜穂子さんたちに対し、
自己責任論を持ち出して批判しました。
これでは、言ってることとやってることが違うじゃないかと
厳しい指摘があるのも承知しています。
私には反論できません。」

とこちらに対してもきっちりと言及しているらしいことがわかりました。

ちゃんと、何を批判されているのか世間の声を受け止めて対処する。
このあたりはさすがに機を見るに敏なメディア関係者です。

ただ、ここまでにしておけばいいものを

「“払います”と言えば、助けてくれた自衛隊員が喜ぶと思いますか」

と言わなくてもいい(と思われる)ことを言って逆に炎上してしまったのは
計算違いというものだったかもしれません。

わたしは辛坊治郎という人を、所詮「アナウンサー」だと思っていますので
過去どんな発言をしていたとしても、現在起こっている事象だけを見て、
インターネットに溢れる「好き嫌い」からくる非難からはできるだけ中立でいようとしました。

しかし、そういう風に心がけても、今回の事件の個々の辛坊氏の発言に対しては、
どうしても、うっすらとした嫌悪感を持たずにはいられないのです。

これはどうしたことでしょうか。


「そりゃあ気分も沈みますよ…。
同行した岩本さんの夢をかなえるために出発したのに、
望みをかなえてあげられないばかりか、
(事故によって)マスコミの前に立たせることになってしまった。
申し訳ない気持ちで、いっぱいです」

本紙の直撃に辛坊氏は、力なく声も途絶えがちに答えた。
テレビで見せるテンポの良い語り口調は鳴りを潜め、
明らかに憔悴した様子だった。

救助されてから3日。九死に一生を得た辛坊氏のもとには激励の言葉とともに、
1000万円以上ともいわれる税金を投じた救出劇に批判の声も上がっている。

辛坊氏は現状を受け止め、こう話した。
「自分でけじめをつけようと思います。
ただ、助けてくださった自衛隊の方が私の出演する関西の番組のファンだそうで…。
『辛坊さん、頑張ってください!』とおっしゃってくれて。
彼らへの恩返しということなら、自分の頑張る姿を見せることも必要なのかな…と」

落胆、無念、感謝…。そして自らの“贖罪”“賠償”の仕方について、
しばらくは自問自答の日々が続きそうだが、
再び元気な姿が見られることを期待したい。


この企画は同行の岩本さんの夢をかなえてあげるためのものだと強調する辛坊氏。
まるでそのための慈善事業であったような言い方です。

成功後の名声、スポンサーからの有形無形の報償、
講演料の大幅な値上げ、全国区となるであろう知名度。
今回の事故で逸失したと見込まれる利益は一説には五億円とも言われ、
さらには氏はこの成功をバネに政治家への転身を目論んでいたという噂さえあります。

もちろんこうした功利目的の行為が悪いと言っているのではありません。

しかし、障害者への無償の善意であることをまず前面に出すには、
これら「取れなかったタヌキの皮算用」はあまりに大きくありませんか?


そして、この言葉。

「助けてくれた自衛隊の方が自分のファンだと言ってくれたので、
恩返しのために頑張る姿を見せることも云々」

事件の概要すらまだ総括もできていないこの時点で、
もう仕事に復帰することの意欲を覗かせているように見えます。


辛坊氏の周辺と関係者以外、世間とマスコミのほとんどは辛坊氏を非難しているこの状況で
「この件を本や映像にして儲けることは許さない」
「もう何を言ってもブーメランになるだけだから、潔く引退しろ」
という意見が少なからず氏の事務所に届いていると思われます。

ここでわたしが辛坊氏に「嫌な感じ」を持つのは、こういった「大多数の声」より、
自分を救ってくれた自衛官の一人がおそらく氏を励ますために言った「がんばってください」
を都合よく拾い上げ、ちゃっかり自分の復帰の正当化に利用しようとしていることです。


「エリス中尉は辛坊氏に厳しすぎる」とおっしゃる方もおられるかもしれません。


しかし、わたしはかつて辛坊氏が、謀略に嵌められた(とわたしは思っている)
故中川昭一氏の泥酔会見事件のときに

「あんだけ国際社会に恥かいてね、オメオメねぇ、
オメオメ有権者の前にもういっぺん出るなと!」

という言葉を投げつけ、さらに自殺するべきとまで公言したことを重く見ます。
もし、このような事件を起こしたのが別のアナウンサーであったなら、辛坊氏は間違いなく

「あんだけ世間に恥かいてね、おまけに税金の無駄遣いして、オメオメねえ、
オメオメ視聴者の前にもういっぺん出るなと!」

と全く同じ言葉で非難したのに違いないと思います。

しかしこの「頑張る姿を見せることも恩返し」という調子のいい我田引水こそ
「おめおめ」という言葉そのものではありませんか。

(辛坊氏風に)はっきり言います。(笑)
吐き気がするほど厭らしいとわたしは思いました。



というわけで、辛坊治郎に対し最悪な心証を持ってしまうに至ったエリス中尉ですが、
しかしながら、そういう先入観から陥りがちな
「風評の盲目的容認の危険性」について考えさせられるこんなできごとがありました。


最初に書いたこの事件の顛末に対する感想に寄せられたコメントに
辛坊治郎氏が「自衛隊不要論」を唱えていた、という文があったのですが、
その部分に対して、非公開を希望にある読者からコメントが寄せられたのです。


「自衛隊不要論を辛坊氏が唱えたというのは本当でしょうか。
にわかには信じ難いです。
氏の父親は自衛官だったのに、そんなことがあるはずはありません」


要約すると、このような内容です。


辛坊氏を非難する意見の中に時々「自衛隊が不要とか税金の無駄とか言っていた」
というものあり、わたしも今回ことがことだけに注目していたのですが、
実際には具体的な証拠となる映像も文章も見当たらなかったので
前エントリにおいてもそのことについては触れておりません。

そしてさらに、このコメントを受けてかなり綿密に検索をしてみたのですが、
辛坊氏がはっきりとそう発言していたという記録を見つけることはできませんでした。

普通に考えても、もし本当にそのような発言を辛坊氏がしていたとしたら、
たとえばこんな風に自衛隊に救助されて感謝を述べるような事態になったときに
過去の発言とそれに対する批判があちらこちらからでてくるはずなのです。

ですからあくまで状況によるものですが、わたしは

「辛坊氏が自衛隊不要をとなえたという証拠はない」

と一応勝手にここで結論付けておきたいと思います。


実はこの読者の方からは辛坊氏の「自衛隊不要論」に対し、

「出典を明示するよう言っていただけないでしょうか」

と伝言を頼まれてもいるのですが、おそらく同じ結果(出典は出てこない)
となると思われるのでここでは敢えて聞きません。

勿論、ソース元をご存知の方がおられましたら、是非御一報ください。



ただ、辛坊氏が自衛隊不要など実際に言っていなかったとして、
どうしてそのように決めつける人が少なからずいるのか考える必要はあります。


それはおそらく辛坊氏の所属するマスコミという社会が、基本的に反体制、反保守、
そして反米で反自衛隊であるという傾向にあることからきているのでしょう。

そこで生きていくためには局是社是、スポンサーの意向に逆らうことはできないし、
ときには発信自体がすでに自分自身の思想信念と乖離している可能性もあります。

辛坊氏は例え身内が自衛隊にいても、そのこと自体を誇ったり、
自衛隊そのものを評価することにさえ、言論人として慎重であったでしょう。
そういったことへの「抗議」に対して、テレビというものはあくまでディフェンシブだからです。

辛坊氏はそこをそのほかの言動と合わせて「反自衛隊」とまで踏み込んだ、
いわば穿ったレッテルを貼られたのだと思うのです。

しかしながら、検索の過程で、或る番組で辛坊氏の父上の元部下と辛坊氏のやり取りがあり、
「厳しく指導していただいた」というその視聴者の話に、氏はそのとき非常に感激していた、
という話を見つけたことも言っておかねばなりません。

こんな逸話を見ても辛坊氏が自衛隊不要論者であったと決めつけるのは、
なんというか、心情的にもかなり無理があるという気がします。


とはいえ、父親が自衛官でも、野田佳彦前首相のように民主党などにいたばっかりに、
父のかつての職場を堂々と貶めるようなことを自分の所属する組織がしていても何もできなかったし、
また、全くする気もなさそうだった、という人もいます。

極端なのは共産党の志位委員長のように、祖父はビルマで戦った陸軍中将でありながら
「親子二代でああなってしまった」のもいるわけで・・・・。


つまり、親が自衛官や軍人だからといって必ずしも保守になるわけでもないし、
むしろ自分の職業やそこでの地位によっては切り捨てたり反対する側に廻ったり、
何の意味も持たないことが案外多いような気もします。
親の職業だからあくまでも反発する、という人たちもいるでしょうしね。


辛坊氏は、思想的には新自由主義とでもいう立場に立ち、
右であろうが左であろうが「違うと思えば叩く」のを身上としていたようで、さらに、、
マスコミ人種特有の極論と暴論、毒舌から反発を持たれやすく、それゆえ「アンチ」も多いようです。


しかし、だからといって憶測で決めつけ、それに基づいてこのような場合に
「坊主憎けりゃ」とばかりにそれを検証せず材料として非難することは慎むべきでしょう。

わたし自身、自戒としてこれを受け止めたいと思います。







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