体験航海は高松港での自衛隊広報活動の一環として最終日に行われます。
わたしは午前中の航海に乗せていただくことになり、ホテルをチェックアウトして
車で埠頭に向かいましたが、埠頭の駐車場は朝にもかかわらず満車だったので、
少しだけ離れた市民駐車場の地下に車を駐めました。
駐車場を出ると、このような謎のオブジェがある広場を横切っていきます。
どうも中に入ることができるようですね。
横から見ると、ヤシの実を象っているのがわかります。
台湾のアーティスト、リン・シュンロン氏の作品で、タイトルは
「国境を越えて・海」
といい、内部備えてある銅鑼は鳴らすことができるそうです。
銅鑼の音もアートなんですね。
これは瀬戸内国際芸術祭の2016年度出品作品だそうです。
またやってきたよ、「ぶんご」。
「ぶんご」一般公開に備えて、もう地本の方々がスタンバイしています。
一応手荷物検査も行うようですね。
本日乗せていただくのは、「いずしま」です。
「いずしま」には「あいしま」の上を通り抜けていきます。
「いずしま」に乗艦すると先日神戸でもお会いした隊司令がお迎えくださいました。
司令は艦内にどうぞ、といってくださったのですが、出航の様子が見たかったので
甲板に上がらせていただきました。
艦橋前のデッキの最前列、「ぶんご」の隊司令の挨拶も見える上席です。
体験航海に参加する青少年の少なくない人数が、自衛隊入隊が決まり、
地本の手配で優先的に搭乗させてもらっているのではないかと思います。
例えば、自衛官と並んでVサインをしている彼らも。
確かこの青年たちが隣にいた時、
「海上自衛隊志望ですか?」
と聞いてみたところ、彼は隣の子を指差して、
「(彼は)海自志望です」
と教えてくれました。
参加者には早速海軍毛布(?)が配られ、それをシートにして座り込む人も。
わたしの連れは、インコ越しに「ぶんご」を撮っています。
出航準備はこうしている間にも着々と進んでいきました。
乗員が持っている黄色と黒のサンドバッグみたいなのは、
出入港時に舷側に吊るす防舷物です。
「あいしま」に乗り込んでいるカメラマンが待機中。
まず互いを繋留している舫を外し、それを甲板に置いていきます。
艦橋の前にいる人たちは、いざ出港になると視界を遮らないように全員
床に座ることを要求されました。
「ぶんご」の上の少年たちは全員がデバイス持参。
今時のお子さまは恵まれておるのう。
「ぶんご」の自衛艦旗近くにはここからお見送りをする群司令のお姿が。
緑のストラップは副官です。
周りの見学客に群司令自らあれこれと説明をしておられる模様。
こんな全ての人にフレンドリーに話しかける司令官もあまりいないような気がします。
お人柄を感じますね。
少年たちも「はえ〜」って感じで聞き入る群司令の話とは・・・?
お互いを繋いでいる舫が外され、防舷物を手で持って舷側の一番出っ張ったところに吊るします。
舫が解かれてあっという間に「いずしま」艇体は「あいしま」から離れ出しました。
その瞬間、「ぶんご」の群司令の横で控えていた喇叭手が信号ラッパを吹きました。
群司令、敬礼。
副官は群司令に一瞬だけ遅れて挙手を行います。
望遠レンズ持ってくればよかった、と思った一瞬。
次の瞬間、船首旗である日章旗が降下されました。
選手旗は停泊中に揚げるものであり、出航と同時に降ろされます。
あっという間に「ぶんご」と「あいしま」の姿が遠くなり、「いずしま」は
爽やかな埠頭の風を受けながら、後進で港を離れていきました。
出航したので、艇内探索に出かけます。
まずは司令官席に座る隊司令の様子を。
こちら艇長でございます。
先日うどんを一緒に食べた元偉い人から
「今女性隊員がいる」
と聞いた、艇長養成のためのプログラムを終え、最初の勤務が
この掃海艇であるということでした。
ミカさん(仮名)に写真を撮られていたので、ついでにと思い、
「そのまま目線こちらにください〜」
と声をかけると、
初めての艇長職、頑張ってください。
そして操舵席の海曹の皆さん。
昨日「ぶんご」でVサインをしていた女性隊員が
「明日体験航海でウグイス嬢やるんですよ」
と言っていましたが、彼女がそうかな?
掃海艇にはもうすぐ艇長が誕生しますが、女性隊員がいないので、
こういう時には「ぶんご」から出張してきます。
体験航海ですから、乗組員は航海中、艇内の設備について最大限理解してもらうべく
張り切って装備の説明や実演を見せてくれます。
20ミリ機銃には、テッパチにカポックというフル装備の隊員さんが所定の位置につき、
これは機雷を処分するための銃であるという説明がされた後、
実際に音だけ出して撃っているフリをしてくれます。
「どうだ!当たったか〜っ!」
「当たりませんでした!」
「ばかもの〜!当たったと言わんか〜!」
コントやってんじゃねーし。
ところで、わたしは最初から一人でやってきている彼に目をつけていました。
というと人聞きが悪いですが、実に体格がよく、真面目そうで、
地本の人が見たら喉から手が出るほど欲しい自衛官向きの人材に見えたのです。
バルカン銃の展示の時に近くにいたので、独自にインタビューして見たところ、
彼は自衛隊、しかも海自に大変興味を持っていることがわかりました。
彼が自衛隊向きの人材であるという印象には全く同意見のミカさん(仮名)は、
展示の終わった、しかも地本経験のある海曹さんにスカウトをさせました。
これがきっかけで彼が自衛隊に入ってくれれば、なんか嬉しいな。
さて、次はラッパの展示です。
「これはラッパで〜す」
とはさすがに言っておりませんが、まあそういう感じです。
ここでもインコ越しに喇叭手を撮っている人が・・・。
「起床」「君が代」「出航」などを合間に説明も全部こなしながら吹きます。
一人で喋って一人で吹くので、喋った後唇を整えるのに時間がかかり、
(信号ラッパは音程を息の吹き込み方だけで取るので、唇のコンディションが大事)
さらには、喋りながらなので
「あれ・・・?どんなだっけ」
と隣の隊員に聞いたりしておられました。
何もかも一人でやらなくても、説明は別の人にやらせればよかったのに、
という気もしましたが、一人でなんでもやるのが掃海隊ですからね。
続いてのコーナーでは、ダメコン関係の装備の展示をやっていました。
火災の時に現場に入るための酸素マスクを被らせてもらえます。
首から吊っている黒いバックパックみたいなものの中には、
酸素発生器が入っているそうです。
聞いたら見せてもらえました。
1時間酸素を発生させて、密閉した機器で使用する空気缶。
この商品に書かれている「エムエスエイジャパン」という会社は解散したそうです。
後甲板の掃海具があるところも見学できます。
この後、少し後に出航した「あいしま」とすれ違う時、
互いに発光信号を送り合うという展示も行われました。
オロペサ型掃海具と一緒のところを撮らせてもらったEODさん。
一般公開の展示のために、航海中ずっとスーツを着ておられました。
任務上日差しが強烈なところが多いので、帽子はハット型です。
さて、体験航海はあくまでも「体験」ですから、40分ほどその辺りを廻ってくる、
という程度の航海です。
だからこそ掃海艇に一般人を乗せることができるということができましょう。
観艦式で掃海艇が一列になって進んでくるところを見た人はわかるでしょうが、
駿河湾での掃海艇はそれこそ木の葉のようにふわふわと浮く感じで、
ヘリ搭載艦や輸送艦などの大型艦に対して逆行して観閲を受ける時、
甲板に登舷礼のために立っている乗組員がよくぞふらつかないものだというくらい揺れます。
日向灘の「えのしま」で初めて自衛艦上での船酔いを経験したわたしは、
掃海艇に一般人を乗せて長時間の航海をすることはまず不可能だと思っています。
それだけに、この短い時間の、瀬戸内海の内海だけを走る体験航海は
一般人に掃海艇に乗ってもらうための大変貴重な試みと言えましょう。
再び甲板の人々に座るようにというアナウンスがありました。
入港に当たって、隊司令が「ぶんご」の群司令に対し敬礼するということになっています。
赤いストラップの隊司令と、緑の隊付きが並んで双眼鏡をのぞいています。
「ぶんご」甲板には出航時と同じく、群司令、副官、喇叭手が待機していますが、
群司令はこの時も見学者に色々と説明してあげている様子・・・・・。
先ほどラッパ展示をしていた海曹が「入港ラッパ」を吹鳴すると、
隊司令、隊付きが敬礼を行います。
周りの、まるでタイタニックの生存者を乗せたカルパチア号の甲板みたいな様子が
なんとも敬礼とギャップがありすぎてシュールですね。
さて、ここからは入港作業が始まります。
続く。