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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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掃海艦「はちじょう」除籍〜艦名と艦番号 塗装抹消作業

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去る6月6日に除籍になった掃海艦「はちじょう」の自衛艦旗返納式について、
お話ししています。


さて、こんな時でないと掃海艦についてお話しする機会がないので、
前回の防衛装備調達のためのカバーストーリーという話題についてもう少し。


当時、自衛隊は、新型掃海艦のあるべき姿を米海軍の掃海艦「アベンジャー」
その目標として据えていた、といわれています。
そのため、「頭脳」に相当する戦闘指揮システム、「目」であるソナー、レーダー、
「手」たる機雷処分用の水中ビークルを米海軍から一括導入しようと考えていました。

もちろん国産化の努力はしてきたものの、技本でのS-7、S-8の開発に失敗し、
一旦断念することになったので、やむをえず、といったところでした。

当然ながら予算がかさんでどうにもならなくなり、結局米海軍からの調達は

「全く実現性のない深々度対応のソナーと軍用GPSを除き」

断念することになりました。
(つまりこの二つは米海軍から調達したってことですねわかります)

 

ともあれ、これで深々度機雷排除能力を持つ掃海艦が
極東地域にも存在することになった!と大喜びしていたら、
あれよあれよとソ連は崩壊し、自動的に冷戦は終了してしまいました。

つまり掃海艦導入のための建前は結果として建前のまま終わったのか?

それについて、掃海艦の建造に関わる元海幕の装体課にいた元自衛官は
このようなことを言っています。

「ソ連は西側との軍拡競争で経済的破綻を来して破れた。
つまり、地勢的な特徴を鑑み自衛隊が配備した兵力は、これもまた
ボディブローのようにその破綻に効き目を表したのである。

我々は兵力整備をもって冷戦を戦い、勝ったと言っても過言ではない」

 

正直、当初の建前とは全く別方向の勝利宣言という気がしないでもないですが、
冷戦というものを大きな目で見た場合、要するに宇宙開発を含む
軍拡競争による米ソの潰しあいという構図であったのは歴史の示すとおり。

その中でどの程度ソ連が日本の配備に対抗して「浪費」したのかは今となっては謎です。
しかし、あの石原莞爾の言葉を借りれば

「槌は槌でも小さな槌」(笑)

ながらに、とにかく自衛隊は勝利の鉄槌の一部となり得たということでしょうか。

さて、記念撮影、胴上げが終わり、掃海艦建造に携わった人々が甲板で別れを告げると、
自衛艦除籍において、ある意味もっともドラマチックといっても過言ではないイベントが行われます。

総員退艦したはずの艦上にまだ白い制服の乗組員の姿が見えますが、
これは最後の点検をしているのかもしれません。

そう、コメント欄でも予告をいただきましたし、先日の元艦長と横須賀カレー本舗の方が
「はちじょう」プレートを受け渡ししているシーンの後ろにも写っていたように、
除籍艦の艦体に書かれた艦名と艦番号を塗りつぶすという作業です。

先ほど退艦し、白い制服から作業用のブルーのつなぎに着替えてきた何人かが
なんの予告もなく、サクサクという感じで作業に入りました。

いわゆる来賓とか高級幹部の皆さんは、この時すでに岸壁から姿を消し、
(おそらくどこかで昼食会か何かがあったのだと思う)
赤リボンをつけてうろうろしているのはわたしだけでしたが、
カメラ関係の方々は、自衛艦旗降下と同じくらいこのシーンを待ち望んでいたはずです。

塗りつぶし係?の隊員たちは、灰色のペンキを長いローラーに付け、
艦尾の「はちじょう」から消していきます。

「やばい、『ちじょ』になった」

この瞬間近くのカメラ持ちがツッコミを入れていました。
おじさん、頭に浮かんだことをなんでもいっちゃう人とみた。

上にペンキを載せるのは案外に簡単な作業らしく、あっという間に艦名は消えていきます。
二人でほとんど全部消してしまいそうになったとき、左端で見ていた隊員くんが
最後に自分もやらせてほしい、といったらしく、ローラーを受け取りました。

「『はちじょう』艦名塗装作業、終わり!」(^_^)v

続いて同メンバーによる艦番号の塗りつぶし作業、かかれ!

・・・なのですが、さて、どうやって塗りつぶすかねー、とまずは
作業計画について皆さんで相談しているところ。

「3」は岸壁からなんとかなるのですが、右二つはブラシが届きません。

ちょうどタグボートが到着しました。
作業が終わった「はちじょう」を岸壁からドナドナしていくための船です。

それを見ながら隊員さんたち、

「(岸壁と艦体の間に)船入りませんかね」

「マストが舫に引っかかるからダメだろう」

自衛隊でも現場ではこんなこと言い合っているなんてと、親近感を持ちました。
そんなもんわたしでもダメに決まってると思うぞ。

「おい、海に落ちるなよ!」

という声をかけられつつ、とりあえず右端にブラシが届くかチェック。
やっぱり無理みたいです。

この時、もし彼が海に落ちたら、溺者救助がどのように行われるのか、
そういう事態を見てみたいと瞬間ですが思ったことをここに懺悔します。

岸からは無理ということがわかり、甲板から塗ることが決定。
隊員が急いで甲板に上がり、長いブラシを受け取ります。

おお、これならなんとか上から消すことができそうだね。
ただしこの態勢はものすごい腹筋と腕力を駆使していると思われ。

みている方は簡単だけど、こんなことを普通にできるのも、
彼らが常日頃走りまくって体力をつけているからこそ、ってことで、
わたしは自衛官の鍛えっぷりを垣間見た気がして猛烈に感動していました。

ちなみに全くこちらからは見えませんが、向こう側の艦番号は横付けした船上から塗ったようです。

応援が駆けつけ、落ちないように足を抑えてくれています。

「艦番号を塗りつぶす」

という作業に記念としてぜひ関わりたいという方もおられます。

一度でいいからこの作業をやってみたいと熱望していたミカさん(仮名)に
ついにその願いが叶う日がやってきました。
作業前最初のひと刷毛を塗るローラーを隊員に持たせてもらったのです。

「落ちないでくださいね!」

今度は先ほどよりも真剣な声があちこちから飛びました(笑)

岸壁の周りはこの通り、いかにも凶暴そうなくらげだらけだし。
しかし次の瞬間、

「お、重〜〜い!」

という彼女の叫びが・・・・・・・。
乗組員たちがなんてことない顔で持っていたローラー、言われて見れば
先端部分は金属製で、それがこんな長いのだから重いのは当たり前。

自衛官が使う作業用グッズは、基本一般ユーザーに全く配慮してません・・。

皆がハラハラしながらみていると、なんとか苦労して艦体にひと刷毛を刻みました。

わたし「全然消せてないし」

本人「内心番号を消したくないという心理の表れってことで・・・・・」

甲板からのローラー班は、苦労しつつもこのまま右二つの数字を消すことができそうです。

ふと気づくと、甲板にオレンジのベストをつけた隊員たちがたくさん上がってきていました。

 

この後、岸壁を離れてタグボートで繫留海面(岸壁にはつけないらしい)に
ドナドナするための作業を行う港湾の隊員たちが乗り込んで作業をしているのです。
舫は最後のものを残してもうはずし始めています。

このタグボートには「はちじょう」乗員らしき二人が乗っていました。
左舷側の艦番号塗りつぶし作業は終了したようです。

ベルト部分を持ってもらって「3」の上は消しましたが、この先が届きません。

岸壁に寝そべり、ブラシを思いっきり突き出して残りを。
これなら落ちる心配はなさそうですが、後ろの人が足を抑えていました。

自衛隊のカメラマンも記念にひと刷毛。
最初カメラを下げたまま塗ろうとしましたが、さすがにそれは無理ってもんでしょう。

ベルトを掴んで引き戻してもらっていました。

「俺も俺も〜」

こちらの海曹さんは後ろから抱きしめてもらう「タイタニック」スタイルで。

BGM ♪えんだ〜いやああ〜♪ ってそれは「ボディガード」や。

岸壁からの最後の塗装はこんな体勢で。
寝そべっている隊員さんの作業服にはペンキのシミがたくさんついていますが、
これはペンキ塗り作業専用の作業服ってことでしょうか。

これで元の番号がすっかり読み取れなくなりました。
最後に、うっすら残っていた白い部分を消して、作業終わり。

艦番号のなくなった「はちじょう」をバックに、副長が最後の記念写真を撮っておられました。

 

いよいよ最終回に続く。

 

 


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