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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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メキシコ海軍練習帆船「クアウテモク」号 @ 晴海埠頭 前半

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コンスティチューション先週末、二回晴海に足を運んできました。

防衛団体の研修会でご一緒するKさん(ご子息が自衛官)という方が、
頻繁に見学や研修に頻繁に参加していることに少し驚き、

「どうやっていつもそれだけ色々情報を手に入れるんですか」

とお聞きしたところ、当方のメールに色々とHPなどを送ってくださったのですが、
その情報で、晴海にメキシコの帆船と「おおなみ」が来ることを知ったので、
早速土曜日息子を御茶ノ水に送っていった後、晴海にいってみたのでした。

今まで何度か練習艦隊を見送った同じ岸壁に、帆船がいます。
満艦飾と巨大なメキシコ国旗に彩られたその船は美しく、これが帆を張り
紺碧の海をゆく姿はさぞ美しいだろうと思われました。

岸壁には一応ゲートがあり、テーブルが置いてあって自衛官が並んでいます。
メキシコ海軍の練習船である「クアウテモク」を迎えるために、横須賀から
「おおなみ」が駆けつけて同じ岸壁で公開しているので、海自の隊員と
メキシコ海軍の軍人が共同で手荷物検査を行なっているのでした。

しかし、念のため聞いてみると、見学は4時で締め切り。
時計を見るとすでに3時40分です。
これではどちらも見るのはキツイと判断し、翌日出直すことにしました。

 

翌日、一人で再び晴海埠頭にやってきました。
風が強く、巨大なメキシコ国旗が一瞬も垂れることなく翩翻としています。

それではいよいよ「クアウテモク」に乗船します。

デッキでシマシマの制服を着た水兵さんが携帯電話中。
勤務中の電話はありみたいです。

「クアウテモク」はメキシコ海軍の練習用帆船です。
文字通り、メキシコ海軍の士官候補生が練習用に乗り込むものですが、
驚くべきはこれが帆船であるということです。

アメリカでいくつもの帆船を見てきましたが、海軍によって今も生きている
「コンスティチューション」のは海軍の象徴、あるいはレガシーとされています。

が、「クアウテモク」は実際に海軍士官候補生の練習用に就役している現役船。

船の前に立ててあった甲板には、英語で乗艦者への注意事項が書いてあります。
マストに登るな、子供から目を離すな、雨の日は滑るから走るな、等々。

この注意を怠って怪我をしても一切の責任はとりません、と最後の一行に。

階段も案内も、帆船のグレードに合わせた木目調で重厚感があります。

手すりがチーク材らしいラッタルは緩やかな傾斜で、舷側には階段を下ります。
そこでは軍曹クラスの乗員が立っていて、女性には手を出してくれました。

Thank you. と反射的にいってから、ふと思い出して

「ムーチョスグラシアス」

といってみると、ちょっと嬉しそうな顔をしました。

甲板から艦尾方向を望む。

見張り用のマストは当然ですが、木製です。
右側はフェンネルのようですが、補助動力のものなので小型です。

メインの動力はもちろん帆船ですので風ですが、現代の帆船は
エコを目的とした環境に優しい船で、どちらかというと風力を補助とするものが多いようです。

腐食しやすい甲板上の構造物は基本金属で表面を覆われていますが、
外側扉を開けると、中は昔ながらの木に真鍮のドアが姿を現します。

フェンネルの真ん前に立ってみました。

Armada De Mexico Buque Escuela "Cuauhtemoc"

メキシコ海軍練習船「クアウテモク」

Escuela Por La Extaltacion Del Espiritu Marinero

海軍精神高揚のための教育機関

という文字が刻まれています。

「コンスティチューション」でもお目にかかったビレイング・ピンにかけられた索。
当然ですが、帆船は帆を張る作業を手で行います。
ホテルのカーテンみたいに、ボタンを押したらブイーンと帆が貼られてしまう
便利な帆船では、士官候補生の訓練にも何もなりやしません。

大航海時代と同じようにマストに登ってその高みから海を見下ろし、
張った帆で帆走することを、彼らは船乗りの基礎として学ぶのです。

これはある意味原初的な船乗り精神を潮気とともに叩き込むのに
もっとも効果的な訓練ではないかと思うのですが、どうでしょうか。

艦尾のデッキ上階に登ってみました。
船内の所々では、候補生らしい姿もありますが、基本彼らはお休みらしく、
晴海のバス乗り場から数人で連れ立って東京見物に出かけるらしいのを目撃しました。

軍服を着ていなければ、彼らもただの外人のお兄ちゃんです。

これは護衛艦などとほぼ同じの探照灯。

両舷には実に美しい木造の作業艇が吊るされています。
動力がなんだったのか確認するのを忘れました。

帆船ばかりで集まって何かをする大会があるようです。
いわゆる帆船レースというやつでしょうか。

セイル・トレーニング・インターナショナルという組織は、トレーニングを行う
帆船の協会で、協議を行ったり、練習場所の提供を行うなどして彼らを助けているそうです。

ケルビンのボール(中に磁石入り)が赤と緑、真鍮製で木造の
昔ながらのビナクルがありました。

今日びの帆船はコンピュータ制御のものもあるそうですが、この練習船は
どこまで近代化されているのでしょうか。

見上げてみると、帆船に必要な無数の索のところどころに、
まるでお掃除モップのような緩衝材が巻いてあるのが目につきました。
帆船での航海は決して静かなものではないらしいですね。

エンジン音はそんなにしなくとも、帆や索が風を受ける音は物凄そうなのを
後ろの大国旗が受ける風の音で察しました。

乗艦するなり目についたこれ。
まさか、インマルサットみたいな衛星通信アンテナ・・・?

調べてみたところ、どうやらこれみたいです。

SAILOR

これで乗員のみなさんもインターネットができるってわけだ。

エクステリアも木目と真鍮、そして白が基調。
窓から皆中を覗き込んでいましたが、わたしは遠慮してしまいました。

展開式の非常用救命艇。

「クアウテモク」は世界を回るメキシコ海軍の親善大使のような役割を果たします。
自衛隊の遠洋練習艦隊もそうですが、特に帆船とあって、その効果は絶大。

船を通じて今まで全く知らなかったメキシコへの興味を持つ人もいるかもしれません。
この大メキシコ国旗は、そうやって各国を回る「クアウテモク」にとって、
自国を強くアピールするために不可欠なものなのです。

ちなみに艦尾にも国旗がありますが、これが国際的慣例通り海軍旗なのか、
それとも帆船に限りここに国籍旗を揚げるのかはわかりませんでした。

艦尾から後方の岸壁を見ると、あれー?
後ろにも帆船がいるぞ。

この時質問ができるような人が周りに誰もいなかったので確認していませんが、
どうもこの色形から、我が国の帆船

「海王丸」

である可能性が高いですね。
こちらも海技教育機構が所有する練習船で、平成元年に就航した2世です。

こちらの記述で初めてわかったのですが、可変ピッチプロペラを採用しているので
水流の抵抗を抑え、優れた帆走性を確保したそうです。

現代の帆船は、どこかしらに近代化の恩恵を受けて、全く昔のままの
機構ではないらしいことがこれによってなんとなく想像できますね。

また、海王丸は2004年に暴風の際、走錨のため座礁事故を起こしています。
幸い164名の乗員は全員救助され無事でした。

「海王丸」は「クアウテモク」の寄港を歓迎する意味でここにいて、
帆船同士の交流を持っていたのかもしれませんが、
一般に対しては全く公開しておらず、立ち入ることのできない
柵の向こうに繋留してありました。

 

後半に続く。

 




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