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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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海の上の迎賓”艦”〜特務艇「はしだて」洋上懇談会

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皆様は海上自衛隊に『海の迎賓館』、『迎賓艦』、『迎賓艇』と呼ばれる
艇があるのをご存知でしょうか。

国内外の賓客を招いての式典、海自を訪問した諸外国の将校団との会議・会食、
マスコミやメディア関係者との懇親会などの『迎賓』を目的とした特務艇、
その名も「はしだて」。

「いつか機会があればぜひ乗艦してみられるといいですよ」

と自衛隊のイベントでご一緒する方から聞いて以来、
いつかそんな機会が来ればいいなあと思っていましたが、
乗ってみたいと思ったから乗れるというフネではございません。

とりあえずいつもするようにお星様にお願いしておいたところ、
ある日突然お話が来たのでございます。

と冷静に書いているようですが、実は

キタ━━━ヽ(゚∀゚)ノ━( ゚∀)ノ━(  ゚)ノ━ヽ(  )ノ━ヽ(゚  )━ヽ(∀゚ )ノ━ヽ(゚∀゚)ノ ━━━!!!!

と文字通り小躍りしてしまったものですよ。

 

今回の「はしだて」へのお誘いは海幕長主催の「洋上懇談会」です。
というわけでお話をいただいてから指折り数えて待っていた、その当日。

雨です。orz

始まる何時間か前に降り出した雨は、乗艦開始の1730には
すっかり激しくなっていました。

つい最近、メキシコ海軍の帆船を見に訪れたのと同じ晴海岸壁には
夢にまでみたあの「はしだて」の姿が。
しかし今日は外に出るのもためらわれるような篠突く雨が降り注いでいます。

この時間に晴海埠頭に訪れるのは「はしだて」参加者を乗せた車だけなので、
岸壁へ続く道に雨の中誘導のため立っていた自衛官たちは、(ご苦労様です)
誰何することなく仲間で車を通してくれました。

わたしは「はしだて」上でTOと合流するつもりで車に乗って来ましたが、
この写真で前にずらりと列を作っているのは、ほとんどがタクシーのようです。

わたしが到着した瞬間、「はしだて」艇上で自衛艦旗降納が始まりました。
来客を迎えるため雨の中を立ち働いている自衛官たちは、
その瞬間手を離せない人以外はその場で姿勢を正しています。

「あーこの時間に乗艇していたかったー」

雨で渋滞していたので、予定より到着が遅くなったことを悔やみつつ、
言われた場所に車を停めると、傘を持った自衛官が近づいて来て、
濡れないようにラッタルのところまで誘導してくれました。

乗艇開始時間になったばかりなのに、もうすでにかなりの人が到着しています。

この日は体験航海が予定されていたため、皆早めにきていたに違いありません。

ラッタルを登ったところで、今日の主催者である海幕長はじめ
お迎えしてくださる自衛官にご挨拶をしてからTOと合流し、
舷門近くにある舵輪付きのパネルと一緒に記念写真を撮ってもらいました。

あとで「乗艦記念」とかいう文字を打ち込んで送られてきたりして。

会場では最初から最後まで、ある一佐がわたしたちのアテンドに付いてくださり、
話し相手から各種質問にお答えいただいたのみならず、グラスや食べ物の心配まで、
申し訳ないくらい気を遣ってくださって、初めての会場を楽しく過ごせました。

会場に着いてすぐ、一佐は上部構造物の一階部分を見学させてくれました。
この豪華客船のような自衛艦らしからぬ内装をご覧ください。

金色の桜に錨だけがネイビーブルーのカウンターに刻まれています。
カウンターの上に飾る花は、ブルーとの調和を考えて、白いバラのアレンジ。

帽子置きにはこの日ここに集まった将官たちの帽子だけが並べられています。

当日出席した海将は、村川海幕長を入れて3名、海将補が7名。
ちなみに海上自衛隊には海将が現在18名、海将補は52名が在籍していますが、
この日出席した将官の職は、人事、装備、総務、補給など、
戦闘種ではなく主に後方支援であることに、渡された名簿からすぐ気づきました。

これがなぜかは海幕長の挨拶で明らかになります。

とても自衛隊と思えないこのクラブラウンジのような会議室。
カーペットの色にも深い海の色があしらわれております。

後で知ったのですが、自衛官はパーティまでに全員が
ちゃんと食事を済ませていたようで、これは海将、海将補たちが
前もって腹ごしらえをした名残だったのでした。


反対側にある「はしだて」会議室には大型のディスプレイがあり、
こ子では隣接する通訳室とリンクさせて同時通訳を表示する等の連携が可能、
つまり国際会議に使うこともできるそうです。

会議室は通訳室と併せて指揮所として運用することもでき、
災害時には対策本部となるのはもちろん、パーティー用スペースはテントを張って、
カンバスで区切りマットレスを並べることで臨時の医療室となりますし、
休憩室も、折り畳みベッドを並べて病室にすることができます。

この部屋は、現在降ろされているシャッターを上げると、
三方が窓で完璧な視界が開けるということでした。

ここ、「01甲板」は艦橋と煙突の間にあるスペース。
雨の日にはご覧のようにテントに加えカーテンをかけることができます。

この日のように雨が強いと、カーテンを伝って雨は内側に入りまくるのですが、
腰高の部分の床には水はけをよくするための溝があるので、
どんなに雨が降っても水が内側に流れ込んでくることだけはありません。

ちなみに甲板も手すりも防水加工が施されているそうです。

「はしだて」の煙突は2本ありますが。左舷側の煙突は排煙装置としての機能はない
“ダミーファンネル”で、通信アンテナ等を装備するマストとしても用いられており、
内部には艇内への階段が収められているということです。

そして甲板の奥にある艦橋はバーカウンターと化していました。
最初からここまで想定して設計されているとすればすごい。

中には黒いベストに蝶ネクタイをしたバーテンダー(でも自衛官)が
飲み物を作って提供しております。

艦橋からデッキに上がるための階段も超おしゃれな雰囲気。

雨が激しく、誰も外に出ませんでしたが、もし晴れていたら
デッキに上がって航海を楽しむことになっていました。

この日予定されていた「はしだて」の航路。
レインボーブリッジをくぐり、首都高速湾岸線が海中に埋まっている
ちょうどその上でUターンして約9キロの航程を4ノット、
時速7キロメートルでクルーズしてくるというものです。

しょっちゅう走っているレインボーブリッジも、海の上から見たら
どんなにか違って見えるだろうかと楽しみにしていたのですが、
雨が強くなったので結局出航は取りやめとなりました。

「はしだて」の最大の楽しみはそのお料理でもあります。

どこのレセプションに伺ってもご飯がおいしい、
というのは海軍時代からの伝統にも世間の定説にもなっているわけですが、
特にこの「はしだて」のキッチンは迎賓艇の名にふさわしいレベルの高さで、
数々の国内外の舌の肥えた来賓をうならせてきた実績があります。

調理部門の自衛官にとって、「はしだて」で働くことは大変な誇りとされ、
最高の目標の一つになっている、というのはよく言われることです。

「はしだて」乗組の経歴があれば、退官した後もまず調理人として職に困ることはありますまい。

例えば空自の格納庫でのレセプションでは、乾杯前からテーブルの食べ物を
いち早く食べている人がいて(笑)いつも少し驚くのですが、
あれは仕方がないというか、基本食べ物が追加されず、そこにあるものが
なくなればもう終わりなので、人々が我先にとがっついてしまうのはわかります。 

しかし、レセプションにおいてテーブルから料理がなくなった試しはなく、
パーティが終わりかけでもテーブルにはまだご馳走が山盛りというのが海上自衛隊。
いつも次々と食べ物が運ばれてくるのを知っているのか、人々も悠揚としています。

まあ、単にお行儀の問題という説もありますが。

この日も、入場していたたくさんの人は、アミューズ・ブッシュから始めるようにと
自衛官に勧められてから、初めて食事に取り掛かりました。


アミューズ・ブッシュは前菜より前に出される「小手試し」の小さな食べ物で、
客に食事の始まることへの心と口の準備をさせ、また、
シェフの料理術へのアプローチの片鱗を見せるために供されます。

小さなボウルに彩よくイクラをあしらったサラダ風、
そして食べてびっくりサツマイモ味のムース、シンプルに串に刺したポーク、
そして小さな小さな(直径2センチくらいの丸い)フィンガーサンドウィッチ。

今までどんな美味しい料理を供する自衛隊のどのレセプションでも
お目にかかったことのない趣向の、目にも楽しい料理が並べられ、
この後の期待ですっかり盛り上がってきた「はしだて」上の人々でした。

 

ちなみに配られたパンフレットによると、この日のメイン招待客は41名。

各自一人「だけ」同伴者が許されますので、全員に同伴者がいたとして、
80名くらいがこの洋上懇談会に招待されていたことになります。

 

そこで改めて招待された方々の肩書きを見てみますと、ほぼ全員が
企業の社長、取締役、役員、顧問、部長、理事・・・・。

この面々と、彼らを迎え撃つ?自衛官の配置を考え合わせると、
自ずと本日の「はしだて」懇談会の目的は見えてきますね。


つまり、本日招待されたのは、

「退職自衛官の雇用を積極的に行うことによって
自衛隊に多大なる貢献をしている企業の関係者」

であり、自衛隊側から感謝と今後のご愛顧をお願い、という気持ちを込めて
この皆様方のために一席設けさせていただきました、というのが、
「はしだて」艇上の豪華な懇談会であったというわけなのです。

 

続く。

 


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