Quantcast
Channel: ネイビーブルーに恋をして
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2815

海上自衛隊のチカラ〜「はしだて」洋上懇談会

$
0
0

晴れていれば岸壁から広角レンズで全景を撮り、さらには
航海に出れば景色を撮ろうと、中望遠レンズまで持参していたというのに、
岸壁に降り立つこともためらわれるほどの雨で、航海も中止になったので、
「はしだて」のwikiページから写真を転載しております。

「迎賓艇」は文字通り迎賓を目的に戦後から存在していましたが、
かつての迎賓艇は、

「ゆうちどり」←飛行機救難船←海軍雑役船

「はやぶさ」←駆潜艇

「ひよどり」←駆潜艇

というふうに、ジョブチェンジしてそうなったものばかりでした。

駆潜艇は、潜水艦の高性能化と、対潜艦戦の戦法がソナーの発達によって
様変わりしたことで廃止になり、飛行機救難もその方法が変わったため、
役目を終えた小型艇を迎賓艇として再利用したのです。

しかし、「はしだて」は最初から迎賓艇として設計され就役しました。

冒頭写真を見ていただくと、その艇体が自衛隊の所属にはない
白とグレイのツートーンカラーであることがおわかりいただけるでしょう。

 

この日案内してくださった一佐に伺ったところ、
「はしだて」は武装しておらず、また艇内に宿泊施設も持っていないそうです。

wikiには「賓客用の宿泊施設は持っていない」、「宿泊艦ではない」とありますが、
来客が泊まれないのはわかるとしても、「宿泊艦でない」ということは、
つまり「兵舎としても使用していない」という意味になります。

つまり「はしだて」には夜間誰もいなくなるということなんでしょうか。
それとも「当直室」があったりする・・・・・?

さて、本来なら乗艇開始から1時間後に出航を行い、
東京湾をクルーズしながら開会時間の1845に
海上幕僚長のご挨拶が行われる予定だったのですが、
本日は岸壁から一ミリたりとも動かない状態での開式となりました。

村川豊海幕長は

「その分大いに飲みかつ語り、交流を深めていただきたい」

とこういう場合にありがちなご挨拶で始め、その後に、
本会の「趣旨」についてこんなお話をされました。

自衛官の定年の年齢は早い。
これは自衛隊の精強さを保つためであり、宿命でもある。

一般社会ではこれから働き盛りという年代に再就職をしなければならない。

しかし、その再就職先が安定して、しかも当人はもちろん、
退職自衛官の扶養家族にとっても十分に満足のいく優良な職場であることは、
自衛官を志す優秀な若者に、後顧の憂いを残さないためにも重要である。

というわけでみなさんよろしくお願いします。(意訳)


過去自衛隊のレセプションに赴いて、周りを観察してきた結果わかったのは、
もしあなたが自衛隊にとって「大切な存在」、「特別な存在」になりたければ、
もっとも確実な方法は、自分の会社、あるいは人事部ならその権限で
退職自衛官を積極的に雇用することに尽きるということです。

それだけ自衛隊は自衛官の再就職に大きな関心を払っており、
組織の最大にして最終的な問題としてこれを常に捉えています。

いかに国防の崇高な使命感の元に自衛官になろうと思いたっても、
退職後にろくな職もないということになれば、現実的な現代の若者は先を見て
自衛隊を就職先の選択から外してしまうからです。

(漫画『ライジング・サン』で、レンジャー隊員だった元自衛官が
退官して工事現場でライトを振っている、というのを否定的に描いていましたが、
今にして思えばあれ陸自からクレーム出なかったのかな)


海幕長の後には、企業代表の出席者が挨拶に立ちました。

「我が社の業績は・・・・」

と細々と数字を出して好調である旨話し出されたので、
一瞬訝しく思ったのですが、それは決して会社自慢ではなく、

そのような我が社で採用した退職自衛官は、現在
これこれこうで大変優秀、かつ仕事ができる。
元自衛官のスキルと能力はこれだけ一般社会に通用するものなので、
自衛官の雇用、オススメです。(意訳)

と続いたのでした。

その方の会社では、三名の自衛官を再就職で雇用したということですが、
そのうちの一人は海外の支店を任されて、そこで腕を奮っているそうです。

どんな配置であっても、練習航海に始まるネイビーとしての素養を身につけていれば、
語学はもちろんのこと、海外で仕事するのに必要なコミュニュケーション力、
危機管理や、何より団体行動と規律を守ることが自然に身についているわけですから、
経営者にとって、身元はもちろん能力的にも信用がおける人材となるはずですね。


今回、自衛官を雇用している企業経営者、担当者という招待者枠とは
全く違う立場でなぜか参加していたわたしたちでありますが、
unknownさんのご提案通り、将来パーカーみたいな執事兼ショーファーを
雇う日が来れば(来ないけど)、躊躇いなく元自衛官限定で求人を出すことでしょう。

さて、会場では次々とご馳走が運び込まれ、海自のレセプションではおなじみの
カレーコーナーもこのように設えられているのですが、

みなさん!

カウンターの中にいる自衛官のいでたちをご覧ください。
上から下まで、全く正式なシェフのそれではないですか。

たとえば帝国ホテルの調理人の帽子は

見習い:18cm
7年目以降:23cm
料理長以上:35cm

となっていますが、彼のシェフハットはどう見ても料理長クラス。
本格的なシェフコートの胸には

ASY 91

Hashidate

Since 1999

と刺繍されており、シェフスカーフまで着用しております。

自衛隊の調理員を「給養員」と呼ぶのですが、
これはどう見ても「シェフ」以外の何者でもありませんわ。

で、ここのカレーなんですがね。

屋台の上に「はしだてカレー」ではなく「海軍カレー」とあったので、
カウンターに近づいてみますと、そこにはまず

海軍主計兵調理術教科書

のカレーライスのレシピが。

「黒鍋にヘットを溶かしカレー粉及び麦粉を加えて
焦げつかぬようによく煎りスープを加えて」

この出だしだけでもう普通とは違う感じです。

こちら、

海軍割烹術参考書。

こちらも牛脂を引いたフライパンで小麦粉を炒めるのは同じです。


この屋台のカレーは、そのレシピを元に作ってあることがわかりました。
「割烹術」の方に、「チャツネを加えてだす」とあるのですが、
屋台の上にはちゃんとチャツネが添えられています。

で、肝心のお味なんですが、

「甘い」

「辛くないカレーだ」

わたしは辛くないお子様カレーが好きなので、まったり甘い、しかしながら
コクのあるこの日の海軍カレーはど真ん中ストライクで好みに合いましたが、
TOは辛いもの派なので、

「ちょっと甘すぎるかなー」

というか、昔の海軍さんたちは甘いカレーを食べてたってことなんですよ。

小籠包を紅白のもち米で包んだ点心は大人気。
現場には中国語の読み仮名付きで紹介されていました。

みなさん、現場に待機していた自衛官と楽しく語らっておられます。

わたしたちも何人もの自衛官と名刺交換をさせていただきましたが、
その中に、つい最近までうちの近所に住んでおられ、
さらには奥様の職場がTOの職場の近く、という将官がおられました。

ご縁というのは不思議なものです。

見てください。このお料理の素敵なこと。
ハンバーグ素材をズッキーニで巻いてさらに味をつけ、
付け合わせはこっくりと味のしみたペコロスと人参のグラッセ。

フォーシーズンズホテルでこの3倍大きなお皿の真ん中に乗って出て来ても
全く違和感のない完成度の高さです。

会場にいると聞こえにくいのですが、後方デッキでは東京音楽隊の
選りすぐりのメンバーが、ジャズやポップスの演奏を聴かせてくれました。

海幕長の前には開式直後から人が並んでご挨拶の順番待ちをしていました。

皆順番が来たら一言二言をかわし、名刺交換を行い、
海幕長夫人とともに海自のカメラマンに写真を撮ってもらいます。
最初から最後までひっきりなしにそれをしておられたので、

「海幕長も大変ですね」

と近くの自衛官に話しかけると、

「ディズニーランドのミッキーマウスみたいなもんですね」

どこかで見た構図だと思ったらそれだったか。
まあ、みんなが挨拶したり一緒に写真を撮りたがる存在という共通点はあるかも。


「この後のデザートには期待していてください。
見た目も綺麗で、スイーツはインスタ映えしますよ」

一佐の「スイーツ」「インスタ映え」に思わずウケてしまったのは、
ちょうど「インスタバエ」の記事を見た後だからでした。

それはともかく、このスイーツの完成度の高さ、ご覧ください。
インスタバエもこれなら大喜び間違いなし。
それぞれの小さなケーキには、巷のおしゃれなパティスリーの
ケーキに付いているような小さな金色のカードまでつけられて、
しかも形の美しいこと。

お料理のレベルが高い海自のレセプションと雖も、さすがにデザートに
これほどのケーキ類が出されたのは前代未聞です。

音楽隊の周りには、宴が進むにつれ聴衆がたくさん集まりはじめ、
特に、歌が始まってからはそれが顕著でした。

「ゆず」を熱唱する管楽器のお二人。
トロンボーン奏者の防衛男子は、昔音楽まつりでこの歌を歌っておられた記憶が。

やおら彼らを動画で撮影し始めるTO(右)。

「自衛隊の人とカラオケ行きたい」

な、何を言い出すのだいきなり。

「あの人達とカラオケ行ったら2時間3時間なんてすぐに経ちそう。
そんな機会ないかな。誰に頼めばいい?」

筋金入りのカラオケ好きであるTOの気持ちはよくわかるが、
たとえ海幕長に頼んでも、音楽隊員をカラオケに駆り出すのは無理だと思うぞ。

甲板の階から下のラウンジのある階にいく階段。
写真を撮っているところにはベンチがあり、
わたしたちがここでデザートのケーキに舌鼓を打っていると、
下からパティシエがケーキのトレイを持って上がって来ました。
全ての料理は下で作られ、この階段を登って甲板に供されます。

パティシエに思わず、

「デザート素晴らしいですね!」

と声をかけると、にっこり笑って

「ありがとうございます!」

その様子が自衛官風にキリッと爽やかで大変よろしい。

階下にある女性用化粧室のエントランス。
ここの化粧室は何しろ個室で一人しかはいれません。
会の終わり頃には、ここに長蛇の列ができていました。

そしてあっという間に楽しい時間は過ぎ、お開きの時間に・・。

「はしだて」艇長に続き、「はしだて」シェフの挨拶です。
いでたちといい、この貫禄といい、どこから見ても自衛官というよりシェフです。

「秋の味覚をふんだんに取り入れて、本日の宴席のために一生懸命作りました。
皆様もぜひ今の季節、このような食材を取り入れてお楽しみください」

続いて東京音楽隊選抜メンバーの紹介です。

バンドメンバーを代表して、なんとピアニストの太田紗和子二曹がご挨拶。
本日は「はしだて」での演奏ということで、メンバーもスペシャル?

最後に締めの乾杯と挨拶をされた海将たる補給本部長。
この方の挨拶が・・

「こんな天気になってしまいましたが、本日出席の皆さんはラッキーです。
最初から雨が降っていたため、今日は出航しませんでしたが、かつて、
「はしだて」は、出航してから大雨に降られたことがあります。
当然このような覆いもありませんでしたから、皆濡れ鼠になりました。
それを考えれば皆さんはラッキーです。

しかも、船というのは落雷を受けることもございます。
不運な船は出航して落雷を受け、全ての機能が壊れてしまうこともあります。
今、実際にそうなった船を佐世保で修理中でございます。
皆さんはそんなことにならずに済んだ。やはりラッキーです」

謹厳な雰囲気の漂う海将が飄々とこんなことをおっしゃるので、
満場は爆笑の渦でした。

この後ご挨拶させていただき、ついでに伺ったところ、

「落雷を受けて現在佐世保で修理している船」

のくだりは実話だそうです。

この海将のご挨拶で、すっかり和やかな雰囲気のままお開きになった懇談会。
今回も桜に錨のマークに「海上自衛隊」と刻印された升をいただいて来ました。

後から改めて配られた栞を見ると、主催は

防衛省海上幕僚監部

人事教育部援護業務課

となっています。
この援護業務課こそが、自衛官の再就職を支援しているところなのです。


今回このような懇談会に出席する機会をいただき、退職自衛官の雇用について
自衛隊がいかに心を砕き力をいれているかということを改めて認識しました。

退職自衛官採用のご案内 海上自衛隊のチカラ


この度の懇談会への参加をお計らいくださいました関係者の皆様、
自衛官の再就職に対し、より一層多くの企業からの理解が得られますよう、
心からお祈りして、今回のお礼の言葉に代えさせていただきます。

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2815

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>