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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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行進曲「軍艦」〜平成29年度自衛隊音楽まつり

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2017年音楽まつり、続いては陸上自衛隊中部方面音楽隊です。

指揮者のタクトに続き、鶫真衣士長がスポットライトに浮かび上がりました。
ハープの伴奏で歌うのは新世紀エヴァンゲリオンより「魂のルフラン」。

この曲は最初に「シングル」(A面B面あり)発売されたというくらい
(20年前)古い曲であることを知りました。

鶫士長ですが、今彼女の名前で検索をかけるともうWikipediaがあり、
それによると、彼女は

「2014年、陸自が最初に採用した声楽要員」

となっています。

歌が終わると全員で華やかなファンファーレ。

ラストノートにかかった時、いきなり警報音が鳴り響きました。
楽器を抱えて右往左往する隊員たち。

いったい何が始まるんです?

暗い中をよく見ると、何人かの隊員が台を運び込みました。

上から見ると「MAB AND」と読めますが、これはマーチングの関係で
Bと Aの間を空けなくてはならなかったのです。

「MA BAND」は中部方面隊、ミドル・アーミーのバンドを意味します。

曲はやはりエヴァンゲリヲンから「DECISIVE BATTLE」。
ディサイシブバトル、つまり「決戦」です。

エヴァでは、人類の敵として襲来する使徒を迎え撃つための準備シーンや、
ヤシマ作戦を思い出す人もいるでしょうか。
「ヤシマ」とは日本の古称である「八島の国」から取られています。

かっこいいパートで台の上に乗り、ここぞと吹きまくるトランペット。

その間、後ろのスクリーンには総火演における戦車の咆哮や
ヘリの攻撃などがこれでもかと映し出されてバトル感満点です。

画面が暗くなり静かなトーンで始まった最終曲は「残酷な天使のテーゼ」。
横須賀音楽隊で中川麻梨子士長が歌ったのを思い出し、もう一度
鶫士長が登場するのかと思ったのですが、クラリネット4本の演奏でした。

以前も「進撃の巨人」に真面目に?取り組んだ記憶が新しい中部方面音楽隊、
今年の「エヴァンゲリヲン」も、マーチングバンドの本領に忠実に、
高速ステップでのマーチを堪能させてくれました。

緩急のメリハリも効いていて、派手な全員でのテーマに続くサビの部分は
クラリネットとサックスだけで演奏し、その間に全員が
カンパニーフロントの準備を行うといった具合。

そしてこれがラストサウンドの時の隊形。
音楽隊長である柴田昌宣三等陸佐のタクトが高々と天を突いて。

続いては陸上自衛隊中央音楽隊と第302保安警務中隊です。

ドラムメジャーの「前へー、進め!」という命令に続いて始まるのは
陸軍分列行進曲。
ドラムメジャーの後ろには第302保安警務中隊、そして音楽隊員が続きます。

第302保安警務中隊。
「だいさんまるにほあんけいむちゅうたい」と読みます。
(”さんまるふた”じゃないんだ・・・)

陸軍分列行進曲に合わせて音楽隊の前に一列に並び、
「捧げ銃」を挟んで銃を持った場合の整列休め状態で静止。

続いてはNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」のオープニングテーマ曲。

わたしは一度も観たことがないので、当然初めて聴くわけですが、
ファンファーレに始まるじつに吹奏楽向きの曲だと思いました。
原曲のピアノの早いパッセージはクラリネットが代わりにやっていたようです。

音楽隊とともに、保安警務中隊もマーチングを行います。
緩徐部分で銃を持ち替える時の「がちゃっ」という音が一つに聞こえてきた時には
なぜかわかりませんが、胸がドキドキしました。

しかしすぐにクライマックスへ。
曲がファンファーレ風のメロディとともに早くなると、それに合わせて
音楽隊の間を通り抜けるように前進して行きます。

そして一瞬ファンシードリル的なことを・・・。

第302保安警務中隊は昔方面総監直轄だった時代には名称は「保安中隊」で、
その頃にはファンシードリルも披露していたのだそうですが、改編になり、
保安警務中隊と名称が変わり防衛大臣直轄部隊の警務隊となってからは
その主任務の内容上行われなくなりました。

第304保安中隊として行ってきたファンシードリルは、平成19年、
中部方面音楽まつりの出演を最後に38年の幕を閉じたそうです。

ですから、第302保安警務中隊にとって、この音楽まつりが
ファンシードリル的要素を少しなりとも加えたマーチングをする
唯一の機会でもあるのです。

いつも複雑なマーチングを軽々と行ってくれる陸自中央音楽隊ですが、
今年の四角がひし形になったりそれがそのまま回転したりという
フォーメーションは特に高い技術に支えられていると感じました。

カンパニーフロントは第302警務隊と一緒に。
白とOD色の制服が一列になってクライマックスを迎えます。

保安警務中隊が銃を構えるのが最終形。

中央の二人だけが銃を構えていませんが、これはもしかしたら
来賓席中央に防衛大臣(あるいは防衛副大臣)ら政治家
が来ることに対する配慮でしょうか。

 

陸自中央音楽隊といつも一緒にドリルを行う第302警務保安中隊、
今回の音楽まつりは新制服のお披露目を兼ねたものとなり、
その硬質な華やかさを十分に見せてくれました。

そして海上自衛隊東京音楽隊です。

「この世界、この地球、そう、海はただ一つの海としてそこにあるのです」

という言葉に続いて演奏されたのはその名も「海」。
艦隊これくしょんからの楽曲のようです。

指揮は北村善弘一等海尉。
私ごとですが、昔呉音楽隊隊長時代に音楽隊練習棟を案内していただきました。

東京音楽隊おなじみのカラーガード。

自衛艦旗を中心に、音楽隊旗、女性隊旗などがバナーとともに入場して来ます。

最初に描く人文字は「SEA」。

オープニングが終わり、「出撃」に曲が変わってテンポが速くなると、
このようなフォーメーションで右から左に移動するのですが・・・・。

これは何を表しているのかお分かりの方おられますか。
ステルス艦橋の新型護衛艦・・・かなあ。

これも東京音楽隊の恒例になっているパーカッション部隊の演奏。
リズムを刻む間に、全員がフォーメーションを変化させて行きます。

隣のドラムを叩くのもいつもと同じ。
最後に全員でさっ!と上を見て敬礼するのですが、シンバルの人は
右手のシンバルだけを胸に当てる動作をしていました。

これがシンバルの敬礼か・・・・。

そしていつもの「錨」フォーメーションへと・・。

敬礼をし終わったドラム隊が再びリズムとともに錨の先の部分を完成させ、
いよいよ行進曲「軍艦」の始まりです。

スクリーンには観艦式の際の艦尾に揚げられた自衛艦旗がなびき、
ドラムのリズムに合わせてスクリーンから登場した三人の男性隊員。

なんと最初のコーラスから「軍艦」を歌で攻めようという考えです。

真ん中は音楽まつりには歌手として登場することの多いホルンの川上良司一曹ですが、
やはり管楽器奏者には歌の上手い人が多い、という定説通り、このお二人も
朗々とした声で・・というか、注意して聴いても三人のピッチが完璧に揃っていて
一人で歌っているようにしか聴こえませんでした。

そしてその間も当たり前のように回転する錨フォーメーション。

ノウハウは昔から伝わっているものをそのまま再現するとはいえ、
カーブの部分を完璧な形を保ったまま回転するのは相当難しそうです。

そして、

「仇なす國を攻めよかし」

というところまできました。
さて、次をどうするのか、とこの曲をなんども聴いてきた者としては
当然のように想像するわけですが、わたしがそうであったように

「三宅三曹が登場し次の部分を歌い出す」

と予想した人は会場におそらく何十人かがいたのではないでしょうか。

ところが違いました。

「海ゆかば 水漬く屍 山ゆかば草生す屍

大君の辺にこそ死なめ 長閑(のど)には死しなじ」
(万葉集では最後の部分は『 能杼尓波不死』

これが中間部のいわゆるトリオの部分です。

この部分を続いて三人が歌い出したときには衝撃を受けました。


軍艦行進曲のトリオ部分で「海ゆかば」という本居宣長の詠
(歌ではない)が君が代のメロディで歌われるということを知っている人は
一般社会にはいそうで実はほとんどいないとわたしは思っております。

しかし、元海軍軍人にとってはそうではないらしいのです。

海軍兵学校の元在校生と軍艦行進曲の話をしたとき、
自称リベラルで兵学校の集まりでも軍歌演習になると
歌うのを嫌がって逃げているような方が、軍艦のことを

「海行かばの部分を歌うとなぜかね、涙が出そうになる時がある」

とおっしゃったのにハッとした経験がわたしにはあります。

音楽的に見てもメロディと歌詞の不調和がどうも解せないこの部分、
しかし「海行かば」のもつ言霊が、元軍人にとっては
特別な感興を呼び起こすらしいことをその言葉から感じたからでした。

そんなことを思い出しながら川上一曹らの朗々とした歌声を聴いていると、
ブリッジの 

「ソドミッミミミ ソドミッミミミ ソドミッレドレッラッソーミ」
(移動ド)

部分で東京音楽隊、なんとカンパニーフロントを・・。
海行かばの歌のあとでそう来るか。この部分で。

理屈はわかりませんが、わたしは今回の音楽まつりを三回聴き、
その三回ともこの部分に来ると涙が溢れて来るので困りました。

しかもパブロフの犬的根源的理由でもあるのか、 アップされた
音楽まつりの動画を見ても、必ずここで鼻の奥がツーンとなるのです。

恐る恐る言わせてもらうと(もしかして少数意見なのかもしれないので)
わたしにとって今回の音楽まつりにおける東京音楽隊のステージは、
昨年の「われは海の子」と並ぶ過去最高のものでした。

続く。 



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