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We Are The World 〜平成29年度自衛隊音楽まつり

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音楽まつり、第2章は「想いをひとつに」。

「平和と安定の未来に向け、互いを信頼し力を尽くす」

というサブタイトルがつけられたこのステージでは
外国招待バンドが出演します。

まず米海兵隊第3海兵機動展開部隊音楽隊。
日本に在留している海兵隊の正式名称はこのドラムにもあるように

第3海兵遠征軍(3rd Marine Expeditionary Force: 3MEF)

というのですが、遠征軍という響きが物々しいと考えたのか、
日本では「機動展開部隊」と訳しているようです。

第1曲めは音楽まつりでは頻繁に登場するホルストの「惑星」より
「火星」が選ばれました。

これも滅多に紹介されたことはありませんが、「火星」の原題には
「Mars, the Bringer of War」というサブタイトルがあります。
つまり「マルス=戦争をもたらす者」という不穏なものなのですが、
単に「マルス=戦いの神」という翻訳をしている例もあります。

執拗に繰り返される「ダダダ・ダン・ダン・ダダ・ダン」という5拍子のリズムが
すでに戦いが始まっていることへの不安と恐怖を内包し、近未来的で不安定な
(作曲されたのは第一次世界大戦の頃ですが)メロディがそれを一層煽ります。

お約束、5拍子のリズムの盛り上がりとともにカンパニーフロント。

有名なユーフォニアムのメロディをドラムメジャーの向こうで演奏する奏者二人は、
一人が膝をついて座り、もう一人がその膝に脚をかけるという前衛?スタイル。

5拍子のリズムはドラムシーケンスによって引き継がれ、次曲、
映画「スーパーマン」のテーマに引き継がれていきます。

「戦いをもたらす者」から「スーパーマンのテーマ」。

うーん、なんてわかりやすい勧善懲悪ストーリーなんだ。

ちょっとわかりにくいですが、海兵隊、最後のフォーメーションは
スーパーマンの胸のマークで決めました。

ちょっと残念だったのは、いつも必ず最後、退場前に演奏する
「海兵隊讃歌」Marines' Hymnが今回は聴けなかったことです。

 

 

続いてタイ王国空軍音楽隊の出場です。

空軍らしい青と白の制服で登場。
演奏中スクリーンにはタイ空軍使用機が次々と映されましたが、
タイ王国空軍、Fー16なども導入しているようです。

ファンファーレに続き、楽しげなタイ情緒あふれる音楽とともに
ダンサーが乱入してきました。
曲名は「カンカーウキンクルアイ」というそうです。

次曲ではこのダンサーたちがタイボクシングのジェスチャーを行うという趣向。

タイボクシングというのはつまり「ムエタイ」のことです。
以前やはりタイ王国からの出演でムエタイを男性二人で見せたことがありました。

それに比べると今回は女性のムエタイ風ダンスといった感じです。

二曲め、専属歌手による日本語の「翼をください」。
彼女の歌にダンサーが今度は長いスカートをつけて出てきて踊りで花を添えます。

フォーメーションはハート型。

「今 私の願い事が 叶うな”れ”ば 翼が欲しい」

と3回とも歌詞を間違えて歌っていましたが、まあ意味は間違ってないしいいよね。

テーマをアレンジして転調した「この大空に」の部分とともに全員で
(ダンサーはスカートを広げ、楽器は横一列)カンパニーフロント。

 

今年の招待バンドは二カ国3音楽隊です。
常連の在日米軍軍楽隊の演奏は、去年に続き音楽まつりでおなじみの顔となった
トランペット奏者のセミデイ技術陸曹のギター弾き語りで幕を開けました。 

技術陸曹という階級は自衛隊のものをそのまま転用しました。
アメリカ軍ではシンプルに「スペシャリスト」と称し、「特技兵」と翻訳します。

文字通り特殊技能や資格などを有する者をさし、最初から特殊技能を持っていて
通常の志願兵とは別枠で採用された軍人のことです。

一般に飛行機や船舶に関わる人間は全て技能兵という考え方もあります。

先日お話ししたコードブレイカーなどは典型的であり、法曹資格を持つ者も
アメリカ軍ではスペシャリストとして扱われます。
ちなみに自衛隊の法務官には旧軍とは違い法曹資格の有無は問われないので、
スペシャリストというカテゴリには含まれません。


セミデイ技術陸曹は音楽という分野での『スペシャリスト』なのですが、
それなら軍楽隊全員がそうなのかというとどうも違うようです。

つまり、技術曹の位は「雇用の経緯」を指すのであり、これを有するものは
特殊技能を持っていることで(いきなり)伍長待遇で採用された民間人と考えられます。

そのセミデイ伍長待遇の技術曹が弾き語っているフレーズですが、
本日のプログラム「チルドレン・オブ・サンチェス」のヴァースかとも思われます。

その歌詞は

「夢、希望がなければ人は死んでしまう
体はまだ動いているけど心は墓で眠っているようなものだ
安らぎの地がなければ、人は何かに縛られ安心して眠ることはできない
人は皆威厳を持って生きることができる場所を求めている」

(字幕の間違いは訂正しておきました)

このスパニッシュ風のギター弾き語りが、鳥居や五重塔など、
日本の美しい風景の映像とともに流れます。

そして・・・

「フィール・ソー・グッド」で有名なフリューゲルホーン奏者(元トランペット)、
チャック・マンジョーネの「チルドレン・オブ・サンチェス」の始まりです。
メロディーはもちろんトランペットで。

その間、後ろのスクリーンにはこんな映像が流れていました。
広島の原爆ドームを訪問したバラク・オバマ前大統領が花輪を捧げる姿。

ハワイの真珠湾に永久展示されている軍艦「アリゾナ」で慰霊を行う安倍首相。
その後合同訓練を行う米軍と自衛隊、トランプ大統領と安倍首相といった具合に、
日本側が決してしないであろう(というかできない)アプローチで、日米両国の和解と赦し、
そして未来に向かっての両国の連携を誇らしげに見せてくれたのです。

「チルドレン・オブ・サンチェス」に歌詞があるとは知りませんでした。
調べたところ、同名の映画のために作曲されたそうで映画の最初のタイトル部分を見つけました。

Lupita Ferrer & Anthony Quinn - The Children of Sanchez

これを聞いて、セミデイ技術曹が弾き語っていたのは
この歌詞の最初の部分であることが判明しました。

掛け合いをしていたサックス奏者と客席に手を振るセミデイ技術曹。

隣の同行者が

「今日はこのおじさんに全て食われてしまった感があるなあ」

と言っておりましたが、つまり今年は米陸軍、全面的に彼をフィーチャーする
セミデイ作戦(オペレーション・セミデイ)発動だったのに違いありません。

さて、第二章のラストは全部隊の合同演奏です。
まず米陸軍軍楽隊がそのままロスオリンピックのファンファーレを演奏しました。
このファンファーレを作曲したのが「スターウォーズ」「スーパーマン」
「ジョーズ」「ハリーポッター」の作曲者、ジョン・ウィリアムスであることを
皆さんは当時ご存知だったでしょうか。(わたしは知りませんでした)

John Williams - Olympic Fanfare and Theme (The Original 1984 Recording)

そうと知って聞けば、ファンファーレに続くテーマにスターウォーズ的な要素が感じられます。

ロス五輪のテーマの間に全部隊が入場し、客席二方向から
東京オリンピックのファンファーレが響き渡りました。

このファンファーレは一般公募作品から選出されたもので、アメリカにおける
ジョン・ウィリアムスのような大物の作品ではありません。

ちなみにその後日本で行われたオリンピックのファンファーレは、
札幌冬季オリンピックでは三善晃、長野冬季では湯浅譲二とそれぞれ
一流作曲家が手がけましたが、だんだん進化?の度を増してゆき、特に長野では

「普通でええんやで」

と言いたくなるくらい超前衛的なファンファーレだった記憶があります。
作曲家としては短いファンファーレに思いっきり色々盛り込んでしまうんでしょう。

東京オリンピックのファンファーレを誰が担当するのか楽しみですね。
坂本か、三枝か、久石か、千住か、それとも・・・?

 ファンファーレの後、軽やかに始まったのは古関裕而作曲「東京オリンピックマーチ」。

後ろのスクリーンに74式戦車、海自の観艦式、ブルーインパルスのタキシング、
陸自の行進が流されていましたがそれが案外曲とマッチしています。

今回聴いて、曲の最後に雅楽の「越天楽」があしらわれているのに気がつきました。

終曲は各自衛隊から一人ずつ歌手が登場し、全員の歌で紡ぐ
「We Are The World 」。
セミデイ技術陸曹と空自の歌手がデュエットで登場し歌が始まります。

「ウィ・アー・ザ・ワールド」はアフリカ・エイドのキャンペーンに作られた曲で、
ビッグなミュージシャンがワンフレーズずつ参加して話題になりました。
最近(といってももう7年前)にはハイチ地震エイドバージョンも作られています。

わたしたちは地球 わたしたちは神の子供たち

今日より明るい明日を作る者たち

さあ今こそ始めよう

選択肢は 自らのいのちを救うこと 

より良い明日を作ることができる あなたとわたしとで


5人の歌手のハーモニーは溶け合って
武道館に集まった多くの人々の心をより一つに、
暖かい色で染めていくかのように思われました。

さて、いよいよ音楽まつり、最終章です。

 

続く。

 


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