アメリカ陸軍のエアボーン・アカデミーの映像が見つかりました。
巨大なC-17にたくさんの空挺隊員が乗り込んでいく様子、スタティックラインに
フックをかけてとびだしていく様子が映っているので観てみてください。
Paratroopers Static Line Jump From C-17
やはりこの中にも女性隊員の姿が見えます。
C-17のコーパイも女性だし、スタティックラインを押し出す係も女性ですね。
2年前に解禁になって、過酷な兵種にも女性が参加し、
普通に男性並みの任務をこなしているのがこの映像からもわかります。
日本でもついに潜水艦に女性士官を乗せるという話もありますね。
ところで冒頭写真をスクロールして途中でぎょっとされた方もおられるかもしれません。
これ、どうなっているのかすぐにお分かりでしょうか。
大量に空挺降下が行われたこの日の降下始め。
これでもかとC-1やC-130Hなどの航空機からも傘がばら撒かれました。
大型輸送機からの降下は、ハッチの両側から同時に行われます。
わたしの隣に座っていた常連の方(この方も去年は来なかったらしい)が
傘が改良されてから降下と降下の間を開けなくてもよくなったので
両側から飛び降りることができるようになったのだと教えてくれました。
どういうことかというと、傘同士が絡みにくくなったということでしょう。
航空機は時速200キロで航過するので、その結果
両側から同時に飛び降りた二つの傘が固まって降りていきます。
こうやって見ると、ペアになって落下していくようです。
間を開けなくとも飛び降りられるということは、狭い範囲に
一航過で何十人もの降下兵を投入できるということでもあります。
米軍の空挺を見ていただいてもわかりますが、飛行機から出たばかりの落下傘は
ひとかたまりになって傘同士がぶつかり合ったりしています。
自衛隊の使用落下傘もその点を考慮された設計であるはずですが、
それでも100パーセント安全ということではないのです。
それを実証するかのように、異変が起こりました。
前後して降りた二人の降下者の、一人のメインキャノピーが
少し上にいた人の索に絡まり付いてしまったようです。
「傘が絡まってるー!」
わたしの周りでこれに気づいた観客は騒然となりました。
少し上空で起こったアクシデントであったらしく、わたしが見たときには
すでにこの状態になっていました。
傘が相手の索に絡んだ瞬間、下の降下者は予備傘を迅速に作動させ開いたようです。
今や二人はメインとその約半分の傘で、繋がったまま降下していました。
メインの傘を絡ませた方も、絡みつかれた方の隊員も、お互いを見ながら
そのままの体勢で降りていきます。
絡みつかれた方はもしかしたら手で絡んだ傘を外すこともできたかもしれませんが、
そうした場合、相手が無事に降下できるかどうかはわかりませんから、
このまま降りようと二人で声を掛け合ったのかもしれません。
いざという時に開く予備傘ですが、メインの傘でも地面に降りた時の衝撃は
二階から飛び降りたくらいだといいますから、こんな小さな傘では
命の保証はあってもその衝撃はかなり激しいものだと推察されます。
空挺団ならきっと予備傘での降下訓練もしていると思うのですが・・。
しかもよりによって、この二人は傘以外に何か大きな荷物を持って降下しています。
遠目ですが、この二人の心中は手に取るようにわかりました。
こんな体勢のまま二人は運命共同体となって降下していきます。
だいぶ高度も下がり、地面が近づいてきました。
ほっ、ここまでくればおそらく事故になることは避けられるでしょう。
しかし肝を冷やしました。
当人たちにとってはこの何十秒かが長く感じられたに違いありません。
一般観衆、マスコミの報道、防衛大臣の前で、しかも降下始めという
「一年の安全を祈願する儀式」で事故が起こるという、
不吉な出来事にならずに済んだことにわたしは胸を撫で下ろしました。
傘を引っ掛けてしまった人がパニクって予備傘を開くタイミングが遅かったら
繋がったまま二人とも墜落してしまう可能性だってゼロではなかったと思います。
当事者が冷静であったことが最悪の事態を防いだと言えるでしょう。
二人とも若い隊員だと思いますが、この場合は最良の選択だったのではないでしょうか。
予備傘でまず一人が着地。
先に降りて傘を回収していた仲間が心配そうに見守っています。
絡みつかれた方も無事着地。
勢いが逆になくなって、着地そのものは二人とも楽だったかもしれません。
とにかく無事でよかったです。
「二人とも怖かったでしょうねー」
「あとで殴り合いになってたりして・・・」
「いや、それより正座で反省会じゃないでしょうか」
「でもミスとか心の緩みとか、誰が悪いという話でもないし」
「それでも教訓にするのが自衛隊というもんですよ」
「ということはやっぱり二人とも怒られちゃうのかな」
ほっとして勝手なことを言い合うわたしたちでした。
招待席で観覧していた方の話によると、周りにいた空挺のOBも
「かなりヤバイ状態だった」
と苦笑いしていたとのこと。
苦笑いですんでほんとよかったです。
もし、傘が絡むというアクシデントがなければ、この二人は抱えた荷物を
このように吊るして降下することになっていたのに違いありません。
非常事態なので二人とも荷物は体に付けたままにしていました。
なんのために荷物を吊るすのかわかりませんが、錘の代わりかな?
問題の二人のところには、どこから表れたのか青いキャップの自衛官が来て、
絡まった傘を解く前に状況を写真に撮っているようでした。
二度とこういうことが起こらないように対策をしっかりしなければ・・・、
と言っても、今回のような偶発的な事態は起こってしまったら防ぎようがないからなあ。
その間もC-1が惜しげも無く傘を撒いていきます。
一つの航空機には20人が乗っています。
次々と航空機からばら撒かれる傘に、皆圧倒されます。
200名もが降下して全ての傘が事故もなく、よそに流れることもなく、
(冗談抜きで習志野は空挺降下をするには少し狭いらしい)
無事に降りることができてよかったと思いました。
今まで見たことがないほど傘が密集しています。
ワンショットで同時にこんなたくさんの傘を画面に捉えられること自体初めての経験です。
C-130Hは愛知県の小牧基地に所属していて、第一空挺団の降下訓練を
支援するのも重要な任務の一つです。
機体は小牧からやって来ているようですが、
一体どこで空挺団を乗せて飛んでくるのでしょうか。
C-1と一緒に入間基地を使用しているのかな?
空挺団の人たちはチヌークか何かで滑走路のある基地に運ばれ、
そこで固定翼機に乗り込んで、習志野に降下するのだと思われます。
日常の訓練のたびにそんなことをしているのだとしたら、
移動手段だけ考えても大変な手間がかかっているってことなんですね。
ところで、空挺団を支援する航空機のパイロットというのは、
空挺降下訓練にどのような感想をお持ちなのでしょうか。
今日さるところでチヌークのパイロットから聞いて来たばかりの話を披露すると、
「あれはなんとも言えない変な感じです」
何十人も乗り込んでいたのに、ある瞬間からかき消すように皆いなくなる。
まあ飛び降りてしまうのだから当然なんですが、操縦席の人間にすると、
さっきまで後ろでひしめき合うように乗っていた人間が、次に振り向いたら、
しかも何秒間かの間に忽然といなくなっているわけですから・・・。
凍えるほど寒い一日でしたが、そのおかげで雲は低い位置にしかなく、
傘が大変綺麗に蒼天に散りばめられているような光景が見られました。
招待席の方の感想は
「まさにマーケット・ガーデン作戦、映画『遠すぎた橋』です」
ヨーロッパで第二次世界大戦中行われた有名な空挺作戦で、
「マーケット作戦」「ガーデン作戦」が行われたので「マーケット・ガーデン作戦」。
映画になってましたが、結局空挺作戦は失敗し、連合軍は敗北してるんですよね。
失敗の原因については後世の歴史家がいろんなことを言っていますが、
アメリカの歴史家は「イギリスが悪い」イギリスの歴史家はアメリカが(略)
と、互いに責任を押し付けあっているようです。
ふわふわと降りていき、地面でゆっくりと潰れていく。
まるで水に漂うクラゲを見ているような気分です。
こういう特殊な光景を目に刻む機会はそうあるものでなく、
戦車の活躍はなくとも、十分やってくる価値はあったと今は思っています。
降下する人数が多いと、こんな光景も見ることができます。
ところで彼らはどこに向かっているのでしょうか。
次々とやってくる航空機と降下を見るのに一生懸命になっているうと、
こうやってどこへともなくいなくなってしまう大量の空挺隊員たち。
空挺支援のパイロットではありませんが、これも実に不思議です。
嘆いても詮無いことではありますが、この傘の列を
ぜひ一眼レフで撮ってみたかったなあ・・・・・・・。
続く。