空母「ミッドウェイ」の見学はシックベイとそれに続くデンタルなエリアまで来ました。
そこに現れたのが、艦内告知板。
アメリカの学校でもおなじみの「Bulletin board」は、
広報だったり、参加のためのサインアップといった紙が貼られる掲示板です。
ここにかつて「ミッドウェイ」で本当に貼られていたと思われる
三枚のお知らせがありました。
まず、一番左は毎日貼り替えられる「今日のミッドウェイ」情報で、
日付は1990年の3月23日となっています。
イラクのクウェート侵攻が1990年の8月、「ミッドウェイ」がそれを受けて
北アラビア海に展開するのは11月のことですから、これは嵐の前の
(ちなみに作戦名はデザート・シールド作戦)静けさといった、
横須賀でのある穏やかな1日であったということになります。
司令官以下セキュリティマネージャー、CMCの官姓名が記され、火災をはじめ
非常時の内線番号が型通り記された後は、甲板士官の名前が書かれています。
■甲板士官
00-04 トーマス少佐 ゴンザレス少尉
04-08 ブランフォード大尉 レハード中尉
08-12 メイヤー大尉 フローレス大尉
12-16 オーウェン中尉 ゴンザレス少尉
16-20 トーマス少佐 レハード中尉
20-24 ブランフォード大尉 フローレス大尉
といった風に。
前者はAT-SEA OOD (オフィサー・オブ・ザ・デッキ)
後者はAT-SEA JOOD(ジュニアオフィサー・オブ・ザ・デッキ)
トーマス少佐とブランフォード大尉は2回、
JODはゴンザレス、レハード、フローレスの三人で交代しています。
■今日のユニフォーム
今日、どんなユニフォームを着用するのか。
いくつもパターンがある軍隊では、いつもどうやってこの服装を
伝達するのかと思ったら、こういう仕組みだったんですね。
こんな風に記されています。
【今日のユニフォーム】
士官&CPO: サマーホワイト/サマーカーキ
下士官兵E1-E6: サマーホワイト
【作業服】
士官&CPO:カーキ
下士官兵E1-E6: ダンガリー
【海上での制服】
リラックスユニフォームが許可されてます
海の上ではリラックスユニフォームを着ていていいよと。
えー、どういうのがリラックスなのー?
■定期作業
0730,1530,2130 清掃
0730, 1730 CHECK YOKE
ヨークをチェック、というのがわからなかったのですが、
舫など船を繋留する装具の点検でしょうか。
■今日の宗教サービス
0600 NSA
0645 カトリックミサ
0800 十字架のステーション
1130 カトリックミサ
1230 ゴスペル聖書勉強会
1700 キリスト教フェローシップアワー
どうもよくわからない時間もありますが、一つの宗教だけに
教会が使われている訳ではないことだけはわかります。
■食事
【士官& CPO】
ランチ 1100-1400
牛肉と大麦のスープ、仔牛肉、ニジマス、ポテトグラタン、
ライス、芽キャベツ、インゲン、冷たい飲み物、サラダバー、デザート
夕食 1600-2000
『フロム・ザ・フィリピン』
【下士官兵】
ランチ 1030-1400
グラウンドビーフのバーベキュー、フレンチポテト、サラダバー
ディナー 1630-1930
コールドカット、フレンチポテト、サラダバー
夜食 2300-0100
コンボサンドイッチ、フレンチポテト、サラダバー
士官の食事が「フィリピン風」ということだと思います。
それから面白かったのが夜食のことを
MIDRATS (midnight rations)
とスラングで書いてあること。
ミッドナイトレーションズ、略してミッドラッツ。
レーションズが「ネズミ」になっているのが秀逸です。
真夜中にネズミさんが台所をあさっているのを想像してしまいました。
その後は電気や機械関係、エアコンなどのトラブルが起きた時の
内線番号などが書いてあり、次には
艦尾教室 15時から
というお知らせがありました。
艦内作業について勉強会?でも行うのでしょうか。
ちなみにこの日のテーマは
「航行中補給について」
です。
■ 告知
1、上陸時の自由時間においても、すべての乗員は知り得た情報について
それがどんな種類のものであっても船上の海軍情報局に、または、
セキュリティマネージャーにに報告することを要求されます。
このお知らせが横須賀を母港としているときに出されたとなると
なんだか色々と考えてしまいますね。
2、講座
a. ファンクショナル・スキルというリーディングと英語、数学の
海軍トレーニングプログラム、「ブラッシュアップ」のお知らせ。
勤務中に行われるこのトレーニングの目的は、任務に必要なスキルの向上であり、
カレッジレベルのコースを修得しておくことによって、ASVABテスト
(Armed Services Vocational Aptitude Battery )はじめ、
海軍の各種試験の準備をすることもできます。
英語、リーディング、そして数学のクラスは横須賀の海軍キャンパスで、
次回の停泊期間に行われます。
技術向上クラスは通常一日4時間、2週間で終了するプログラムです。
興味のある方はオフィスに申込書を用意してあります。
b.横須賀ネイビーキャンパスでは特別に「シップス・セメスター」を開催します。
期間は4月9日から5月18日まで。
応募は全ての「ミッドウェイ」乗員が対象となります。
勤務中手当として75%の授業料が免除となります。
授業は月、火、木曜日の夕方で、6週間行われます。
授業のコースは下記の通り。
「数学」代数の概念
「日本語」 日本語入門
「数学上級」数学III
「スペイン語」 ビジネス&仕事会話
興味のある方は応募用紙にて3月25日までに申し込んでください。
これらの授業は上級下士官の方々が士官になる際にも有利です。
この「ゴールデンチャンス」をお見逃しなく。
申し込まれた方には4月1日の「アフトクラスルーム」で説明顔をします。
大学に行かなくても、海軍のプログラムである程度の基礎教育をうけることができ、
それが海軍内でのキャリアアップに繋がるというわけです。
【今月の水兵】
今日0900からCPOメスでセイラー・オブ・ザ・マンスの会議を行います
【人事事務所】
今日は事務所を閉めています
【法的警告】
香港で刺青を入れた者の海軍施設への立ち入りを禁ずる
ちょっと・・・これ、「香港で刺青を入れたものがいるらしい」
という報告を知った上でのお知らせって気がするのですが、
それともこれから香港に行くので、
「刺青入れたらこうなるからな」という警告なんでしょうか。
この後も教会牧師からの礼拝のお知らせとかが続きますが、
実は写真のピントが奥にはあっておらず、読みにくいのでここまでにします。
さて、告知板のお知らせを読んでいるうちに、すっかり
「ミッドウェイ」の乗員気分になったところで、次に進みます。
檻のある窓口、ここは艦内郵便局になります、
現金の受け渡しをするので、このようになっているわけですが、
ここを使用する人が基本海軍の、しかも乗組員に限られているというのに
割と人を信用していない雰囲気が漂う設計という気がします。
基本どんな団体も内部に対して性善説では対処しない、
というのは日本以外の国ではスタンダードなのかもしれません。
「ミッドウェイ」から送る小包の仕分けをしている人あり。
ここの責任者のCPO(勤続15〜17年)の制服がかかっています。
海軍に入って郵便一筋!みたいなチーフなんでしょうか。
ちなみに仕分けしている人はダンガリーを着ているので水兵さんです。
「Letters on the sand」という映画ポスターのようなものがありますが、
同名の歌「砂に書いたラブレター」しかヒットしませんでした。
読みにくい文字をなんとか解読してみると、郵便局の宣伝で、
「ハードカバーのパーソナルヒストリー」が作れるとかなんとか。
黒字以外はぼやけていて細部はわかりませんでした。
故郷に送る手紙、故郷からの手紙は海軍乗組員、特に「ミッドウェイ」のように
本国を離れた定係港に勤務する軍人にとっては何よりも嬉しいものです。
一体どんな経緯でここにあるのかはわかりませんが、横須賀時代に
乗員が家族からもらった手紙がここに飾ってありました。
ところでこの手紙や家族の写真など、乗員が送られたもののはずなのに
なぜこんなにたくさんここにあるのでしょう。
「ミッドウェイ」あてに届いたものの、受け取る人がいなくて、
大量に残されていた、とかいうのではないといいのですが。
続く。