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”トラブルシューターズ”〜コーストガード・アカデミー博物館

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沿岸警備隊士官学校に併設された博物館の見学記です。

今日は、灯台守、ライトハウス・キーパーと、税収カッター部隊と
のちに併合する、救難救助隊の活躍についてお話しします。

ほとんどの市民はアンクルサム(アメリカ)の
「Devil Dogs」(海兵隊)「Gobs」(船員たち、海軍)
そして「Dough Boys」(陸軍)を知っている。

しかし、どれくらいの人々が「トラブルシューターズ」
つまり沿岸警備隊を知っているだろう

328フィートのエレクトリックエンジン、5インチ砲搭載のカッター、
全国250もの基地、19箇所の無線基地、災害派遣車、
携帯短波ラジオ搭載トラック、5000マイルのテレグラフケーブル、
電話による通信システム、特別に設計された陸空兼用飛行機を持ち、
トラブルを解決するために完璧な仕事を行う者たちのことを


サムナー・インクリース・キンボール

インクリースというのがミドルネームという人を初めて見る気がしますが(笑)
このキンボールは弁護士で、1848年に海難救助を行うために
ライフセービングサービスを創設し、その初代代表となった人物です。

民間や地域の人道的努力から形になったこの組織は、1915年、
税収カッターサービスと合併して沿岸警備隊となりました。

1897年には最初の電動ジェネレーターを搭載したカッターが何隻か
ライフセービングサービス、救難隊に導入され、1899年には
無線も導入され始めましたが、基本救難隊は、このような
オールでボートを漕いで救難活動を行っていました。

■ フレネルレンズ灯台

コネチカットの「ミスティック・シーポート」で、実際に稼働している
灯台が、このフレネルレンズでした。

フランスのオーギュスタン・フレネルが、最初から
灯台の灯に使うためにこのレンズを開発しました。

通常のレンズを同心円状の領域に分割し厚みを減らした設計で、
その表面にノコギリ状の断面を持っています。

皆さんは、表面がギザギザのルーペをご覧になったことがないでしょうか。
字は確かに大きくなりますが、見にくいものですよね(笑)
あんなギザギザでは結像性能が良くないのは当たり前です。

このギザギザの分割数を多くすればするほどレンズは薄くなるので
材料を減らし軽量化が可能になります。
まさに灯台のためだけの発明だったと言えます。

左の婉曲したものが一個のフレネルレンズで、これをいくつも重ね、
光を一方向に投射することができるというわけです。

ガラスの組み方の違う大型のフレネルレンズ灯台。
少ない、あるいは小さな光源でも一定方向に光と集めて照射することができます。

こちらは外側のケース付きフレネルレンズの灯り。 

これはソーラー・ビーコンだそうです。

今のソーラーの意味ではなく、鏡の反射を利用したビーコンだと思われます。

コーストガードの活動記録から。
洪水になった街に出動して住民を救助しています。

税収カッターサービスと並行して活動していた「救助部隊」
United States Life Saving Service(USSL)のバナーには
今でもコーストガードのシンボルである鷲が描かれています。

下のボイラーみたいなものは「ライフ・カー」(Life-car)といい、
1845年にジョセフ・フランシスなる人物が発明したものです。

当時もっとも成功した海難救助のための発明と言われ、このライフカーで
1850年、ニュージャージーで座礁した船から199名の乗客を運び出し、
船から岸へと搬送することができたと言われています。

こちらも救助グッズで「Breeches Buoy(ブリーチズブイ)」という道具です。

ブリーチというのは、この浮き輪状のものにくっついているキャンバス地の
「脚を入れて履けるような形状になっているもの」のことです。

難破した船から比較的近い沿岸に一人ずつ人を輸送する道具で、
小舟も使えない荒れた海の上では大変有効な道具でした。

ロープは船の一番高いところにセットし、岸に向かって滑車を滑り落とすように
人を乗せて動かしたそうです。

乗っている方はとっても怖かったと思うがどうか。


船の救急救難グッズは昔からいろんなものが発明され試みられてきましたが、
こんな失敗例もあるということで。

救命浮き輪のプロトタイプ(試作品)です。

1875年ごろ、マクレランド・カンパニーという救命グッズを手がけた
専門の会社によって試作されました。
実際見ると小さくて、こんなものどうやって使うのか、というくらいですが、
手錠のように外して、首にがちゃんとはめて使用することになっていました。

たとえ意識がなくなっても、手足が動かなくても、これを嵌めればとりあえず
首から上は海上に出たまま浮いていることができる、というコンセプトでしたが、
いざ海に脱出するときに両手で持って運ばなくてはならず、
(確かにこれは片手では持てないかも)木の輪っかなので危険というか、
つけたまま船体に挟まれたりした場合、最悪首を骨折する危険さえありました。

いうまでもないですが、このアイデアは試作品のままで終わり、製品化されませんでした。

■ ライトシップ(灯台船)     うっかり説明の写真を撮るのを忘れたのですが、他の類似の船を調べたところ、
これは「light ship」(灯台船)と言われる船であるようです。   灯台船は読んで字の通り灯台として機能する船のことで、
目立たせるために明るい赤の船体に白の大文字でその場所の名前が書かれます。   通りかかった船にここがどこか知らせるためです。       「ヴィンヤード」は「マーサスヴィンヤード(マーサの葡萄畑)」のことで、
この島の隣にある「ナンタケット」では、同型の灯台船がニューヨークで
お仕事(といっても繋留されているだけですが)しています。   灯台船は灯台を設置するには震度の深すぎるところに繋留して錨を下ろし、
固定するものなので、一部を除いて推進手段を持たない、とされています。 設置や補修の時には牽引されるものだと思われます。   灯台船は霧の中、および日没1時間前から日の出の1時間後まで点灯するのが仕事ですが、
ずっと繋留されているその船には、船員が寝泊まりしていたのでしょうか。
補修の時にしか移動しないのなら、乗員はランチで通勤していたのか・・・・?   ところでここになぜ灯台船の模型があるかと言いますと、
灯台船を設置するのは沿岸警備隊の役目だったからです。   灯台船の使用は1985年、最後の一隻「ナンタケット」の退役によって終了しました。
全部がコストパフォーマンスの観点から「テキサス・タワーズ」と呼ばれる
沖合の照明プラットフォームまたは大型の航法ブイと置き換えられました。
  ■ エリー湖の事故と救助隊の殉職     右は「メモリアル・オールで作った木彫のトークン」だそうです。   1893年の5月、クリーブランドのエリー湖でで二人の少年を助けようと出動した
ライフセーバーのボートが転覆し、5名のキーパーが殉職しました。
ステーション隊長のローレンス・ディステルと2名の要救助者は
タグボートに救出され、助かっています。
隊長のディステルはその時使用されていて粉々になったオールから、
失われた部下を悼むためにトークン(コインのようなもの)を作りました。   ■ 女性灯台守

腕を組み、キリッとした表情でレンズを見ているこの女性、
アイダ・ルイス(1842-1911)は、1881年、灯台守として
女性で初めてゴールドライフセービングメダルを授与され、今でも
「アメリカン・ヒーロー」の一人とされています。

ロードアイランド州ニューポートに生まれた彼女は、16歳の時
ライムロック灯台の灯台守だった父が発作のために倒れた後、仕事を継ぎ、
1858年、近隣の家族4人の船が転覆した時に彼らを救出しました。

こんな軽装で夜の海に漕ぎだしたのか、と思いますが、まあこれは
あくまでも「イメージ」なので、実際の様子とは異なるかもしれません。

彼女はこの英雄的な救助劇のその後も、ライムロックで灯台守を一生の仕事として、
その生涯には少なくとも18人の市民を救ったとも言われています。

しかし、彼女はそのことを記録に残さなかったため、正確なところはわかりません。

最初の救助で人気者になった彼女の元には、人々が見物に押しかけましたが、
彼女は注目されることを良しとしなかったということです。

ライフセーバーに一生を捧げた彼女の最後の救助は、彼女が63歳の時で、
ボートから落ちた自分の友人を救ったというものです。

彼女が69歳で亡くなった時には、周辺の灯台守や船のほとんどの乗員が葬式に訪れ、
港湾内のすべての船が汽笛を鳴らし、半旗を挙げて彼女の死を悼みました。

沿岸警備隊の「キーパー」級説標船の1番艦

USCGC 「アイダ・ルイス 」(WLM-551)

は、彼女の出身地であり、ライムロック灯台のあるロード・アイランドを
母港としています。

説標船とは、灯浮標など航路標識の設置や回収を主な任務とする船で、
英語では

「Bouy Tender 」

と言います。

”That others might live”、

一生を安全な船の航行のためにかけた彼女の名に相応しい船ではありませんか。


 

続く。

 

 

 

 

 


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