というわけで、また潜水艦映画を紹介してしまいます。
この「イン・ザ・ネイビー」、原題、
「ダウン・ペリスコープ」(潜望鏡を下げろ)
「第二次大戦の遺物であるバラオ級潜水艦スティングレイで
はぐれ者や変人役立たずの部下を率いて最新鋭原子力潜水艦に挑む
落ちこぼれサブマリナーの物語」
という内容を見ただけで、迷わずぽちっと購入してしまいました。
それにしても、
”DOWN PERISCOPE"
という英題を見て、皆様何か感じませんか?
冠詞がないんですよ。
日本人の英語には冠詞がない、というのはよく言われることですが、
それはともかく、このタイトルにどうして「The」がないのか?
もしかしたらこれが潜水艦の現場では普通の号令となっているから?
アメリカ海軍も海軍ならではの「省エネモード」で(例えば日本海軍では
『お願いします』を『ねえす』『おはようございます』を『おおす』だったような)
独特の言語を発しているのかな?
一つわかったことは、この映画が1959年の真面目な?潜水艦映画
"UP PERISCOPE!"
からその題名をシャレで取ってきているということで、
こちらの「真面目な方」にも冠詞がないところを見ると、これが潜水艦での
「慣用句」なんだろうなと思うしかありません。
舞台はバージニア州ノーフォーク海軍基地から始まります。
世界最大の海軍基地であるここには現在ロスアンゼルス級を中心とした
原子力潜水艦隊を擁しています。
折しも行われている潜水艦隊司令部の首脳会議。
人事と昇進を決定する会議の席で、ある潜水艦副長の人事が話題になります。
原潜「オーランド」副長トーマス・ダッジ少佐は、潜水艦学校の成績も優秀、
指揮官としての資質も持ちながら、なぜか今まで艦長になるチャンスを逃してきました。
会議で名前が挙がるのは3度目です。
彼の昇進を阻んできたものは、航海士時代ロシアの潜水艦とニアミスをした
過去の失敗と、・・・多分このおっさん。
なぜか潜水艦隊司令部のグラハム少将は、ダッジを目の敵にしているのです。
おそらくその理由は、この型破りな性格。
「ナイス・オン!」
グラハム少将「それだけじゃないんですぞ!
彼は少尉時代、泥酔して、ぴ━━━━(゚∀゚)━━━━!!に刺青を入れたんです!
『ウェルカム・ア・ボード』とぴ━━━━(゚∀゚)━━━━!!に!」
(うんざり・・・)
ところが、この後なぜかダッジ少佐のもとに辞令が。
「潜水艦長に任命する」
「ブルーの潜水艦だといいな!」
意気揚々とノーフォークに愛車で乗り付けるダッジ少佐。
しかし、現実は過酷でした。
嫌味ったらしく、わざわざグラハム少将が直々にボートに乗り込んで、
彼が艦長に着任するその潜水艦を指し示します。(暇なのか?)
「君の船、USSスティングレイ、SS161だ」
「スティングレイ」という名前の潜水艦は実際に2隻、
第一次世界大戦時のCクラス潜水艦、
第二次世界大戦時の「サーモン」級SS-186
として存在しています。
SS-186は16回もの哨戒を務め上げ最後まで生き残った
精鋭艦ですが、この映画では微妙に番号をずらしています。
そして実際のSS-161潜水艦は第一次世界大戦時のSボートの改装後となります。
「南北戦争の甲鉄艦メリマックといい勝負です!
原潜に乗せてください!」
憤然とするダッジに、グラハム少将はサディスティックにほくそ笑み、
「任務を拒否するのか?("Are you refusing take a man?")」
と凄むのでした。
しかも、
「私自身がスティングレイの乗員を全員選んでおいた」
暇なのかこのおっさん。
ダッジは早速、米海軍大西洋司令官隊の潜水艦隊司令である
ウィンスロー中将に直訴しにいきます。
しかし彼を「スティングレイ」の艦長にしたのはウィンスロー中将本人だったのです。
「ディーゼルエンジンの潜水艦が各国に流出しているという現在、
もしディーゼル艦で海軍基地が攻撃された場合を想定して
潜水艦隊はこれを阻止するための策を練らねばならない。
スティングレイを整備して大西洋岸でウォーゲーム(模擬演習)を行え」
「む・・・無理です」
「何を言っとる!ぴ━━━━(゚∀゚)━━━━!!に刺青する勇気を持て!」
「その点はまあ・・じゃ攻略できたら原潜の艦長にしてください」
チャールストン海軍基地、ノーフォーク海軍基地に侵入し、
ダミーの戦艦に魚雷を二発撃ち込んだら原潜の艦長にしてやる、
という約束を取り付け、ダッジは艦長として着任しました。
まずは副長のエグゼクティブオフィサー、パスカルが元気すぎるお出迎え。
まずはギャンブラー「スポッツ」二等水兵。
本命をスって靴無しの乗艦です。
地獄耳の電信員、「ソナー」。
海軍刑務所から直送されてきた乗組員も。
警衛のガードを従えての華々しい登場です。
一級エンジン技師、ステパネック。
「一週間で監獄へ送り返されてやらあ!」
こんな彼の父親は実は提督だったりします。
調理員のバックマンと無線技師の本名ナイトロ(ニトロ)。
「マイクとかいうあだ名はどう?」
「お前バスケットの選手”ストーンボール・ジャクソン”だろ。
お前のおかげで1000ドルスった」
「ディフェンスされてシュートできなかったんだ!悪いか」

繋留されている潜水艦「パンパニト」で行いました。 「パンパニト」については、このブログでもお話ししたことがあります。
わざわざ撮影のために古びた塗装に塗り直し、蜘蛛の巣まで付けたようです。 ちなみに錆だらけの「スティングレイ」も「パンパニト」が演じました。
艦長室には「最後のスティングレイの艦長」のものらしい写真が・・・。
その時艦長室にやってきた美女が。
「あー・・・わかった!
いたずらで誰かがストリッパーを呼んだんだな?
ああ、服は脱がないでね。皆忙しいから。
でも制服がよく似合うねえ!」
「ストリッパーではありません、サー。
潜行指揮官エミリー・レイク大尉です」
「女は潜水艦には乗れないはずだが」
「グラハム提督がわたしを女性潜水艦乗り第一号にと」
「あんの野郎・・・」
ちなみに、この映画公開の1年後、最初の女性潜水艦乗組士官が誕生しています。
そして作業が始まりました。
そしてみんなで楽しくスティングレイの整備と塗装、とにかく
乗れるようにしなければ。
しかし、艦長と副長から見て彼らの仕事ぶりは・・・・・。
海に放水されてしまう副長パスカル。
「あーあ・・・・」
怒りの副長、早速調理員のバックマンに八つ当たり。
副長は移動を申し出ますが、ダッジはにべもなく拒否します。
そうこうするうちに整備が終わりました。
艦体にはスティングレイのマークも描き込まれました。
早速制服をこっそり小さなサイズに取り替えられるという
セクハラの洗礼に遭うレイク大尉。
いよいよ新生「スティングレイ」出航です。
ここで鳴り響くのはコーラス付き「錨を上げて」。
艦橋には本当にダッジ(ケルシー・グラマー)が乗っています。
この撮影の時、「パンパニト」は自走できないので、曳航されています。
この写真をよく見ると、曳航している船の航跡らしき波が写っていますね。
CPO、機関室チーフの「エンジンルームの主」、ハワード。
演じているハリー・ディーン・スタントンは実際にも
海軍軍人として沖縄戦にも参加しています。
ただし、配置は調理師だったそうです。
「潜ったことがあるのか。事故以外で」
「模擬訓練300回以上、75回は強い潮流でした」
「さぞいい成績を」
「あなたより上でした」
「(カチーン)」
「潜行用意!」
あれ、「パンパニト」本当に潜ってませんか?
これは模型らしいですが。
しかし潜行するなり艦体が傾いて艦内は阿鼻叫喚に。
悠々としているのは機関室の主ハワードとダッジ艦長だけ。
皆床を転がり、ある者は祈り、ある者はオッズを賭け・・。
ベント開放でことなきを得ましたが、艦長、ここで
500フィート潜行を命じます。
実は「バラオ」級潜水艦は構造上400フィート以上に潜行することは
不可能だということになっています。
400フィート越すと文字通り「クラッシュダイブ」の危険があるのです。
「このヒモを見てな。
深く潜行するとこのヒモはたるんでくる。
つまり空き缶みたいにひしゃげていくんだ。ふぉっふぉっふぉ」
爺さん、すっかり楽しんでるだろ。
ギャンブルコンビの操舵手。
400フィートくらいから艦体が軋み、ヒモはだらんだらんに。
セオリー通り、レイク大尉は
「この艦の最大潜行可能深度は400フィート(121m)です」
と中止を進言しますが、艦長は不敵にも限界まで挑戦することを言い放ち、
「怖いのか」
と大尉を挑発するのでした。
嫌な金属音がしてどこからともなく浸水し、ビスが弾け、
電球が割れてみんながもうだめ!と首をすくめた瞬間・・・・。
「ビンゴ!500フィートだ!
もうたまらんぜ!」
"I love this job!” はダッジ少佐の口癖です。
「諸君、おめでとう。
模範的な潜行(テキストブック・ダイブ)だった!」
この無茶振りでダッジ艦長は乗組員の心をがっちりとつかんだのでした。
さて、こちらは悪代官・・・ではなく、グラハム提督。
かつてのダッジの上官である「オーランド」艦長ノックスに、
「スティングレイ」が仕掛けてくるであろう模擬戦の説明をしています。
海軍の規定により、ノックスが相手の存在を知らされることはありません。
「一つ言えることは、その未知の敵は厳選の相手ではないだろうということだ」
「戦うのが楽しみです」
しかしそんなノックス艦長も、まさか自分に戦いを挑んでくるのがかつての部下、
ダッジ率いるディーゼル式潜水艦であろうとは夢にも思わなかったのです。
続く。