映画「イン・ザ・ネイビー」三日目です。
今や15隻のピケットラインに迎撃体制を取らせるノーフォーク潜水艦基地。
これは「スティングレイ」の潜望鏡(の模型)だと思われます。
ソナーマンのソナーは、この時点で海上にいる艦船が
「駆逐艦5隻、フリゲート3隻」
である、というのですが・・・・、
さっきのも、これも、
これも、「タイコンデロガ」級のしかも同じ巡洋艦に見えます。
角度を変えたら違う船がたくさんいるように見えるってか?
この頃アメリカの主流だったP3-C、対潜哨戒機まで繰り出してきました。
一度ならず2度までも、第二次世界大戦中の「バラオ」級潜水艦に
してやられた原子力潜水艦「オーランド」。
決して潜水艦そのものの性能による勝敗でなかっただけに、グラハム少将、
矢も盾もたまらず、提督自ら「オーランド」に乗り込んできました。
「WELCOME ABOARD, sir.」
ああっ、その言葉はグラハム少将には禁句・・・。
案の定グラハム少将、それを聞くなり喧嘩腰で、
「それはどういう意味で言ってるんだ?」
グラハムがここまでダッジ少佐を毛嫌いする理由というのは、もしかしたら
この言葉をぴ━━━━(゚∀゚)━━━━!!に刺青したということに尽きるのかも・・。
なんか嫌な意味で琴線に触れるものがあったんでしょうかね。
流石の「オーランド」艦長ノックス中佐も、乗り込んでくるなり偉そうに
踏ん反り返ってあれこれ言うグラハムにムッとせずにはおれません。
早速アクティブソナーで探信をかけてきた「オーランド」。
港も封鎖され、「スティングレイ」が追いつかれるのも時間の問題です。
どうするダッジ艦長。
「生き残るには奇抜で(bizarre)危険な戦術で行く。
(民間の)タンカーに向かって全速前進(All ahead full)」
「タンカーですか、艦長」
「スクリューの間からタンカーの下に潜って隠れる」
「無理です。わたしにはできません」
「そうか・・・わたしがやろう」
あれ?なんだかこのお腹が出て額の後退したおじさんがやたらイケメンに見える・・。
ターゲットはフィラデルフィアのタンカー「デナリ」号。
念のため調べてみたら同一かどうかはわかりませんが、実在していました。
この巨大タンカーの二つのスクリューの間を通過してコバンザメのように
船の下に潜り込もうと言うのです。
ただし、本物の「デナリ」にはスクリューは一つしかないとのこと。
まあ映画だから多少はね?
「Three degrees down bubble.(下げ舵3度)」
下げ舵に「バブル」と言う言葉が出てくるとは知りませんでした。
「3度ですか?」
ダッジの指令に思わず口を出してしまうレイク大尉。
「黙ってろ。でなきゃ君が指揮をとれ!」
「無理です!」
「ここでこれができるのは君だけだろうが!」
ギリギリになっていきなり覚醒するレイク大尉。
「機関1/3、面舵いっぱい!」
「機関パワー2/3、船の中央に舵を切り下げ舵ゼロ!
方位 2−7−0!」
「全力で突っ込め!(Balls to the wall, boys!)」
「ボールズ・トゥ・ザ・ウォール」
と言うのは、航空機の飛行速度をコントロールする
丸いボールの形をしたスロットルを壁側に目いっぱい押して、
全力で飛行するというところから来た米俗語で、DVDの翻訳のように
「ボールズ」に決してそれ以上の深い意味はない(と思う)のですが、
そんなレイク大尉にボーイズは目を見張ります。
操舵のギャンブルコンビ(賭けた方と賭けられた方)の頑張りもあって、
すっぽりとスクリューの間から船の下に潜り込むことに成功。
「オーランド」は「スティングレイ」を見失いました。
しかし機関室ではどう言う理屈かわかりませんがパイプが破損して浸水が!
ここでも覚醒した、提督の馬鹿息子、ブラッド・スタパナック。
機関室に飛び込み必死のダメコンで間一髪艦を救います。
「潜水艦は嫌いだ!一緒に死ぬなんてごめんだぜ!」
危機を脱し、敵の目から姿をくらますことに成功したダッジが艦長室で顔を洗っていると、
そこにレイク大尉がやって来て・・・・
「あと何秒わたしが指揮を執るのを待てました?」
「心臓の鼓動の半分の時間くらい」
それよりレイク大尉が覚醒しなかったらどうするつもりだったのか知りたい。
感極まったレイク大尉、思わず艦長の頬っぺたに・・。
レイク大尉もダッジがイケメンに見えたんですね。
共に危機を乗り越えるとそう言う感情が湧く、っていうの、
なんて言いましたっけ?
ストックホルム症候群・・・じゃないし(笑)
そんな唐突なレイク大尉の愛情表現になぜか驚きもしないダッジ艦長。
その後、タンカーが進路を変えたので、ダッジは勝負に出ます。
ノーフォークを攻撃するためにタンカーから離れた「スティングレイ」を探信した
「オーランド」では、すっかり興奮したグラハム提督が強権発動。
「The admiral has the conn.(提督が操縦桿を執る)」
ご存知の通り、潜水艦というのは艦長絶対の掟があります。
潜水艦内に入られたことのある方はご存知だと思いますが、艦内にある
「最上席」は、艦長にしか座ることを許されず。たとえどんな高位の者が
乗艦して来ても、決して譲られることはありません。
グラハムはサブマリナーでありながら憎悪に我が身を忘れ、
艦長絶対の掟を破って自分が指揮を執ることを宣言したのでした。
「提督、お言葉を返すようですがこれはわたしの船です。
(Admiral, with all due respect, this is my boat.)」
ノックス艦長も流石に気色ばんで反抗しますが、
「いや、言葉を返すようだがこの瞬間からそうではない。
(Not right now it's not, with all due respect.)」
嫌な奴〜。
もはやノックス艦長に同情してしまいますね。
海上は曇っていて対潜哨戒機からは見つかりにくいと判断した艦長、
浮上して海面を航行し目的に突っ込むことを決めました。
「全速力で航行だ!(It's time to kick this PIG!」
「ペチコート作戦」でお話ししたように、アメリカでは潜水艦のことを
「ピッグボート」と言います。
この豚を蹴っ飛ばして走らせようぜ!というわけです。
ついでに
「グラハムにキーキー言わせてやれ!(Leave graham squealin' from the feelin'!) 」
すると即座に
「 ギャーギャー言わせようぜ(Squeaking' from the freaking'!)」
「ぶっ叩いてブーブー言わせてやれ(Oinking from the boinking!)」
韻を踏んで楽しんでいるだけで、深い意味はありません。
今や堂々と浮上した「スティングレイ」。
おそらく海軍の大サービスで、ドルフィン運動を見せてくれます。
「スティングレイ」を追って海面に浮上して来た「オーランド」のつもり。
ところで「雲が厚くて哨戒機に見つかりにくい」という設定だったはずなのに、
この快晴はいかなることでしょうか。
まあこれも映画だから多少は・・・ね?
グラハムが無線で「スティングレイ」に連絡してきます。
実際は「バラオ」級と無線でトランスミッションを通してコンタクトすることはできません。
(そこで『ニトロ』が自分の体に通電させて通信をつなぎます)
グラハムは単に挑発するつもりですが、ダッジに
「捕まえられるもんなら捕まえてみな!(Catch us if you can!)」
と逆に煽られ、文字通り「キーキー言わされる」ことに。
「ハワード、全速力だ!」
という艦長命令に、機関室のハワード(第二次大戦の生き残り)は
「生きててよかったぜ!DBF!」
と叫びます。
これは、
DIESEL BOAT FOREVER
という意味なんですが、ちょっとこの話をしておきたいと思います。
この徽章は、1970年代のアメリカ海軍潜水艦隊のサブマリナーの間で
非公式に流行っていたものです。
原子力潜水艦が哨戒の中心となっていた当時、原潜の哨戒部隊には
このようなバッジが与えられていました。
ところが、まだ当時生存していたディーゼル艦のサブマリナーには
平時ゆえ認識のためのピンが作られず、まあそのほかにも色々あって、
潜水艦隊内部は原潜とディーゼル真っ二つに割れ、両者の仲は険悪な状態だったそうです。
(レギュラスミサイルを搭載したディーゼル艦には徽章が与えられた)
当時できたばかりの原潜には特に推進機関に何かと問題も多く、
与えられる様々な任務に対応しきれないこともありました。
1959年に就役したディーゼル式エンジンのUSS 「バーベル」SS-580は、
そんな原子力潜水艦の任務の穴埋めをするために活動していましたが、
1969年には主にそのために日本に配備されています。
(なぜかこのことは日米のwikiには記述されていない)
横須賀にいる時、原潜のための「特別任務」をしていた「バーベル」の乗員は
「原潜の失敗を祝うために」あるいは「原潜をやっつけるために」?
ポラリス哨戒部隊のそれに似た自分たちの潜水徽章を作ることを考えました。
早速コンテストが行われ、元アーティストだった「バーベル」乗組員の
人魚が向かい合って潜水艦に覆いかぶさっているデザインが選ばれました。
「ディーゼル艦よ永遠に」を表すDBFが艦体に描かれ、リボンの穴には
その後にもらう予定の殊勲賞に応じて星をつけられる仕様です。
横須賀に到着した「バーベル」はそのデザインを元に地元の業者に製作を依頼し、
(泥棒横丁にそれはあった、と記述がありますが、どぶ板通りのことかも・・)
金メッキは士官用、銀は下士官兵用のDBFバッジを何千個も作りました。
そこまでは良かったのですが、依頼した乗組員が、うっかり金型を
業者のところから回収するのを忘れてしまったのです。
元々の製作の意図は、ディーゼル艦によって少しでも多くの(ダメな)
原子力潜水艦を救い、あわよくば星もつけたピンを乗員の胸につけたい、
というそれだけの話だったのですが、彼らの意に反して(笑)
横須賀のクラフツマンは、その金型を元に、商売を始めてしまいました。
1970年には、原画を海軍の相当部署に送り、なんとか公的に
このデザインを認めてくれるように依願したのですが、認められず、
寛大な司令官の協力にも関わらず、結局公的な支援も得られなかったので、
ついに徽章の制定の話はたち消えになりました。
そして星の数は元々のディーゼル艦乗りの悲願であった、
「原子力潜水艦を助けた回数を表す」
という意味ではなく、
「ディーゼル艦が助けた船の数」
という妥当なものになったということです。
現在このバッジをネット検索すると、たまに日本でもオークションに出されているようですが、
彼らの意図などつゆ知らず、アクセサリー感覚で買った日本人も多かったんだろうな(笑)
最終回に続く。