ニューロンドンはテムズ川のほとりにあるコーストガードアカデミー、
そこに併設されている遺産博物館のご紹介をしています。
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もう一度学校の正門をご紹介しておきましょう。
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もうとにかく立派の一言です。
沿岸警備隊の士官になろうと思ったら、ここに入学して4年間勉強し、
理学士の学位を得て少尉となります。
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せっかくなのでサービスとしてホワイトドレスのコーストガードオフィサーの写真を。
左がウォーラント・オフィサー、右がオフィサー。
基本海軍のかっこいいところをそのまま継承したデザインで、
正帽の徽章が鷲をかたどっているのが大きな特徴です。
サーベルが凛々しくて大変よろしいですなあ。
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さて、沿岸警備隊士官学校、コーストガードアカデミーは
Revenue Cutter Service School of Instruction
税収カッターサービス養成学校として始まり、
1914年に「Revenue Cutter academy」となり、翌年に、サムナーが結成した
「救命部隊」と合併して「コーストガード・アカデミー」になり現在に至ります。
ここで学ぶ学生を「士官候補生」(CADET)と呼びます。
このミュージアムを案内してくれたキュレーターのジェニファーは、
見学の申し込みをしたとき、メールで新入生のことを
「明日はニューカデットが午前中見学に来て忙しいので」
と言っていましたっけ。
で、いつのものかは正確にはわかりませんが、「カデットの1日」が
漫画になっていて、これが大変個人的に気に入りました。
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6:00 寝ています
6:10 起床・・ベッドで頭を打ちました
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6:29 着替え
6:30 点呼
起きてから20分で点呼、これは江田島の幹部候補生よりは緩いですよね。
6:59 走ってます
7:00 旗の掲揚かな?
7:05 朝食
上から3つ目、一番右に不思議な文章が。
報告
ソーケム候補生
洗面台から検査の結果雑菌が発見された
・・・・・・50demerits(罰点)
報告 グローシェ大尉 U.S.R.C.S
デメリット、というのは成績がいいときにもらえるメリットの反対です。
アメリカの学校は学期の終わりに、優秀な成績であれば、
教科ごとにこのメリットが授与されることになっています。
それにしても洗面台の検査をなぜ行ったのか、その結果見つかった
雑菌がどうしてソーケム候補生のデメリットになるのか、
果たしてその雑菌とは何だったのか、色々と不思議な報告ですね。
8:32 授業。「Bum recitation」は何かの暗唱だと思うのですが、何だろう。
そのあと、ラインを張ってライフセービング実習、砲撃実習、カッター、
行進など士官候補生に必須の訓練が続きます。
レクリエーションとしては野球などが人気だったようです。
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就寝時間までは自習「スタディ」のはずですが・・・・。
あー、これむちゃくちゃ親近感覚えるわー。
よく見ると床で寝ている人もいますね。
そして就寝は10時。8時間睡眠でも眠たいんだ。
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そんな学生生活をしていたカデットの皆さん。
この頃の軍帽は日本のもそうですが、縦長で郵便ポストの上部様のデザインです。
制服は海軍兵学校のタイプに似ていますね。
この頃の士官候補生学校の名称は「税収カッターサービス養成学校」でした。
カデットは充実したカリキュラムと実習で海自の基礎を叩き込まれ、
実際の航海に出て海を住処とする救難部隊の心構えを学びました。
■ オブジー・ザ・ベアー(マスコット熊)
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クマの檻の頭部装飾です。
なんだってこんなものが沿岸警備隊のヘリテージミュージアムにあるのか。
「ミリタリー・アニマル」の話題になった時、最後に名前だけを挙げたことがありますが、
実は、コーストガード・アカデミー、1926年に熊の仔をマスコットとして
(もちろん本物です)学校に迎え入れてさらには一緒に生活していたということがあったのです。
なぜ熊か?というと、例のあの、アラスカ雪中行軍の英雄を乗せたカッターが
「ベアー」号だったから、という割としょうもない理由です。
どこでそんなものを手に入れてきたのか知りませんが、とにかく
学校の当時の最高責任者であったキャプテン・ヒンクリーという人に許可を得て、
熊を学校に連れてきたのだそうです。 熊の名前は Objee(オブジー)。 "objectionable presence"(不愉快な存在)の省略形です。 Image may be NSFW.
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偉い人にミルクを飲ませてもらってご機嫌だ。 Image may be NSFW.
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起きて廊下に出ればそこに熊がいる。 Image may be NSFW.
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てか熊の銃の持ち方おかしくね? Image may be NSFW.
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熊のくせにシックスパック作ってんじゃねー(笑) と、つい無駄に写真をいっぱいあげてしまいました。
熊を飼う習慣は第27代オブジーが亡くなるまで50年続いたそうですが、
熊という動物は2年やそこらで亡くなるということはあり得ませんから、
不祥事を起こしたり、大きくなるたびにチェンジしたのかもしれません。
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「税収カッターサービス養成学校」だった頃のカデット野球チーム。
USRCは「United States Revenue Cutter 」の頭文字です。
第二次世界大戦では捕虜になり、死亡した沿岸警備隊士官が居ました。
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そのジェームズ・クロッティ中尉の遺品となります。
クロッティ中尉は1812年以来最初の、沿岸警備隊で捕虜になった人物です。
第二次世界大戦のコレヒドールでの戦いで日本軍の捕虜になり、カバナチュアン収容所に
移送されてからジフテリアに罹って診断されてから三日後に亡くなりました。
遺体は収容所外の共同墓地に他の2700人と共に葬られました。
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クロッティ中尉はアカデミー在学中、4年間フットボールクラブに参加し、
最後の年にはキャプテンを務めていました。
その80年後に当たる2014年、アカデミーのフットボールチームは中尉を顕彰して
ジミー・クロッティ記念シーズンとし、全員がオリジナルのステッカーを
ヘルメットに貼り、寄せ書きを行なっています。
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在りし日のジミー・クロッティ中尉。
艦橋から双眼鏡でワッチしている姿も凛々しく。
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捕虜収容所で仲間が描いたクロッティ中尉の最後の姿だと思われます。
「シックス・トゥ・オール・ステイング!」
「メッセージ: シックス・イズ・ナウ・オン・(?)」
死の床で彼がつぶやいていたと思われる言葉。
フットボールをしている夢を見ながら逝ったということでしょうか。
果敢に相手のフィールドを攻める夢を見ながら捕虜の身を粗末な寝床に横たえ、
そのまま2度と故国の土を踏めなかったのは、いかほど無念なことであったでしょうか。
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クロッティ中尉は、機雷処理のエキスパートとして現地に出征していたということです。
ところで、沿岸警備隊員の非公式のモットーとして、
"You have to go out, but you don't have to come back!"
というのがあります。
「出動せねばならない、しかし帰還することを考えるな」
というのは、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め」という
我が自衛隊の服務の宣誓をもっとドラスティックに言ってみた感じでしょうか。
ことに臨んでは帰って来られる保証はない、いやむしろ帰れないと心得よ。
たった一隻のボートで荒れ狂う海に漕ぎ出し難破した船を助けに行くことにも
なんの躊躇いも持たない、それがコーストガード精神の原点なのです。
続く。