「ちよだ」引渡式典に立ち会った話を始めて三日目にして、
わたしは先代の「ちよだ」が
潜水艦救難”母”艦
であり、この日就役した「ちよだ」が
潜水艦救難艦
であることに気がつきました。
潜水母艦とは、前進根拠地や泊地などにおいて潜水艦を接舷させ、
食料、燃料、魚雷その他物資の補給を行う役目を持ちます。
また狭い潜水艦乗組員が手足を伸ばして過ごせるようなの休息施設もあり、
先代「ちよだ」はこの設備と救難設備が併設されている、ということで
このような艦種に定められることになりました。
新しい「ちよだ」は災害発生時に被災者を収容することも視野に入れているので、
当然ながら潜水母艦としての役割も果たすと思われますが、
それなら「母艦」という言葉を外したのはなぜでしょうか。
さて、引渡式を終え、母港横須賀に出航する「ちよだ」の見送りのために、
わたしたちは祝賀会場からバスで再び岸壁まで移動を行いました。
午前中までパイプチェアが並んでいたテント下は、片付けられ、
見学者は立って出航を待ちます。
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艦長、海曹、海士代表に花束贈呈を行うメンバーが、
(ミスナントカ見たいな広報担当と三井物産の社員)
軽くリハーサルなどしながら和んでいます。
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「あの信号旗はなんか意味があるんでしょ?」
と顔なじみの防衛団体の偉い人が言い出し、さらに
市ヶ谷のグランドヒルに売っていたという信号旗一覧のハンカチを出して、
ああでもないこうでもないと解読しようとしているので、
「たて三つ並んでいるのは上二つが『ご安航を祈る』で、
一番下に日の丸みたいなのをつけることで
『ご安航を祈る』に対する返事になるんですよ」
と教えて差し上げました。
同時に、少し前まで何も知らなかった自分が、門前をウロウロしているうちに
いつの間にか習わぬ経を少しは読めるようになったことに気づきました。
出航の式典に何度か立ち会って気づいたのは、どんな式典にも必ず一人か二人、
「ご安航を祈る」のマイ信号旗を持参してきている人がいることです。
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出航準備を終えた状態で、舷門の要員も起立して待機中。
遠目に見ればきっちりと並んでいますが、アップにしてみると
表情はまだオフ状態のようにリラックスした様子が見られます。
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艦尾側は海曹中心。
出航作業をする&帽触れ要員。
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音楽隊員も待機。
大雨になりませんでしたが、この頃にははっきりとわかる
雨粒が落ちてきていました。
木管楽器は専用の雨カバー装備です。
「ふゆづき」の就役の時には、最初からものすごい土砂降りだったわけですが、
確かその時の音楽隊はテントの下にいた記憶があります。
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出航準備の整ったファンネルからは薄い黒煙が絶え間なく立ち上っていました。
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開始時間になり、全員が起立して姿勢を正します。
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黒塗りの車で海幕長と呉地方総監が来場。
後ろを歩いている鞄を持った一尉は海幕長副官です。
副官は潜水艦徽章、地方総監は航空徽章をつけていますが、
戦闘種出身ではない海幕長の胸には徽章がありません。
あらためて、村川海幕長が、戦前戦後通うじて初めて出現した
経理補給部隊出身(旧海軍なら主計科)出身の制服トップであることを
この写真によって思い出しました。
ご本人が就任の際そのことを記者から質問されて、
「オペレーションとロジスティクスというのは、
一体化してやっていかなければいけない。
どんな職種の者が海幕長になったとしても、そのことは
考えなければいけない重要な課題である」
というようなことをおっしゃったと聞きます。
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海幕長が到着すると、すぐさま式典が始まりました。
海自の式典はスケジュールが分刻みで決まっているので、
さくさくと物事が進んで待たされることもなく、小気味好い感じです。
まずは三井造船とミスなんとかから「ちよだ」乗員代表への花束の贈呈。
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そして初代艦長布田英二一佐があいさつを行いましたイージス艦と同じく潜水艦救難艦艦長職は代々一佐が務めます。
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∠( ̄^ ̄)敬礼。
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そして艦長乗艦です。
布田一佐は前職が潜水艦隊司令部ということなので、
職種潜水艦ということなんだと思います。
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そこからがちょっとドラマチック?でした。
艦長が乗艦すると、艦橋にまっすぐ向かうことになっているので、
普通の?艦は舷門から一旦姿を消すのですが、「ちよだ」は構造上、
舷門から艦橋まで外付けの階段が続いていて、それを登っていくので
皆は
「はえ〜」
と(いう感じで)それを見守ることになったのです。
しかしこの階段、ほぼ垂直でほとんどハシゴですね。
上りはともかく、降りるときは自衛官でもちょっと気をつけないと・・。
なお海が時化ている時には下を見たら軽く死ねる模様。
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そんな階段を艦長はいとも軽やかに駆け上っていくのでした。
ところで、今回わたしは軽いということだけを根拠に、単焦点レンズを
一眼レフのために購入して無理やり全行程を撮影していたわけですが、
単焦点レンズというのはご存知のようにズームができないので、
撮りたい対象物に自分で近づいていかなくてはなりません。
当然自衛艦の艦橋の上をズームアップすることはできませんので、
一応その辺りを写しておいて、あとで切り取るしかないわけですが、
幸いD810というカメラは(呉地方隊のカメラマンが同じのを持ってた!)
伊達に3,635万画素!驚異の解像力!などと謳っておりません。
この通り、画面のごくごく一部、ピンの先くらいを切り取っても、
とりあえず誰かわかる程度の解像度を維持しているので感心しました。
やっぱり一眼レフとミラーレスの間には超えられない壁があるわ・・・。
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艦長が乗り込むと同時に舷梯の収納作業が行われます。
「ふゆづき」などと違って、あくまでこちらは人力で持ち上げる模様。
「案外原始的なやり方で片付けるんですねー」
周りの人が言っていました。
軍艦は半端でないいろんな先端機能を搭載するのが精一杯なので、こういう、
人間が苦労すればなんとかなる部分にはお金をかけてないってことだと思います。
知らんけど。
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こちらでは舫を外す作業が始まりました。
表向きにはこの日初めて舫を外した、という設定だけあって、
扱われている舫が真っ白で綺麗です。
岸壁側の舫を外すのは三井造船の社員です。
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舫の作業で安全旗をあげているハンサムな女性海曹!
うーん、かっこいいっす。
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舷梯は引きあげられ、艦内に姿を消しました。
画面右下は雨除けをしたスピーカーです。
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出航ギリギリまで作業は続きます。
確かこの頃、出航ラッパが鳴り響きました。
舷梯が片付けられ、舫が放たれると、
「見送りの方は前方にお越しください」
とアナウンスされ、皆テントから出て岸壁に近づいていきます。
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艦橋の艦長、船務長らが厳しい目で見つめるのは、
艦体が岸壁を離れる瞬間。
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そしていよいよ岸壁から艦体が離れ始めました。
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この頃から皆は配られた紙の旗を振り始めます。
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「帽〜振れ!」
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女性海曹ここにも発見。
舫の収納される籠も、舫の白も真新しい感じがここから見てもわかります。
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「ちよだ」はこのあと横須賀の潜水艦隊第二潜水艦群に配備されます。
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「帽触れ」をしている時間は案外短いものです。
帽子を振っている人を全部写真に撮りきることは大抵できません。
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「帽戻せ」。
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「ちよだ」は同名の潜水艦救難艦がこの日まで存在していました。
先代「ちよだ」の艦歴を調べると「3月20日退役」となっています。
つまり、こちらの「ちよだ」が就役すると同時にどこかで(多分横須賀)
その役目を終えたということになります。
後継艦が同じ名前を引き継ぐ例は「しらせ」「むろと」と
この「ちよだ」ぐらいしか例がないということです。
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「ちよだ」が岸壁を離れると、雨の量が増えていたこともあり、人々は
皆テントの下に戻ってバスの到着を待つことになりました。
そんな中まず最初に海幕長が退出します。
海幕長の視線の先には三井造船の社長がいます。
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造船所の門まで皆を移送するバスに乗り込みました。
窓の外、岸壁にこれから船につける巨大なスクリューがその置き場に設置してありました。
これは何トンクラスくらいの船のスクリューですか?
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というわけでようやく正門前に到着。
わたしたちは出席していた地元経済界の大物(今はリタイアして
孫が可愛くて仕方がない普通のおじいちゃん)だった方に岡山駅まで
送っていただくことになり、その方の車を待っていました。
この頃は(日本人的には)かなりの雨が降っていて
向こうの迎賓館の前では、VIPが車に乗るまでに濡れないように
社員が傘を一人2本ずつさして屋根付き通路を作るという、
日本の会社組織ならではの美しい光景が展開されていました。
わたしはこの後新幹線で大阪まで行き、夕刻から大阪港に寄港している
練習艦隊旗艦「かしま」上での艦上レセプションに参加しましたが、
そのことについては前日の壮行パーティからお話ししたいと思います。
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ところでこの「ちよだ」の救難艇があると思われるブリッジ状の構造物の上の、
ここから見ると糸車のような構築物は一体何なのでしょうか。
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「深海救難艇」DSRV
を操作するものではないかと推察しましたが、どうでしょうか。
終わり