Grumman NF-14A Tomcat
グラマンという会社名のつづりがGrammanだとわりと最近まで思っていたエリス中尉です。
Uだったんですね。
戦時中、本土にやってきたグラマンは、たとえば大阪だと、
御堂筋沿いを低空飛行しながら逃げ惑う市民を掃射したり、校庭の小学生を狙って撃ち殺したり、
全くこうやって書いているだけで怒りがふつふつとわきあがってくるほどの狼藉三昧をしたため、
日本人にとってこの名前は大人は勿論子供にとってもにっくき「敵」の象徴だった時がありました。
というような陰鬱な話はさておいて、当時のグラマンと言う名の禍々しい響きとは裏腹に、
可愛らしい名前を持っていたこのF−14。
トムキャットとは「雄猫」の意味があります。
F−14の最も大きな特徴の一つが、飛行中に主翼の後退角を変えられることでした。
最適な状態に翼の形が変えられるということなんですね。
別の機種ですが、可変翼の動き方の一例です。
この翼を動かすのを、初期には手動でやっていたのですが、このF‐14は、
コンピュータ制御で最適値を自動制御で決定できるのです。
なんかこれ、手動って、ハンドルみたいなのがあってぐるぐる回したんでしょうか。
映画「メンフィス・ベル」で、故障して片方出ない爆撃機の脚を手動で、
やはりぐるぐる回しながら出し、間に合うかどうか!がクライマックスだったりしましたが。
そういえば車の窓も昔はハンドルぐるぐるでしたよね。
とにかくこの動きがネコの耳の動きに似ているということで
愛称がトムキャットになった、ということに(公式には)なっているようです。
じゃ、他のグラマンの「ネコ戦闘機」はどうなるのっと。
可変翼の動きは後からこじつけた理由じゃないかなあ。
だいたい猫の耳こんな動き方しませんし。
というわけで、今日はこのネコシリーズを年代順に淡々とご紹介します。
「!」マークがついているのは「盛り上げ」と思ってください。
F4F ワイルドキャット!
日本軍の搭乗員には「ネコ」と呼ばれていた。そのままである。
ただし、零戦と比べると大幅に性能は劣っていて、サッチ・ウィーブ戦術の考案者サッチ少佐も、
ミッドウェーで零戦とのやりあって生きて帰って来れたのは奇跡、と言っている。
ずんぐりした機体は、ワイルドキャットというより肥満した家猫と呼ぶにふさわしい。
F6Fヘルキャット!!
零戦に勝つために作られた「地獄のネコ」。
名前に中二病が感じられるが、これは打倒ゼロファイターの意気込みを表したのであろう。
ゼロと戦闘をする際は、余分な装備は外し機体を出来るだけ軽くするように、と
ワイルドキャットの頃にパイロットに「三つのネバー」の一つとして通達がだされたが、
どういうわけかこのヘルキャットはワイルドキャットより体が大きい。
そのせいで重すぎて着艦時に脚が折れ、海に転落する事故が続出。
しかし、日本軍にとっては最も兵力を殲滅させられた「怖い猫」だった。
見た目通り装甲はむちゃくちゃ頑丈で、なかなか撃墜できなかったらしい。
戦争末期には爆装して本土で民間人を襲いまくり、日本人の言う「グラマン」とはこの6Fをさす。
まさに可愛げのない地獄のネコそのものであった。
ところで、当時の海軍では、猥談のことを「ヘル談」、そういう人を「ヘル」と言った。
これは「助平」の助を直訳した、海軍公認の隠語である。
この「ヘルキャット」が、おそらく海軍内では本来の意味とは
全く違う捉え方をされていた可能性は高いであろう。
F7Fタイガーキャット!!!
タイガーキャットというのはジャガーネコともいうネコ科の動物であるが、
タイガーキャットを直訳すると「トラネコ」になり、可愛い。
器量が悪かったヘルとワイルドより、若干スタイル良しになっている。
しかし、良かったのは器量だけで、重すぎる割に着陸速度が速すぎて、
あまり活用されなかった。
民間に払い下げられ、消防機としての余生を送るタイガーキャットは、
まさにジャガーネコというよりトラネコと呼ぶにふさわしいだろう。
消防機として生きるタイガーキャット
F8Fベアキャット!!!!
ベアキャットとは、クマネコ、英語名「ビントロング」というマイナーな動物。
おそらく付けたグラマンの関係者も、この動物を知らずにつけたと思われる。
ビントロング
これもあえて漢字に変換してみると、熊猫。
これは中国語で「シュンンマオ」と読み、何のことはないパンダのことである。
大熊猫でジャイアントパンダ、小熊猫でレッサーパンダ。
どちらも猫とは全く関係ない。
ベアキャットというのには「勇敢な闘士」という意味があるらしい。なんでやねん。
日本本土決戦に向けて開発されたが、これもあまり活躍せず、
日本軍とは全く戦わずに陳腐化してしまった。
F9F パンサー!!クーガー!!!
CATとつく動物に戦闘機に相応しいあまりかっこいいのがいないので、
困ったグラマンは、ネコ科の猛獣の名前を使うという卑怯な技に出た。
これがパンサーとクーガである。
しかし、CATとつかないものは「ネコ戦闘機」の仲間に入れてやらない、という説もある。
ちなみにこれもF9Fですって。
なぜわかるんだ・・・・・。
F14Fトムキャット!!!!!
ふう、やっと本日テーマに戻ってきた。
自衛隊が次世代支援戦闘機を装備するにあたって、世界の航空会社は熾烈な売り込みをかけ、
その結果、このグラマンのF-14と、マクドネル・ダグラスのF‐15が熾烈な売り込み合戦を行い、
その結果、F‐15が採用されたのだが、この売り込み計画をアメリカは「ピース・イーグル作戦」と称していた。
どちらが勝ってもアメリカが発注することは確かなので、つまり漁夫の利というやつである。少し違うか。
売り込みバトルのクライマックスは、1976年入間で行われた国際航空ショー。
ほぼ性能の点からF‐15に決まりかけていた劣勢を起死回生すべく、グラマンは、
西太平洋航行中の原子力空母「エンタープライズ」から、トムキャットを本土来襲させた。
今にして思えば、国内の左翼がこれに
「かつてのグラマン本土空襲が脳裏によみがえった。どうしてくれる」
と騒がなかったのはなぜか、不思議と言えば不思議である。
ともあれ、このかつての敵国に今は機体を買ってもらうための来襲は、いいところまでいったが、
やはり劣勢を挽回することは成らず、空自配備のF-15Jには、マクドネルダグラス社のF-15が
勝利を納めた。
この時にグラマンが勝っていたら、自衛隊に猫戦闘機が導入されていたのである。
この点だけが返す返すも残念である。(筆者の個人的感想であり、感想には個人差があります)
というわけで、一応「ネコ一族」をご紹介しました。
それにしてもこのペイントですが、猫というよりどう見ても鮫のつもりですよね。
ネコと言い張るならネコ耳が欲しかったかな。
ところで、この博物館、こういう展示がされていて、周りに囲いがあるわけでもなく、
しかも係員が見ているわけでもないので、その気になれば
こんな写真も、下に潜り込んで撮れたりします。
「触らないでください」
と書いてあるだけなので、触りさえしなければ何をしてもOK。
この下を匍匐前進して向こうに潜り抜けてもOK。
しませんでしたが。
トムキャットのエアインテークに頭を突っ込んで写真を撮るのもOKです。
昔mizukiさんが、空気を取り込むときに暴風雨だったらどうなるのか、という質問を
コメント欄でしておられたのを思い出しました。
その時にわたしの予想として、燃焼のメカニズムそのものが取り入れた空気を直接使用するのではなく、
赤い輪のところ、つまりインテークセクションで取り入れた空気を減速させ、
同時に圧力を増大させて圧力回復を行うのではないか、ということを書いてみました。
それが正解かどうかはいまだにわかりませんが、よく考えたらそもそも暴風雨のときに
超音速ジェット機を果たして飛ばすだろうか、という根本的な疑問が・・・・・・・。
この件、まだ質問をオープンにしておりますので、どなたかご存知でしたらぜひ教えていただきたく存じます。
あれ・・?
なぜかそこここに旭日旗様のペイントが見える気が・・・・。
やっぱり、これ、「イケてるもの」と認識されてますよね?
そうですよね?
ところで、グラマンの華麗なる「猫戦闘機の系譜」。
最後に、この猫を紹介します。
G-164 アグキャット!!!!!!!!
「アグ」とは、アグリカルチャーすなわち農業。
アグキャットは、アメリカの農家が広大な畑に肥料をまくための、
グラマンの製作した農薬肥料散布専用機。
なぜこの機種が「猫」でないといけなかったのか。
これは、グラマンの中の人が狙った壮大な「オチ」だと関係筋からは見られている。
↧
オークランド航空博物館〜トムキャットと「猫戦闘機の系譜」
↧