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海軍の身だしなみ規則とホテルサービス〜空母「ミッドウェイ」博物館

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空母「ミッドウェイ」博物館、「クリーンシャツ」と呼ばれる士官用の施設、
ワードルームと士官たちに食事を作るギャレーまでを見てきました。


ところでオフィサーズ・カントリー(士官居住区)には

デッキ・デパートメント・オフィス

というボースンズ・メート(BM's、boatswain mates )の一部署があります。
艦首楼(フォッスル)にあるアンカー関係のギア、ロープやラインなど、
船を安全に岸壁につけるための道具を操り、これらを管理する係です。

「ミッドウェイ」が海上で補給を行うとき、補給艦との間に
補給パイプを渡すための索具を操作することも、BM'sの仕事です。

また、空母からボートを海面に下ろしたり上げたりする仕事も行います。

Navy Boatswain's Mate

最初に「スモールボート・オペレーション」と言っていますね。

「自分のことを”シーウォリアー”(海の戦士)だと思ってるよ」

とセカンドクラスのBM'sが言ってるこのビデオは、アメリカの
テレビ広告用に製作されたものです。

アメリカでテレビを見ていると、軍の宣伝を見ます。
陸軍と海軍がほとんどで、時々海兵隊という感じですが、
不思議なことにエアフォースの宣伝は見た覚えがありません。



さて、何千人もが暮らす空母は昔から「一つの街」です。

生活が全てそこで完結し、不足ないようにあらゆる必要なものを積んでいるのですが、
面白いことに「どこに何があるのかを把握する係」という部署があります。

メインテナンス・マテリアル・マネージメント、

通称3Mは「ミッドウェイ」の上で大変広範囲の仕事を行いました。

艦内に備えられた全ての機器設備の部品は、大きなものから小さなものまで
PMS(女性特有の症候群にあらず)と呼ばれる

「プランド・メイテナンス・システム」

が管理し、その統一と管理そのもの、代価以外のこと全てに責任を負っていました。

いわば船の神経中枢のようなものです。

各機器の部品が適正に管理され、それらがスケジュールにそって
適正に運用されるための調整を行うのがPMSの仕事でした。

”船のあちらこちらにある全ての設備や機器の百千のパーツの
在庫と貯蓄を管理していたのが私たちでした。
必要とあれば、たった一個のワッシャーとかボルトであっても
我々はすぐさま用意をしたものです”   S.ミラー 1980

艦内の理髪店です。
理容師は留守で、椅子の上のクッションには

「15分で戻ります」

とメモが貼り付けてあります。

出入り口の左のボードには15分刻みにスケジュール表があり、
自分が散髪してもらいたい時間の欄に名前を書き込むシステムです。

というか、たった15分で散髪も髭剃りもやってしまっていたんですね。

まあ、基本バリカンでゾリゾリっとやるだけなのでそんなものかもしれません。
ところがこの写真につけられたキャプションによると

”いつも誰かが手早く『トリム』してもらうのを待っていたよ。
「ミッドウェイ」の水兵たちは、
基本ヘアカットには10分しかかからないと思っていたから”

なんと15分ではなく10分でしたか・・・。
これでは髭剃りも肩もみも当然なしだな。

ところで、どこの海軍もそうであるように、アメリカ海軍にもヘアカット、その他
「毛」に関することについては決まりがありました。

「アメリカ海軍軍人の身だしなみについての基準」

というこのポスターをちょっと見てみましょう。

【ヘアカット】

耳の上と首回りの髪の毛は絶対にえりにかからないこと、
長いところでも絶対に4インチ(10cm)以上にならないこと、
耳にかからないこと、被り物を取った時に眉毛にかかっていないこと、
部分的にも2インチ以上にはならないようにすること。

1970年代ごろには一般の男性の間にもみあげを長くしたり、
ヒゲを途中でカットする(アフリカ系に多い)などというのが流行りましたが、
海軍軍人たるものそのような流行りに身をやつすことは決して許されません。

まあでも、当時の写真を見ると皆大なり小なり時代の影響を受けているんですけどね。


【もみあげ】

当時の流行りを見越して(笑)注意には

「もみあげは裾広がりにしないこと、耳の真ん中辺まで伸ばさないこと」

としっかり釘をさしております。

【口髭】

口髭についてもあれこれと決まりがあります。

「口の端のホリゾンタルライン」つまり延長線より
ヒゲが外にはみ出てはいけませんよということになっています。
また口の端から「バーティカルライン」を引いて、それより
4分の1インチ(6mmくらい)以上外に出てもいけません。

カイゼル髭や長岡外史みたいなのは問題外です。

例にちゃんと白人とアフリカ系を使っているあたり気を遣っていますね。

女性も何かと決まりが大変そうです。

【襟部分の裾】

襟に髪の毛が触れるのは構わないが、それより長くしない。
襟のラインと髪の毛の裾が平行に同じ線であること。

開襟は上部から最大2.5-1.25cm下まで可。
(結ばない場合)長さは頭皮から5cmくらい。

【ブレイド】

ブレイドというのは編み込みヘアのことです。
アメリカではよくアフリカ系が縮れた毛を編んでしまっていて、
その全てにビーズがついているのを時々見かけるのですが、髪の毛は
どうやって洗うのか、そもそも洗っているのか心配になります。

制服での編み込みヘアは直径を4分の1インチに抑えること。
固く編み込んで頭皮にしっかりまとめること。

わざわざこの項目を作っているのは、アフリカ系への配慮と思われます。

【ヘッドギア】

と言っても、宗教団体が修業で使うものではなく(そらそうだ)
帽子など被り物の総称です。

ギャリソンキャップやコマンドボールキャップの場合、
前頭部のブリムから髪の毛が見えてはいけない。

command ball capというのは自衛隊でも使用している
ベースボールキャップ型の帽子のことです。

ボールは「ベースボール」のボールのことだと思います。

全てのヘッドギアは頭部の一番大きな部分にきっちりと、
快適にフィットするようにかぶること。

ところで下の写真Dの真ん中と右端にセーラーの女性がいますね。
アメリカ海軍は女性もセーラー服を着る事があるんですか?

しかもこの真ん中とその右のベレー帽みたいなの、初めて見るような気がするのですが。

ヘアカットとヘアスタイルは均整のとれた見た目にする事。
極端に左右不対称でバランスが悪い髪型は規則違反になります。

左右不対称・・・例えば片側だけ長ーく伸ばして、反対側は
耳のすぐ下で切ったような髪型のことですね。

学生時代山本さんという人がやってたけど、山本さん元気かな。

さて、ここはワードルームの近くなので、彼らがくつろぐラウンジがあります。

うーんどうですか、この内装のジャパーンなこと。
白木の腰板はまるで日本の温泉旅館にありそうですし、壁のライトは雪洞風。

奥にはこれは間違いなくメイドインジャパンの日本人形(冒頭写真)、そして


五月人形として製作されたと思われる武者人形がケース入りで。

「馬乗大将 光陽」

とありますが、この「光陽」というのは加賀人形によくついてくる銘です。
もしかしたら最初の原型を作った職人なのかもしれませんが、
オークションなどでも普通に出回っているようで、多分単なるブランドでしょう。

冒頭の女性の人形は「鼓」というタイトル付きです。

どちらも「ミッドウェイ」が横須賀にいた時に日本の団体から
寄贈された記念品のようなものではないかと思われます。

ワードルームラウンジでくつろぎすぎるくらい寛いでいる士官たち。
てかあんたら基本的に行儀悪すぎ。

天井の灯りが同じなのでこの部屋だと思われますが、内装は違います。

やはり当時からほんのりとジャパネスクですね。

ワードルームラウンジに飾ってあった絵その1。

「海上での補給」

そうそう、これですよ。BM'sが行うのは。
補給艦との間に索具やパイプを渡すのは大変な仕事だとこれを見ても思います。

絵その2。

「補給作業中」

何を補給しているかというと、弾薬の類。

「ミッドウェイ」にはここに、

「ホテル・サービス・オフィス」

なるカウンターがありました。

一般に、民間の人たちや将官は「ミッドウェイ」勤務となった場合、
最低一晩から最長6ヶ月までの期間、艦上で過ごすことになります。

このオフィスはそんな臨時の「お客様」のためにリネン類や、
お泊りに必要な各種アイテムを取り揃えてお越しをお待ち申し上げています。

艦上でとった食事代も、ここで徴収することになっていました。

枕やシーツ、毛布の他にタオルや洗面道具、シャンプーや髭剃りに至るまで。
金銭管理も(書面上で)行うので、ファイルなども全て棚には並んでいます。

ホテルサービスのフロント係。
名前はきっとジェームズさん。

ジェームズの上司、アランさんはタイプライター(電動式)で書面を作成中です。
大きなカウンターがあって、貸し出すものの受け渡しはここで行います。

専門のこんな部門があるということは、毎日のように利用があったということでしょう。
さすがは海上の都市、巨大空母です。

これだけ至れり尽くせりで全てが揃うなら、ぜひ1泊くらいならしてみたいですね。

 

続く。

 

 

 


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